ナイルの恵みが生んだ悠久の文明、エジプト。その心臓部である首都カイロは、ピラミッドやスフィンクスといった古代遺跡の玄関口としてあまりにも有名ですが、私の目的はただ一つ。この混沌と活気が渦巻く大都市の路地裏に眠る、魂を揺さぶるほどの「辛さ」と「旨さ」を秘めたローカルフードを探し出すこと。どうも、スパイスハンター・リョウです。世界中の食卓に潜む刺激を追い求め、今日も私の舌と胃袋は燃えています。カイロの食文化は、ファラオの時代からアラブ、オスマン帝国、そしてヨーロッパの影響を受け、幾重にも重なる歴史の地層のように深く、複雑で、そして何より魅力的です。今回は、観光客向けのレストランでは味わえない、地元の人々の日常に根付いた本物の味、そして私の旅の信条である「その国で最も辛い料理」を求めて、カイロの食の迷宮へと分け入っていきます。さあ、熱砂とスパイスが織りなす美食の旅に、一緒に出かけましょう。
この混沌と活気に満ちた都市の魅力をさらに深く知りたい方は、古代と現代が交差するカイロの街そのものについての記事もご覧ください。
カイロの食の心臓部へ!ローカルフードの基本の「き」

カイロの食文化を語る際、まず押さえておきたいのはその背後にある多彩な文化の融合です。この街の料理は、単に「アラブ料理」と一括りにできるものではありません。古代エジプトから伝わる豆類や穀物を基盤に、地中海地域から取り入れられたオリーブオイルや野菜、オスマン帝国がもたらしたケバブやナッツを用いた菓子、さらにアフリカ大陸の交易路を通じて伝来したスパイスが複雑に絡み合っています。この豊かな歴史をひも解く鍵は、日々の食卓に並ぶ地元の料理にこそあるのです。
必須の主食「アエーシ・バラディ」
エジプト人の食卓に欠かせないのが、「アエーシ・バラディ」という全粒粉で作られた平たいパンです。これは単なる添え物ではありません。スプーンであり、皿であり、料理全体を完成させる大切な役割を担っています。窯で焼き上げられたアエーシはふっくらと膨らみ、内部は空洞になっています。これを半分に裂いて、ポケット状の部分にフールやターメイヤを詰め込んだり、スープやソースをすくって食べるのがエジプト流。街のあちこちにあるパン屋からは、香ばしい焼きたての香りが漂い、カイロの日常風景を彩っています。このアエーシの存在こそが、エジプト料理の食べ方やスタイルを決定づけていると言っても過言ではありません。
料理に輝きを与えるスパイスの魔術
スパイス探求者として、私が最も魅了されるのはカイロのスパイス使いです。その料理の核をなすのはクミンとコリアンダー。この二つのスパイスは、肉料理から豆料理、スープに至るまで幅広く使われ、エジプト料理特有の土の香り高いエキゾチックな風味を生み出しています。加えて、ターメリック、チリ、パプリカ、カルダモン、クローブなどが巧みに配合され、味に奥行きと複雑さを加えています。特に辛さを好む私に欠かせないのが「シャッタ」と呼ばれる唐辛子ペーストです。これはカイロの食卓における切り札とも言える調味料で、どんな料理も瞬時に激辛の世界へと変貌させる魔法のソース。このシャッタとの出会いこそが、私のカイロ訪問の最大の目的でした。
国民食の王様「コシャリ」を極める旅
カイロのソウルフードと聞けば、多くの人が真っ先に「コシャリ」を思い浮かべるでしょう。米、マカロニ、パスタ、レンズ豆、ひよこ豆を一緒に混ぜ、その上にたっぷりのフライドオニオンをのせ、トマトソース、ニンニク酢(ダッア)、そして激辛のチリソース(シャッタ)をかけて混ぜながら味わう、炭水化物の饗宴ともいえる一品です。一見すると不思議な組み合わせに見えますが、一度口にすればやみつきになる、素晴らしい調和を生み出しています。
コシャリとは何か?その魅力に迫る
コシャリの起源には諸説ありますが、19世紀にインドから来たイギリス軍がもたらした米と豆を使った料理「キチュリ」と、イタリアのパスタ文化が融合して誕生したとされています。手頃で栄養価が高く、満腹感も得られることから、瞬く間にエジプトの庶民の定番の味となりました。コシャリの魅力は、その多様な食感にあります。もちもちしたマカロニ、ほくほくの豆、ふんわりした米、そしてカリッとしたフライドオニオンが、口の中で絶妙に溶け合う複雑なハーモニーは他の料理では味わえません。そして、それらを一つにまとめる3種のソース。程よい酸味のトマトソース、食欲をそそる香りのニンニク酢、魂を燃やすほどのシャッタ。このソースのバランスこそが、コシャリの味の決め手なのです。
実食レポート!スパイスハンター流コシャリの食べ方
カイロには数多くのコシャリ専門店がありますが、私が最初に訪れたのはダウンタウンに店を構える名高い「アブー・ターレク」です。煌びやかなシャンデリアが輝く店内は、まるでオペラハウスのような雰囲気ですが、そこでは庶民たちのコシャリ合唱が響き渡っています。席に案内されるとサイズを尋ねられるだけ。私は迷わず一番大きなサイズを選びました。銀色の皿に山盛りになったコシャリが運ばれてくると、まるでショーの幕開けです。
まずはソースをかけずにひと口味わい、素材それぞれの素朴な味を楽しみます。次にトマトソースとニンニク酢をたっぷりかけてよく混ぜると、この時点で既に完成された美味しさを感じられます。ですが、私の真の楽しみはここから。テーブルに置かれたシャッタの瓶を手にとり、躊躇なくコシャリの山に注ぎ込みます。最初はスプーン一杯。うん、心地よい刺激だ。二杯、三杯と追加していくと、店員の驚きの視線や隣席の家族連れの注目を浴び始めますが気にしません。私はスパイスの極みを目指す者。シャッタに沈められたコシャリを口に運ぶと、舌に激しい衝撃が走りました。唐辛子のストレートな辛味に加え、油に溶け込んだスパイスの複雑な香りが鼻へと抜けていきます。額には汗が吹き出し、心拍数も上がる。この刺激こそ、私が求め続けていたものです。辛みの向こうに広がる旨みの輪郭。具材たちはシャッタという名の熱きマグマの中で激しく踊り合い、一体となって新たな味覚の世界を創造しています。まさに混沌と調和が共存するカイロの街そのものを映し出した一皿でした。
コシャリ挑戦者のための実践ガイド
カイロでコシャリを味わうあなたに、いくつかのポイントをお伝えします。
- 注文からお会計までの流れ
多くのコシャリ専門店では、入店後席に座ると店員が注文を取りにきます。サイズ(スモール、ミディアム、ラージなど)を伝えるだけで注文完了のところが多いです。中にはコシャリしか扱わない店も珍しくありません。食べ終わったら店員に合図してから席で支払うのが一般的です。大きな紙幣はお釣りがないことが多いため、10〜50エジプトポンドの紙幣や硬貨を用意しておくとスムーズに済みます。
- 持ち物と準備について
ソースが飛び散ることが多いため、ウェットティッシュは必ず持参しましょう。地元の店では手洗い場が十分でない場合もあるので、手指消毒用のジェルもあると安心です。辛さが苦手な場合は、ヨーグルトドリンクの「ザバディ」や炭酸飲料を一緒に頼むのがおすすめです。
- 辛さトラブル時の対処法
万が一シャッタを入れすぎて辛すぎた場合は、慌てずに米やマカロニの追加が可能か店員に尋ねてみると良いでしょう(追加料金が発生することが多いです)。また、乳製品の効果で辛さを和らげられるため、ザバディを飲むのが最も有効です。無理をせず、自分の限界を知って楽しむことが重要です。食べきれない挑戦は計画的に行いましょう。
朝食の定番!ターメイヤとフール・メダンメス

カイロの朝は、街角の屋台から立ちのぼる香ばしい香りとともに幕を開けます。エジプト人の一日を支える二大名物、それが「ターメイヤ」と「フール・メダンメス」です。これらは単にカイロ市民の胃袋を満たすだけでなく、彼らの暮らしや文化に深く根ざした、まさに心のこもった朝食なのです。
ターメイヤ(エジプト風ファラフェル)のカリッとした食感に感激
ターメイヤは、中東各地で親しまれている「ファラフェル」のエジプト版にあたります。一般的なファラフェルがひよこ豆を原料としているのに対し、エジプトのターメイヤは乾燥そら豆を使い、パセリやコリアンダーなどのハーブをたっぷり練り込んでいるため、内部が鮮やかな緑色をしているのが特徴です。これを丸く形作り、高温の油で揚げると、外側は香ばしくカリッとし、内側は驚くほどふんわりした食感に仕上がります。屋台では、揚げたてのターメイヤをアエーシ・バラディ(エジプトの伝統的なパン)に挟み、サラダやタヒーナ(ごまペースト)ソースとともにサンドイッチにして提供するのが定番です。一口かじれば、軽やかなサクッという音と共に、ハーブの爽快な香りとそら豆のほのかな甘みが口いっぱいに広がります。値段も非常に手頃で、私もカイロ滞在中はほぼ毎朝、このターメイヤサンドを頬張っていました。スパイスというよりはハーブの饗宴とも言えるその味わいは、辛い料理の合間のひとときの癒やしとなり、私の舌をそっと和ませてくれたのです。
フール・メダンメス – エジプト人の心を満たす温かな一皿
ターメイヤと並ぶもう一つの朝の定番が「フール・メダンメス」です。これは乾燥そら豆を時間をかけて柔らかく煮込み、潰してペースト状にした温かい料理で、古代エジプト時代から食べられてきたと言われるほど歴史の長い一品です。提供される際には、オリーブオイル、レモン汁、クミン、刻んだパセリやトマトなどが添えられ、アエーシで掬いながらいただきます。その味わいは見た目以上に深いコクがあり、豆の濃厚な旨味とクミンの香りが体にじんわりと染みわたります。フールはタンパク質も豊富で腹持ちが良いため、肉体労働者から学生まで幅広い層の人々にとって、1日のエネルギー源となる重要な食事です。店によっては亜麻仁油を使ったり、バターや卵を加えたりと、様々なアレンジも楽しめます。辛いもの好きの私は、もちろんここにシャッタ(唐辛子ペースト)を追加。豆のまろやかさが唐辛子の鋭い辛さをやさしく包み込み、刺激的でありつつもどこかホッとする、まったく新しい味の世界を発見しました。
朝食屋台で美味しく楽しむためのポイント
カイロの路上屋台での朝食は格別の体験ですが、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
- 店選びのコツ:衛生面を重視する
屋台を選ぶ際に最も気をつけたいのは衛生面です。目安として、まずは地元の人たちで賑わっている店を選びましょう。行列ができているのはその店の味と信頼の証拠です。また、調理風景をよく観察し、使われている油が清潔か、食材の管理がしっかりしているか、店主の手際が良いかどうかをチェックするのも有効です。注文は指差しで問題なく済みます。
- 準備と持ち物
屋台での支払いはほとんどが現金です。特にサンドイッチ一つやフール一皿などの少額の買い物では、5ポンドや10ポンドといった小銭を用意しておくことが必須です。大きな紙幣を出すとお釣りがないと言われたり、嫌な顔をされることもあるため、いつも細かいお金を携帯しておくと安心です。
- 注意点:生野菜の扱いに気をつける
サンドイッチに入っている生のトマトやキュウリなどの野菜には少し注意が必要です。水道水で洗われている可能性があり、胃腸が弱い方は体調を崩すリスクがあります。不安な場合は「ビドゥーン・サラダ」(サラダ抜き)と注文したり、火が通ったものだけを食べるなどの工夫をするとより安全です。私は鋼のような胃腸を持っていますが、旅の基本として常に警戒を怠りません。
肉好き必見!カイロのストリート・ケバブとコフタ
エジプト料理は豆や野菜が主体と思われがちですが、カイロの街は肉が焼ける香ばしい匂いにも包まれています。特に夕暮れ時になると、レストランや屋台の前で炭火が熾され、さまざまな肉料理が通行人の食欲を刺激します。香辛料を纏ったジューシーな肉塊は、古代からのご馳走であり、現代のカイロの人々にとっても特別なご馳走です。
ハワウシ – スパイス香るエジプト風ミートパイ
カイロで味わった数ある肉料理の中で、特に強い印象を残したのが「ハワウシ」でした。こちらは、スパイスで調味した牛や羊の挽肉をアエーシ・バラディというパンに詰め込み、オーブンや炭火でパンがパリパリになるまで焼き上げる、エジプト版のミートパイのような一品です。熱々のハワウシを一口かじると、まずパンのパリッとした食感、次いで肉汁がジュワッと溢れ出し、クミンやチリ、様々なハーブが織りなすスパイシーな風味が口いっぱいに広がります。まさに手づかみで味わう絶品のストリートフードです。
中でも「アレクサンドリア風ハワウシ」と呼ばれる、唐辛子やピーマンを加えてさらに刺激的に仕上げたバリエーションは、スパイス好きの私にとって見逃せませんでした。通常のハワウシより一回り小ぶりで、生地もよりクリスピー。辛さはじんわり汗ばむ程度ですが、肉の旨味を引き立てる絶妙な調和が感じられます。添えられたピクルス(トルシー)の酸味が口内をさっぱり整え、次の一口へと誘います。これはビールが欲しくなる味わいですが、イスラム教の国ゆえに、ミントティーとともにそのスパイシーな余韻を楽しみました。
シシ・ケバブとコフタ – 炭火焼きの魅力
もちろん、中東の代表的な肉料理である「シシ・ケバブ」と「コフタ」も欠かせません。シシ・ケバブは、スパイスに漬け込んだ羊や牛の角切り肉を串に刺して炭火で焼き上げたもので、コフタは同じくスパイスを練り込んだ挽肉を棒状に成形し串に巻きつけて焼きます。どちらも炭火ならではの芳ばしい香りが魅力的で、レストランではサラダやタヒーナ、アエーシと共に盛り合わせられることが一般的です。肉の質はもちろんのこと、味を左右するのはスパイスの配合。各店が秘伝のレシピを持っており、その違いを食べ比べてみるのも楽しみの一つです。私はここでも付け合わせの唐辛子のピクルスをかじりながら、肉の旨味とスパイスの刺激を存分に味わいました。
肉料理を味わう際の注意点とマナー
- 服装について
ハン・ハリーリ市場周辺の歴史的なレストランやホテルの高級な飲食店で食事をする際は、あまりにラフな服装(タンクトップや短パン、ビーチサンダルなど)は控えたほうが安心です。スマートカジュアルを意識すると良いでしょう。一方、街角のローカルな食堂や屋台であれば、普段着で問題ありません。
- 知っておくべきルール
エジプトはイスラム教が主流のため、メニューに豚肉料理はほとんどありません。肉料理には主に羊肉、牛肉、鶏肉、ラクダ肉が用いられます。また、多くの地元の飲食店ではアルコール類の提供がありません。お酒を飲みたい場合は、外国人向けのホテルや一部の認可レストラン、リカーショップで購入する必要があります。
- トラブル防止策:ぼったくり回避のために
観光客が多いエリアの飲食店では、値段が明示されていないメニューを提示されたり、高額な会計を請求されたりすることがまれにあります。トラブルを避けるためにも、注文前に必ずメニューの価格を確認してください。価格表記がない場合は店員に直接たずねることが重要です。事前にGoogleマップのレビューなどで相場を調べておくのも有効な予防策となります。
カイロの隠れた名物?モロヘイヤとハト料理に挑む

カイロでの食の冒険は、定番料理だけにとどまりません。この街には、旅慣れたグルメも唸らせる、個性的で挑戦的な料理が存在します。古代の女王クレオパトラも愛したと伝えられる栄養豊富なスープ、そして見た目の迫力とは裏腹に繊細な味わいが楽しめるハト料理。これらを味わわずして、カイロの食文化を語ることはできないでしょう。
独特のとろみがクセになるモロヘイヤスープ
「モロヘイヤ」は日本では健康野菜として知られていますが、エジプトでは国民的なスープの素材です。細かく刻んだモロヘイヤの葉を、ニンニクとコリアンダーで味付けしたスープで煮込み、その特徴は強い独特の粘り気にあります。レンゲですくうと、糸を引くようにとろりとしています。このぬめり感は好みが分かれるかもしれませんが、一度病みつきになると抜け出せない魅力があります。伝統的なレシピではウサギの出汁を使うことが理想とされていますが、鶏や牛の出汁で作られることも一般的です。スープをご飯にかけてかき混ぜながら食べるのがエジプト流で、ニンニクとコリアンダーの香ばしい香りが食欲をそそり、滋養にも抜群の効果があります。カイロの強い日差しの下で疲れた体に、このスープの滋味がじんわりと染みわたるのを実感しました。さらに、少量のシャッタ(辛味調味料)を加えると、風味が引き締まり、ご飯がより進みます。
究極の珍味?ハマーム・マハシ(ハトの詰め物焼き)
特にスパイス愛好家の心を掴んだのが、「ハマーム・マハシ」です。これはハトのお腹にスパイスで味付けした米やフリーク(青麦)を詰め込み、丸ごと焼き上げた料理で、エジプトでは祝いの席などで振る舞われるご馳走です。運ばれてきた時のインパクトは絶大で、小さなハトがこんがりと焼き色をまとい、一羽丸ごと皿の上に存在感を放っています。ナイフを入れるのに少し戸惑いを感じましたが、一度口にするとその不安は一気に消えました。皮はパリッと香ばしく、肉はとても柔らかで、鶏肉よりも濃厚で野生的な旨味が広がります。中に詰められたスパイシーな米はハトの旨味をしっかり吸い込んでおり、シナモンやナツメグなど甘みのあるスパイスが使われることも多く、エキゾチックな香りが楽しめます。見た目の迫力に尻込みせず、ぜひ挑戦してほしいカイロの知る人ぞ知る名物です。
チャレンジングな料理を楽しむための心得
- 心構え:オープンマインドで臨むこと
モロヘイヤの独特な食感や、ハトの姿など、慣れない料理に出会うとためらいがちですが、旅の醍醐味は新たな発見にあります。まずは食わず嫌いを避け、「郷に入れば郷に従え」の精神で、開かれた気持ちで挑戦してみてください。それが、その土地の文化を深く理解する第一歩となるでしょう。
- 行動のポイント:専門店の探し方
ハマーム・マハシのような専門的な料理は、どのレストランでも必ずしも提供されているわけではありません。Googleマップで「Hamam Mahshi Cairo」と検索したり、ホテルのコンシェルジュや地元の人に「美味しいハマームの店はどこ?」と尋ねるのが確実です。信頼できる情報源からの推薦が、失敗を防ぐ最善の方法です。
- 公式情報の活用
さらにエジプトの食文化について知りたい、最新のレストラン情報を得たい場合は、エジプト政府観光局の公式サイトなどを確認すると良いでしょう。食文化に関する特集記事や、その背景についての詳しい情報が掲載されています。
甘い誘惑!エジプトの伝統スイーツとドリンク
激辛料理と格闘する合間には、甘いひとときが必要です。カイロは、シロップにたっぷり浸された濃厚なスイーツと、喉を潤すユニークなドリンクの宝庫でもあります。食後のデザートとして、または街歩きの休憩に、ぜひエジプトならではの甘美な味わいを味わってみてください。
オム・アリ – パンプディングの女王格
「オム・アリ」は「アリの母」を意味し、エジプトの代表的な温かいスイーツです。パイ生地やパンを牛乳に浸し、ナッツやココナッツ、レーズンを加えた後、オーブンで焼き上げるエジプト風パンプディング。熱々で提供されるこの一品は、スプーンを差し入れると甘い湯気とシナモンの芳香が漂います。牛乳を吸ったパンのとろける食感とナッツのカリッとした歯応えが絶妙に調和。優しく濃厚な甘みが、スパイスで疲れた舌をそっと癒してくれます。有名店のEl Malkyは、地元の人や観光客に広く愛されています。
バクラヴァとコナーファ – シロップ漬けの甘美な一品
オスマン帝国から伝わったこれらのスイーツは、中東全域で親しまれています。バクラヴァは薄いパイ生地を何層にも重ね、その間に砕いたピスタチオやクルミを挟んで焼き上げ、甘いシロップをたっぷりかけたもの。コナーファは極細麺状のカダイフ生地を用い、チーズやクリームを挟んで焼き、同じくシロップがかけられています。どちらも非常に強烈な甘さが特徴で、その甘みがエジプトの強い陽射しの中で失われたエネルギーを補う知恵とも言えるでしょう。濃厚なトルココーヒーや砂糖を加えないミントティー(シャイ・ビ・ナーナ)とともに味わうのがおすすめです。
カイロの喉を潤すドリンクたち
カイロの街角には「アシーラ」と呼ばれるジューススタンドが点在し、人々を潤しています。一番人気は「アサッブ」。サトウキビを専用の絞り機でその場で搾るフレッシュジュースで、自然な甘みが体にじんわりと染み渡ります。さらに、ハイビスカスの花を煮出して作る鮮やかな赤色の「カルカデ」は、爽やかな酸味を持ち、疲労回復に効果的なクエン酸が豊富。ホットでもアイスでも楽しめます。そして何よりエジプト人の生活に欠かせないのが「シャイ」。小さなグラスに注がれる濃く甘い紅茶で、これを飲みながら語らう光景は街のあちこちで見られます。単なる飲み物を越え、彼らの日常的なコミュニケーション手段なのです。
カフェ・スイーツ巡りのポイント
- 注文の流れ:カフェでのオーダー方法
カイロの伝統的なカフェ(アハワ)では、まず空いている席に座ります。その後、店員が注文を取りに来ますが、メニューがない場合も多いので、周囲の客が何を飲んでいるかを参考にして「シャイ」や「アフワ(コーヒー)」と伝えるのが一般的です。支払いは店を出る際に店員に渡す後払い制となっています。
- 知っておくべきマナー:シーシャ(水タバコ)について
多くのカフェでは「シーシャ」と呼ばれる水タバコを楽しむことができます。豊富なフレーバーがあり、エジプトの夜の社交に欠かせない存在です。ただし、タバコの煙が苦手な方は、屋外のテラス席を選ぶか、シーシャを提供していないモダンなカフェを利用すると良いでしょう。
スパイスハンター流・カイロ食いだおれ旅の心得

カイロでの食事を存分に、そして安全に楽しむためには、いくつかのポイントを押さえることが大切です。特に衛生面と体調管理は、この街での食体験を成功させるための最重要ポイントと言えるでしょう。
衛生管理と健康維持の基本ルール
- 水の取り扱いに注意
カイロの水道水は飲用に適していません。うがいもミネラルウォーターを使用するのがおすすめです。レストランで提供される水は、密閉されたボトルかどうかを必ず確認しましょう。また、氷についても注意が必要です。
- しっかり火を通した食べ物を選ぶ
屋台や地元の食堂では、できるだけ十分に加熱された料理を選ぶのが安全です。生野菜やカットフルーツは、どの水で洗浄されているか不明なため、避けた方が良いでしょう。
- 手指の消毒を徹底する
食事の前には必ず手を石鹸で洗うか、手指消毒ジェルやウェットティッシュを利用しましょう。お金を触った手でそのまま食べるのは健康リスクが高いです。
旅行中のトラブル対処法
- 食あたりになった場合
どんなに注意しても、環境の変化で体調を崩すことは避けられません。軽い腹痛や下痢の場合は、持参した整腸剤を使い、消化に良い食事を取りながら休むことが大切です。しかし、高熱や激しい嘔吐があるときは、無理せずすぐに医療機関を受診しましょう。海外旅行保険には必ず加入し、緊急連絡先や保険内容を事前に確認しておくことも重要です。
- 困った時は周囲に助けを求める
エジプトの人々は基本的に親切で、温かいもてなしをしてくれます。道に迷ったり注文がわからなかったりした場合は、ためらわずに近くの人に声をかけましょう。身振りや翻訳アプリを活用すると、きっと助けてくれます。
旅の終わりに。灼熱の先に見たカイロの素顔
カイロの喧騒の中でスパイスの香りを追いかけた旅は、私の舌と胃に忘れがたい記憶を刻み込みました。シャッタの燃えるような辛味、クミンの異国情緒あふれる芳香、アエーシの素朴で温かみある味わい。一杯のコシャリが持つ歴史の厚み、一皿のフールににじみ出る人々の暮らしの息吹。カイロのローカルフードは単なる食事にとどまらず、この街の混沌さと活気、そして人々の強さや優しさそのものを味わう体験でした。
激辛料理との闘いは、時に厳しいものでした。しかし、その刺激の先には、食材本来の旨みと、作り手の心が確かに存在していました。辛さは味覚を鈍らせるのではなく、むしろ五感を研ぎ澄ませ、食の奥深さを見せてくれる扉なのかもしれません。ナイル川が悠久の時を絶え間なく流れるように、カイロの食文化もまた、強靭に、かつ豊かに流れ続けていくことでしょう。
さて、数々の激戦をくぐり抜けた私の胃腸も、そろそろ休息を求めています。今回の旅でも、枕元に常に置いて頼りにしていたのは、日本が誇る総合胃腸薬「太田胃散」でした。生薬のやさしい効能が、スパイスの猛威で疲れた胃をすっと癒してくれます。特に食べ過ぎや胃もたれには即効性を実感しました。世界のどんな過酷な食の挑戦地であっても、これさえあれば明日もまた新たなスパイスの頂きを目指せるのです。まさにスパイスの海を渡るハンターにとって、欠かせない必携品といえるでしょう。

