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    「刃の森」ツィンギ・デ・ベマラ厳正自然保護区へ。マダガスカルの秘境で見た、自然の暴力的な美しさ

    ヨーロッパの石畳の街を夫と二人、気の向くままに歩く。そんなゆったりとした長期滞在の旅を重ねてきた私たちが、次なる目的地として選んだのは、アフリカ大陸の東に浮かぶ巨大な島、マダガスカルでした。目指すは、島の西部に広がる世界遺産「ツィンギ・デ・ベマラ厳正自然保護区」。写真で見たその光景は、私たちの知るどんな「絶景」とも異質でした。天に向かって突き出す無数の鋭利な石灰岩の刃。まるで地球がその骨格を剥き出しにしたかのような、荒々しく、そしてどこか神聖ささえ感じさせる風景。子育ても一段落し、時間という贅沢を手に入れた今だからこそ、訪れることができる場所。そんな予感が、私たちを強く惹きつけたのです。それは、ただ美しい景色を眺めるだけの旅ではない、地球の奥深くへと分け入っていくような、冒険の旅の始まりでした。

    それは、ただ美しい景色を眺めるだけの旅ではない、地球の奥深くへと分け入っていくような、冒険の旅の始まりでした。もしかしたら、私たちは生命の鼓動が響く最後の秘境を追い求めているのかもしれません。

    目次

    ツィンギとは何か、針の山が生まれるまで

    マダガスカルの言葉で「裸足では歩けない場所」という意味を持つのが「ツィンギ」の名前の由来だと、現地のガイドが教えてくれました。その名にふさわしく、一歩足を踏み入れると、鋭く尖った石灰岩がまるでナイフのように容赦なく行く手を阻みます。この奇異な光景は、一体どのようにして築かれたのでしょうか。

    話は遥か2億年前までさかのぼります。この地がまだ海底だった時代、サンゴや貝殻などの生物の死骸が積み重なり、厚い石灰岩の層を作り上げました。やがて地殻変動によって隆起し、地上に姿を現した石灰岩は、長い年月をかけてマダガスカルの激しい雨風に晒されていきます。石灰岩は水に溶けやすい性質を持つため、雨水は岩の弱い部分や亀裂を通って内部に浸透し、徐々に侵食を進めました。

    地表では酸性雨が垂直方向に深い溝を刻み、まるでカミソリの刃のように鋭利な岩峰群を生み出しました。一方、地下では巨大な洞窟や地下水脈が発達していきました。この地上と地下の両面からの壮大な侵食作用が、何百万年という想像を超える時間をかけて形作った自然の芸術作品こそが、ツィンギなのです。この特殊な地形はカルスト地形と称され、その中でもツィンギ・デ・ベマラは世界最大級の規模と最も鋭い形状を誇り、1990年にユネスコの世界遺産に登録されました。

    この保護区では、観光客が立ち入れるエリアが厳格に制限されています。大きく分けて、より広大で険しい「グラン・ツィンギ(大きなツィンギ)」と、比較的アクセスしやすく規模の小さい「プティ・ツィンギ(小さなツィンギ)」の二つの区域に分かれています。私たちが目指したのはもちろん、この地の真髄に触れることができるグラン・ツィンギ。そこには、単なるトレッキングとは異なる、本格的な冒険が待ち受けていました。

    いざ、刃の森へ。モロンダバからの長い道のり

    ツィンギへの旅は、西部の町モロンダバを起点にスタートします。この町は、あの有名な「バオバブの並木道」があることで知られています。しかし、モロンダバからツィンギまでの道のりは、ヨーロッパの整備された高速道路とはまったく異なる世界でした。

    ツアーの選択と準備

    日本を出発する前に、私たちは複数の旅行会社を比較検討し、評判の良い現地のツアー会社に直接連絡を取りました。シニア世代の旅行では、まず何より安全性と信頼性が重要です。メールで年齢や体力の不安を率直に伝え、無理のないプランを提案してくれるか、対応の早さや丁寧さを判断材料にしました。最終的には、経験豊かなドライバーと英語を話せる専属ガイド、そして頑丈な四輪駆動車を用意してくれる会社に決定しました。料金は決して安くありませんでしたが、この過酷な旅程を考えると、賢明な投資だったと思います。

    現地で手配する場合は、モロンダバのホテルやツアーオフィスで交渉することになりますが、車の状態やガイドの質にばらつきがあるため、事前の情報収集が欠かせません。特に乾季のピークシーズン(6月〜10月)は混雑するため、日本からの事前予約が安心です。

    赤土の道と川渡り

    朝早く、モロンダバのホテルを出発した私たちのランドクルーザーは、すぐに未舗装の悪路へと進みました。舗装されているとは言い難く、赤土が固められただけの轍(わだち)が連なっています。車は激しく上下に揺れ、シートベルトを締めていても体が浮くほどでした。窓の外には乾いた大地に点在するサボテン、そして時折姿を現す巨大なバオバブの木々が流れていき、まぎれもなくアフリカの大地を感じさせました。

    数時間の走行の後、私たちの前には大きなツィリビヒナ川が広がっていました。橋はなく、渡る手段は車ごと乗り込む「バージ」と呼ばれる平底の渡し船だけです。数台の車が乗り込むと、エンジン付きの小舟に引かれゆっくりと川を渡り始めました。岸辺では水浴びをする子供たちの歓声が響き、女性たちは洗濯をしていました。エンジンの音や人々の声、そして雄大な川の流れが織り成す光景は、これから始まる冒険の予感を感じさせるものでした。

    川渡りの便は一日に数本しかなく、時刻も不定期です。私たちが到着した際には、すでに出発した後で次の便まで約2時間の待ち時間がありました。しかし、その待ち時間ですら旅の味わいの一部でした。ガイドが近くの村へ案内してくれ、地元の人々の生活を少し垣間見ることができました。急ぐ旅ではないからこそ、こうした思いがけない出来事も楽しむ心の余裕が重要です。

    川を渡った後もさらに悪路を数時間走り、途中でマナンブール川を同じくバージで渡りました。陽が傾き始めた頃、ようやくツィンギの麓の村ベコパカに到着しました。モロンダバから約200kmの道のりを、実に10時間近くかけて移動したことになります。体は長時間の揺れで疲労困憊でしたが、明日目にする未知の風景への期待が疲れを忘れさせてくれました。ベコパカのロッジは素朴ながら清潔で、温かいシャワーとおいしい食事が長旅の疲れを優しく癒してくれたのです。

    グラン・ツィンギ探訪:天空の吊り橋と絶壁のヴィア・フェラータ

    翌朝、夜明けとともに行動を開始しました。ロッジで朝食を済ませてから車に乗り込み、グラン・ツィンギ入口へ向かいます。入り口のオフィスで国立公園のレンジャーと合流し、いよいよ核心部への踏み出しです。そこでまず手渡されたのは、ヘルメットとハーネス。そう、グラン・ツィンギの探検は一般的なハイキングではなく、「ヴィア・フェラータ」と呼ばれる登山技術を駆使した、本格的なアクティビティなのです。

    服装および持ち物の最終確認

    この冒険に臨むにあたって、準備は入念に整えてきました。服装は、尖った岩から肌を守るための丈夫な長袖シャツと長ズボンを選択。足元は滑りにくいグリップ力抜群のトレッキングシューズを履いています。日差しが強烈なので、つば広帽子とサングラス、さらに日焼け止めは欠かせません。そして何より大切なのは、十分な水分の確保です。私たちはそれぞれ1.5リットルの水をリュックに入れて持参していました。

    忘れてはならないのが、頑丈な手袋です。ヴィア・フェラータでは、岩に打ち込まれたワイヤーや鉄製の梯子を素手で握る場面が多々あります。怪我の防止としっかりしたグリップを得るため、ワークマンなどで販売されている滑り止め付き作業用手袋がとても役立ちました。また、カメラやスマートフォンには必ず落下防止のストラップを装着しましょう。一度手を滑らせれば、二度と取り戻せない奈落へ落ちてしまうこともあり得ます。

    国立公園のルールは厳格です。ガイドの指示には必ず従うこと、指定されたルート以外には決して入らないこと、ゴミはすべて持ち帰ること、そして当然ながら動植物には触れないことや、岩を持ち出すことは禁止されています。この唯一無二の自然環境は、訪れるすべての者の責任ある行動によって守られているのです。

    絶壁を登拝するヴィア・フェラータという挑戦

    レンジャーからハーネスの正しい装着方法を丁寧に教わりました。腰と太ももにベルトをしっかり固定し、胸の前には「カラビナ」と呼ばれる金属フックが二つ。このカラビナをルートに沿って張られた命綱のワイヤーに常に掛け換えながら進みます。一方のカラビナを外して次のワイヤーにかけ、安全を確保してからもう一方を掛け換える。「常にどちらか一方はワイヤーにつながっている状態を保つ」というシンプルながら重要なルールが、私たちの安全を守ってくれているのです。

    最初は、緑濃い森の中を緩やかに歩く道でしたが、それもつかの間、巨大な石灰岩の壁が眼前に立ちはだかりました。ここからがヴィア・フェラータの本領発揮です。岩肌に打ち込まれた鉄杭を足場にし、ワイヤーを握りながら一歩ずつ、ほぼ垂直の壁を登っていきます。50代の私にとって決して易しい挑戦ではありません。腕や脚の力、そしてバランス感覚が試されます。夫と声をかけ合い、レンジャーからの「足元をよく見て!」という的確な助言に励まされながら、ゆっくりと高度を上げました。

    時には狭い岩の割れ目をカニ歩きのように進み、真っ暗な洞窟をヘッドライトの光だけを頼りに抜けるなど、コースには多彩な変化があります。それはまるで地球の内部を探検しているかのような感覚です。息が上がり汗が流れますが、恐怖を上回る好奇心が勝ります。普段は使わない筋肉が悲鳴をあげ始めますが、アドレナリンがその痛みをかき消してくれました。

    はるか眼下に広がる石の針の海

    苦労して絶壁を登りきると、言葉を失うほどの光景が待っていました。岩の頂上に設けられた展望台から見下ろすのは、果てしなく続く石の針の群れ。灰色がかった白い石灰岩の尖塔が無数に、そして容赦なく空に向かって突き立っています。それぞれが自然という名の彫刻家の手によって、膨大な時間をかけて創り出された芸術作品です。人の手が加えられる余地など一切ありません。

    「暴力的な美しさ」――そんな言葉が脳裏に浮かびました。ヨーロッパの風光明媚な景色や、日本の穏やかな自然とはまったく異なる世界。生命を拒絶するような尖鋭さと荒々しさを持ちながら、その圧倒的なスケールと、まるで計算されたかのような造形からは抗しがたい美が感じられます。太陽光を浴びて輝く岩肌、深い影を落とす谷間。その明暗のコントラストがツィンギの立体感を一層際立たせていました。私たちはただ呆然と立ち尽くし、この地球が生み出した奇跡を目と心に刻み込んだのです。

    谷間に架かる吊り橋、恐怖と感動の空中散歩

    展望台での感動に浸る間もなく、次の試練が待ち受けていました。ツィンギの象徴とも言える、天空に架かる吊り橋です。深い谷を隔てる二つの岩峰の間に、頼りなげな一本の橋がかかっています。足場は板が数枚渡されているだけで、その隙間からは遥か谷底が見え、足がすくみます。

    「さあ、行きましょう!」とレンジャーは笑顔で先に渡り始めました。覚悟を決め一歩を踏み出すと、橋は人の動きに合わせてギシギシと軋み、左右に小さく揺れます。ハーネスが頭上のワイヤーにしっかり繋がれていると理性では分かっていても、本能的な恐怖がこみ上げてきて抑えきれません。夫は高所が得意でないようで、顔が緊張でこわばっているのがわかりました。

    「下を見ないで、前だけを見て!」

    お互いに励まし合いながら、ゆっくりとしかし確実に進んでいきます。橋の中ほどまで辿り着いた時、恐怖が一瞬和らぎ周囲を見渡す余裕が生まれました。そこには360度に広がるツィンギの大パノラマが広がっていました。先ほどは上から一望した石の森を、今度はその真ん中の空中で浮遊しながら見下ろしています。風が頬を撫で、遠くから鳥のさえずりが聞こえる。このスリルと絶景が一体となった感覚は、まさに旅のハイライトでした。恐怖を克服した者にだけ訪れる、かけがえのないご褒美です。無事に渡りきった時の安堵感と達成感は、何ものにも代えがたいものでした。

    ツィンギに息づく生命たち:過酷な環境を生き抜く固有種

    一見すると鋭くとがった岩が広がり、生命の気配がまったく感じられないように見えるツィンギ。しかし、実際には驚くほど多様な生態系が息づく場所でもあります。マダガスカル国立公園の公式サイトによると、この地域には非常に高い固有種の割合を誇る動植物が数多く生息しているそうです。過酷な環境に順応し、独自の進化を遂げた生命の強さを、私たちは間近で感じることができました。

    トレッキング中、ガイドが急に立ち止まり、静かに一方向を指さしました。目を向けると、灰色の岩肌と同化するかのような白い毛並みのキツネザル、デッケンシファカがいました。彼らは重力が存在しないかのように、鋭い岩から岩へ軽やかに跳び移っていきます。その卓越した身体能力に、思わず声をあげて感動しました。こんな過酷な環境を住処にし、たくましく生き抜いているのです。

    足元を見ると、不思議なかたちの植物が岩の隙間から力強く根を張っていました。乾燥に耐えるために葉を小さくしたり、分厚く多肉質な幹を持つものもあります。中には、根から岩を溶かす酸を分泌して岩盤にしっかりと食い込む植物もいるそうです。また、日陰で湿った谷底には、全く異なる植生が広がり、シダ類が生い茂っていました。

    カメレオンや鮮やかな色彩のトカゲ、そして固有種の鳥たち。ガイドは巧みに隠れた生き物を次々と見つけ出し、私たちに教えてくれます。ツィンギは単なる岩の集まりではありません。岩峰の一つ一つ、谷底、洞窟の内部……それらすべてが多様な生命を育む複雑なシェルターとなっているのです。この発見は、ツィンギに抱いていた「荒々しい美」という第一印象に、生命の力強さという新たな色彩を添えてくれました。

    シニア世代のためのツィンギ旅行プランニング

    この素晴らしい体験を、ぜひ同じ世代の方々にも味わっていただきたいと思います。ただし、ツィンギの旅には一定の体力としっかりした準備が必要であることも事実です。ここでは、私たちの実体験をもとに、シニア世代がツィンギを安全かつ快適に楽しむための具体的なポイントをまとめました。

    体力に応じたコースの選択

    グラン・ツィンギのヴィア・フェラータは非常に魅力的ですが、体力に自信がない方や高所恐怖症の方にはややハードかもしれません。しかし、それを理由にツィンギの魅力を諦める必要はありません。

    • プティ・ツィンギ: グラン・ツィンギと比べて規模は小さいものの、ツィンギ独特の風景を十分に満喫できます。ヴィア・フェラータのような専門装備は不要で、整備された遊歩道や階段を歩きながら、複雑に入り組んだ岩の間を散策可能です。比較的短時間で回れるため、体への負担も少ないでしょう。
    • マナンブール川のカヌー下り: もうひとつのおすすめは、現地の丸木舟(ピローグ)を使った川下りです。歩く必要がなく、舟に揺られながら、川岸にそびえるツィンギの断崖や洞窟を眺められます。水鳥や運が良ければ水を飲みに来たキツネザルにも出会えます。ゆったり流れる時間の中で、異なる角度からツィンギの壮大さを感じることができる貴重な体験です。

    最も重要なのは、ご自身の体力や健康状態を冷静に見極め、決して無理をしないことです。ツアーを予約するときは、どのコースがあるのかをよく調べ、自分に合ったプランを選ぶようにしましょう。

    現地の治安と医療状況

    安全な旅を実現するために、治安と医療体制は無視できないポイントです。マダガスカルの首都アンタナナリボなど都市部ではスリや置き引きなどの軽犯罪が発生していますが、私たちが訪れたモロンダバやベコパカの地方の村は比較的穏やかで治安も落ち着いている印象でした。ただし、ガイド同行は必須で、夜間の単独行動は避け、貴重品は持ち歩かないなどの基本的な防犯対策は欠かせません。

    特に気をつけたいのが医療面です。ツィンギがあるベコパカ村には最新設備の病院がありません。もしトレッキング中にケガや急な体調不良が起こった場合、高度な医療をすぐに受けることは難しい状況です。

    このリスクに備え、私たちは以下の準備を徹底しました。

    • 常備薬の持参: 胃腸薬、鎮痛剤、絆創膏、消毒液など基本的な応急セットのほか、持病がある方は処方薬を多めに持っていくことをおすすめします。
    • 海外旅行保険の加入: これは必須です。単に治療費が補償されるだけでなく、必要に応じて都市部の病院や日本へ医療搬送してくれる「緊急移送サービス」が付帯した保険を選びましょう。保険証券はコピーを取り、すぐに提示できるように用意しておくことも大切です。

    体調に少しでも異変を感じたら我慢せず、速やかにガイドに伝えましょう。彼らは緊急時の対応に熟練しています。勇気をもって撤退を選ぶことも、旅を成功させる上で重要な判断です。

    ツアー会社とガイドの選択ポイント

    信頼できるツアー会社やガイドを見つけることは、旅の満足度を大きく左右します。私たちが会社を選ぶ際に重視したのは、口コミや評判のほか、問い合わせへの返信が迅速かつ丁寧であることでした。何度もメールで質問を重ね、私たちの疑問に真剣に答えてくれる会社にお願いしました。

    優れたガイドは、安全管理だけでなく、その土地の自然や文化について豊富な知識を持ち、旅を何倍も充実させてくれます。私たちのガイドは、動植物の名前はもちろん、マダガスカルの歴史や住民の生活についても詳しく教えてくれ、移動時間も飽きることがありませんでした。

    ツアー料金に宿泊費、食費、公園入場料、ガイド料などが含まれているかを事前に確認し、キャンセルポリシーや変更時の返金についても契約前に書面でしっかりチェックしておくことが安心につながります。マダガスカル政府観光局の公式サイトなどを参考にしながら、複数の会社を比較検討されることをおすすめします。

    地球の記憶に触れた旅

    モロンダバへ戻る長い道中、揺れ続ける車内で、私はツィンギの光景を何度も思い返していました。無数の刃のように鋭い岩石は、二億年という人間の想像をはるかに超えた時の結晶です。そこには、地球の息吹と歴史が刻まれていました。

    私たちは文明の道具であるハーネスを使い、わずかにその神秘の懐に触れさせてもらったにすぎません。圧倒的な自然の前で、人間の無力さと小ささを思い知らされました。それは決して絶望ではなく、この偉大な地球の一部であることへの深い畏敬と敬意の念でした。

    ツィンギの旅は、ただ美しい景色に感動する以上のものでした。自然の持つ優しさだけでなく、厳しさや荒々しさ、そして抗い難い「暴力的な美」を知ることで、私たちの価値観を揺さぶる体験となりました。その両面を理解することで、自然という存在をより深く感じ取れた気がします。

    帰国し日常に戻った今でも、ふとした瞬間にあの鋭い岩の海が鮮明に甦ります。そして思うのです。私たちの知らない地球の姿は、まだ世界のどこかに隠されているのだろうと。この足で歩き、この目で見て、この肌で感じる旅を、これからも続けていきたいと。ツィンギは、私たち夫婦に新しい旅への情熱と尽きることのない好奇心を再び与えてくれた、忘れがたい場所となったのです。

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    この記事を書いたトラベルライター

    子育てひと段落。今は夫と2人で「暮らすように旅する」を実践中。ヨーロッパでのんびり滞在しながら、シニアにも優しい旅情報を綴ってます。

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