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台湾ドローン旅行完全ガイド|法律・申請・飛行禁止エリアを徹底解説【2024年最新版】

紺碧の海に縁取られた断崖絶壁、幾重にも重なる深緑の山々、そして活気あふれる街並み。台湾が持つ多彩な魅力に惹かれ、その感動を空からの視点で切り取りたい、そうお考えの方も多いのではないでしょうか。こんにちは、旅ライターの直子です。子育てが一段落し、今は夫と二人でヨーロッパの街角を気ままに巡るのが何よりの楽しみですが、近くて魅力的な台湾の風景は、いつも私たちの心を捉えてやみません。

特に最近では、ドローンという翼を手に入れたことで、旅の楽しみ方がぐっと広がりました。上空から見下ろす壮大な景色は、地上を歩いているだけでは決して味わえない特別な感動を与えてくれます。しかし、その翼を広げるためには、その土地のルールを深く理解し、尊重することが不可欠です。

「台湾でドローンを飛ばすのは、手続きが複雑で難しいのでは?」 「言葉の壁もあって、申請なんて自分にできるだろうか…」

そんな不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、台湾のドローンに関する法規制は、安全保障上の理由から比較的厳格に定められています。しかし、ご安心ください。一つひとつのステップを丁寧に踏んでいけば、決して乗り越えられない壁ではありません。むしろ、しっかりと準備をすることで、心に一点の曇りもなく、安心して台湾の空を満喫することができるのです。

この記事では、台湾でのドローン撮影を計画されている皆様、特に時間にゆとりを持ってじっくりと旅の準備をされたいシニア世代の方々に向けて、複雑な法律や申請手続きをできる限り分かりやすく、そして詳しく解説してまいります。出発前の準備から、現地での注意点、さらには万が一の事態への備えまで。この一台の記事が、あなたの素晴らしい空の旅を支える、信頼できるコンパスとなることを願っています。

さあ、一緒に台湾の空へ旅立つ準備を始めましょう。まずは、台湾の航空行政を司る大切な場所の地図からご覧ください。私たちのドローンの旅は、ここへの理解から始まります。

目次

なぜ台湾のドローン規制は厳しい?旅の前に知っておきたい背景

台湾の美しい風景を前に、すぐにでもドローンを飛ばしたいという気持ちはよく分かります。ですが、その前に少しだけ、なぜ台湾のドローン規制が今日の形になったのか、その背景に思いを馳せてみましょう。ルールをただの制約としてではなく、その土地が大切にしているものを守るための知恵として理解することで、旅はより深く、意義のあるものになります。

台湾が置かれている国際的な立場や地理的な条件は、ドローン規制に大きく影響しています。ご存知の通り、台湾には数多くの軍事施設や防衛関連施設が点在しており、国の安全保障は最重要課題の一つです。悪意のあるドローンがこれらの施設に接近することは、深刻な事態を招きかねません。そのため、空港周辺や重要施設の上空は厳格な飛行禁止区域(レッドゾーン)に指定され、徹底した管理が行われているのです。

また、台湾は九州ほどの面積に約2300万人の人々が暮らす、人口密度の高い地域です。特に台北や高雄といった都市部では、高層ビルが林立し、人や車が絶えず行き交っています。こうした環境でドローンが万が一墜落すれば、大きな人身事故や物損事故につながる危険性があります。人々の安全な暮らしを守るため、人口密集地での飛行には厳しい制限が課せられています。

さらに、プライバシー保護の観点も無視できません。高性能なカメラを搭載したドローンは、個人の住宅やプライベートな空間を意図せず撮影してしまう可能性があります。誰もが安心して暮らせる社会を維持するためには、ドローンを操縦する一人ひとりが、他者のプライバシーを尊重する高い倫理観を持つことが求められます。

そしてもう一つ、忘れてはならないのが、台湾の豊かな自然環境の保護です。太魯閣(タロコ)国立公園の壮大な渓谷や、玉山(ぎょくさん)に生息する貴重な動植物。これらは台湾の、ひいては世界の宝です。ドローンの飛行音が野生動物にストレスを与えたり、万が一の墜落が植生を破壊したりすることがないよう、国立公園などの自然保護区では原則として飛行が禁止され、学術研究など特別な目的の場合にのみ、厳しい審査を経て許可が下りる仕組みになっています。

これらの背景を知ると、台湾のドローン規制が、決して旅行者の楽しみを奪うためではなく、国の安全、人々の暮らし、そしてかけがえのない自然を守るために不可欠なルールであることがお分かりいただけるでしょう。「知らなかった」では済まされないのが法律です。私たち旅行者は、台湾という素晴らしい土地にお邪魔させていただく「ゲスト」として、これらのルールを遵守する責任があります。しっかりとした知識を身につけ、敬意を払うこと。それこそが、心から安心して台湾の空を楽しむための第一歩なのです。

まずはここから!ドローン規制の基本を理解する

それでは、具体的に台湾のドローン規制の基本を見ていきましょう。難しく考える必要はありません。ご自身の持っている、あるいは購入を検討しているドローンがどのカテゴリーに当てはまるのかを把握することから始まります。台湾の法律では、ドローンの重量によって、登録やライセンスの要否が細かく定められています。

あなたのドローンはどの分類?重量による規制の違い

台湾の「民用航空法」では、ドローン(遙控無人機)は主にその最大離陸重量によって区分されています。私たち旅行者が関わる可能性が高いのは、主に以下のカテゴリーです。

  • 250g未満のドローン

現在、市場には軽量なトイドローンや、DJI社のMavic Miniシリーズのように249gで設計された高性能な機体が多く存在します。これらの250g未満のドローンは、台湾の法律上、機体の登録義務が免除されています。これは大きなメリットと言えるでしょう。しかし、ここで注意が必要です。「登録が不要=何をしても良い」というわけでは決してありません。後述する飛行禁止エリアのルールや、基本的な飛行ルール(夜間飛行の禁止、高度制限など)は、たとえ250g未満のドローンであっても等しく遵守する義務があります。手軽だからこそ、かえってルールを軽視しがちになる危険性も。常に法律を意識した運用が求められます。

  • 250g以上2kg未満のドローン

DJI社のMavic AirシリーズやMavic Proシリーズなど、多くの空撮用ドローンがこのカテゴリーに該当します。この重量のドローンを台湾で飛行させる場合、必ず事前の機体登録が必要となります。登録はオンラインで完結するため、日本にいるうちから準備を進めることができます。このカテゴリーのドローンを個人が趣味の範囲で飛行させる場合、専門的な操縦ライセンス(操作證)の取得は義務付けられていません。ただし、基本的な知識を証明するためのオンライン学習やテストが求められるケースも将来的には考えられますので、常に最新の情報を確認する姿勢が大切です。私たち旅行者の多くは、このカテゴリーのドローンを使用することになるでしょうから、登録手続きについては特に詳しく後述します。

  • 2kg以上のドローン

より大型で専門的な撮影に使用される、DJI社のInspireシリーズなどがこのカテゴリーに含まれます。2kg以上のドローンを飛行させるには、機体登録に加えて、台湾の正式な操縦ライセンス(操作證)の取得が必須となります。このライセンスは、台湾で学科試験と実技試験に合格する必要があり、短期滞在の旅行者が取得するのは現実的ではありません。もし、このクラスの機材での撮影をお考えの場合は、台湾現地のライセンスを保有するプロのパイロットに依頼することを検討するのが賢明です。

このように、まずはご自身のドローンの重量を確認し、どの規制が適用されるのかを明確に把握することがスタートラインとなります。

登録は必須?外国人旅行者のためのドローン登録手続き

250g以上のドローンを台湾に持ち込んで飛行させる場合、避けては通れないのが機体の登録手続きです。難しそうに聞こえますが、プロセス自体はすべてオンラインで完結し、落ち着いて取り組めばどなたでも完了できます。ここでは、外国人旅行者向けの手順をステップごとに解説します。

登録作業は、台湾の交通部民用航空局(Civil Aeronautics Administration、略してCAA)が運営する「遙控無人機管理資訊系統 (Drone Remote Pilot Management Information System)」というウェブサイトで行います。サイトは中国語(繁体字)と英語に対応していますので、ブラウザの翻訳機能なども活用しながら進めると良いでしょう。

登録に必要なもの 事前に以下のものを準備しておくと、手続きがスムーズに進みます。

  • パスポート
  • Eメールアドレス(登録確認や通知の受信に使用します)
  • 台湾での滞在先住所と電話番号(ホテルの情報で構いません)
  • ドローンの情報(メーカー、モデル名、シリアルナンバー、重量)
  • ドローンの写真(機体の全体像がわかるもの)
  • ドローンのシリアルナンバーが鮮明に写った写真

登録手順の概要

  • アカウントの作成

まずは上記サイトにアクセスし、「註冊/Register(登録)」ボタンからアカウントを作成します。個人(自然人)か法人かを選択する画面になりますので、「自然人」を選択。国籍で「日本」を選び、パスポート番号や氏名、生年月日、メールアドレスなどの個人情報を入力していきます。ここで設定するパスワードは忘れないように、大切に保管してください。

  • 個人情報の認証

アカウントを作成すると、登録したメールアドレスに認証用のメールが届きます。メール内のリンクをクリックして、アカウントを有効化しましょう。これで、システムにログインできるようになります。

  • ドローン情報の登録

システムにログイン後、「遙控無人機註冊(ドローン登録)」のメニューに進みます。ここで、準備しておいたドローンの情報を入力していきます。メーカー名(例如:DJI)、モデル名(例如:Mavic 3)、シリアルナンバーなどを正確に入力してください。シリアルナンバーは機体本体やバッテリー収納部、あるいは購入時の箱に記載されています。間違いのないよう、慎重に確認しましょう。また、ドローンの写真とシリアルナンバーの写真のアップロードも求められます。

  • 登録申請の完了

すべての情報を入力し、内容に間違いがないことを確認したら、申請を提出します。申請が受理されると、CAAによる審査が行われます。通常、数営業日以内に審査結果がメールで通知されます。費用は無料です。

  • 登録番号(QRコード)の取得と貼付

無事に審査が完了すると、システム上であなたのドローン専用の登録番号(QRコードの形で発行されることが多いです)がダウンロードできるようになります。この登録番号を印刷し、必ずドローン本体の見やすい位置に貼り付けてください。耐水性のあるラベルシールに印刷したり、印刷した紙をラミネート加工したりして、飛行中に剥がれたり破損したりしないように工夫すると良いでしょう。この登録番号の表示は法律で義務付けられており、表示がないまま飛行させると罰則の対象となります。警察官などに提示を求められた際に、すぐに見せられるようにしておくことが重要です。

この登録手続きは、台湾に到着してから慌てて行うのではなく、出発の少なくとも1〜2週間前には済ませておくことを強くお勧めします。旅の準備にゆとりを持つことが、心穏やかなシニア旅の秘訣ですね。

台湾の空を飛ぶためのライセンス(操作許可証)について

機体登録と並んで気になるのが、操縦者の「ライセンス」ではないでしょうか。日本では国家資格化されましたが、台湾ではどうなっているのでしょう。これも、基本的にはドローンの重量と、飛行させる目的によって扱いが異なります。

旅行者にライセンスは必要か?

結論から言うと、2kg未満のドローンを、個人が趣味の範囲(非営利目的)で、かつ基本的な飛行ルールを遵守して飛行させる場合、台湾の専門的な操縦ライセンス(操作證)を取得する必要はありません。

これは、私たち外国人旅行者にとって非常に重要なポイントです。多くの旅行者が使用するであろう250g以上2kg未満のドローン(例:DJI Mavicシリーズなど)は、前述の機体登録さえ済ませておけば、ライセンスなしで飛行させることが可能です。

ただし、「ライセンス不要」という言葉に安心しきってはいけません。これはあくまで、「基本的なルールを守る限りにおいて」という大前提が付きます。例えば、以下のような特殊な飛行を行う場合には、たとえ個人であっても、あるいは2kg未満のドローンであっても、特別な許可や、場合によってはライセンスが必要となります。

  • 夜間(日没後から日の出前まで)の飛行
  • 目視外(FPVゴーグルなどを使用する)飛行
  • 高度120m(400フィート)を超える飛行
  • 複数のドローンを同時に操縦する飛行
  • 人混みやイベント会場の上空での飛行
  • ドローンから物を投下する行為

これらの行為は、原則として禁止されています。もし学術研究や業務上の理由でどうしてもこのような飛行が必要な場合は、事前にCAAに対して詳細な飛行計画を提出し、個別の許可を得なければなりません。この許可を得るプロセスは非常に専門的かつ複雑であり、安全管理体制の証明なども求められるため、一般的な旅行者が行うのは現実的ではないでしょう。

したがって、私たち旅行者は「ライセンスは不要だが、許されているのは基本的なルール内での日中の目視内飛行のみ」と心に刻んでおく必要があります。この範囲を逸脱することは、重大な法律違反となるのです。

もしライセンス取得を目指すなら(参考情報)

ご参考までに、台湾のドローンライセンス制度について少しだけ触れておきましょう。台湾のライセンス(操作證)は、重量区分や操作の難易度に応じて、いくつかの種類に分かれています。

取得プロセスは、日本の運転免許証のように、まず学科試験に合格し、その後、実技試験に合格するという流れが一般的です。学科試験では、民用航空法規、気象学、航空力学といった専門知識が問われます。当然ながら、試験は中国語で行われます。実技試験では、GPSのないモードでのホバリングや、定められたルートの飛行など、高い操縦技術が求められます。

そして、最も重要な点として、これらの試験を受験するためには、原則として台湾の居留証(ARC)を所持している必要があります。つまり、観光目的の短期滞在ビザで入国した旅行者が、滞在中にライセンスを取得することは制度上できません。

このことからも、台湾でのドローン飛行は、あくまでライセンスが不要な範囲内で、ルールを厳守して楽しむ、というスタイルが旅行者にとって唯一の現実的な選択肢であることがお分かりいただけると思います。背伸びをせず、許された範囲で最大限に楽しむ。それこそが、洗練された大人の旅の楽しみ方ではないでしょうか。

【最重要】飛行エリアの確認方法|「どこで飛ばせるか」を調べる

さて、機体の登録も済み、ライセンスが不要であることも確認できました。いよいよ次は、台湾のどこでなら、その翼を広げることができるのか、という最も重要な問題です。台湾では、ドローンを飛行させて良い場所、条件付きで許可される場所、そして絶対に飛んではいけない場所が、地図上で色分けされて明確に示されています。この「空の地図」を読み解くスキルは、台湾でドローンを飛ばす上での必須科目と言えるでしょう。

頼れる公式ツール「Drone Map」を使いこなす

この「空の地図」を確認するための最も信頼できるツールが、台湾CAAが提供している公式の飛行エリアマップ、通称「Drone Map」です。これは、先ほど機体登録で利用した「遙控無人機管理資訊系統」のウェブサイト上で確認できるほか、スマートフォン向けの公式アプリも提供されています。台湾に到着したら、まずこのアプリをダウンロードしておくことを強くお勧めします。

このマップは、台湾全土を以下の3つの色で区分けしています。それぞれの色の意味を正確に理解することが、トラブルを避けるための鍵となります。

  • 緑エリア(Green Zone / 綠區)

マップ上で緑色に塗られているエリアは、原則として地上から120メートル(約400フィート)の高さまでドローンを飛行させることが許可されている場所です。多くの田園地帯や、都市部から離れた海岸線などがこの緑エリアに指定されています。ただし、「緑エリアだからどこでもOK」と考えるのは早計です。このエリア内であっても、後述する基本的な飛行ルール(人や建物との距離の確保、プライバシーの尊重など)は当然適用されます。また、緑エリアの中に、地方自治体が独自に設定した公園や史跡などの飛行禁止エリアがピンポイントで存在する場合もありますので、現地の看板などにも注意を払う必要があります。

  • 黄エリア(Yellow Zone / 黃區)

黄色で示されているエリアは、主に空港の周辺に設定されています。具体的には、空港の滑走路の中心から一定の範囲が黄色い円や特殊な形で示されています。このエリアでは、ドローンの飛行が完全に禁止されているわけではありませんが、厳しい高度制限が課せられています。一般的に、飛行高度は地上から60メートル(約200フィート)以下に制限されます。さらに、このエリア内で飛行させる場合は、事前にCAAに対して飛行計画を提出し、許可を得る必要がある場合もあります。航空機の安全な運航を妨げる行為は極めて重大な犯罪と見なされます。私たち旅行者は、トラブルを避けるためにも、基本的には黄エリアでの飛行は計画しないのが最も賢明な判断と言えるでしょう。

  • 赤エリア(Red Zone / 紅區)

そして、最も注意しなければならないのが、赤色で示されているエリアです。ここは、ドローンの飛行が全面的に禁止されている区域です。許可なくこのエリアにドローンを侵入させることは、深刻な法律違反となります。赤エリアに指定されている場所の具体例を、次の項目で詳しく見ていきましょう。

フライトを計画する際は、必ず事前にこの「Drone Map」で目的地がどの色のエリアに該当するのかを確認してください。そして、フライトの直前にも、再度アプリで確認する習慣をつけましょう。突発的なイベントや要人の訪問などで、一時的に飛行制限が設けられることもあるからです。

こんな場所は要注意!飛行禁止エリアの具体例

「Drone Map」で赤く示される飛行禁止エリア(レッドゾーン)には、具体的にどのような場所が含まれるのでしょうか。これらを事前に把握しておくことで、無用なトラブルを回避できます。

  • 空港・飛行場の周辺

これは最も厳格に管理されているエリアです。民間空港だけでなく、軍用の飛行場も含まれます。これらの周辺は、航空機の離着陸ルートにあたるため、ドローンの侵入は絶対にあってはなりません。

  • 軍事施設およびその周辺

台湾全土に点在する軍の基地、レーダーサイト、演習場などは、すべて厳格な飛行禁止区域です。安全保障上の機密に関わるため、興味本位で近づくことは絶対にやめてください。地図上ではっきりと軍事施設と明記されていなくても、沿岸部や山間部には重要な防衛施設が数多く存在します。必ず「Drone Map」で赤エリアになっていないかを確認しましょう。

  • 政府の重要機関

総統府、行政院、立法院といった中央政府の庁舎や、各国の大使館に相当する施設(例:日本台湾交流協会)の周辺も飛行禁止です。

  • 原子力発電所、石油コンビナート、貯水池など

国の重要インフラ施設も、テロなどの標的になり得るため、厳重に保護されています。これらの上空および周辺での飛行は固く禁じられています。

  • 高速道路、高速鉄道、鉄道の線路敷

高速で移動する車両や列車とドローンが衝突すれば、大惨事につながる恐れがあります。これらの直上およびその周辺での飛行は禁止されています。

  • 台北市中心部の大部分

台湾の首都である台北市は、特に規制が厳しいエリアです。台北松山空港が市街地に非常に近いこと、政府機関が集中していること、そして人口密度が極めて高いことから、有名な観光地である台北101の周辺や、中正紀念堂、龍山寺といった中心市街地のほとんどが赤エリアまたは黄エリアに指定されています。台北市内でドローンを飛ばせる場所は、河川敷などごく一部に限られているのが実情です。「台北の夜景をドローンで」という夢は、残念ながら現在の法律ではほぼ不可能だと考えておくべきでしょう。

これらの場所に加えて、国立公園や国家風景区なども特別な規制の対象となります。次の項目で詳しく見ていきましょう。

国立公園で飛ばしたい!特別な許可申請の方法とは

台湾の旅のハイライトといえば、太魯閣(タロコ)の息をのむような渓谷美、玉山(ぎょくさん)の雄大な山容、墾丁(ケンティン)の美しい海岸線など、国立公園や国家風景区が織りなす圧倒的な自然景観です。こうした場所でドローンを飛ばし、その壮大さを映像に収めたいと願うのは、空撮を愛する者として当然の気持ちでしょう。

しかし、これらのエリアは、貴重な生態系や自然環境を保護するため、原則としてドローンの飛行が禁止されています。これは「Drone Map」上でも赤エリアとして表示されていることがほとんどです。

では、完全に諦めるしかないのでしょうか? 答えは「いいえ」ですが、そのためには非常にハードルの高い、特別な許可申請のプロセスを経る必要があります。

各国立公園や国家風景区は、それぞれの管理処(管理事務所)が管轄しており、ドローン飛行の許可申請も、この管理処に対して行います。申請は、多くの場合、各管理処のウェブサイトに設けられた専用フォームや、指定された書類を提出する形で行います。

申請に必要な主な書類(一例)

  • 飛行申請書:氏名、連絡先、飛行目的などを記入します。
  • 飛行計画書:いつ、どこで、どのくらいの時間、どのようなルートで飛行させるのかを詳細に記述します。飛行エリアを地図上に明記することも求められます。
  • 安全管理計画書:緊急時の対応策(機体ロスト、墜落、バッテリートラブルなど)、周囲の安全確保の方法などを記述します。
  • ドローンの登録証明書:CAAに登録した際に発行された証明書のコピー。
  • ドローンの保険加入証明書:第三者賠償責任保険に加入していることを証明する書類。

申請の際には、飛行目的が「学術研究」「環境調査」「公共の利益に資する映像制作」など、単なる個人の趣味や娯楽ではない、正当な理由が求められることがほとんどです。個人の旅行記録のための撮影という理由では、許可が下りる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

また、申請から許可(あるいは不許可)の通知が来るまでには、数週間から1ヶ月以上かかることも珍しくありません。当然、やり取りは中国語か英語になります。もし運良く許可が下りたとしても、そこには「飛行は指定されたエリアと時間内に限る」「監視員を帯同させること」といった厳しい条件が付されるのが一般的です。

このように、国立公園でのドローン撮影は、旅行者が気軽に挑戦できるものではないのが現状です。その背景には、ドローンの騒音が営巣中の猛禽類を刺激したり、墜落した機体やバッテリーが自然環境を汚染したりするリスクを防ぐという、大切な目的があります。

私たちは、その美しい自然を守ろうとする台湾の人々の思いを尊重し、国立公園内ではドローンを飛ばさず、地上からの景色を心ゆくまで堪能するという選択をすることも、また一つの賢明な旅の形と言えるでしょう。

守るべき飛行ルール|安全なフライトのための10の鉄則

飛行させる場所が「緑エリア」であることを確認できたら、いよいよフライトです。しかし、そこには守るべき共通の交通ルールならぬ「飛行ルール」が存在します。これらは、あなた自身と、あなたのドローン、そして周囲の人々や財産を守るための大切な約束事です。台湾の民用航空法に定められた、主なルールを一つひとつ確認していきましょう。

  • 飛行高度は地上または水面から120メートル(400フィート)まで

これは国際的にも標準的なルールです。有人航空機が飛行する空域との安全な間隔を確保するために定められています。お使いのドローンのアプリで、最大高度を120mに設定しておくと、意図せず超えてしまうことを防げます。たとえ周りに何もない広大な場所であっても、この高度制限は厳守してください。

  • ドローンは必ず目視できる範囲(VLOS)で飛行させる

操縦者は、常に自分の目でドローンの位置や姿勢、周囲の状況を直接確認できなければなりません。双眼鏡を使ったり、建物の影に入って見えなくなったりした状態での飛行は目視外飛行と見なされ、禁止されています。モニターの映像だけを頼りに遠くまで飛ばすのは違反行為です。

  • 日中の時間帯のみ飛行可能

飛行が許可されているのは、原則として日の出から日没までの間です。美しい夜景を空撮したい気持ちは分かりますが、夜間飛行は特別な許可なく行ってはなりません。夜間は機体の視認が困難になり、障害物との衝突リスクが格段に高まるためです。

  • 人や建物、車両との間に30メートル以上の安全な距離を保つ

これは非常に重要な安全規定です。第三者(ドローンの飛行に関与していない人々)や、他人の所有物である建物、走行中の車両などの上空を飛行させることはできません。常にこれらの対象物から水平方向に30メートル以上の距離を保って飛行させる必要があります。このルールがあるため、市街地や観光地での飛行は事実上、非常に困難となります。

  • 群衆の上空は飛行禁止

お祭りやコンサート、スポーツイベント、あるいは観光地の混雑など、不特定多数の人が集まっている場所の上空を飛行させることは、固く禁じられています。万が一機体が墜落した場合、大惨事につながるためです。

  • 飲酒後の操縦は厳禁

自動車の運転と同じく、アルコールや薬物の影響下でドローンを操縦することは法律で禁止されています。正常な判断能力が損なわれた状態での飛行は、極めて危険です。台湾の美味しい料理やお酒を楽しんだ後は、その日のフライトはきっぱりと諦めましょう。

  • ドローンから物を投下しない

許可なくドローンから任何の物体を投下することは禁止されています。サプライズのプレゼントを届けたり、イベントで記念品を撒いたりといった行為は、特別な許可がなければできません。

  • 危険物の輸送は禁止

言うまでもありませんが、火薬類、引火性液体、毒物といった危険物をドローンに搭載して飛行させることは、法律で厳しく禁じられています。

  • プライバシーの尊重を忘れずに

法律で明確に禁止されていなくとも、社会的なマナーとして、他人の私有地や住宅、ホテルの客室などを無断で撮影したり、窓から中を覗き込むような飛行をしたりすることは絶対にあってはいけません。不快感や不安感を与えるだけでなく、プライバシーの侵害として法的なトラブルに発展する可能性もあります。常に周囲への配慮を忘れないでください。

  • 電波法に関する注意

日本で技術基準適合証明(技適マーク)を受けたドローンであっても、それがそのまま台湾の電波法に適合しているとは限りません。ただし、DJI社などの世界的に販売されている主要メーカーの製品であれば、各国の電波認証を取得していることがほとんどで、通常は問題になりません。注意が必要なのは、自作した機体や、FPVレース用の特殊な映像伝送装置(VTX)などを個人で改造・搭載した場合です。意図せず違法な電波を発射してしまうと、罰則の対象となる可能性があります。市販の製品を改造せずにそのまま使用するのが最も安全です。

これらのルールは、一つでも破れば罰則の対象となり得ます。安全で楽しいドローン飛行は、これらの約束事を守ることから始まるのです。

台湾ドローン旅の準備と流れ|出発前から現地でのフライトまで

さて、法律やルールについて学んだところで、ここからは時系列に沿って、台湾ドローン旅の具体的な準備と流れをシミュレーションしてみましょう。ゆとりを持った計画が、旅の質を大きく左右します。

STEP 1: 日本での準備(出発の1ヶ月前〜)

旅の成功は、日本にいる間の準備で決まると言っても過言ではありません。

  • ドローンの選定と状態確認

これからドローンを購入する場合は、ご自身の旅のスタイルに合った機体を選びましょう。250g未満の機体は登録が不要で手軽ですが、台湾の沿岸部や山間部は風が強いことも多いため、ある程度の耐風性能がある250g以上の機体の方が安定した映像を撮りやすいという側面もあります。ご自身の技量や、手続きの手間を天秤にかけて選びましょう。すでにお持ちの機体は、プロペラに傷がないか、バッテリーは劣化していないかなど、しっかりとメンテナンスをしておきましょう。

  • オンラインでの機体登録(250g以上の場合)

出発の遅くとも2週間前までには、前述の「遙控無人機管理資訊系統」で機体登録を済ませておきましょう。パスポートやドローンのシリアルナンバーなどを準備し、落ち着いて作業できる時間を見つけてください。

  • 登録番号(QRコード)の貼付準備

登録が完了したら、発行された登録番号(QRコード)を印刷します。そのまま紙で貼ると雨などで破損する恐れがあるので、100円ショップなどで手に入るラミネートフィルムで加工したり、耐水性のあるラベルシールに印刷したりするのがお勧めです。これをドローン本体の、プロペラなどに干渉しない平らな面に、しっかりと貼り付けます。予備も何枚か印刷して、パスポートなどと一緒に保管しておくと安心です。

  • 飛行予定エリアの事前調査

行きたい場所、撮影したい風景をリストアップし、それらの場所が「Drone Map」でどの色分けになっているかを事前に徹底的に調査します。もし国立公園など特別な許可が必要な場所での撮影をどうしても希望する場合は、この段階で管理処のウェブサイトを調べ、申請プロセスを開始する必要があります。ただし、前述の通り、許可のハードルは非常に高いことは覚悟しておきましょう。

  • 保険の確認

万が一の事故に備え、ドローンの賠償責任保険について確認します。日本で加入している保険が、台湾での事故もカバーしているか、保険会社に問い合わせておくと万全です。海外旅行保険に、ドローン事故をカバーする特約を付けられる場合もあります。

STEP 2: 台湾への持ち込みと税関

準備が整ったら、いよいよ台湾へ出発です。ドローンを安全に輸送するための注意点です。

  • 機内持ち込みのルール

ドローン本体は、預け入れ荷物(受託手荷物)にすることも、機内に持ち込むことも可能ですが、リポバッテリーは発火の危険性があるため、絶対に預け入れ荷物に入れてはいけません。必ず手荷物として機内に持ち込んでください。これは航空保安上の国際的なルールです。

  • バッテリーの梱包

航空会社は、持ち込めるリポバッテリーの容量(Wh)や個数に制限を設けている場合があります。事前に利用する航空会社のウェブサイトで規定を確認しておきましょう。バッテリーは、端子部分が金属などに触れてショートしないよう、購入時のケースに入れたり、端子部分にテープを貼ったりして絶縁処理を施します。さらに、難燃性の素材でできた「リポセーフティーバッグ」に一つひとつ入れておくと、安全性が高まり、チェックインカウンターでの説明もスムーズになります。

  • 税関での申告

個人が趣味で使用するドローンを1〜2台持ち込む程度であれば、税関で特別な申告は通常必要ありません。ただし、非常に高価な機材を多数持ち込む場合など、販売目的を疑われるようなケースでは、質問を受ける可能性もゼロではありません。あくまで個人使用(For personal use)であることを伝えられるようにしておきましょう。

STEP 3: 現地でのフライト当日

台湾に到着し、いよいよドローンを飛ばす日。最高のフライトにするために、最後の確認を怠らないようにしましょう。

  • フライト直前の情報確認

ホテルを出る前に、スマートフォンの「Drone Map」アプリを開き、これから向かう場所の飛行制限に変わりがないかを必ず確認します。天候だけでなく、空のルールも変わり得ると心得ておきましょう。

  • 天気予報のチェック

特に重要なのが風速です。台湾は島国のため、天候が急変しやすく、沿岸部や山岳地帯では予期せぬ強風が吹くことがあります。多くの民生用ドローンは、風速10m/sを超えると飛行が不安定になります。少しでも危ないと感じたら、勇気を持ってフライトを中止する決断が必要です。

  • 周囲への配慮と安全確認

離陸場所に着いたら、まず周囲を見渡し、人や車、電線などの障害物がないかを確認します。もし近くに人がいる場合は、「これからドローンを飛ばします」と一声かけるだけでも、相手の安心感が違います。離陸・着陸時は特に周囲の安全に気を配りましょう。

  • 緊急連絡先の携帯

万が一、ドローンが墜落して人や物に損害を与えてしまったり、行方不明になったりした場合に備え、現地の警察(110)や、滞在先のホテル、そして後述する日本台湾交流協会の連絡先などを控えておくと、いざという時に落ち着いて行動できます。

準備を万全に整え、ルールとマナーを守れば、台湾の空はあなたを温かく迎え入れてくれるはずです。

もしもの時のために|保険と緊急連絡先

どんなに注意していても、予期せぬトラブルが起こる可能性はゼロではありません。機械の故障、急な突風、操縦ミス。そうした「もしも」の事態に備えておくことも、責任あるドローンパイロットの務めです。

ドローン保険の重要性

台湾の法律では、政府機関や法人などがドローンを飛行させる際には、第三者賠償責任保険への加入が義務付けられています。私たち個人の旅行者には現時点で加入義務はありませんが、それでも、保険への加入を強く、強く推奨します

考えてみてください。もしドローンがコントロールを失い、走行中の高級車にぶつかってしまったら? 観光客に当たって怪我をさせてしまったら? その損害賠償額は、楽しい旅行の思い出を吹き飛ばすにはあまりにも大きなものになりかねません。言葉の通じない海外での示談交渉は、精神的にも金銭的にも大変な負担となります。

日本で加入できるドローン保険の中には、海外での事故を補償対象に含むものがあります。また、クレジットカードに付帯している海外旅行保険や、別途加入する海外旅行保険の特約で、個人賠償責任の範囲がドローン事故にも適用される場合があります。

出発前に、ご自身が加入している保険の契約内容を必ず確認し、もし台湾でのドローン事故が補償対象外であるならば、追加で加入することを真剣に検討してください。月々数千円の保険料を惜しんだために、数百万、数千万円の賠償責任を負うリスクを考えれば、どちらが賢明な選択かは明らかです。安心という名の保険は、最高のフライトを支える見えない翼なのです。

緊急時の連絡先リスト

万が一の事故やトラブル、あるいは法的な問題に巻き込まれてしまった場合に備え、以下の連絡先をスマートフォンの連絡先に登録したり、メモに書き出してパスポートと一緒に携行したりしておくと安心です。

  • 警察:110

事件・事故の緊急通報番号です。日本と同じ番号なので覚えやすいですが、こちらは警察への通報専用です。

  • 救急・消防:119

火災や、急病人、怪我人が出た場合の通報番号です。こちらも日本と同じです。

  • 交通部民用航空局 (CAA)

ドローンに関する法規制の管轄官庁です。重大な違反や規則に関する問い合わせはこちらになりますが、緊急時の第一報はまず警察にすべきでしょう。 ウェブサイト: https://www.caa.gov.tw/

  • 日本台湾交流協会 台北事務所

台湾における日本の事実上の大使館として機能している機関です。パスポートの紛失や、事件・事故に巻き込まれた邦人の援護活動を行っています。ドローン飛行に関する法的なトラブルで、どうしてよいか分からなくなった場合の相談先として、非常に心強い存在です。 電話番号: +886-2-2713-8000 ウェブサイト: https://www.koryu.or.jp/

備えあれば憂いなし。これらの情報が、あなたの旅のお守りとなることを願っています。

台湾のおすすめドローン撮影スポット(許可取得を前提に)

法律やルールを学んできましたが、やはり気になるのは「じゃあ、具体的にどこでなら美しい映像が撮れるの?」ということでしょう。ここでは、台北のような大都市を離れ、ルールを守り、安全を確保しやすい、比較的開けた場所をいくつかご紹介します。ただし、これらの場所であってもフライト前には必ず「Drone Map」で最新の情報を確認することが絶対条件です。

花東海岸公路(台11線)沿いの海岸線

台湾の東側、花蓮から台東へと続く海岸線は、「花東海岸」と呼ばれ、太平洋の荒波が作り出したダイナミックな風景が続きます。この海岸線に沿って走る省道「台11線」沿いには、広々とした駐車スペースや展望台が点在しており、比較的安全にドローンを離着陸させやすい場所を見つけることができます。果てしなく続く青い海と、切り立った断崖のコントラストは、空撮の格好の被写体です。ただし、このエリアには軍の施設も点在しているため、「Drone Map」での赤エリアの確認は必須です。また、有名な「清水断崖」は太魯閣国立公園の範囲内ですので、特別な許可なく飛行させることはできません。その手前のエリアを狙うなど、工夫が必要です。

墾丁(ケンティン)の南国風景

台湾最南端に位置する墾丁は、美しい砂浜とサンゴ礁の海が広がるリゾート地です。墾丁国家公園の厳格な管理区域を避け、その周辺のエリアであれば、比較的自由に飛行させられる場所が見つかります。例えば、「龍磐公園」の草原から見下ろす断崖絶壁の海岸線は圧巻ですが、その名の通り非常に風が強いことで有名です。ドローンの性能とご自身の技量を過信せず、風の穏やかな日を選んで挑戦しましょう。観光客で賑わう白砂のビーチ「南湾」などの上空は、人との距離を保つルール上、飛行は避けるべきです。少し離れた、人の少ない海岸線を探してみましょう。

日月潭(にちげつたん)

台湾のほぼ中央に位置する台湾最大の湖、日月潭。エメラルドグリーンの湖面に周囲の山々が映り込む幻想的な風景は、多くの人々を魅了します。ここは「日月潭国家風景区」の管轄下にあり、ドローンを飛行させるには事前の確認や、場合によっては管理事務所への申請が必要になることがあります。湖上は開けていますが、観光客を乗せた遊覧船が頻繁に行き交い、湖を横断するロープウェイも運行されています。これらの航路や運行ルートには絶対にドローンを近づけてはなりません。湖畔のサイクリングロードなどから、安全な範囲で、静かな湖面の美しさを切り取るのが良いでしょう。

高美湿地(ガオメイしっち)

台中の西海岸に広がる高美湿地は、「台湾のウユニ塩湖」とも称される絶景スポットです。特に干潮時の日没には、水面が鏡のように空を映し出し、幻想的な世界が広がります。しかし、この場所は渡り鳥の重要な生息地である鳥類保護区に指定されており、また、沖合には巨大な風力発電の風車が林立しています。ドローンの飛行には細心の注意が必要で、管理されている木道の上から、野鳥の生態系を乱さないよう、また風車に近づきすぎないよう、許可された範囲を厳密に守る必要があります。事前に現地のルールをしっかりと確認してから訪れましょう。

これらのスポットは、あくまで一例です。台湾には、まだ知られていない美しい風景が数多く眠っています。あなただけの空撮ポイントを、「Drone Map」と安全ルールを羅針盤にして、探してみてはいかがでしょうか。

法律違反のリスクと罰則

ここまで、台湾でのドローン飛行に関するルールを詳しく解説してきましたが、最後に、これらのルールを破ってしまった場合に何が起こるのかについて、きちんと理解しておく必要があります。これは決して皆さんを脅すためではなく、安全な旅を守るために知っておくべき大切な情報です。

台湾の民用航空法では、ドローンに関する違反行為に対して、非常に厳しい罰則が定められています。

例えば、

  • 登録が必要なドローンを無登録で飛行させた場合
  • 飛行が禁止されている赤エリア(空港周辺、政府機関、軍事施設など)で飛行させた場合
  • 許可なく夜間飛行や目視外飛行、高度120mを超えて飛行させた場合
  • 群衆の上空で飛行させた場合

これらの重大な違反行為に対しては、30万台湾ドル(約140万円)以上、150万台湾ドル(約700万円)以下という、極めて高額な罰金が科される可能性があります。(為替レートは変動します)

また、上記以外の、例えば緑エリアでの高度制限違反や、人や建物との距離を保たなかったといった比較的軽微な違反であっても、3万台湾ドル(約14万円)以上、15万台湾ドル(約70万円)以下の罰金が科される可能性があります。

罰金だけでなく、違反に使用されたドローンはその場で没収されることもあります。そして、事案が悪質であると判断された場合には、台湾からの国外退去処分となり、将来の再入国が困難になる可能性も否定できません。

「少しだけなら大丈夫だろう」「誰も見ていないから」

そんな軽い気持ちが、取り返しのつかない事態を招き、楽しかったはずの台湾旅行を悪夢に変えてしまうのです。特に、言葉が不自由な外国で法的なトラブルに巻き込まれることの精神的な負担は、計り知れません。

罰則が厳しいのは、それだけ台湾がドローンの安全な運用を重視している証拠です。私たちは、その土地の法律を尊重し、定められたルールの中で楽しむという、旅人としての基本的なマナーを忘れてはなりません。

台湾の空と、共に旅するということ

台湾でのドローン飛行に関する長い旅路に、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。手続きの多さや規則の細かさに、少しだけ気後れしてしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、どうか忘れないでください。これらのルールは、台湾という国が大切に守ってきたもの―国民の安全な暮らし、穏やかな日常、そして手つかずの雄大な自然―を、これからも未来へと引き継いでいくための、大切な約束事なのです。ドローンという新しい翼を手にした私たちは、その翼が時として誰かを傷つけたり、何かを壊したりする力も持っていることを、深く自覚する必要があります。

ドローン撮影は、単に美しい映像や写真を撮るという行為以上の意味を持っています。それは、その国の文化や社会を尊重し、ルールという見えないインフラに敬意を払う、知的な旅のスタイルです。一つひとつの手続きを丁寧に行い、飛行エリアを慎重に確認し、安全への配慮を怠らない。そのプロセスそのものが、旅をより深く、思慮深いものへと変えてくれるはずです。

しっかりと準備を重ね、ルールという名の航路を守って飛ぶならば、台湾の空は、きっとあなたを歓迎してくれるでしょう。眼下に広がる緑豊かな山々、どこまでも続く青い海、活気に満ちた人々の営み。鳥の視点で眺めるその風景は、きっとあなたの心に、生涯忘れられない感動を刻み込むに違いありません。

さあ、次はあなたの番です。このガイドを片手に、ゆとりある大人の知恵とマナーを持って、台湾の素晴らしい空へと、どうぞ素晴らしいフライトを。

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この記事を書いたトラベルライター

子育てひと段落。今は夫と2人で「暮らすように旅する」を実践中。ヨーロッパでのんびり滞在しながら、シニアにも優しい旅情報を綴ってます。

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