こんにちは。世界中の食文化に魅せられ、食品商社で働きながら各国の味を探求しているグルメライターの隆です。今回は、皆さんが知っている「イタリアのピザ」のイメージを、心地よく裏切るような、深遠なるピザの世界へとご案内します。
「イタリアでピザを食べる」と聞けば、多くの人がナポリの活気あるピッツェリアを思い浮かべることでしょう。もちろん、その選択は王道であり、間違いなく素晴らしい体験が待っています。しかし、イタリアの食文化の懐は、我々の想像をはるかに超えるほど深いのです。ピザという一枚の円盤の上には、その土地の歴史、気候、人々の気質、そして職人たちの飽くなき探求心が凝縮されています。ナポリピッツァという偉大なジャンルをリスペクトしつつも、今回はそこから一歩、二歩と踏み込んで、カゼルタの革新、ローマの日常、そして北イタリアの美食家たちが集う店へと、ピザを巡る思索の旅に出かけたいと思います。
この旅は、単に美味しいピザを食べるだけではありません。それぞれのピザが持つ物語を味わい、その背景にある文化を理解することで、イタリアという国をより深く知るための旅でもあります。この記事を読み終える頃には、あなたの「ピザ観」は大きく変わり、次のイタリア旅行の計画を立てずにはいられなくなるはずです。さあ、一緒にピザの深淵を覗いてみましょう。
ピザの旅でイタリアの食文化の深さに触れたら、次はエミリア=ロマーニャの夏を巡る聖地巡礼ガイドで、この国が育んだ別の輝きを探求してみてはいかがでしょうか。
ピッツァの概念を変える街、カゼルタへ

ナポリ中央駅からレッジョナーレ(普通列車)に揺られて約40分。賑やかなナポリの喧騒を後に、私たちはカンパーニャ州の内陸部に位置する街、カゼルタへ向かいます。この街は世界遺産に登録されている壮麗なカゼルタ宮殿でよく知られていますが、現代のグルメたちにとっては、「ピッツァの聖地」ナポリに迫る、またはある意味で凌駕する革新的なピッツァが生まれる場所として注目されています。ナポリピッツァの伝統的な製法である「STG(伝統的特産品保証)」の規則を守りながらも、発酵技術や食材の組み合わせ、さらには焼き方に独自の進化を遂げたピッツァ職人たちが、ここカゼルタに集結しているのです。
伝説の職人、フランコ・ペペの世界 – Pepe in Grani
カゼルタからさらに車で約30分走った小高い丘の町カイアッツォには、世界中のピザファンが巡礼に訪れる名店、「Pepe in Grani」があります。オーナーピッツァイオーロのフランコ・ペペ氏は、ピッツァ界の生きる伝説と称されており、彼のピッツァを味わうために多くの人々がこの静かな町を訪れます。
彼のピッツァの魅力は何と言っても生地にあります。祖父の代から受け継ぐ製法をベースに、科学的視点を取り入れて気温や湿度に応じて毎日生地の配合を調整。結果として、非常に軽く、消化もしやすい生地が完成します。口に運ぶと小麦の甘みと香ばしさが鼻腔をくすぐり、コルニチョーネ(ピザの縁)は外側はサクッと香ばしく、中は空気をたっぷり含んだふわふわでもちもちの食感。この一口で、わざわざ遠方から訪れた価値を充分に感じさせてくれます。
実践ガイド:Pepe in Graniへのアクセスと予約方法
この伝説のピッツェリアを訪れる際には、しっかりと準備をすることが欠かせません。最も大切なのは予約です。
- 予約の方法:公式サイトの予約フォームから手続きを行います。英語対応もされているので安心です。重要なのは予約が解放されるタイミングを逃さないこと。特にディナータイムは何ヶ月も先まで満席であることが多いため、航空券や宿泊の手配と並行して、早めに予約状況をチェックしましょう。もし公式サイトで満席であってもあきらめずに電話連絡してみると、キャンセルが出ている可能性もあります。
- 予約がかなわなかった場合:どうしても予約が取れなかった時には、開店前に直接店舗へ出向き、ウェイティングリストに名前を記入してもらう方法があります。ただしこれは確実ではなく、数時間待つことも覚悟する必要があります。特に週末は非常に混雑します。また、テイクアウトの専用カウンターも利用可能で、ここで注文すれば店外の広場でカイアッツォの風を感じながらピッツァを楽しむことができます。
- おすすめのメニュー:ぜひ試してほしいのは、「Margherita Sbagliata(マルゲリータ・ズバリアータ)」。名前の通り「間違ったマルゲリータ」という意味で、通常はトマトソースの上にモッツァレラとバジルを乗せて焼きますが、こちらのピザはモッツァレラだけを先に焼き、その後に冷たいトマトソースとバジルソースを線状にかける独特のスタイルです。熱々の生地とチーズに、フレッシュなトマトとバジルの味わいが絶妙なコントラストを作り出します。定番のマルゲリータやマリアーナも最高の味わいを誇るので、複数人で訪れた際は数種類注文してシェアするのがおすすめです。
- 服装と持ち物:高級レストランのような厳しいドレスコードはありませんが、敬意を示しあまりにもカジュアルすぎる服装(タンクトップやビーチサンダルなど)は避けましょう。スマートカジュアルを意識すると良いです。また、カイアッツォの街は石畳の坂道が多いため歩きやすい靴が必須。夏でも夜は冷えることがあるので、薄手の羽織ものを1枚用意しておくと快適です。
もう一人の巨匠 – フランチェスコ・マルトゥッチの「I Masanielli」
静かなカイアッツォでピッツァ哲学を磨くフランコ・ペペが孤高の達人なら、カゼルタ市内に店を構えるフランチェスコ・マルトゥッチ氏は、ピッツァ界に革命を巻き起こす攻めの改革者です。彼の店「I Masanielli」は、世界のピッツェリアランキングで常に上位に名を連ねています。ペペ・イン・グラーニが“静”ならば、こちらは“動”といった印象で、彼の独創的な三段階調理法にその革新性が表れています。
マルトゥッチ氏の代表作「Futuro di Marinara(未来のマリナーラ)」は、生地をまず低温の油で揚げ、その後オーブンで焼き、最後に蒸し上げるという前例のない製法で仕上げられます。この複雑なプロセスによって生地は驚くほど軽やかでサクサクの食感を持ちながら、小麦本来の風味もしっかり残っています。伝統への深い敬意を持つ彼だからこそ実現できる、まさに“未来のピザ”と言うべき逸品です。
実践ガイド:「I Masanielli」での体験
こちらも世界中からグルメが訪れるため、予約は必須です。しかしカゼルタ市内にあるため、ペペ・イン・グラーニよりもアクセスしやすいのが魅力です。
- 予約とアクセス:公式サイトやイタリアの一般的なレストラン予約サイトを利用して予約できます。電話予約も可能ですが、英語が通じにくい場合もあるためオンライン予約が便利です。カゼルタ駅からタクシーで約10分の距離でアクセスは良好です。
- 店の雰囲気とメニュー選び:店舗はモダンで洗練された空間。活気がある一方で、スタッフのサービスは行き届きプロフェッショナルです。メニューは豊富で、伝統的なものからマルトゥッチ氏の革新的な作品まで幅広く揃います。迷った際は、スタッフにおすすめを尋ねるのがベスト。彼らは自店のピッツァに誇りを持ち、丁寧に説明してくれます。
- 万が一の代替案:もしもペペ・イン・グラーニもイ・マサニエッリも予約が取れなかった場合でも、カゼルタには「Pizzeria da Lioniello」や「La Contrada」などの優れたピッツェリアが他にも存在します。これらの店もナポリとは異なる味わいを持つ、レベルの高いカゼルタスタイルのピザを提供しているため、事前にいくつか候補を絞っておくと安心です。
ローマのもう一つの顔 – ピンサとピッツァ・アル・ターリオの奥深き世界
舞台は永遠の都ローマ。壮大な歴史遺産であるコロッセオやフォロ・ロマーノ、そして濃厚なパスタ料理の代表格、カルボナーラやアマトリチャーナのイメージが根強いこの街ですが、実はナポリとは全く異なる独特の「粉もの文化」が深く根付いています。ナポリの丸いピッツァが「ディナーの主役」とされるのに対し、ローマのピッツァは「日常に溶け込む軽食」として親しまれており、特に「ピンサ」と「ピッツァ・アル・ターリオ(切り売りピザ)」がその代表といえます。
軽やかな食感が魅力の「ピンサ」の発祥地を訪ねて – Pinsere
近年、日本でも知名度が徐々に高まっている「ピンサ」。その起源は古代ローマ時代にまでさかのぼるといわれています。名前の由来はラテン語の「pinsere(押しつぶす、伸ばす)」に由来し、小麦粉に大豆粉や米粉を混ぜ合わせ、多めの水分で長時間発酵させた生地を楕円形に伸ばして焼き上げるのが特徴です。ピザより軽く、外はカリッと、中はふんわりとした食感が楽しめ、胃にもたれにくいため健康志向のローマの人々から熱狂的に支持されています。
このピンサを語るうえで欠かせない店が、テルミニ駅北側の閑静なエリアに位置する「Pinsere」です。ここは現代におけるピンサブームの火付け役とも評され、常に多くの人が列をなしていますが、回転は早く、待っている間も色とりどりのピンサがショーケースにずらりと並び、それを見るだけで気分が高まります。
実践ガイド:Pinsereでのスマートな注文方法
観光客が多いものの、基本的に地元の人が利用する店なので、流れを押さえておくとスムーズに注文できます。
- 注文の流れ:まずは列に並び、自分の番が来たらショーケースの中から食べたいピンサを指差して伝えます。「Questo, per favore(クエスト、ペルファヴォーレ/これをください)」で十分通じます。注文後は店員が熱々のオーブンで温め直し、受け取ったあとにレジで支払いをします。この流れを頭に入れておきましょう。
- 店のルールとマナー:店内にイートインスペースはなく、外の小さなカウンターで立って食べるスタイルです。そのため、大きなスーツケースなどの荷物は持ち込まないほうがよく、貴重品は常に体の前に抱えるなどスリ対策も必要です。食べ終わった後の紙皿などは必ずゴミ箱に捨てるようにしましょう。
- おすすめの持ち物:テイクアウトして近くのボルゲーゼ公園などでピクニック気分を味わうのも素敵です。その際はウェットティッシュや飲み物があると便利です。店内でもドリンクは販売していますが、近辺のスーパーで好みの飲み物を買っておくのもおすすめです。
「ピッツァ・アル・ターリオ(切り売りピザ)」の正しい楽しみ方
ローマの街中を歩くと、「PIZZA AL TAGLIO」と書かれた看板を掲げる店が数多く見られます。これは大きな四角い鉄板で焼き上げたピザを、客の希望に合わせてはさみでカットし、重さに応じて量り売りするスタイルです。ローマの人々にとっては朝食や昼食、そして小腹が空いたときのおやつとして生活に欠かせないソウルフードとなっています。
この切り売りピザの世界に革命をもたらしたのが、ヴァチカン近くに本店を構える「Pizzarium Bonci」のガブリエーレ・ボンチ氏です。彼は「ピザ界のミケランジェロ」と称され、オーガニックの古代小麦を使った豊かな風味の生地と、旬の食材を大胆かつ独創的に組み合わせたトッピングで、切り売りピザを単なるB級グルメから芸術的な美味へと高めました。彼の店のショーケースは宝石箱のようで、アーティチョークとペコリーノチーズ、カボチャの花とアンチョビ、時には馬肉のタルタルなど、驚きの組み合わせが並んでおり、訪れるたびに新たな発見があります。
実践ガイド:量り売りピザを上手に注文するコツ
ピッツァ・アル・ターリオの注文はやや独特ですが、一度覚えればシンプルです。
- 注文方法:まず食べたいピザを決め、店員に指差します。その後、手で希望のサイズを示すと、店員がはさみでカットし重さを測って価格を教えてくれます。金額に納得したら、「OK」や「Va bene(ヴァ・ベーネ)」と言えば、温め直したピザを紙皿にのせて渡してくれます。イタリア語が得意でなくても、指差しとジェスチャー、そして笑顔があれば問題ありません。気軽に挑戦してみてください。
- 最新情報の確認:超人気店である「Pizzarium Bonci」などは営業時間の変更や臨時休業がある場合もあります。訪問前には必ず公式SNS(Instagramなど)やGoogleマップで営業状況を確認することをおすすめします。無駄足を防ぐために事前チェックは必須です。イタリアのグルメ情報サイト〈Gambero Rosso〉(リンクはこちら)でも最新の評価や店舗情報を確認できます。
北イタリアの知られざるピッツァ・グルメ – 伝統と革新のヴェネト州

イタリアを南から北へと縦断するピザの旅の締めくくりは、北イタリアのヴェネト州です。ロマンティックな街ヴェローナや水の都ヴェネツィアを擁するこの豊かな地では、近年、南イタリアの伝統的なピッツァとは異なる新たなスタイルが誕生しています。それが「ピッツァ・コンテンポラネア(現代ピザ)」や「ピッツァ・デグスタツィオーネ(テイスティングピザ)」と呼ばれるものです。
このスタイルは、高級レストランのコース料理のように、多彩な種類のピザを少量ずつ、順に楽しむという趣向です。ピザ生地そのものの味わいはもちろん、トッピングと呼ぶにはもはやふさわしくない、地域の最高級の食材を用いた「料理」としての具材が乗せられます。さらに、それぞれの一皿に合ったワインのペアリングを楽しむことができるため、ピザをファストフードではなく、美食学(ガストロノミー)の対象として見直す、非常に洗練されたアプローチだと言えるでしょう。
ピザ界の革新者、シモーネ・パドアンの哲学 – I Tigli
このピッツァ・デグスタツィオーネの旗手であり頂点に立つのが、ヴェローナ近郊サン・ボニファーチョの小さな町に店を構える「I Tigli」のシモーネ・パドアン氏です。彼は天然酵母を使った長時間発酵の生地の研究者で、その生地は驚くほど軽やかで香り高く、複雑な風味を持っています。彼の哲学は「ピザは皿である」というもので、つまり、彼が手がける理想の生地は、最高の料理を受け止めるための究極の器であるという考えです。
メニューを開くと、「フォアグラとイチジクのコンポート」や「イカ墨を練り込んだ生地にブッラータチーズと赤エビのカルパッチョ」など、従来のピザのイメージを覆す料理名が並びます。一枚のピザはあらかじめ8等分にカットされており、まるで洗練された前菜の盛り合わせのようにテーブルに提供されます。ここはもはやピッツェリアではなく、ピザを主役に据えた高級リストランテと言えるでしょう。
実践ガイド:I Tigliでの美食体験に備えて
「I Tigli」での食事は単なるピザディナーではなく、特別な美食体験です。そこでいくつかの準備と心得が必要です。
- 予約と予算:完全予約制のため、公式サイトからオンライン予約が可能ですが、席数が限られているので早めの確保が望まれます。予算も一般的なピッツェリアとは大きく異なり、テイスティングコースやアラカルト、ワインペアリングを含めると、一人当たり100ユーロ以上を見込むのが妥当です。特別な夜のディナーとして計画するのが適しています。
- 服装について:明確なドレスコードはないものの、店の雰囲気や料理の質を考慮するとスマートカジュアルがおすすめです。Tシャツや短パン、スニーカーなどのカジュアルすぎる服装は避け、襟付きシャツやジャケット、女性の場合は少しおしゃれなワンピースを選べば、より一層その場の雰囲気を楽しめます。
- 公式情報の確認:メニューは季節ごとに大きく変動します。また、不定期のイベントや休店日もあるため、訪問前にはイタリア政府観光局のサイトなどで地域情報を最新のものにアップデートし、店の公式サイトをしっかりと読み込んでおくことが重要です。店の哲学やメニューの背景を理解しておくことで、当日の体験がより深まります。
現地で手に入れたいおすすめのお土産
食文化の豊かなヴェネト州を訪れたからには、お土産選びも旅の楽しみのひとつです。私がライターとして特におすすめしたい、この地域ならではの食の土産をご紹介します。
- 上質なオリーブオイルと小麦粉:例えば「I Tigli」で使われているような高品質の食材は、地元の専門店(SalumeriaやAlimentari)で購入可能です。特にガルダ湖周辺で生産される繊細な風味のオリーブオイルは格別です。お店のスタッフにおすすめの食材店を聞くのも良いでしょう。
- ワインとサラミ:ヴェネト州はアマローネやソアーヴェといった世界的に名高いワインの産地です。ワイナリー巡りで試飲し、お気に入りの一本を見つけるのも旅の醍醐味。また、ヴェローナ産のサラミや馬肉の燻製「スフィラッチ・ディ・カヴァッロ」といった、ここならではの珍しいお土産もおすすめです。
- グラッパ:食後酒の代表格であるグラッパもヴェネト州の名産品です。特にバッサーノ・デル・グラッパの町には有名な蒸留所があり、多種多様なグラッパを試飲・購入できます。小瓶はお土産にもぴったりです。
旅を成功させるための準備と心構え
これまでにイタリア各地のユニークなピザ文化を紹介してきました。最後に、ピザの旅をより快適で充実したものにするための実用的な情報とアドバイスをまとめてお伝えします。
覚えておきたいピッツァの種類と専門用語
イタリアのピッツェリアでメニューを開いた際に戸惑わないよう、基本的な種類や用語を知っておくと便利です。
- Pizza Tonda: 最もポピュラーな丸い形のピザ。ナポリ風やローマ風など、生地の食感が地域ごとに異なります。
- Pizza al Taglio: ローマ名物の切り売りピザ。四角い鉄板で焼かれ、重さによって販売されます。
- Pizza al Padellino: トリノ発祥の小さなフライパンで焼く厚めのピザ。外側がカリッと揚げたような食感です。
- Pinsa: ローマが起源の楕円形ピザ。大豆粉や米粉を混ぜた生地で、軽くてヘルシーなのが特徴です。
注文時に役立つ言葉もいくつか覚えておきましょう。
- Cornicione(コルニチョーネ): ピザの「縁」の部分。ここが美味しいかどうかがピッツァイオーロの腕の見せどころです。
- Ben cotta(ベン・コッタ): 「よく焼いて」という意味。香ばしい焼き加減が好みの場合に使えます。
- Senza…(センツァ…): 「〜抜きで」という意味。苦手な具材がある時に便利です。たとえば「Senza aglio(センツァ・アーリオ)」は「ニンニク抜き」を指します。
予約と待ち時間の実状
人気店は予約が必須であることを繰り返し強調してきました。予約なしで行くと長時間待たされたり、最悪の場合は入店を断られることも少なくありません。特にディナータイムは地元客で混雑するため、ふらっと訪れて入れる可能性は低いと考えてください。
- 予約のタイミング: 旅行の日程が決まり次第、すぐに予約手続きを始めるのが鉄則です。
- 行列に並ぶ際の注意点: 予約なしでウェイティングリストに名前を記入して待つ場合、自分の順番がいつ回ってくるかは予測できません。店の近くから離れず座席には戻れるようにしましょう。また、人混みではスリや置き引きのリスクも高まるため、荷物は最小限にし、貴重品は常に身につけておくなど防犯意識を高く持つことが重要です。
- トラブル発生時の対処法: 予約していたにもかかわらず「予約が入っていない」と言われるトラブルも稀にあります。その際はまず冷静に予約確認のメールや予約サイトの画面を提示しましょう。それでも対応してもらえない場合は感情的に抗議するよりも、その店を諦めて事前にピックアップしておいた別の店舗へ向かうのが賢明です。
支払いとチップのマナー
イタリアのレストランでの支払いに関する知識を持っておくと、よりスマートに過ごせます。
- 支払い方法: 多くの店舗でクレジットカードが使えますが、個人経営の小規模店やPizza al Taglioのような店では現金のみのところもあります。特に小銭や少額紙幣を用意しておくと安心です。
- Coperto(コペルト): 多くのレストランでは、メニューに「Coperto」という項目があります。これは席料やパン代にあたり、一人あたり1~3ユーロ程度が会計時に自動的に加算されます。サービス料とは別の費用です。
- チップ文化: イタリアではチップは義務ではありません。メニューに「Servizio incluso(サービス料込み)」と明記されていれば、基本的にチップは不要です。ただし、特に素晴らしいサービスを受けた際や高級店では、感謝の気持ちとして会計の5~10%程度、または端数を切り上げたお釣りをテーブルに置くと喜ばれます。カジュアルなピッツェリアでも1~2ユーロの小銭を渡すだけで、さりげない心配りになります。もちろんサービスに不満があった場合は無理に支払う必要はありません。なお、50 Top Pizzaのような世界的なピザランキングでも、サービスの質は重要な評価ポイントの一つとされています。
ピッツァは、イタリアを映す鏡

ナポリ近郊カゼルタの職人たちが切り開くピッツァの新たな可能性。ローマの暮らしに溶け込む、素朴でありながら奥深い味わい。そして、北イタリアの美食家をも唸らせる、まさに料理としてのピッツァ。今回の旅を通じて、私たちが普段「ピザ」とひとまとめに呼んでいるものが、いかに多彩で、地域性や創意にあふれた食文化であるかを感じ取っていただけたのではないでしょうか。
一枚のピッツァの上には、その土地で育まれたトマトのほどよい酸味、チーズのほのかな塩味、小麦の芳醇な香り、そして薪窯の熱が織り成す物語があります。それはまさにイタリアという国の縮図とも言えるものです。地域ごとに鮮やかに異なる顔を見せながらも、その根底には美味を共有する喜びと、食材に対する深い敬意という共通の精神が流れています。
この記事で取り上げたお店は、単なる美味しい飲食店の一覧ではありません。それらこそがイタリア文化の奥深さへと繋がる扉なのです。完璧に発酵された生地の香りに酔いしれ、地元のワインとピッツァの絶妙な組み合わせに舌鼓を打ち、活気に満ちた店内で人々の陽気な会話に耳を傾ける——これらすべての体験が、あなたの旅を忘れがたいものにしてくれることでしょう。
さあ、ガイドブックに載っている定番ルートからほんの少しだけ外れて、あなた自身の最高のピッツァを探す旅へ出てみませんか。その先に、きっとまだ知られざるイタリアの真の姿が待っているはずです。

