ハンドルを握る手に、じわりと汗が滲む。眼下に広がるのは、息を呑むほどの深い渓谷。ガードレールの向こう側は、遥か下まで続く緑の絶壁だ。大陸を横断する旅の途中、俺は今、インド洋に浮かぶ小さな島、レユニオンでレンタカーを走らせている。目指すは「シラオス」。火山の巨大なカルデラに抱かれた、天空の集落だ。かつて自動車整備士だった血が騒ぐのか、こんな道こそが旅の醍醐味だと感じてしまう。道は挑戦的であればあるほど、その先に待つ景色は格別なのだから。
「海の向こうのフランス」と呼ばれるこの島は、アフリカ大陸の東、マダガスカルの隣に位置するフランスの海外県。公用語はフランス語で、通貨はユーロ。しかし、ここに流れる空気は、パリのそれとはまったく違う。熱帯の植物が生い茂り、クレオールの文化が色濃く根付く、独特の時間が流れている。そんな不思議な島の中枢に、ぽっかりと空いた巨大な窪地「カルデラ」。そのひとつ、シラオス圏谷(けんこく)は、まさに陸の孤島。そこにはどんな暮らしがあり、どんな絶景が待っているのだろうか。霧に包まれる夕暮れ、満点の星空、そして最高のコーヒー。噂に聞くそのすべてを確かめに、俺はアクセルを少しだけ踏み込んだ。
フランスでありながら独自の文化や豊かな自然が息づく場所は、このレユニオン島だけではない。地中海のコルシカ島もまた、手つかずの自然と美食の宝庫だ。
はるかなるインド洋へ、フランス行きの翼に乗って

旅の出発点は、いつも空の上から始まる。日本からレユニオン島へは直行便が存在しない。多くの旅行者と同様に、私もいくつかの航空ルートを比較検討するところから旅程の計画をスタートさせた。目的地は、レユニオン島の玄関口であるローラン・ギャロス空港(RUN)。名前がテニスの名門会場と同じで、どこか楽しい気分になる。
レユニオン島行き航空券の入手方法
最も利用されているのは、パリのシャルル・ド・ゴール空港(CDG)やオルリー空港(ORY)を経由するルートだ。エールフランス航空や、レユニオン島を拠点とするエール・オーストラルなどがパリから毎日のように多くの便を運航している。パリからレユニオン島まではおよそ11時間のフライト。日本からパリへのフライトが約14時間であるため、乗り継ぎ時間も含めると丸一日以上の長時間移動になる。
もう一つの選択肢としては、アジアや中東のハブ空港を経由する方法がある。タイのバンコクやUAEのドバイ、さらにはモーリシャス経由の便も存在している。時期によってはこちらのルートが、より安価な航空券を見つけられることもあるだろう。
航空券予約の基本手順
航空券を探す際は、まずスカイスキャナーやGoogleフライトなどの比較サイトに出発日と目的地(RUN)を入力して検索するのが定番だ。複数の航空会社の組み合わせや経由地の違いによる価格差が一目でわかる。
- 予約時のポイント:
- 早めの予約が鉄則: 特に乾季(5月~11月)の観光シーズンは混雑するため、2~3ヶ月前には予約しておくのが望ましい。
- 乗り継ぎ時間の確保: パリ経由の場合、シャルル・ド・ゴール空港とオルリー空港の間を移動する必要がある場合もある。乗り継ぎは最低でも4~5時間の余裕をもっておくと安心だ。荷物の受け取りや再チェックイン、空港間の移動時間を考慮すると、思った以上に時間がかかることもある。
- 公式サイトもチェックを: 比較サイトで見つけた便については、航空会社の公式サイトで直接予約することで、より良い条件や追加のサービスが受けられることもある。手間を惜しまず確認しよう。
今回、私はパリ経由でエールフランスを利用した。長時間のフライトだったが、機内食のバゲットを味わいながらフランス語のアナウンスを耳にすると、「これからフランス領へ行くのだ」という実感が湧き、疲れよりもワクワクが勝っていた。
入国手続きと島の基本情報
レユニオン島はフランスの海外県にあたるため、入国手続きはフランス本土と同じシェンゲン協定の規定に準じている。日本国籍保持者なら観光目的で90日以内の滞在であればビザは不要。ただし、パスポートの有効期間がシェンゲン協定加盟国出国予定日から3ヶ月以上あることを必ず確認しておきたい。
空港に降り立つと、蒸し暑い熱帯の空気が肌を包み込む。しかしどこかヨーロッパ的な雰囲気も漂っており、不思議な感覚になる。空港内の案内表示はフランス語で、耳に入る会話もフランス語ばかり。ATMからは間違いなくユーロ紙幣が出てくる。ここはアフリカの近隣ではあるが、まぎれもなくフランスだ。この独特なギャップこそが、レユニオン島が放つ抗いがたい魅力の一つなのであろう。
伝説の400カーブを越えて、天空の集落へ
空港であらかじめ予約しておいたレンタカーのキーを受け取る。元整備士として、旅先でどんな車に出会えるかは大きな楽しみの一つだ。大陸横断の相棒とはしばらくの別れを告げ、今回はこの島の険しい道を走り抜けるため、小回りの利くコンパクトカーを選んだ。ルノーのクリオ(日本名:ルーテシア)で、軽快な走りが期待できそうだ。
目的地のシラオスへは、サン・ルイ(Saint-Louis)という町から一本の道「RN5」が続いている。この道こそがシラオスへの唯一のアクセス路であり、旅人の間では「400ものカーブが連なる道」として伝説的なルートとして知られている。
レンタカー準備と運転のポイント
レユニオン島を自由に旅するにはレンタカーが欠かせない。公共交通機関であるバス(Car Jaune)も島内を走っているが、絶景スポットで自由に停車したり、寄り道したりする楽しみは自分でハンドルを握るからこそ味わえるものだ。
レンタカー予約と手続きの流れ
- 予約方法: Rentalcars.comやハーツ、エイビスなど大手レンタカー会社の公式サイトから、日本にいるうちに事前予約しておくとスムーズだ。空港のカウンターで直接借りることも可能だが、希望車種がない場合や料金が高くなることもある。
- 必要な持ち物:
- 日本の運転免許証
- 国際運転免許証(ジュネーブ条約に基づくもの)
- パスポート
- クレジットカード(デポジット=保証金の支払いに必要)
- 車種選びのポイント:
- シラオスへの道を考慮すると、オートマ(AT)でパワフルなコンパクトカーがおすすめ。マニュアル(MT)車も多いので、予約時に必ず確認しよう。フランスではMT車が主流のため、AT車は早めの予約が望ましい。
- 4WDは必須ではないが急勾配が多いので、排気量に余裕のある車種を選ぶと安心だ。
- 保険: 対人・対物無制限の基本保険は多くの場合料金に含まれているが、車両保険(CDW)や盗難保険(TP)、さらに免責額をゼロにするフルカバー保険の追加加入を強く推奨する。海外の道は何が起こるかわからないため、安心はお金で買う価値がある。
国際免許証は日本の各都道府県にある運転免許センターで即日発行が可能だ。出発前に忘れず取得しておこう。
いざ、天空のワインディングロードへ
サン・ルイの街を抜けると、道はすぐにその厳しい姿を見せ始める。鬱蒼と茂る緑の壁の間を、蛇のようにアスファルトがうねりながら右へ左へと曲がりくねる。タイトなヘアピンカーブが次々と現れ、片側は切り立った岩壁、もう一方は遥か下の谷底だ。まさに天空へ続く道といった趣だ。
カーブをひとつ越えるごとに標高がぐんぐん上がっていくのが感じられる。窓を開ければ、ひんやりとした空気が車内に入ってきて、麓の熱気が嘘のように涼しい。ときどき現れる小さな滝や、深い緑のグラデーション、雲の切れ間から覗く鋭い岩峰など、景色の移り変わりが激しく目が離せない。
元整備士の目線で言うと、この道ではエンジンブレーキの使い方が重要だ。下り坂でフットブレーキを多用すると、ブレーキパッドやディスクが過熱して効きが悪くなる「フェード現象」を起こす恐れがある。AT車でも、「2」や「L」のギア、もしくはマニュアルモードに切り替えて、エンジンブレーキを活用し速度をコントロールすることが肝心だ。
トラブル時の対処法
- パンク: レユニオンの道路は整備されているものの、落石などのリスクはゼロではない。もしパンクしたらまず安全な場所に車を停車させよう。多くのレンタカーにはスペアタイヤと工具が備わっている。自分で交換できるスキルがあれば心強いが、不安な場合はレンタカー会社の緊急連絡先や保険会社のロードサービスに連絡しよう。予約時に連絡先を控えておくのを忘れずに。
- 軽微な接触事故: 狭い道でのすれ違いの際など軽い接触でも、必ず警察(Gendarmerie)とレンタカー会社に連絡を入れることが大切だ。その場で示談をするのは避けなければならない。
400のカーブを数えつつ(途中で数がわからなくなったが)、約1時間半のドライブの末に視界が急に開け、眼下に穏やかな集落が広がった。ついに天空のカルデラ、シラオスに到着したのだ。長く険しい道のりだったが、この達成感と目の前に広がる非日常の景色が、すべての疲れを吹き飛ばしてくれた。
シラオスの空気に触れる – 村の歩き方

シラオスは、思い描いていたよりもはるかに穏やかで洗練された雰囲気の村だった。色鮮やかな屋根の家々が密集し、その中心には可憐な「ノートルダム・デ・ネージュ教会」がそびえ立っている。標高は約1200メートルで、澄み切った空気が心地よく、まるで肺が洗われるかのようだ。
村の規模は小さく、中心エリアは歩いて十分にまわることができる。車は宿に置いて、まずは自分の足でこの村の空気をじっくり味わうことにした。
村の心臓部、マレシャル・フォッシュ通りを散策
村の主要道路であるマレシャル・フォッシュ通りには、パン屋(Boulangerie)、土産物店、小さなスーパー(Casino Shop)、そして登山者向けの山道具店が立ち並ぶ。聞こえてくるのはフランス語の穏やかな会話と、小鳥のさえずりだけで、まるで南フランスの小さな村に迷い込んだような気分になる。
まずは焼き立てのクロワッサンをひとつ。外はサクサク、中からはバターの香りがふわっと広がる。この味わいはまぎれもなくフランスのものだ。インド洋の真ん中で、これほど本格的なパンが楽しめることに改めて感動した。
通りの一角には、シラオスの特産品を扱う店が点在している。とくに有名なのが「レンズ豆(Lentilles de Cilaos)」と「シラオスワイン(Vin de Cilaos)」だ。火山灰の土壌で育つ小粒のレンズ豆は、この地ならではの味わいを持つ。そして、かつては安ワインの代名詞とされたシラオスワインは、ここ数年で品質が飛躍的に向上し、地元でしか味わえない希少な一品として注目されている。後ほどレストランで試すのが楽しみだ。
旅の拠点となる宿泊先の選び方
シラオスには、高級ホテルから中規模ホテル、さらに「ジット(Gîte)」と呼ばれる民宿や山小屋まで、多様な宿泊施設が揃っている。
- ホテル: 快適さを重視するならホテルが最適だ。多くは村の中心に位置し、レストランや温泉施設へのアクセスも良好だ。予約はBooking.comなどのホテル予約サイトで手軽にできる。
- ジット(Gîte): より地元の暮らしを感じたいならジットがオススメだ。家族経営の温かなもてなしを受けられ、他の旅人と交流できるのも魅力だ。予約はGîtes de Franceの公式サイトや個人経営のジットのウェブサイトから直接申し込むことが多い。簡単なフランス語が話せると予約や会話がスムーズに進むだろう。
今回、私は村の中心から少し離れた見晴らしの良い丘の上にある小さなホテルを選んだ。部屋のバルコニーからは、カルデラを形成する壮大な岩壁「ランパール」が一望できる。夕暮れ時、この景色を眺めながらビールを飲むひとときは、何ものにも代えがたい贅沢な時間だった。
霧に包まれる幻想的な夕暮れ時
シラオスの午後は天候の変化が激しい。晴れ渡っていた空に突然雲が湧き上がり、あっという間に村全体が濃い霧に包まれることがある。その光景はまるで村が雲の中に浮いているかのような幻想的なものだ。
霧は視界を遮る困りものでもあるが、一方でシラオスに神秘的な表情を与える演出家でもある。霧の中、街灯のオレンジ色の灯りがぼんやりと滲む道を歩いていると、まるで異世界に迷い込んだような錯覚に陥る。この静けさと湿った空気もまた、シラオスが見せる忘れがたい一面のひとつなのだ。
カルデラの恵みを味わう – 食と文化
旅の楽しみの半分は、その土地ならではの食にある。シラオスは、フランス文化とクレオール文化(アフリカやインド、マダガスカルなどの要素が混ざり合ったレユニオン独特の文化)が融合した、ユニークな食文化が息づく地だ。
名物レンズ豆料理とクレオール料理
村のレストランに足を踏み入れると、メニューにはほぼ必ず「レンズ豆」を使った料理が見られる。中でも代表的なのが「カリ・ソシス・ランティーユ(Cari Saucisses Lentilles)」。スパイシーなソーセージをトマトベースの「カリ」で煮込み、塩茹でしたレンズ豆を添えた、レユニオンを象徴する郷土料理だ。
素朴ながらもしっかりと豆の風味が楽しめ、深みのある味わいが特徴だ。付け合わせの唐辛子ペースト「ルガイユ(Rougail)」を少量加えると、ピリリとした辛味がアクセントとなり、一層食欲をそそる。
他にも鶏肉を使った「カリ・プーレ(Cari Poulet)」や魚介を用いた「カリ・ポワソン(Cari Poisson)」など、多彩なカリ料理が揃う。これらは通常、白米とレンズ豆を合わせていただくのがレユニオン流。ボリュームもたっぷりで、ハイキングで疲れた体にエネルギーを補給するのにぴったりの一皿だ。
レストランでの注文ポイント
- メニュー: フランス語のみのものも多いが、「Plat du Jour(本日の料理)」は、その日のお勧めが手頃に味わえるため狙い目だ。
- 簡単なフランス語フレーズ:
- こんにちは: Bonjour(ボンジュール)
- ありがとう: Merci(メルシー)
- お会計お願いします: L’addition, s’il vous plaît(ラディシオン、シルヴプレ)
- これをください: Je voudrais ça(ジュ ヴドレ サ)※メニューを指差しながら
これらを覚えておくだけで、現地でのコミュニケーションがぐっとスムーズになる。
ここでしか味わえない、シラオスワインの魅力
ディナーの際には、迷わず「シラオスワイン」を選んだ。シラオスはフランス最南端のワイン産地であり、標高600メートルから1300メートルの急斜面で葡萄が栽培されている。
私が選んだのは白の甘口タイプ。熱帯の果実を思わせる華やかな香りと、爽やかな甘みが特徴で、スパイシーなクレオール料理と非常によく合った。かつては違法栽培された葡萄から低品質のワインが作られていた時代もあったが、品種改良や醸造技術の進歩により、現在はレユニオン観光局の公式サイトでも紹介されるほど、この地特有の個性を誇るワインとして評価されている。村には「Chai de Cilaos」というワイナリーもあり、見学や試飲が可能。ワイン愛好家にはぜひ訪れてほしいスポットだ。
繊細な技、ジュール・ド・シラオス
シラオスにはもうひとつ誇るべき文化がある。それが「ジュール・ド・シラオス(Jours de Cilaos)」と呼ばれる、繊細な白糸刺繍の技術だ。19世紀の終わり頃、とある修道女によって伝えられたこの技は、母から娘へと脈々と受け継がれ、現在ではフランスの無形文化遺産にも登録されている。
布の織り糸を抜き取り、残った糸を丁寧に束ねてかがっていくことで、まるでレースのような透かし模様を織りなす。非常に手間のかかる作業だ。村には「刺繍の家(Maison de la Broderie)」があり、その歴史や作品を鑑賞できるほか、実際に刺繍製品を購入することもできる。テーブルクロスやハンカチ、ブラウスなど、どれも芸術品のように美しい仕上がりだ。旅の記念品や大切な人への贈り物として、これほど特別なものは他にないだろう。
大自然と一体になる – アクティビティ完全ガイド

シラオスの真骨頂は、その壮大な自然環境にあります。村を拠点に少し足を伸ばせば、そこは冒険の宝庫です。ハイキングやキャニオニング、温泉など、カルデラの大自然を全身で感じる準備を始めましょう。
絶景を求めて歩く冒険、ハイキング(トレッキング)
シラオス圏谷は、多数のハイキングコースが網の目のように整備されており、ハイカーたちにとっての聖地です。レユニオン島最高峰のピトン・デ・ネージュ(Piton des Neiges、標高3070m)への登山道もこのシラオスが起点となっています。「レユニオン島の火山峰、圏谷群、絶壁群」としてユネスコ世界自然遺産に登録されたこの地域を歩かずしてはもったいないでしょう。
おすすめのハイキングコース
- 初心者向け:ラ・ロッシュ・メルヴェイユーズ(La Roche Merveilleuse)
村から車か徒歩でアクセス可能な展望台で、シラオスの村とその周囲を囲むランパールの壮大な景色が一望できます。軽い散策に近いコースですが、まずはここでカルデラの大きさを実感するのがおすすめです。
- 中級者向け:ブラ・ルージュの滝(Cascade de Bras Rouge)
村を出発して谷底へと下るルート。往復で3~4時間程度です。赤い岩盤を渡る川やいくつかの滝を巡ることができるほか、途中で川を渡る場所もあるため、滑りにくい靴の用意が必須。最後に待つ滝の美しさは格別で、大きな達成感を味わえます。
- 上級者向け:ピトン・デ・ネージュ登頂
レユニオン島の最高峰を目指す本格的な登山で、一般的には山小屋(Gîte de la Caverne Dufour)に1泊する1泊2日の行程です。山頂からのご来光は一生忘れられない光景と称されます。十分な体力と装備、そして丹念な計画が不可欠です。
準備と持ち物リスト
シラオスでのハイキングを安全に満喫するため、次の準備は欠かさないようにしましょう。
- 必須装備
- 登山靴・トレッキングシューズ: 足首を保護するハイカットタイプで、防水性があるものが望ましい。スニーカーは安全面から避けるべきです。
- レインウェア(上下セパレート): 山の天気は急変しやすく、防寒具としても役立ちます。
- バックパック: 20~30リットル程度の日帰りザック。ザックカバーも忘れずに用意しましょう。
- 水と食料: 最低でも1.5リットル以上の水と、ナッツやドライフルーツ、エナジーバーなどの行動食を必ず携帯してください。
- ヘッドライト: 日帰りでも、道に迷ったり下山が遅れたりする可能性があるため、必ず持参してください。
- 地図とコンパス(またはGPSアプリ): スマホのGPSは便利ですがバッテリー切れのリスクを考慮し、紙の地図も携帯すると安心です。村の観光案内所(Office de Tourisme)でハイキングマップを入手可能です。
- 防寒着: 標高が上がると気温が急激に下がるため、フリースや薄手のダウンなど重ね着しやすいものが必要です。
禁止事項とルール
シラオス周辺の多くはレユニオン国立公園に指定されており、自然保護のために以下のルールを必ず守りましょう。
- 植物や岩石の持ち帰りは禁止。
- 指定場所以外でのキャンプや焚き火は禁止。
- ゴミは必ず持ち帰ること。
- トレイルからは外れずに歩くこと。
これらは、手つかずの自然を未来に残すために旅人として守るべき最低限のマナーです。
渓谷を満喫するキャニオニング
さらに刺激を求めるならキャニオニングに挑戦するのもおすすめです。キャニオニングはロープを使って滝を降りたり、天然のウォータースライダーを滑り降りたり、滝壺に飛び込んだりしながら渓谷を下っていくリバースポーツです。
シラオス周辺の渓谷はキャニオニングの名所として知られており、初心者向けの半日コースから経験者向けの1日コースまで、レベルに応じて多様なツアーが催行されています。
キャニオニングツアー申し込みの流れ
- 村の観光案内所や、アウトドア専門のツアー会社で予約可能です。インターネットで「Canyoning Cilaos」と検索すると複数の会社のサイトが見つかるため、事前に比較し予約しておくと安心です。
- 服装について: ウェットスーツ、ヘルメット、ハーネスなどの専門装備はツアー会社が貸し出します。自分で用意するのは、ウェットスーツの下に着る水着と、濡れても構わない靴(かかとを固定できるスポーツサンダルや古くなったスニーカーなど)だけで大丈夫です。
- 注意点: 水が苦手な方や高所恐怖症の方には向きません。自身の体力と相談し、無理のないコースを選びましょう。ガイドの指示を必ず守り、安全第一で楽しんでください。
旅の疲れを癒すシラオスの温泉
激しいアウトドア活動で疲れた体を癒やすのに最適なのが、シラオスの温泉(テルメ)です。シラオスはレユニオン島唯一の温泉地でもあります。
「Etablissement Thermal Irénée Accot」では、水着で利用するスパ施設と伝統的な温泉治療施設が併設されています。スパエリアではジャグジーやハマム(ミストサウナ)を楽しめ、旅の疲れをリフレッシュするのにぴったりです。
利用方法と持ち物
- 利用方法: 受付で料金を支払い、ロッカーの鍵を受け取ります。多くの場合予約は不要ですが、混雑時には入場制限がかかることもあります。
- 持ち物: 水着とタオルは必須。忘れた場合は現地で購入またはレンタルも可能ですが、持参するのが望ましいでしょう。
火山カルデラの中心部で温泉に浸かる贅沢は他にありません。窓外に広がるランパールの絶壁を眺めながら湯に浸かれば、身体の芯からゆっくりとほぐれていくのを実感できるはずです。
旅のTIPSと心構え – シラオスを120%楽しむために
最後に、シラオスでの滞在をより快適で思い出深いものにするためのいくつかのポイントをまとめてみよう。元整備士として培った経験と、これまでの旅で得た知識が、少しでもあなたのお役に立てれば嬉しい。
気候と服装は「一枚多めに」が鉄則
シラオスは標高が高いため、年間を通して比較的涼しい気候が続く。日中はTシャツ一枚で過ごせることもあるが、朝晩はかなり冷え込む。特に乾季(5月から11月)は、最低気温が10℃を下回る日も珍しくない。
服装の基本は「重ね着(レイヤリング)」だ。
- ベースレイヤー: 半袖Tシャツ
- ミッドレイヤー: 長袖シャツやフリース、薄手のセーター
- アウター: 防水・防風性のジャケット(レインウェアとしても使えるものが便利)
日中は暖かくても、ハイキング時や夕方以降に外出するときは、必ずもう一枚羽織るものを持ち歩こう。霧が発生すると体感温度がさらに下がるため注意が必要だ。
通信環境は過度な期待をしないほうがベター
村の中心部ではホテルのWi-Fiや4G回線が利用できるが、村を離れてハイキングコースに入ると電波が途切れやすい。
- SIMカード: 空港や街の携帯ショップで、OrangeやSFRなどの通信会社のプリペイドSIMを購入可能。フランス本土と同じSIMが使えるので、パリ経由ならパリの空港で事前に入手しておくのも便利だ。
- オフラインマップ: Googleマップは、エリアを事前にダウンロードしておけばオフラインでも使用できる。ハイキング用のGPSアプリも地図データをオフライン用にダウンロードしておくことを強くおすすめする。
電波が届かないことを前提に準備しておくと、トラブルを回避しやすい。
旅を彩るドライブ&ハイキング用BGMリスト
これは完全に僕の個人的な趣味だが、旅に音楽は欠かせない。シラオスの曲がりくねった道や雄大な景色の中を歩くときに聴きたいおすすめのBGMをいくつか挙げてみよう。
- ドライブ向け:
- Daft Punk – “Get Lucky”: 軽やかなリズムが、続くカーブを爽快に攻める気分を盛り上げてくれる。
- Phoenix – “Lisztomania”: フランスのバンド。爽快なサウンドが青空の広がる南国の風景にぴったりだ。
- 山下達郎 – “RIDE ON TIME”: 国境を越えて走る名曲。果てしなく続く道を駆け抜けたくなる。
- ハイキング&リラックス用:
- Bon Iver – “Holocene”: 壮大な自然の静けさと内省的な雰囲気に素晴らしくマッチする。
- Sigur Rós – “( )”: 言葉に頼らない音楽が、目の前の景色をさらに雄大に感じさせる。
- 久石譲 – “Summer”: 歩き疲れた後にシラオスの村を眺めながら聴くと、なぜか懐かしく優しい気持ちになれる。
音楽は旅の思い出をより鮮やかに彩る最高のスパイス。あなたの旅にも、ぜひお気に入りの一曲を連れて行ってほしい。
再び走り出す、その約束を胸に

シラオスでの数日間は、まるで夢の中にいるかのような時間だった。険しい道を乗り越えた先に広がる、穏やかで美しい村。カルデラの断崖に見守られながら、人々はワインを醸し、豆を育て、繊細な刺繍を織り成している。フランスでありながら、他にはない特別な場所。それがシラオスだった。
早朝、宿のバルコニーから朝日に染まるピトン・デ・ネージュを眺めた。雲ひとつない空に、鋭く切り立った山の姿がシルエットとなって浮かび上がっている。昨日の霧はまるで夢のようだ。この風景も、そしてあの霧に包まれた景色も、どちらもシラオスの本当の姿なのだ。
そろそろ、この天空の集落に別れを告げる時がやってきた。再びあの400ものカーブを下り、海岸線へと戻っていく。そして私の旅は、次の目的地へと続いていくのだ。
レンタカーのエンジンをかけると、心地よい振動が全身に伝わってきた。サイドミラーに映るシラオスの村が徐々に小さくなっていく。さよならではない。また必ず、この道を走りに戻ってくる——そんな約束を胸に秘めながら、私はゆっくりとアクセルを踏み込んだ。インド洋を渡る風が、新たな旅の始まりを告げていた。この素晴らしい体験を、ぜひあなたにも味わってほしい。シラオスは、訪れるすべての旅人に、その雄大な自然と温かな文化で優しく迎えてくれるに違いない。さあ、次はあなたの番だ。まずは、フランス観光開発機構の公式サイトで、この魅力あふれる島の情報を集めてみてはいかがだろうか。

