台湾の京都、と称される街、台南。赤レンガの廟宇(びょうう)が街に溶け込み、路地裏からは美味しそうな小吃(シャオチー)の湯気が立ちのぼる。何百年もの歴史が幾重にも重なったこの古都に、今、新しい風が吹いているのをご存知でしょうか。その風の主役は、台湾のZ世代。彼らは古き良きものを愛しながらも、自分たちのフィルターを通して新しい価値を吹き込み、台南をさらに魅力的な場所に変えているのです。
それは、ただ流行を追いかけるのとは少し違います。古い建物をリノベーションしてカフェやショップとして再生させたり、伝統的な食材に新たな解釈を加えてスイーツを生み出したり。彼らの活動の根底には、自分たちのルーツへの敬意と、未来へと繋ぐサステナブルな視点が流れています。
今回の旅では、そんな台南のZ世代が創り出すカルチャーの震源地を巡ります。彼らが集うスポット、愛するグルメ、そして大切にする価値観に触れることで、ガイドブックには載っていない、もっとディープで、もっと心に残る台南の姿が見えてくるはずです。歴史と未来が交差するこの街で、環境にも心にも優しい、新しい旅のスタイルを見つけにいきましょう。
なぜ今、台南のZ世代が面白いのか?

台北の喧騒とは対照的に、ゆったりとした時間が流れる台南。この街が現在、台湾の若者たち、特にZ世代から熱い注目を浴びています。その理由は、単に「レトロで可愛い」からだけではありません。彼らの世代独自の価値観と、台南という街の潜在力が見事に融合し、奇跡的な化学反応を生み出しているのです。
古都の歴史を受け継ぐリノベーション文化
台南の街並みを歩くと、日本統治時代に建てられたと思われる家屋や、清朝時代から続く古民家が自然に残っていることに驚かされます。Z世代はこれらの歴史的建築物を単に壊して新しく建て替えるのではなく、そこに宿る物語や温もりを尊重しながら、モダンな感覚で再生する「リノベーション」を選択しています。
古い窓枠や擦り減った床柱はそのまま残しつつ、内装をスタイリッシュなカフェやクリエイターのアトリエ兼ショップに変える。この手法は、古いものを使い捨てにせず、価値を見出して新たな命を吹き込むというサステナブルな考え方を体現しています。彼らにとってリノベーションは単なるデザインではなく、自分たちのアイデンティティである台南の歴史と対話し、未来につなげる行動なのです。
ローカルへの愛情とグローバルな感覚の融合
台南のZ世代は、自分たちの生まれ育った土地の文化に強い誇りを抱いています。担仔麺(タンツーメン)や牛肉湯(ニュウロウタン)など伝統的なグルメを愛し、廟宇の祭りにも積極的に参加します。一方で、インターネットを通じて世界中のカルチャーに触れて育ったデジタルネイティブでもあり、その感性は非常にグローバルです。
彼らが営むカフェでは、世界レベルのスペシャルティコーヒーが提供され、雑貨店には台湾の若手デザイナーによる洗練されたプロダクトが並びます。伝統的なお菓子屋さんが有名なイラストレーターとコラボし、ポップなパッケージの商品を開発することも珍しくありません。地元への深い愛情と洗練されたグローバルセンス──この二つが絶妙に調和している点こそ、台南のZ世代が創り出す文化の最大の魅力と言えるでしょう。
「映え」の先にある「共感」を求める心
もちろん彼らもInstagramを活用していますが、発信内容は単なる「インスタ映え」を狙ったものではありません。投稿される写真の一枚一枚には、お店のコンセプトやオーナーの思い、素材へのこだわりといった「ストーリー」が込められています。
Z世代は物やサービスの背景にある物語に共感を覚えることを重視します。だからこそ、台南では大量生産のチェーン店よりも、顔の見える個人経営の小さなお店が支持を集めるのです。彼らはSNSを通じてそうした店を発見し応援し、自らも発信者となって新しい観光の潮流を生み出しています。それは広告代理店が仕掛けたキャンペーンではなく、リアルな共感の連鎖によって形成されるオーガニックなムーブメントなのです。
この街でZ世代の息吹を感じることは、これからの時代における新しい豊かさや、持続可能な暮らし方のヒントを見つける旅になることでしょう。
Z世代が集う、台南のリノベスポット探訪

台南の魅力は、点在する歴史的建造物を訪れるだけでは語り尽くせません。Z世代が街の記憶を未来へ紡ぐべく生み出した、温故知新のスポットへご案内します。ここでは、新旧が融合し活気に満ちた、代表的な3つのエリアをご紹介します。
神農街(シェンノンジェ)-提灯の灯る路地に宿る時代を超えた魂
夕暮れが近づき、赤い提灯が柔らかな光を放ち始めると、神農街はその本来の姿を現します。かつて水路沿いの商業の重要拠点として栄えたこの通りは、今なお清朝時代の面影を色濃く残しており、台南で最も保存状態が良い老街(ラオジエ)のひとつです。石畳が敷かれた短い小路の両側には、間口が狭く奥行きが深い伝統的な長屋形式の建物が連なっています。
昼間は静かでどこか懐かしい雰囲気が漂いますが、夜になると一変します。提灯の灯りが古い木造家屋の陰影を美しく浮かび上がらせ、幻想的な世界が広がるのです。この景色に惹かれたZ世代のクリエイターや起業家たちは、歴史的な建物を丁寧にリノベーションし、個性的なバーやカフェ、雑貨店、アトリエを次々にオープンさせました。
たとえば、かつての薬局の看板をそのまま残したバーでは、台湾産のフルーツを使った独創的なカクテルが味わえます。また、築100年以上の古民家を改装したカフェでは、ハンドドリップで淹れたコーヒーとともに、静かなひと時を楽しむことができます。彼らは建物の歴史に敬意を払い、柱や梁、窓枠など可能な限りそのままにしつつ、現代の感性を加えています。そのため、どの店に入っても単なるおしゃれさだけでなく、時間をかけて積み重ねられた温かみを感じ取ることができるのです。
【Do情報:神農街散策のポイント】 神農街は地元の方々が今も暮らす生活エリアです。美しい街並みを写真に収めたい気持ちは理解できますが、住民のプライバシーには十分配慮しましょう。無断で家の中を撮影したり、大声で話したりするのはマナー違反です。特に夜は静けさを楽しむ場所なので、提灯の灯る幻想的な雰囲気を静かに味わうことが大切です。また、道幅が狭いため週末や祝日は非常に混雑します。スリに注意し、手荷物は前で抱えるようにすると安心です。
正興街(ヂェンシンジェ)-“ゆるさ”が居心地よいクリエイターの聖地
神農街から少し歩いた先に位置する正興街は、また違った空気感を持つエリアです。こちらは「きっちり保存された老街」というよりも、ごく普通の生活道路に自然とクリエイティブなエネルギーが集まった場所。その中心には、古い集合住宅をリノベーションした「正興的家(ヂェンシンデジャー)」や、その周辺に点在する個人経営の小さな店舗群があります。
このエリアの特徴は何と言っても「ゆるさ」。週末には一部が歩行者天国となり、どこからともなく椅子やテーブルが並び、即席のオープンカフェ空間が出現します。人々は好きな場所でジェラートを味わいながら談笑し、自由でリラックスした空気が若者たちを引き寄せています。
ここでぜひ味わいたいのは、「蜷尾家/NINAO」のソフトクリーム。日々変わるフレーバーには鉄観音茶や杏仁、ゴマなど台湾ならではの素材が使われており、甘さ控えめで繊細な味わいが多くのファンを持ちます。行列が途切れないほどの人気ですが、並ぶ価値は十分にあるでしょう。隣接する「彩虹來了(ツァイホンライラ)」では、カラフルで高品質な台湾製の布製品が揃い、オリジナルの服やバッグは自分へのお土産に最適です。
正興街の魅力は、このように個性的で情熱を持つオーナーたちが集まり、ゆるやかなコミュニティを形成している点にあります。彼らは互いを尊重し協力しながら、この地域の魅力を育んでいます。散策中に店主同士が楽しげに談笑している場面に出くわすことも多く、そうした光景こそが正興街の心地よさを支えているのかもしれません。
【Do情報:正興街を賢く楽しむコツ】 週末の歩行者天国は、このエリアの魅力を最大限に味わう絶好の機会ですが、交通規制が実施されるため、タクシー利用時は手前で降りる必要があります。蜷尾家などの人気店は開店前から行列ができることも多いので、時間に余裕を持って訪れるか、比較的空いている平日の午後がおすすめです。多くの店舗は現金のみの支払いなので、小銭や少額紙幣を用意しておくとスムーズです。
林百貨店(ハヤシ百貨店)-時代を超えて愛されるレトロモダンの象徴
台南の中心部にひと際目を引く壮麗な建物があります。それが、1932年に山口県出身の実業家・林方一によって建てられた「林百貨店」です。当時としては非常に珍しい鉄筋コンクリート造りで、台南初のエレベーター(当時は「流籠(リウロン)」と呼ばれていました)を備え、近代化の象徴的存在でした。
戦後は長期間放置されていましたが、台南市の手で修復・再生され、2014年に台湾のクリエイティブな産品を集めたデパートとしてよみがえりました。この再生プロジェクトは、台南のリノベーション文化を象徴する偉大な業績といえるでしょう。
一歩中へ入ると、そこは昭和初期のレトロモダンな空間。磨き上げられた人造石の床、優雅な曲線を描く手すり、そしてゆっくりと階を示す針が動く、台湾で最も古い現存エレベーター。Z世代がこの場所に惹かれる理由は、単なる懐古趣味ではありません。彼らはこの建物の真の歴史と、そこに集う現代台湾の最高峰のデザインが融合した姿に、新たな価値を見出しているのです。
各フロアには、台湾全土から選りすぐられたデザイナーズ雑貨やアパレル、菓子、書籍などが並び、どれも作り手の熱い想いが感じられるストーリー性豊かな商品ばかり。最上階には、太平洋戦争中に米軍の銃撃を受けた跡が生々しく残され、この建物が歩んだ歴史の重みを伝えています。また屋上には神社の鳥居があり、百貨店の守護神として創建されたもので、商業施設の屋上に神社があるという非常に珍しい光景です。ここから眺める台南の街並みもまた格別です。
【Do情報:林百貨店訪問時の注意点】 林百貨店は入場無料ですが、歴史的建造物の保護のため館内の人数制限が実施されることがあります。特に週末や連休は入口で待つ場合もあります。名物のエレベーターは一度に乗れる人数が限られるため、待ち時間が発生しやすいです。急ぐ場合は階段を利用するのが賢明でしょう。各フロアの展示や商品は定期的に入れ替わるため、訪問前に林百貨店公式サイトで最新情報を確認することをおすすめします。お土産探しにぴったりですが、魅力的な品が多いので買い過ぎにはくれぐれもご注意ください。
食の都・台南でZ世代が選ぶ「次世代グルメ」

「食は台南にあり」という言葉が示すように、この街はまさに美食の宝庫です。サバヒー粥(虱目魚粥)、牛肉湯、担仔麺、碗粿(ワーグイ)など、数えきれないほどの伝統的な小吃は、台南旅行の大きな魅力となっています。しかし、Z世代はこれらのソウルフードを愛し続ける一方で、新しい食の楽しみ方も模索しています。古都ならではの食文化に敬意を払いながら、グローバルかつサステナブルな感覚を取り入れた、彼らが夢中になる「次世代グルメ」の世界をご紹介しましょう。
見た目も味も進化!イノベーティブなカフェ体験
台南の路地を歩けば、古い建築の趣を生かしたスタイリッシュなカフェが次々と現れます。これらのカフェは、単なるコーヒースポットとしてだけでなく、空間デザインやメニュー全てが緻密に設計された一種のアート作品のような場所です。Z世代は、そうしたカフェで過ごすひとときを大切にしています。
例えば、古い洋館をリノベーションした「StableNice BLDG.」は、1階がコーヒースタンド、2階には展示スペースやセレクトショップがあり、建物自体がカルチャーの発信拠点となっています。ここで提供されるスペシャルティコーヒーは、豆の選定から焙煎、抽出まで細部にこだわり抜いた一杯です。コーヒーとともに楽しめるカヌレやチーズケーキの味わいは、伝統的な台南のスイーツとは異なった新鮮な感動をもたらします。
また、古いアパートの一室を改装した隠れ家的な「Paripari apt.」も注目されています。レトロな家具や雑貨に包まれた空間は、まるで友人の家を訪れたかのような温もりを感じさせます。こちらの名物は台湾産のフルーツを贅沢に使った季節のタルトやプリンで、見た目の美しさだけでなく、フルーツ本来の味わいを生かした優しい甘さがZ世代の心をとらえています。
これらのカフェに共通するのはサステナビリティへの強い意識です。マイカップやタンブラー持参で割引が受けられたり、地元農家から直接仕入れた食材を使うなど、環境や地域社会に配慮した取り組みが特徴的です。彼らにとってカフェは、美味しいものを味わうだけでなく、自分たちの価値観やライフスタイルを表現する大切な場所でもあります。
【Do情報:台南カフェ巡りのコツ】 人気のカフェは週末に満席になることも多いです。Instagramの公式アカウントなどで予約の可否や混雑状況を確認しておくと便利です。予約不可の店舗では、開店直後や平日の午後など比較的空いている時間帯を狙うのがおすすめです。台湾の多くのお店では「低消(ディーシャオ)」と呼ばれる最低注文金額(ワンドリンク制など)が設けられているため、入店時に確認しましょう。支払いは現金のみの個人経営店も多いので、クレジットカードが使えるかも事前に確認しておくと安心です。
夜市だけじゃない!Z世代が楽しむ夜の過ごし方—クラフトビールとバーカルチャー
台南の夜といえば、多くの人は花園夜市などの賑やかな夜市を思い浮かべるでしょう。熱気に満ちた夜市は確かに魅力的ですが、Z世代のなかには、より落ち着いた空間で質の高いお酒と会話をじっくり楽しむスタイルを好む層も増えています。彼らが足を運ぶのは、個性的なクラフトビールバーやカクテルバーです。
その代表格が、かつて「アジアのトップ50バー」にも選ばれた「TCRC(The Checkered Record Club)」。路地の奥にひっそりと佇み、看板もないため見過ごしてしまいそうなこのバーですが、重厚な扉の向こうにはウイスキーのボトルがずらりと並び、オーセンティックながらも居心地の良い空間が広がっています。メニューはなく、バーテンダーに好みや気分を伝えると、それに合わせたオリジナルカクテルを提案してくれます。台南産のグアバやマンゴーを使ったカクテルは、ここでしか味わえない逸品です。
近年、台南ではクラフトビールのシーンも活気づいています。台湾各地から直送される個性豊かなビールをタップで楽しめるお店が増え、フルーティーなIPAや台湾茶を使ったユニークなビールなど多彩なラインアップが揃います。台湾風の揚げ物(炸物)をつまみながら、仲間と語らいビールを味わうのは、Z世代の新しい夜の過ごし方の一つです。
【Do情報:台南の夜を安心して楽しむために】 台湾では飲酒は18歳以上と法律で定められており、年齢確認でパスポートなど身分証の提示を求められることがあります。必ず携帯しておくとスムーズです。人気バーは席数が限られているため、開店直後に満席になることも。グループで訪れる場合は早めの入店をおすすめします。服装規定は厳しくないですが、ビーチサンダルやタンクトップなど極端にカジュアルな服装は避けた方が無難です。飲み終わった後は安全にホテルへ戻りましょう。流しのタクシーもありますが、言葉に不安がある場合は「Uber」や台湾最大の配車アプリ「55688 台灣大車隊」を利用すると、目的地指定や料金確認ができ安心です。
Z世代の価値観に触れる – サステナブルな旅の実践

台南のZ世代が生み出すカルチャーには、「サステナブル」という考え方が根底に流れています。それは単なる環境保護のスローガンではなく、古いものを大切に使い続けること、地域の特産品を愛しむこと、そして自身の健康や環境に配慮した移動手段を選択すること。彼らの生活に自然と溶け込んだライフスタイルなのです。ここでは、私たち旅行者も気軽に取り入れられる、サステナブルな旅のコツをご紹介します。
レンタサイクル「T-Bike」で楽しむ、CO2削減の台南散策
台南市中心部は平坦な道が多く、観光スポットもコンパクトにまとまっているため、自転車散策にぴったりの街です。タクシーやバスも便利ですが、自転車ならではの爽快感とスピード感は、街の細かな魅力を発見するのに理想的。風を感じながら気ままに路地裏を巡ると、ガイドブックに載っていない素敵な店や心惹かれる風景に出会えることでしょう。
おすすめは、台南市の公共レンタサイクル「T-Bike(Tainan Tour Bike)」。市内の主要観光地や駅周辺に多数のステーションがあり、どこでも借りられ、どこでも返却可能です。料金も非常に手頃で、環境に優しく、健康的かつ経済的に街歩きを楽しめます。
【Do情報:T-Bike利用の完全ガイド】 T-Bikeの利用は簡単ですが、いくつか準備が必要です。まずクレジットカード(VISA、Master、JCB)が必要です。悠遊カード(EasyCard)や一卡通(iPASS)など交通系ICカードでも登録可能ですが、旅行者にはクレジットカードが手軽です。
利用の流れは以下の通りです。
- ステーションを探す: Googleマップで「T-Bike」と検索、または公式サイトのマップで近くのステーションを探します。
- キオスクで登録: ステーションにあるキオスク(自動サービス機)の画面で「単次租車(一回レンタル)」を選び、クレジットカードを登録。画面の指示に従いカード情報や携帯電話番号(日本の番号も可)を入力し認証を行います。
- 自転車を選ぶ: 登録完了後、ドックにある自転車の中から好みのものを選び、サドルの高さや空気圧を確認します。
- レンタル開始: 自転車のドックで登録したクレジットカードをかざすか、キオスクで取得したパスコードを入力してロックを解除し、レンタルスタートです。
返却は空きのあるT-Bikeステーションのドックに自転車を押し込み、ロックされると電子音が鳴って完了します。返却に問題があれば、自転車に記載のカスタマーサービスへ連絡すると、簡単な英語で対応してもらえます。
ローカルマーケットで見つける、エシカルな暮らしのヒント
その土地の魅力を知るなら、市場訪問は欠かせません。台南には、早朝から活気溢れる「水仙宮市場」のような伝統市場があり、新鮮な野菜や果物、海産物が並び、地元の人々の活力を直に感じることができます。
一方、Z世代が注目するのは、週末を中心に不定期開催されるファーマーズマーケットやクラフト市です。ここでは若者農家のオーガニック野菜やクリエイターによる手作りアクセサリー、環境配慮された素材の生活雑貨が並び、ただの売買以上にその背景や想いを丁寧に伝えています。
こうしたマーケットではプラスチック包装を極力避け、野菜は量り売りを基本とし、多くの人がマイバッグを持参して買い物をしています。ゴミを減らす環境配慮だけでなく、必要な分だけを購入するエシカルな消費の現れです。旅行者もエコバッグやマイボトルを携帯して参加すれば、そのサステナブルな輪に自然と加わることができます。
【Do情報:マーケットを楽しむための持ち物リスト】 ローカルマーケットを満喫するための持ち物は以下がおすすめです。
- エコバッグ: 買い物が増える場合に備え、大きめのものを複数用意すると便利。
- マイボトル/マイカップ: 喉が渇いた時、屋台でフレッシュジュースなどを入れてもらうのに重宝します。
- 現金(特に小銭): 個人経営の小さな店が多く、カード不可のことも多いので、小銭や100元札を多めに用意しましょう。
- ウェットティッシュ: 屋台グルメを楽しむ際、手を清潔に保てるので安心です。
値段交渉は伝統市場では可能な場合もありますが、ファーマーズマーケットでは基本的に表示価格での販売です。無理な値切りはせず、作り手との会話を楽しむ姿勢が大切です。
古民家ステイで味わう、ゆったり豊かな時間
宿泊先もサステナブルな視点で選ぶのはいかがでしょうか。台南には築数十年から百年以上の古民家をリノベーションしたホテルやB&B(民宿)がたくさんあります。
これらの宿は古い建物の構造や素材をできる限り再利用し、時間の経過でできた傷やシミさえもデザインの一部として活かしています。きしむ階段や少し傾いた床、現代ホテルほどの防音性はないかもしれませんが、そうした「不便」も愛おしい温かさと居心地の良さを醸し出しています。
古民家に泊まることは単なる宿泊以上の体験です。窓から差し込む柔らかな光、中庭を抜ける涼やかな風、静かな夜に耳を澄ませば聞こえる虫の声など、五感で土地の空気や時間の流れを感じられます。効率や利便性ばかりを追い求める日常から解放され、ゆったりとした豊かな時間を教えてくれるでしょう。古いものを敬い、大切に使い続ける暮らしの哲学に触れられます。
【Do情報:古民家ステイ予約のポイント】 リノベーションされた古民家宿にはそれぞれ個性や注意点があります。予約時には以下をチェックしましょう。
- 立地とアクセス: 路地の奥に位置することも多いので、Googleストリートビューなどで周囲の雰囲気を事前に確認すると安心です。
- 階段の有無: エレベーターがない場合がほとんどで、足腰に不安がある方や大きな荷物がある場合は、1階の部屋があるか問い合わせましょう。
- アメニティ: 環境配慮から使い捨ての歯ブラシや剃刀を置かない宿もあります。必要なものは自分で準備する心構えが必要です。
- 防音性: 壁が薄く隣室や外の音が響きやすいことがあるため、音に敏感な方は耳栓を持参すると良いでしょう。
予約は宿の公式サイトから行うのがおすすめです。予約サイトよりお得なプランや細かなリクエスト対応が期待できます。
台南Z世代旅を120%楽しむための実践ガイド

ここまで、台南のZ世代が生み出すカルチャーの魅力を掘り下げてきましたが、最後に、あなたの旅をより快適で充実したものにするための具体的な情報をお伝えします。準備段階から現地での行動、そして万が一の場合の対処まで、この内容を押さえれば安心して台南の街を楽しめるでしょう。
旅の準備と持ち物リスト – これがあれば安心!
旅の成否は準備次第と言っても過言ではありません。台南の気候や文化に合わせて、必要な持ち物を賢く揃えましょう。
【必携アイテム】
- パスポート: 滞在日数以上の有効期限が残っていることを必ず確認してください。
- 航空券(eチケット)とホテル予約の確認書: すぐに取り出せるよう、スマートフォンに保存するか印刷して持ち歩きましょう。
- 現金(台湾ドル): 空港や市内の銀行、両替所で両替可能です。屋台や小規模なお店では現金払いが基本なので、ある程度持っておくと安心です。
- クレジットカード: ホテルやデパート、大きなレストランで利用できます。海外キャッシング機能を付けておくと、現地ATMで通貨の引き出しができ便利です。
- スマートフォン・充電器・モバイルバッテリー: 地図アプリや翻訳アプリ、情報収集に不可欠です。特に地図アプリは電池を多く消耗するため、大容量のモバイルバッテリーがあると安心です。
【おすすめアイテム】
- 悠遊カード(EasyCard)または一卡通(iPASS): 台湾の交通系ICカード。バスやT-Bikeの支払いがワンタッチででき、コンビニでの買い物にも使えて非常に便利です。空港や駅、コンビニで購入・チャージできます。
- 歩きやすい靴: 台南は街歩きが楽しいスポットが多く、石畳の道も多いので、履き慣れたスニーカーが最適です。
- エコバッグ・マイボトル: 環境に配慮した旅のために。台湾はドリンクスタンドが豊富なので、マイボトルが特に役立ちます。
- 日焼け止め・帽子・サングラス: 台湾の紫外線は強烈です。特に夏季は熱中症予防として必須です。
- 折りたたみ傘: 亜熱帯性気候のため、急なスコールが多いです。晴雨兼用の折りたたみ傘があると便利です。
- 虫よけスプレー: 公園や緑が多い場所に行く際は、蚊除けとして持参することをおすすめします。
- 常備薬: 胃腸薬や鎮痛剤など、普段から使い慣れている薬を用意すると安心です。
台南での移動方法 – 賢く使い分けよう
台南市内の移動は、目的地や同行人数に応じて複数の交通手段を上手に活用すると便利です。
- T-Bike(レンタサイクル): 既にご説明した通り、中心街の散策に最適です。健康的かつ小回りの利く移動が可能です。
- 市バス(公車): 市内各地を網羅し、料金も手頃で市民の足として活躍しています。悠遊カードや一卡通を使うと乗降時の支払いがスムーズです。ただし路線が複雑で旅行者には少し難しい場合も。Googleマップの乗換案内を活用しましょう。バス乗車時は、バス停で手を挙げて乗車の意思表示をするのが台湾流です。料金は乗車時または降車時に支払うタイプがあり、他の乗客や電光掲示板で確認しましょう。
- タクシー(計程車)・配車アプリ: 複数人での移動や荷物が多い時に便利です。料金はメーター制で、日本に比べて格安です。流しのタクシーも多いですが、言葉に不安がある場合は「Uber」や「55688 台灣大車隊」などの配車アプリを利用すると安心。行き先を事前に指定でき、料金も確定するためトラブルを防げます。
知っておきたい現地のルールとマナー
快適な旅のために、現地の文化を尊重し、基本的なマナーやルールを心得ておきましょう。
- 廟宇(寺院)での参拝: 廟は神聖な場所です。訪れる際は、タンクトップやショートパンツといった過度に肌を露出する服装は避けてください。また、大声で騒いだり、敷居(入口の高くなった部分)を踏むのはマナー違反です。
- 公共交通機関内での飲食禁止: MRT(台北など)やバスの車内では飲食が厳禁です。違反すると罰金を科される場合もあるので注意しましょう。
- 屋内は全面禁煙: 台湾のホテルやレストラン、デパートなど屋内の公共施設は原則禁煙です。喫煙は設置された屋外の指定場所でのみ可能です。
- ゴミの分別: 街中に置かれているゴミ箱は「可燃ゴミ」と「資源ゴミ(リサイクル)」に分別されています。表示を確認して正しく捨てましょう。
- 静かな生活への配慮: 神農街のような歴史的街並みやリノベーションカフェが点在する落ち着いた路地は、観光地であると同時に住民の生活空間です。早朝や夜間の大声での会話は控え、地元住民への配慮を忘れないようにしましょう。
万が一のトラブル対処法
旅にはトラブルがつきものです。いざというときに備えて基本的な対処方法を知っておくと安心です。
- 体調不良の場合: 軽症なら街にある「藥局」と書かれた薬局で症状を伝えれば、薬剤師が適切な薬を選んでくれます。重症時はホテルのフロントに相談し、近くの病院を案内してもらいましょう。海外旅行保険に加入していると、キャッシュレスで診療を受けられる病院もあります。
- パスポート紛失時: まず最寄りの警察署(派出所)で紛失証明書を発行してもらいます。その後、日本の対台湾窓口である「公益財団法人日本台湾交流協会」の台北または高雄事務所で帰国用渡航書の申請を行います。
- 盗難に遭った場合: すぐに警察(緊急時は「110」)へ連絡し、被害届を提出しましょう。クレジットカードの盗難なら、速やかにカード会社の緊急連絡先に通知し利用停止してください。
- 困ったときは: 観光に関する一般的な質問は、交通部観光署(旧・交通部観光局)が運営する24時間対応のトラベルインフォメーションホットライン「0800-011-765」(台湾国内からのみ、無料)を活用しましょう。日本語対応もしています。
こうした情報を心に留めておけば、より安全・快適に台南の旅を楽しめるはずです。万全の準備をして、Z世代が紡ぐ新たな古都の物語に触れに出かけましょう。
古都の未来を担う、若き創造者たちの息吹

台南の旅を終えて心に刻まれるのは、美味しい料理の記憶や美しい古跡の風景だけではないかもしれません。古い建物の窓からこぼれる温かな灯り、一杯のコーヒーに込められた熱い想い、そして自分たちの街を愛し、未来につなげようとする若者たちの誠実なまなざし。これら目に見えないけれど確かな「息吹」こそが、今の台南を最も輝かせている要素だと感じます。
彼らは単に新しさやおしゃれさだけを追い求めているわけではありません。自分たちが根を張るこの土地の歴史や文化に深く根ざし、そこから新たな芽を育てようとしているのです。それは、建物の再生を目指したリノベーションであり、伝統食材に対する新たなアプローチであり、環境を意識したライフスタイルの選択でもあります。彼らの一つひとつの行動が、台南という街の魅力をより多層的で奥深いものへと昇華させているのです。
私たち旅行者がこの街を訪れる際には、ただ観光スポットを巡る消費者としてではなく、彼らの価値観に少し触れてみることが大切です。マイボトルを手に街を散策し、T-Bikeで風を感じ、地元のクリエイターと交流をもつ。そんな小さな行動が、私たちの旅をより豊かにするとともに、この美しい街の持続可能な未来を支えることにもつながるのではないでしょうか。
歴史とは決して過去にとどまるものではありません。台南のZ世代は、そのことを体現しています。古都のDNAを受け継いだ若きクリエイターたちがこれからどんな新しい物語を紡いでいくのか。その続きを見たくなり、再びこの街を訪れたくなる。台南は、そんな未来への期待に満ちた希望の街なのです。









