赤道直下の紺碧の海に、アルファベットの「K」にも似た奇妙な形で横たわる島、スラウェシ。その名を聞いて、すぐに場所を思い浮かべられる人は、まだそう多くはないかもしれません。しかし、この島は、地球が隠し持っていた最後の楽園のひとつと呼ぶにふさわしい、驚異的な生命力と、奥深い文化に満ち溢れています。
手つかずのサンゴ礁が広がる水中庭園、太古の森に息づく固有種の動物たち、そして雲の上で独自の死生観を守り続ける人々。スラウェシ島での旅は、単なるリゾート地での休暇とは一線を画します。それは、私たち自身の生き方や、自然との関わり方を見つめ直す、深く、静かな対話の時間です。
サステナブルな旅が注目される今、なぜこの島が旅慣れた人々を惹きつけてやまないのか。それは、この島が持つありのままの姿に触れることが、私たちに「本質的な豊かさ」とは何かを教えてくれるからに他なりません。この記事では、プロのトラベルライターである私が、実際に歩き、感じたスラウェシ島の魅力を、これから旅立つあなたのために、心を込めてご案内します。ただ美しい景色を紹介するだけでなく、その自然と文化を未来へ繋ぐための、責任ある旅人として何ができるのか。そのヒントも、随所に散りばめていくつもりです。
さあ、荷物をまとめて、地球の鼓動が聞こえる島、スラウェシへの冒険に出かけましょう。
また、より広い視野でインドネシアのビジネスと冒険が交差する魅力について知るのもおすすめです。
スラウェシ島とは?知られざる生物多様性の宝庫

インドネシアを形成する1万7000以上の島々のなかで、スラウェシ島はボルネオ、スマトラ、ニューギニアに次ぐ第4の大きさを誇ります。しかし、その知名度は他の大きな島々と比べると決して高くありません。その理由の一端には、島の複雑で独特な形状が関係しているかもしれません。中央から四方へと伸びる4つの半島は、まるでヒトデや曲がりくねった蘭の花のようなユニークな姿をしています。
地形が育んだ独特の生態系
スラウェシ島の複雑な地形こそが、この島を生物多様性の「ホットスポット」として際立たせる最大の要因です。かつてアジア大陸とオーストラリア大陸が地殻変動により衝突して誕生したこの島は、両大陸の生物群が交差する「ウォーレシア」と呼ばれる移行帯の中心に位置しています。
さらに、深く入り組んだ湾や険しい山脈が島内を分断し、それぞれのエリアがまるで「島の中の島」のように孤立した環境となりました。その結果、各地域の生物は独自に進化を遂げ、世界の他には存在しない貴重な固有種の宝庫となったのです。この地理的な特徴が、他では決して見られない唯一無二の自然環境を生み出しました。
生物多様性のホットスポットを歩く
スラウェシの森林に足を踏み入れれば、そこはまるで生きた博物館のようです。北部のタンココ自然保護区では、世界最小級のメガネザル「タルシウス」が大きな瞳でこちらを見つめ、全身を黒い毛で覆った「クロザル(タテガミマカク)」の群れが社会的なつながりを見せています。
内陸に進むと、イノシシの仲間「バビルサ」が奇妙に伸びた牙を誇り、小型のスイギュウである「アノア」が森の奥深くで静かな生活を送っています。これらの動物はすべて、スラウェシ島およびその周辺地域にしか生息しない貴重な固有種です。彼らの姿を目にすることは、進化の神秘と、この島の自然の大切さを肌で実感する貴重な体験となるでしょう。
文化のモザイク
スラウェシ島の魅力は、自然だけにとどまりません。この島には300を超える民族が暮らし、それぞれ異なる言語や習慣、信仰を守りながら共存しています。南部の港町マカッサルを拠点とする海洋民族「ブギス族」は、かつて海のシルクロードを駆け抜けた勇敢な航海者の子孫です。彼らが造る伝統的な木造帆船「ピニシ船」の技術は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。
北部のミナハサ族は、キリスト教を信仰し、ヨーロッパ文化の影響を受けた華やかな風土を持っています。そして何より、スラウェシ島を象徴するのは中央山岳地帯に暮らす「トラジャ族」です。彼らの壮麗な葬送儀式と独特の死生観は、世界中の文化人類学者や旅人を魅了してやみません。
このように、スラウェシ島は自然と文化が入り混じる、いわば「モザイクの島」と言えるでしょう。この多様性こそが、訪れる人々を飽きさせることのない絶え間ない魅力の源泉となっています。
紺碧の楽園へ。スラウェシの海に溶け込む
スラウェシ島を囲む海域は、ダイバーやスノーケラーにとって憧れの聖地となっています。地球上で最も海洋生物の多様性に富む「コーラル・トライアングル」の中心に位置し、その海の透明度や生命の密度の高さは訪れる者に強い感動を与えます。ここでは、代表的な3つの海洋公園をご紹介します。
ブナケン国立海洋公園:世界に認められた水中庭園
スラウェシ島北部、マナドの港からボートで約40分の沖合に浮かぶブナケン島を中心としたエリアは、世界屈指のダイビングスポットとして知られています。エメラルドグリーンの浅瀬から、深い藍色へと変わる海のグラデーションは、これから始まる冒険への期待を一層高めてくれます。
ブナケンの海の最大の特徴は、その独特な地形です。島のすぐそばから水深が数百メートル、場所によっては1000メートルを超える急激な落ち込み、いわゆる「ドロップオフ」と呼ばれる断崖絶壁が水中に連なっています。この断崖には色鮮やかなソフトコーラルとハードコーラルが咲き乱れ、まるで「垂直に広がる庭園」のような美しさを見せています。
太陽光が届く浅瀬では、カクレクマノミやデバスズメダイなどの小魚たちがサンゴの間を軽やかに泳ぎ、少し沖合に出れば、巨大なナポレオンフィッシュやギンガメアジの群れが渦を巻く壮大な光景に出会えます。特にブナケンはウミガメとの遭遇率が非常に高いことでも知られており、食事中のアオウミガメや優雅に泳ぐタイマイが眼前を横切る感動的な瞬間に日常的に出会えます。
実際に体験できること:ブナケンでの海のアクティビティ
- ダイビングやシュノーケリングの手配
- マナド市内やブナケン島には数多くのダイビングショップがあり、PADIやSSIなど国際認定団体の資格を持つショップを選ぶと安心です。1日に2〜3本のダイビングとランチがセットになった日帰りツアーが一般的です。
- ライセンスを持たない方も、「体験ダイビング」プログラムでインストラクターの付き添いを受けながら美しい海中世界を楽しめます。
- シュノーケリングはボートチャーターやツアー参加が便利です。ビーチからでも楽しめますが、より美しいサンゴ礁を鑑賞するなら沖合へボートで出ることをおすすめします。
- 準備と持ち物のポイント
- 必須品: 水着、タオル、着替え。
- 日焼け対策: 帽子、サングラス、ラッシュガード(日焼け防止およびクラゲ対策に有効)。
- 環境に配慮した選択: サンゴに影響しない「リーフセーフ」や「ノンケミカル」と表示された日焼け止めを使いましょう。一般的な日焼け止めに含まれるオキシベンゾンやオクチノキサートなどの化学成分はサンゴの白化を促す原因になるため、使用は控えるのがマナーです。
- その他: 防水カメラ、船酔いが心配な人のための酔い止め薬、島内での飲み物代として少額の現金。
- 海のルールとマナー
- ブナケンは国立海洋公園であり、サンゴや海洋生物を触ったり採取したりすることは禁止されています。
- 水中でバランスを保つためにサンゴに触ったりフィンで蹴ったりしないよう注意し、中性浮力の技術が求められます。
- ゴミは必ず持ち帰りましょう。特にプラスチックゴミはウミガメなどの生物に深刻な影響を及ぼします。マイボトルを持参し、ペットボトル飲料の購入を控えるなどの心掛けも大切です。
ワカトビ国立公園:未開の宝石
スラウェシ島南東部に位置するワカトビ諸島は、手つかずの自然を求める旅人たちに愛される秘境です。名前は、4つの主要な島であるワンギワンギ島(Wangi-wangi)、カレドゥパ島(Kaledupa)、トミア島(Tomia)、ビノンコ島(Binongko)の頭文字を組み合わせて付けられました。
アクセスは決して容易ではなく、マカッサルやケンダリから国内線でワンギワンギ島へ飛ぶか、長距離フェリーを乗り継ぐ必要があります。しかし、その苦労を遥かに上回る価値ある絶景が待っています。ワカトビの海は世界でもトップクラスのサンゴ礁多様性を誇り、記録上だけでも750種類以上のサンゴと900種類以上の魚類が生息しています。
ここでは、マクロ生物の観察から大物との遭遇まで、多彩なダイビングスタイルを楽しめます。ピグミーシーホースやウミウシのような小さな生物を探すのも良し、バラクーダやロウニンアジの群れを追いかけるのも自由自在です。そして、この地域のもう一つの魅力が、海上で暮らす「海の民」と呼ばれるバジャウ族の存在です。高床式の水上家屋で伝統的な生活を続ける彼らの村を訪れることで、ワカトビの文化的側面を深く知る貴重な体験ができます。
トギアン諸島:時間が止まったかのような場所
スラウェシ島の4つの半島に囲まれたトミニ湾の中央に点在するトギアン諸島は、「秘境中の秘境」とも称される場所です。アクセスは非常に困難で、最寄りの町から夜行フェリーを乗り継ぎ、半日以上かけてようやく到着します。
電気は1日数時間しか使えず、インターネットもほとんど繋がりません。しかし、その不便さこそがトギアン諸島の最大の魅力です。ここでは都会の喧騒から完全に離れ、波の音や鳥のさえずりに耳を傾ける贅沢な時間を味わえます。
穏やかな海はまるで湖のようで、ビーチから数メートル泳ぐだけで驚くほど元気なサンゴ礁が広がっています。トギアン諸島のハイライトのひとつに「ジェリーフィッシュレイク」があり、ここでは外敵がいないため毒を失った何百万匹ものクラゲと共に泳ぐという幻想的な体験が楽しめます。
実際に体験できること:秘境旅の準備
- 長期滞在を計画する: トギアン諸島へのアクセスは天候に左右されやすく、船の運航スケジュールも不定期です。最低でも1週間、できればそれ以上の余裕を持つのが望ましいでしょう。
- デジタルデトックスを覚悟する: Wi-Fi環境はほぼ期待できず、現地のSIMカードも電波が届かない場所が多いです。この機会にスマートフォンから離れて自然に身を委ねる時間を楽しむことを推奨します。
- 必携の持ち物:
- 現金(インドネシアルピア): 島内にATMはほとんどなく、クレジットカードの利用できる場所も限定的です。滞在日数分プラス余裕を持った現金を都市部で両替して持参しましょう。
- 常備薬: 医薬品の調達が難しいため、普段から飲んでいる薬だけでなく、胃腸薬や頭痛薬、消毒薬、絆創膏を含む救急セットも必須です。
- 懐中電灯またはヘッドライト: 夜は非常に暗くなるため、コテージからレストランへの移動や夜間の散策時に必須です。
- 読書用の本やオフライン音楽: 電気のない長い夜を楽しむためのアイテムとしておすすめです。
森と生きる人々。地元の村で感じる温もり

スラウェシの魅力は、澄んだ青い海だけに留まりません。緑豊かな内陸部には、太古から受け継がれる独自の文化を守りながら生活している人々がいます。彼らの暮らしに少しだけ触れることで、単なる観光では味わえない深い感動と学びを得ることができるのです。
タナ・トラジャ:雲上の葬送文化
スラウェシ島中部の山岳地帯に広がるタナ・トラジャは、世界でも特に独自性が高く壮大な文化を誇る場所の一つです。標高およそ1000メートルを超えるこの地域で、トラジャ族はキリスト教を信仰しつつも、アニミズムに根ざした「アルク・ト・ドロ(祖先の教え)」という独特の死生観を色濃く守り続けています。
トラジャ文化の中心にあるのは「死」という概念です。彼らにとって人の死は終わりではなく、来世への旅立ちの始まりを意味します。そのため葬儀は「ランブ・ソロ」と呼ばれ、人生で最も重視される儀式として、多大な時間と費用をかけて盛大に行われます。葬儀の際には、故人の魂を来世へ運ぶ乗り物とされる水牛が、多い時には数十頭も屠られることがあります。その様子は衝撃的に映るかもしれませんが、そこには故人への深い敬意や家族の絆、さらにはコミュニティ全体の結束を強める意味合いが込められているのです。
トラジャの村を歩くと、船をかたどった屋根が空に向かってそびえ立つ伝統家屋「トンコナン」が目を引きます。これは単なる住居ではなく、家系を象徴する神聖な場とされています。また、もうひとつ特徴的なのは墓の形態です。巨大な岩をくり抜いて造られた横穴式の墓や、崖の中腹に人形(タウタウ)とともに安置された棺など、その独特な埋葬様式は彼らの死生観を雄弁に物語っています。
読者が実際にできること:トラジャ文化を尊重する訪問の心得
- 訪問時のマナーと服装について:
- 葬儀は観光イベントではありません。遺族の悲しみに寄り添い、敬意をもって静かに見学しましょう。儀式中は邪魔にならないよう配慮が必要です。
- 服装は黒を基調とした控えめなものが望ましく、タンクトップやショートパンツなどの肌の露出が多い服装は避け、長袖・長ズボンを着用してください。
- 儀式に参加する際は、手土産としてタバコや砂糖などを持参することが慣習とされています。持参物に関しては現地ガイドに相談すると確実です。
- 写真撮影は必ず許可を得てから行い、ご遺体や遺族の悲しむ姿を無遠慮に撮る行為は厳禁です。
- 信頼できるガイドの利用のすすめ:
- トラジャ文化をより深く理解し、儀式や村を訪れる際には、信頼できる現地ガイドを雇うことが欠かせません。ガイドは通訳の役割だけでなく、文化の案内人として現地の人々との円滑なコミュニケーションをサポートしてくれます。また、どの儀式がどの場所で行われているかなどの情報も、ガイドなしでは得がたいものです。
- 持続可能な支援の意識:
- お土産はぜひ地元の工芸品を選びましょう。精巧な木彫りや美しい幾何学模様のイカット(絣織り)などの購入は、伝統技術の継承を支え、作り手の暮らしを直接応援することにつながります。
コミュニティ・ベースド・ツーリズムの体験
スラウェシ島では、地域社会の発展と自然保護を目指した「コミュニティ・ベースド・ツーリズム(CBT)」の取り組みが各地で広がりつつあります。これは観光客が地元の村に滞在し、村人の生活を体験できるプログラムです。
たとえばタンココ自然保護区周辺の村では、ホームステイをしながら村人と共に食事の準備をしたり、近くの農園でクローブやココナッツの収穫を手伝ったりできます。日中は自然保護区のガイドも務める村人と一緒に森へ入り、タルシウスやクロザルを探すことが可能です。夜は満天の星空の元、村の長老からこの地に伝わる昔話を聞くことができます。
こうした体験は、単純に珍しい動物を見る以上の価値があります。観光客が支払う宿泊費やガイド料は仲介業者を挟まず直接コミュニティに収入として還元されます。その収入は子どもたちの教育費や村のインフラ整備、そして何より村人が誇る自然の保護活動資金として活用されるのです。観光客が消費するだけでなく地域に貢献できる――CBTはそうした新しい旅のあり方を提案しています。
読者が実際にできること:心を通わせる交流のために
- プログラムの選び方:
個人で直接村を訪れるのではなく、現地NPOやCBTを専門に扱う信頼できる旅行会社を通じて予約しましょう。こうすることで、訪問が村の負担とならず、収益が公平に分配される仕組みが確保されます。
- コミュニケーションの準備:
「こんにちは(Selamat Pagi/Siang/Sore)」「ありがとう(Terima Kasih)」といった簡単なインドネシア語の挨拶を覚えていくと、心の距離がより一層縮まります。
- 小さな贈り物:
必ずしも高価なものである必要はありません。日本の文房具(消えるボールペンなどは特に喜ばれます)や駄菓子、風景写真のポストカードといった自国の文化を感じられる小さなお土産は、素敵な交流のきっかけになります。
地球と眠る。スラウェシのエコロッジ滞在記
サステナブルな旅を実現するうえで、宿泊施設の選択は非常に重要なポイントです。スラウェシ島には、自然環境への影響を極力抑えつつ地域社会に貢献することを掲げた「エコロッジ」が多数存在します。これらの場所は単なる宿泊場所としてだけでなく、旅の目的地そのものとして特別な体験を提供します。
エコロッジとは?
エコロッジとは、その地域の自然や文化を守るために積極的に取り組み、訪れる人々に環境に関する学びの機会を提供する宿泊施設を指します。主な特徴は以下の通りです。
- 環境負荷の軽減: 太陽光発電や雨水の再利用システムを導入し、エネルギーと水の消費を抑制。排水は浄化システムで自然に戻し、ゴミは分別やコンポスト化を徹底して行います。
- 地域社会への貢献: 地元の住民を積極的に雇用し、公正な労働環境を整備。食材や建材はできる限り地元産を活用し、地域経済の活性化に寄与しています。
- 環境教育と体験: 宿泊者に対して現地の自然環境や生態系について情報提供を行い、ネイチャーガイド付きのトレッキングやサンゴ礁保全活動への参加機会など、多様なプログラムを用意しています。
スラウェシ島のおすすめエコロッジ
- ワカトビ・ダイブ・リゾート(Wakatobi Dive Resort)
ワカトビ国立公園内に位置するこのリゾートは、ラグジュアリーな設備と徹底したサステナビリティの両立を実現しています。周囲の海域は地元コミュニティとの協議に基づいて保護区となっており、漁業活動が制限されています。その代わりに、リゾートは地域住民にリース料を支払い、安定した雇用を創出しています。さらに、サンゴ礁再生プログラムや地域支援財団の運営といった幅広い取り組みも展開。ここでの滞在は、快適さだけでなく、この海の未来に直接関わるという満足感をもたらします。
- カダディリ・パラダイス・ダイブ・リゾート(Kadidiri Paradise Dive Resort)
トギアン諸島に位置し、自然との調和を求める方に最適な素朴なリゾートです。木造のシンプルなバンガローが海辺に立ち、電気は夜間の数時間のみ供給。豪華さは控えめですが、目の前には手つかずのサンゴ礁があります。宿泊者にはプラスチックボトルの使用を禁じ、詰め替え用ボトルを提供するなど、小さな工夫を積み重ねています。ここでは自然のペースに合わせて過ごす心地よさを全身で味わえるでしょう。
- タシナラ・ジャングル・リゾート&スパ(Tasinara Jungle Resort and Spa)
スラウェシ島南部のマカッサル郊外にありながら、豊かな自然に包まれた静寂のリゾートです。地元産の素材を用いた伝統建築のヴィラを備え、敷地内でオーガニック野菜を育て、その収穫物をレストランで提供。地域の子どもたちを対象にした環境教育プログラムも定期的に開催し、未来世代への意識啓発も積極的に行っています。利便性の高い都市部近くでありながら、自然との共生を見事に体現したエコロッジです。
賢いエコロッジ選びのポイント
「エコ」「グリーン」といった言葉は時にマーケティングの一環で用いられる「グリーンウォッシング」の可能性もあります。真に持続可能な宿泊施設を選ぶため、以下の点を参考にしましょう。
- 第三者認証の有無: Green GlobeやEarthCheckなど、国際的に認められたサステナブル・ツーリズム認証があるか確認することが客観的な判断材料となります。
- 具体的な取り組みの開示: 「環境に優しい」といった抽象的表現だけでなく、公式ウェブサイトで「太陽光パネルを設置」「排水を100%浄化」「スタッフの90%以上が地元出身」など、具体的な実践内容が示されているかをチェックしましょう。
- 宿泊者の口コミを参考に: 実際に宿泊した人のレビューには、理念が現場でどのように実現されているかが垣間見えます。環境配慮や従業員の働きがいに触れたコメントを探してみてください。
旅の準備と実践:サステナブルな旅人の心得

スラウェシ島への旅は、綿密な準備と現地での的確な判断が欠かせません。ここでは、旅行を円滑かつ充実させるための具体的な情報をお伝えします。
スラウェシ島へのアクセス
- 航空便: 日本からスラウェシ島へは直行便がなく、ジャカルタやバリ(デンパサール)、シンガポールなどで乗り継ぐのが一般的です。スラウェシ島の主要空港は、南部のハサヌディン国際空港(マカッサル/UPG)と北部のサム・ラトゥランギ国際空港(マナド/MDC)の二つです。国内線はガルーダ・インドネシア航空、ライオン・エア、シティリンクなどが運航しています。
- 航空券の予約: 複数の航空会社や予約サイトを比較できるスカイスキャナーなどのツールを活用すると便利です。ただし、LCC(格安航空会社)は手荷物の重量制限が厳しく、遅延や欠航時の補償も限られる場合があるため、利用規約を十分に確認してください。特にインドネシア国内線はスケジュールが予告なく変更されることが多いので、乗り継ぎ時間にはたっぷり余裕をもたせることをおすすめします。
- CO2オフセットへの参加: 飛行機の利用は大量の二酸化炭素排出を伴うため、旅行の環境負荷を少しでも軽減するためにCO2オフセットプログラムへの参加を検討してみてください。これは植林や再生可能エネルギー事業への寄付を通じて、自身の排出量を相殺する取り組みです。航空券予約時にオプションとして追加できる場合や、独立したオフセット団体を通じて参加する方法があります。
持ち物チェックリスト:環境にも自分にも優しい旅を目指して
- 必携品:
- パスポート: 有効期限が6ヶ月以上残っていることを必ず確認しましょう。
- ビザ: 観光目的の短期滞在であれば、多くの国籍でビザ免除や到着時取得(Visa on Arrival)が可能です。ただし制度は変更されることがあるため、出発前に在インドネシア日本国大使館など公式サイトで最新情報をチェックしてください。
- 海外旅行保険証: 必須です。医療費が高額になり得るため、治療・救援費用が無制限のプランを選ぶのが望ましいです。
- 現金とクレジットカード: 都市部ではクレジットカードが利用できますが、地方や離島では現金(インドネシア・ルピア)が不可欠です。日本円からの両替は空港や市内の両替所で可能です。
- サステナブルな旅アイテム:
- マイボトル・携帯浄水器: ペットボトルのゴミ削減に役立ちます。水道水は飲用不可ですが、多くの宿でウォーターサーバーが利用でき、浄水器があればさらに安心です。
- 携帯用カトラリーセット・エコバッグ: 屋台での食事や買い物時に使い捨てプラスチックの使用を控えるために持参しましょう。
- 固形シャンプー・石鹸: 液体ボトルの使用を減らせるうえ、荷物の軽量化にもつながります。
- サンゴ環境に優しい日焼け止め: 美しい海を守るために欠かせないアイテムです。
- 健康と衛生を守る持ち物:
- 常備薬: 胃腸薬、頭痛薬、酔い止め、抗ヒスタミン剤などを忘れずに。
- 虫よけスプレー: デング熱など蚊が媒介する病気から身を守るため、肌に優しい成分のものを選びましょう。
- 速乾タオル・ドライシャンプー: 水シャワーのみの環境や長距離移動時に便利です。
トラブル対応:万一の場合に備えて
- フライトの遅延・欠航:
- まず航空会社のカウンターで状況を確認し、代替便の手配を交渉しましょう。冷静かつ明確に英語で伝えることが大切です。
- 遅延・欠航証明書は必ず受け取りましょう。海外旅行保険の請求に必要となります。
- 食事や宿泊にかかる補償は航空会社の規定によりますが、保険でカバーされる場合もあるため、保険会社の連絡先を控え、速やかに相談できるようにしておきましょう。
- 病気や怪我の場合:
- まず加入している海外旅行保険のサポートセンターに連絡し、指示を仰いでください。提携病院の紹介やキャッシュレス診療の手配が受けられます。
- 大都市には設備の整った私立病院がありますが、地方の医療レベルは限られています。重症時にはジャカルタやシンガポールへの緊急搬送が必要になることもあるため、十分な保険補償が重要です。
- 盗難・紛失時:
- クレジットカード・現金: すぐにカード会社の緊急連絡先に連絡しカードを停止しましょう。複数のカードや現金を分散して持つことがリスク軽減に繋がります。
- パスポート: 最寄りの警察署で紛失・盗難証明書(ポリスレポート)を発行してもらい、その後ジャカルタやスラバヤの日本大使館・総領事館でパスポートの再発行または「帰国のための渡航書」発行手続きを行います。戸籍謄本や写真が必要になるため、あらかじめコピーやデータを用意しておくと手続きがスムーズです。
私の旅が、この島の未来をつくる
スラウェシ島を訪れる旅は、私たちにさまざまな問いを投げかけてきます。ブナケンの海でウミガメとともに泳ぐと、その美しい生態系がいかに脆弱で壊れやすいかを強く感じます。また、トラジャの村で葬儀に参列することで、生と死、そして家族の絆について深く考えさせられます。
私たち旅人は、この島にとって「ゲスト」にすぎません。私たちのひとつひとつの行動が、この島の未来に良い影響も悪い影響も与えます。どこでお金を使い、誰と交流し、どのように自然と接するかという選択の積み重ねが、この島の文化や自然の保護に結びつくのです。
例えば、地元の人々が営む小さな食堂を利用すること、使い捨てプラスチックの使用を控えること、現地の環境保護団体の活動に関心を持つこと。スラウェシ島には、Conservation International Indonesiaのような組織が地域コミュニティと連携しながら、海洋資源の持続可能な管理や森林の保護に取り組んでいます。こうした活動に触れ、支援することも、旅人としてできる大切な貢献の一つです。
この島から持ち帰るべきものは、美しい写真や民芸品だけではありません。地球という星の一員として、自分たちの暮らしがどれほど多くの生命や文化とつながっているかを実感すること。そして、そのつながりを守るために、自分に何ができるのかを問い続けることです。
スラウェシの旅は、あなたに新たな羅針盤を授けてくれるでしょう。それは、ただ消費するだけの観光ではなく、創造し貢献する旅へとあなたを導くものです。さあ、地球の鼓動に耳を澄ませ、あなた自身の物語を紡ぐ旅に出かけましょう。スラウェシ島は、両手を広げてあなたの訪れを待っています。

