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    タイの空を制する者は旅を制す!ドローン飛行完全ガイド【2024年最新版】

    息を呑むほど美しいエメラルドグリーンの海、荘厳な空気に包まれた古代遺跡、そして活気あふれる大都市の摩天楼。微笑みの国、タイが持つ多彩な魅力は、いつの時代も世界中の旅人を惹きつけてやみません。もし、その誰もが見上げる絶景を、鳥の視点から独り占めできるとしたら…あなたのタイ旅行は、きっと忘れられない特別な体験へと昇華するはずです。

    そう、ドローンと共に旅をする。それは、単なる記念撮影を超えた、新たな旅のスタイル。しかし、その翼を自由に広げるためには、タイの空が定めるルールを深く理解し、尊重することが不可欠です。規制を知らずにドローンを飛ばしてしまい、高額な罰金や機材の没収といった思わぬトラブルに見舞われるケースも後を絶ちません。

    この記事は、あなたがタイの空を安全かつ合法的に楽しむための、まさに「完全ガイド」です。複雑に思える登録手続きのステップから、知っておくべき飛行ルール、そして思わず息を呑むような絶景空撮スポットまで、旅サイトのプロライターである私が、どこよりも詳しく、そして情熱を込めて解説します。さあ、準備はいいですか? あなたの知らないタイの絶景が、空の上で待っています。

    目次

    なぜ今、タイでドローンなのか? 空から見る微笑みの国の新たな魅力

    なぜ、世界中に数ある絶景スポットの中から、多くのドローンパイロットがタイを目指すのでしょうか。その理由は、タイが持つ圧倒的な被写体としてのポテンシャルの高さにあります。地上から眺めるだけでも十分に美しい景色が、空からの視点を加えることで、想像を絶するほどのスペクタクルへと変貌を遂げるのです。

    多彩な表情を持つ、空撮の楽園

    南部に行けば、プーケットやクラビ、サムイ島といった世界屈指のリゾートが広がります。真っ白な砂浜と、どこまでも透き通るアンダマン海のコントラスト。石灰岩が海から突き出すパンガー湾の奇観は、まるで幻想的な水墨画の世界。ドローンを上昇させれば、地上からは見ることのできない隠れた入り江や、サンゴ礁の美しいグラデーションが眼下に広がり、その映像は見る者すべてを虜にする力を持っています。

    北部に目を向ければ、チェンマイやチェンライを中心とした緑豊かな山岳地帯が待っています。霧が立ち込める早朝、山々の稜線をなぞるようにドローンを飛ばせば、幻想的な雲海の映像を捉えることができるかもしれません。延々と続く棚田のカーブ、山間にひっそりと佇む黄金の仏塔。その雄大かつ静謐な風景は、南国のビーチとはまた違った、タイの奥深い魅力を教えてくれます。

    そして、忘れてはならないのが、アユタヤやスコータイといった古代王朝の遺跡群です。苔むした仏塔、崩れかけた王宮の壁。ドローンは、歴史の重みが刻まれた広大な遺跡の全体像を、一枚の絵画のように切り取ってくれます。地上を歩くだけでは決して感じることのできない、文明の栄枯盛衰という壮大な物語を、空からの視点は雄弁に語りかけてくるのです。

    旅の記憶を、作品へと昇華させる力

    ドローンがもたらすのは、単に美しい景色だけではありません。それは、あなたの旅の記憶そのものを、より鮮烈で、よりパーソナルな「作品」へと昇華させる魔法のツールです。

    友人とボートをチャーターして無人島へ向かう。その航跡をドローンで追いかければ、それはもうハリウッド映画のワンシーン。ホテルのプールサイドでくつろぐ恋人の姿を、ゆっくりと上昇しながら撮影すれば、それは感動的なミュージックビデオの冒頭になるでしょう。

    これまで写真やビデオに収めてきた旅の断片的な記憶が、ドローン空撮によって一つの壮大な物語として紡がれていく。帰国後、その映像を見返したときに蘇る感動は、きっとこれまでとは比較にならないほど深いものになるはずです。SNSでシェアすれば、あなたのフォロワーは、あなたが体験した感動を、まるで追体験するかのように感じることでしょう。

    タイという国が持つ色彩、光、そして空気感。それらすべてを余すことなく捉え、あなたの旅を唯一無二の体験へと変える力。それこそが、今、私たちがタイでドローンを飛ばすべき、最大の理由なのです。

    タイでドローンを飛ばすための【絶対条件】登録と許可申請の全ステップ

    タイの空が提供してくれる素晴らしい体験。しかし、その翼を手に入れるためには、必ず踏まなければならない法的な手続きが存在します。これを怠ることは、楽しいはずの旅を悪夢に変えかねません。「知らなかった」では済まされない、厳格なルール。しかし、安心してください。一つ一つのステップを順番に、そして丁寧に進めていけば、決して難しいものではありません。

    ここでは、タイでドローンを飛ばすために必須となる2つの機関への登録、そして忘れてはならない保険加入について、具体的かつ詳細に解説していきます。あなたのタイでのドローン飛行は、ここから始まります。

    ステップ1:CAAT(タイ民間航空局)へのドローン登録

    タイでドローンを飛ばすすべてのパイロットが、まず最初に向き合うのがCAAT (The Civil Aviation Authority of Thailand / タイ民間航空局)への機体登録です。これは、タイの空の安全を司る機関であり、ここへの登録なくして飛行させることは法律で固く禁じられています。

    登録が必要なドローン

    現在、タイの法律では、以下のいずれかに該当するドローンはCAATへの登録が義務付けられています。

    • カメラを搭載しているすべてのドローン(重量問わず)
    • 重量が2kgを超えるすべてのドローン(カメラの有無を問わず)

    つまり、現在市販されている一般的な空撮用ドローンは、そのほとんどが登録対象となると考えて間違いありません。DJI Miniシリーズのような軽量な機体であっても、カメラが搭載されている以上、登録は必須です。この点を「軽いから大丈夫だろう」と安易に考えないでください。

    オンラインでの登録プロセス

    幸いなことに、CAATへの登録はオンラインで完結させることが可能です。旅行者がタイに到着してから手続きをするのではなく、必ず日本にいる間に、出発の1ヶ月前、できればそれ以上の余裕を持って申請を開始することを強く推奨します。

    登録はCAATのUAV登録サイトから行います。サイトはタイ語と英語に対応していますので、ブラウザの翻訳機能などを活用しながら進めていきましょう。

    CAAT (The Civil Aviation Authority of Thailand) Drone Registration

    大まかな流れは以下の通りです。

    • アカウントの作成: まずは自身のメールアドレスとパスワードを設定し、アカウントを作成します。
    • 個人情報の入力: 操縦者(あなた自身)の情報を入力します。パスポートに記載されている通りの氏名、国籍、生年月日、パスポート番号などを正確に入力してください。
    • ドローン情報の入力: 次に、登録するドローンの情報を入力します。メーカー名(例: DJI)、モデル名(例: Mavic 3 Pro)、そして最も重要なシリアルナンバーを入力します。シリアルナンバーは機体本体や送信機、購入時の箱などに記載されていますので、絶対に間違えないように確認しましょう。
    • 必要書類のアップロード: これが最も重要なパートです。以下の書類をスキャンまたは写真に撮り、デジタルデータとして準備しておく必要があります。
    • パスポートの顔写真ページ: 鮮明に読み取れるもの。
    • パスポートのタイ入国スタンプが押されたページ: これはタイ入国後にしか準備できないため、申請の段階では出発予定の航空券の予約確認書(eチケット)などを代わりにアップロードすることが一般的です。
    • 申請者本人の署名が入った宣誓書(Self-Declaration Form): CAATのサイトからダウンロードできる所定のフォームに、タイのドローン規制を遵守することを誓う署名をし、スキャンします。
    • ドローンの写真: 機体全体が写っており、特にシリアルナンバーがはっきりと読み取れる写真が必要です。機体本体のシリアルナンバー部分を接写したものと、機体全体の写真の2枚を用意すると確実です。
    • ドローンの所有を証明する書類: 購入時の領収書や納品書など。英語表記のものが望ましいですが、日本語のものでも受理されることが多いようです。
    • タイでの滞在先を証明する書類: ホテルの予約確認書など、住所と滞在期間がわかるもの。

    すべての情報を入力し、書類をアップロードしたら申請は完了です。その後、CAATの担当者による審査が行われます。書類に不備があればメールで連絡が来ますので、迅速に対応しましょう。無事に審査が通ると、登録許可証がPDF形式で発行されます。この許可証は必ず印刷して、スマートフォンなどにもデータを保存し、タイ滞在中は常に携帯するようにしてください。

    ステップ2:NBTC(国家放送通信委員会)への周波数登録

    CAATへの登録が「航空法」に基づくものであるのに対し、次に行うのがNBTC (The National Broadcasting and Telecommunications Commission / 国家放送通信委員会)への登録です。これは、ドローンが使用する電波(周波数)に関する「電波法」に基づく手続きであり、CAATとは全く別の独立した登録となります。こちらも忘れずに行わなければなりません。

    なぜ二つの登録が必要なのか

    少し複雑に感じるかもしれませんが、CAATが「空を飛ぶ物体」としてのドローンを管理するのに対し、NBTCは「電波を発する機器」としてのドローンを管理している、と考えると分かりやすいでしょう。日本のドローン規制でも、航空法と電波法の両方を遵守する必要があるのと同じ考え方です。ドローンと送信機(プロポ)は無線通信によって接続されているため、その電波がタイの法律で許可されたものであることを登録する必要があるのです。

    NBTCへの登録プロセス

    NBTCへの登録も、基本的にはオンラインで行うことができます。しかし、こちらはタイ国内のNBTC事務所に直接出向いて手続きを行う方法も存在します。旅行者にとってはオンラインで済ませるのが現実的でしょう。

    NBTC (The National Broadcasting and Telecommunications Commission)

    NBTCの登録プロセスも、CAATと同様にアカウントを作成し、個人情報とドローン情報を入力していく形になります。

    • 必要書類の準備: CAATの登録で準備した書類と重複するものが多いですが、改めて確認しましょう。
    • パスポートのコピー
    • CAATへの登録申請中であることを証明する書類: CAATの申請画面のスクリーンショットなどで良い場合が多いです。
    • ドローンのシリアルナンバーがわかる写真
    • 送信機(プロポ)のシリアルナンバーがわかる写真
    • ドローンの技術仕様書(スペックシート): 使用する周波数帯(例: 2.4 GHz, 5.8 GHz)が記載されている部分が必要です。メーカーの公式サイトなどからダウンロードできます。

    NBTCの審査も数週間かかることがあります。CAATとNBTC、両方の申請を並行して、できるだけ早い段階で進めることが重要です。無事に承認されると、こちらも許可証が発行されます。これで、あなたのドローンはタイの空を飛ぶための法的な翼を二つとも手に入れたことになります。

    ドローン保険への加入は必須!

    登録手続きと並行して、絶対に忘れてはならないのが第三者賠償責任保険への加入です。タイでは、ドローンを飛行させる際に、万が一の事故(人への危害、物への損害)に備えるための保険加入が法律で義務付けられています。

    補償額の要件

    タイの法律で定められている最低補償額は、100万タイバーツ以上です。日本円に換算すると約400万円以上(為替レートにより変動)となります。この補償額を満たす保険に加入していることが、CAATの登録許可を得るための条件の一つにもなっています。

    保険の選び方

    日本国内でドローン保険に加入している方も多いと思いますが、その保険が「海外での飛行」をカバーしているか、そして「英文の付保証明書」を発行してもらえるかを必ず確認してください。タイでの手続きや、万が一の際に当局へ提示を求められた場合、日本語の保険証書では通用しません。

    もし現在加入している保険が海外に対応していない場合や、英文証明書の発行ができない場合は、海外でのドローン飛行に対応した保険に新たに入る必要があります。最近では、旅行者向けのドローン保険プランを提供している保険会社も増えてきていますので、インターネットで検索してみましょう。「ドローン保険 海外 英文証明書」といったキーワードで探すと、適切なプランが見つかるはずです。

    この保険証書も、CAATやNBTCの許可証と同様に、常に携帯しておくべき最重要書類の一つです。万が一の事故の際にあなた自身を守るだけでなく、タイの法律を遵守している誠実なパイロットであることの証明にもなります。

    知らないと罰金も? タイのドローン飛行ルール徹底解説

    無事にCAATとNBTCへの登録を終え、保険にも加入した。これでようやく、タイの空へドローンを羽ばたかせることができます。しかし、その前に、現地の飛行ルールを完璧に理解しておく必要があります。許可を得たからといって、どこでも、いつでも自由に飛ばせるわけではありません。タイの空には、安全とプライバシー、そして国家の尊厳を守るための厳格なルールが存在します。

    これらのルールを破った場合、最大で1年の懲役または4万バーツ(約16万円)の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。一度の油断が、楽しい旅行を台無しにしてしまうのです。ここでは、必ず守るべき基本的なルールと、特に注意が必要なエリアについて詳しく見ていきましょう。

    基本的な飛行ルール(DOs & DON’Ts)

    タイ民間航空局(CAAT)は、ドローン操縦者が遵守すべき基本的なルールを明確に定めています。これらは世界の多くの国で採用されている標準的なルールと共通する部分も多いですが、タイ独自の規定も含まれているため、改めて頭に叩き込んでおきましょう。

    • 飛行高度は地上から90メートル(約300フィート)未満を維持すること
    • これは最も基本的なルールの一つです。航空機の航路との干渉を避けるための重要な規定です。高層ビルが立ち並ぶバンコクなどでは、ビルの屋上よりも低く飛ばなければならないケースも多々あります。常に高度を意識しましょう。
    • 常にドローンを目視できる範囲内で飛行させること(目視外飛行の禁止)
    • いわゆるFPV(First Person View)ゴーグルを使用した、機体が見えない状態での飛行は禁止されています。操縦者は常に自分の目でドローンの位置と姿勢を把握し、周囲の状況を確認しながら飛行させなければなりません。
    • 日の出から日没までの時間帯にのみ飛行させること(夜間飛行の禁止)
    • 都市の夜景やライトアップされた寺院を空撮したいという気持ちはわかりますが、タイでは原則として夜間のドローン飛行は許可されていません。特別な許可がない限り、太陽が沈んだらドローンも地上に戻しましょう。
    • 人、車両、建物から常に安全な距離を保つこと
    • 具体的な距離として「水平距離で30メートル以上」という目安が示されています。特に観光地では、他の観光客の頭上を飛行させるような行為は絶対にあってはなりません。プライバシーの侵害だけでなく、万が一の落下事故のリスクを常に考慮してください。
    • 飛行禁止区域に絶対に侵入しないこと
    • これも極めて重要なルールです。タイには安全保障やプライバシー保護の観点から、ドローンの飛行が固く禁じられている場所が多数存在します。これらのエリアに誤って侵入すると、非常に厳しい罰則を受ける可能性があります。

    主な飛行禁止区域

    • 空港や飛行場の周辺: 半径9km以内は原則飛行禁止です。航空機の安全運航を妨げる最も危険な行為とみなされます。
    • 王宮、王室関連の施設: 国王や王室への敬意から、これらの施設の上空および周辺は絶対的な飛行禁止区域です。
    • 政府機関、軍事施設、警察署など:国の重要施設であり、安全保障上の理由から飛行は許可されません。
    • 病院、学校: 人々の平穏を妨げる可能性があるため、これらの施設の周辺での飛行は避けるべきです。
    • 個人宅の上空: 他人のプライバシーを侵害する行為は厳禁です。

    飛行前には、必ずドローンメーカーが提供する公式アプリ(DJI Flyなど)のマップを確認し、自分がいる場所が飛行制限エリアに含まれていないかをチェックする習慣をつけましょう。

    特に注意が必要なエリアとケース

    上記の基本的なルールに加え、特定の場所や状況においては、さらに特別な注意や追加の許可が必要となる場合があります。

    国立公園内での飛行

    タイには美しい国立公園が数多く存在しますが、これらのエリアでドローンを飛ばすには、CAATやNBTCの許可とは別に、国立公園・野生動物・植物保全局(DNP)からの特別な許可が必要となる場合があります。公園内の生態系や野生動物、他の観光客への配慮が求められるためです。

    もし国立公園内で空撮を計画している場合は、事前に訪問予定の公園管理事務所に問い合わせ、ドローン飛行の可否や手続きについて確認することが不可欠です。無許可での飛行は、自然保護法違反として罰せられる可能性があります。

    遺跡公園(アユタヤ、スコータイなど)での飛行

    アユタヤ歴史公園やスコータイ歴史公園のような世界遺産に登録されている場所では、遺跡保護の観点からドローンの飛行が厳しく制限されています。これらの場所で空撮を行うには、遺跡を管理する芸術局(Fine Arts Department)から特別な撮影許可を取得する必要があります。この許可を得るプロセスは複雑で時間もかかるため、一般的な観光客が個人で取得するのは非常に難しいのが実情です。

    遺跡のすぐそばで安易にドローンを飛ばすことは、文化財保護法に抵触する重大な違反行為です。遠くから遺跡を背景に撮影する場合でも、敷地内やその周辺での飛行には細心の注意を払い、現地の規則を最優先してください。

    イベントやお祭り、人が密集する場所での飛行

    ソンクラーン(水かけ祭り)のような多くの人々で賑わうイベント会場や、人でごった返す市場の上空でドローンを飛ばすことは、安全上の観点から原則として禁止されています。群衆の上空は絶対に飛行させてはいけません。事故のリスクが極めて高いだけでなく、多くの人々に不安や不快感を与える行為です。

    離島やビーチでの飛行

    多くの人がドローンを飛ばしたいと考えるであろう美しいビーチ。ここでも注意が必要です。プライベートビーチとされている場所では、その土地の所有者や管理者の許可なく飛行させることはできません。また、多くの観光客がリラックスしている場所で、頭上近くをブーンという音を立ててドローンが飛び回るのは、決して気持ちの良いものではありません。

    ビーチで飛ばす際は、周囲に人がいない早朝の時間帯を選ぶ、他の人から十分に離れた場所から離着陸を行うなど、最大限の配慮を心がけましょう。あなたの素晴らしい空撮体験は、他の人の迷惑の上に成り立つべきではないのです。

    これらのルールを守ることは、単に罰則を避けるためだけではありません。それは、タイの文化、自然、そして人々への敬意を示す行為であり、ドローンパイロットとしての最低限のマナーです。ルールを正しく理解し、責任ある飛行を心がけることこそが、最高の空撮体験への近道となるのです。

    【エリア別】タイのおすすめドローン空撮スポット

    さあ、タイの空のルールをマスターしたあなたへ。いよいよ、その翼を広げるべき絶景スポットをご紹介します。タイは北から南まで、ドローンパイロットの創作意欲を掻き立てる、多様な魅力に満ち溢れています。ここでは、エリアの特性とともに、空撮のヒントや注意点を交えながら、選りすぐりのロケーションを見ていきましょう。

    ただし、ここで紹介するスポットが常に飛行可能であることを保証するものではありません。前述の通り、国立公園の規制や地域の条例は変更される可能性があります。必ず現地で最新の情報を確認し、安全とルールを最優先してください。

    南部リゾートエリア(プーケット、クラビ、サムイ島など)

    タイと聞いて多くの人が思い浮かべる、あの楽園の風景が広がるエリアです。ドローン空撮の醍醐味を存分に味わえる、まさに王道のロケーションと言えるでしょう。

    パンガー湾(プーケット・クラビ)

    「海の桂林」とも称されるこの場所は、石灰岩の奇岩がエメラルドグリーンの海面から無数に突き出す、圧巻の景観を誇ります。特に有名なのが、映画『007 黄金銃を持つ男』のロケ地となった「ジェームズ・ボンド島(タプー島)」。シーカヤックやロングテールボートが行き交う中、奇岩群を縫うようにドローンを飛ばせば、他では決して撮ることのできない、ダイナミックで神秘的な映像が手に入ります。ボートをチャーターし、船上から離着陸を行う際は、船の揺れや障害物に細心の注意を払ってください。ハンドキャッチ、ハンドリリースに習熟しておくと安心です。

    ライレイ・ビーチ(クラビ)

    陸路ではアクセスできず、ボートでしか行けない秘境感あふれるビーチ。切り立った巨大な石灰岩の崖に囲まれており、ロッククライミングの聖地としても知られています。ドローンをゆっくりと上昇させ、この独特な地形の全貌を捉えた映像は、まさに圧巻の一言。夕暮れ時、オレンジ色に染まる空と崖のシルエット、そして静かなビーチのコントラストは、最高の作品を生み出してくれるはずです。

    ピピ諸島

    レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ザ・ビーチ』の舞台として一躍有名になったマヤベイをはじめ、大小の島々からなるピピ諸島。驚異的な透明度を誇る海と、熱帯の緑に覆われた島々の姿は、上空から見るとまるで宝石のようです。特に、二つの湾が美しい曲線を描くピピ・ドン島のビューポイントからの眺めは、ドローンで撮影することでそのスケール感を余すところなく表現できます。ただし、非常に人気の観光地であるため、他の観光客やツアーボートへの配慮は絶対に忘れないでください。

    北部山岳エリア(チェンマイ、チェンライなど)

    海の青とは対照的な、深い緑に包まれたタイのもう一つの顔。静かで、どこかスピリチュアルな雰囲気漂うこのエリアは、心に響く映像を求めるパイロットに最適です。

    ドイ・インタノン国立公園(チェンマイ)

    「タイの屋根」と呼ばれるタイ最高峰の山。緑豊かな森林、壮大な滝、そして山頂付近に建てられた美しい二つの仏塔(王と王妃の記念塔)が主な被写体となります。特に雨季明けの涼しい季節には、眼下に広がる見事な雲海に出会えるチャンスも。ただし、前述の通り国立公園内での飛行にはDNPの許可が必要となる可能性が高いため、事前の確認が必須です。また、山頂付近は天候が急変しやすいため、風速やバッテリー残量には常に気を配りましょう。

    棚田の風景(メーチェム、パーポーンピアンなど)

    チェンマイ郊外には、山々の斜面に広がる美しい棚田の風景が点在しています。特に田植えの時期(例年5月~7月頃)には、棚田に張られた水が鏡のように空を映し出し、幻想的な光景が広がります。稲が青々と育つ夏、黄金色に輝く収穫期と、訪れる季節によって全く異なる表情を見せてくれるのも魅力。ドローンでゆっくりと旋回しながら、等高線に沿って描かれる棚田の美しいカーブを捉えてみてください。

    ワット・ロンスアテン(ブルーテンプル、チェンライ)

    チェンライには「白い寺(ワット・ロンクン)」や「黒い家(バーン・ダム)」など個性的な寺院建築が多いですが、ドローン空撮との相性で言えば、この「青い寺」は外せません。寺院全体が鮮やかなウルトラマリンブルーで彩られており、その色彩のインパクトは上空から見るとさらに際立ちます。寺院の緻密な装飾と、周囲の風景とのコントラストを意識して撮影すると、非常に印象的な作品に仕上がるでしょう。もちろん、寺院は神聖な場所です。敷地内で飛行させる場合は、必ず事前に寺院関係者の許可を得てください。

    中部・歴史遺産エリア(アユタヤ、スコータイなど)

    タイが誇る二大世界遺産。かつての王国の栄華を物語る壮大な遺跡群は、ドローンパイロットにとって最高の被写体の一つですが、同時に最も厳しい規制が敷かれているエリアでもあります。

    アユタヤ歴史公園

    チャオプラヤー川とその支流に囲まれた、かつてのアユタヤ王朝の首都。木の根に取り込まれた仏頭で有名な「ワット・マハタート」や、巨大な涅槃像がある「ワット・ロカヤスタ」など、見どころが広範囲に点在しています。ドローンを使えば、これらの遺跡群と、それを取り巻く現代の街並みとの対比を一つのフレームに収めることができ、歴史の悠久の流れを感じさせる映像を撮影できます。しかし、繰り返しになりますが、遺跡公園内での無許可のドローン飛行は法律で固く禁じられています。芸術局からの正式な許可なしに、安易に飛ばすことは絶対にやめてください。撮影を希望する場合は、プロのコーディネーター等を通じて、正規のルートで申請を行う必要があります。

    スコータイ歴史公園

    タイ族による最初の王朝が築かれた場所。アユタヤよりもさらに古い歴史を持ち、クメール様式の影響を受けた美しい仏塔や仏像が、穏やかな公園の中に点在しています。特に、池に映る寺院の姿は幻想的です。こちらもアユタヤと同様、遺跡保護のために厳しい飛行制限があります。個人旅行者が気軽に飛ばせる場所ではないことを、強く認識しておきましょう。

    首都バンコクとその近郊

    近代的な高層ビルが林立し、その間を縫うようにチャオプラヤー川が流れる大都市バンコク。そのダイナミックな景観は魅力的ですが、ドローン飛行にとってはタイで最も難易度の高いエリアと言えます。

    チャオプラヤー川沿いの風景

    高層ホテルのルーフトップバーから眺める夜景は格別ですが、日中の川沿いの風景もまた魅力的です。高層ビル群、黄金に輝く寺院の屋根、そして水上バスや貨物船が行き交う川の流れ。これらを組み合わせて撮影できれば、バンコクの混沌としたエネルギーを表現できるでしょう。しかし、バンコク都心部は人口密集地であり、政府機関や王室関連施設も多いため、飛行禁止・制限エリアが網の目のように設定されています。飛行可能な場所は極めて限定的です。事前に飛行エリアを厳密に調査し、許可取りのハードルも非常に高いことを覚悟しておく必要があります。

    タイの空は、ルールを守る誠実なパイロットには、最高の景色で応えてくれます。あなたの次の旅の計画に、これらの絶景を空から眺めるという、新たな視点を加えてみてはいかがでしょうか。

    トラブル回避術! よくある質問と現地での心構え

    どれだけ入念に準備をしても、慣れない海外でのドローン飛行には不安がつきものです。ここでは、多くの人が疑問に思う点や、万が一の際にどう対処すればよいかなど、実践的なトラブル回避術と心構えについて解説します。安心してタイの空を楽しむために、ぜひ最後まで読み進めてください。

    登録・許可なしで飛ばしたらどうなる?

    これは絶対に避けなければならない最悪のシナリオですが、そのリスクを正しく理解しておくことは、ルール遵守の強い動機付けになります。タイにおいて、CAATやNBTCへの登録を怠ったまま無許可でドローンを飛行させた場合、以下の厳しい罰則が科される可能性があります。

    • CAAT(航空法)違反: 最大で1年の懲役、または最大4万バーツ(約16万円)の罰金、あるいはその両方。
    • NBTC(電波法)違反: 最大で5年の懲役、または最大10万バーツ(約40万円)の罰金、あるいはその両方。

    「見つからなければ大丈夫」という考えは非常に危険です。特に人気の観光地では、警察官や警備員が常に目を光らせています。また、他の観光客や地元住民からの通報によって発覚するケースも少なくありません。罰金や懲役だけでなく、高価なドローン機材もその場で没収されます。ほんの数分のフライトのために、これほど大きなリスクを冒す価値は全くありません。正規の手続きを踏むことが、あなたの安全と財産、そして大切な旅行を守る唯一の方法です。

    Thailand Business Newsの記事でも、これらの罰則について詳しく報じられています。

    登録手続きはどれくらいかかる?旅行前に間に合わせるには?

    CAATおよびNBTCへの登録手続きにかかる時間は、申請の混雑状況や書類に不備がないかによって大きく変動しますが、一般的には申請から承認まで数週間から1ヶ月以上かかると考えておくのが安全です。書類の不備で差し戻しになれば、さらに時間はかかります。

    旅行前に確実に許可証を手に入れるためには、出発の最低でも2ヶ月前には申請を開始することを強くお勧めします。航空券やホテルを予約したら、すぐにでもドローンの登録準備に取り掛かるくらいのスケジュール感が理想です。ギリギリになって慌てないよう、余裕を持った計画を立てましょう。特に、タイの祝祭日や長期休暇の期間は、行政機関の審査が遅れる傾向にあるため、さらに注意が必要です。

    英語が苦手でも手続きできる?

    CAATやNBTCのオンライン申請サイトは英語表記が基本となるため、英語が苦手な方にとっては少しハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、諦める必要はありません。

    まずは、Google Chromeなどのウェブブラウザに搭載されている自動翻訳機能を活用しましょう。完璧な日本語にはなりませんが、入力すべき項目の意味を大まかに理解するには十分役立ちます。

    また、事前にインターネットで「タイ ドローン 登録 方法」などと検索すると、実際に登録を済ませた先人たちが、スクリーンショット付きで手順を詳しく解説してくれているブログ記事などが多数見つかります。それらの記事を参考にしながら、一つ一つの項目を丁寧に入力していけば、独力での申請も十分に可能です。焦らず、一つずつ確認しながら進めることが成功の鍵です。

    どうしても自分での申請に不安がある場合は、登録代行サービスを利用するという選択肢もあります。ただし、手数料がかかる上に、個人情報を預けることになるため、信頼できる業者を慎重に選ぶ必要があります。

    現地で警察官や警備員に声をかけられたら?

    タイでドローンを飛ばしていると、特に観光地などでは、警察官や公園の警備員などから声をかけられることがあります。これは、彼らが職務として安全確認を行っているだけであり、あなたがルールを守っていれば、何も恐れる必要はありません。パニックにならず、冷静に対応しましょう。

    • すぐに飛行を中止し、ドローンを着陸させる: 指示に従う姿勢を見せることが重要です。
    • 笑顔で挨拶し、相手の指示を聞く: 高圧的な態度は禁物です。「サワディーカーップ(こんにちは)」と笑顔で挨拶しましょう。
    • すぐに書類を提示する: ここで、準備してきた書類が力を発揮します。印刷しておいた「CAATの登録許可証」「NBTCの登録許可証」「英文の保険証書」、そして「パスポート」の4点セットをすぐに見せられるように、一つのファイルにまとめて携帯しておくと非常にスムーズです。
    • 言葉が通じない場合: スマートフォンの翻訳アプリなどを活用し、誠実に対話しようとする姿勢を見せましょう。「I have permission.(許可は持っています)」といった簡単な英語と、書類を指し示すジェスチャーだけでも、意図は伝わります。

    正規の許可証を提示すれば、ほとんどの場合は「OK、ありがとう」と、すぐに解放してくれます。彼らは無許可の危険な飛行を取り締まっているのであり、ルールを守る誠実なパイロットを困らせようとしているわけではないのです。むしろ、こうしたチェックがあるからこそ、タイの空の安全が保たれていると前向きに捉えましょう。

    タイでのドローン飛行、その先の旅へ

    タイの空を合法的に飛ぶための手続きとルール、そして空撮の魅力。ここまで読み進めてくださったあなたは、もう単なる観光客ではありません。タイという国の空と真摯に向き合う、責任ある「ドローンパイロット」としての第一歩を踏み出しています。

    確かに、登録手続きは少し面倒に感じるかもしれません。覚えるべきルールも少なくありません。しかし、その一つ一つのステップは、タイの美しい自然、貴重な文化遺産、そしてそこで暮らす人々の平穏な日常を守るために定められた、大切な約束事なのです。その約束を守ることで、私たちは初めて、ドローンという素晴らしいツールを通じて、この国の新たな魅力を発見する資格を得るのです。

    ドローンを飛ばすことは、単に美しい映像を撮ることだけが目的ではありません。それは、地上からでは決して見ることのできない視点から世界を捉え、その土地のスケールや成り立ちを肌で感じ、深く理解するプロセスでもあります。パンガー湾の奇岩がどのようにして形成されたのか、チェンマイの山々がどれほど雄大なのか、アユタヤの都がどれほどの規模を誇っていたのか。空からの視点は、私たちに新たな気づきと感動を与えてくれます。

    そして何より、ルールを守り、周囲への配慮を忘れずに飛行させるあなたの姿は、ドローンに対する社会の理解を深めるための、ささやかですが確実な一助となるはずです。あなたが撮影した一枚の写真、一本の映像が、見る人の心を動かし、「タイってこんなに美しい場所だったんだ」と、新たな旅への扉を開くきっかけになるかもしれません。

    さあ、すべての準備は整いました。CAATとNBTCの許可証を手に、保険証書を携え、タイの空のルールを心に刻んで、あなたの旅を始めましょう。エメラルドグリーンの海の上で、緑深い山々の稜線で、あなたのドローンが捉えるであろう、まだ誰も見たことのない「微笑みの国」の表情。その感動的な瞬間を、存分に味わってください。あなたの旅が、空からの絶景と共に、忘れられない最高の思い出となることを心から願っています。

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    この記事を書いたトラベルライター

    SimVoyage編集部は、世界を旅しながら現地の暮らしや食文化を体感し、スマホひとつで快適に旅する術を研究する旅のプロ集団です。今が旬の情報から穴場スポットまで、読者の「次の一歩」を後押しするリアルで役立つ記事をお届けします。

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