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時が止まった迷宮都市、イタリア・マテーラへ。洞窟住居サッシを巡る、唯一無二の旅路

世界中を飛び回る中で、時として思考が停止するほどの絶景に出会うことがあります。それは、単に美しいという言葉では片付けられない、人間の営みと時間の重なりが織りなす、魂を揺さぶるような光景。南イタリア、バジリカータ州の奥深くに眠る古代都市マテーラは、まさにそのような場所でした。

渓谷の斜面に、無数の洞窟住居「サッシ」が蜂の巣のように連なる景観は、初めて目にした瞬間、現実とは思えないほどの衝撃を与えてくれます。ここは、旧石器時代から人々が住み続けてきた、世界で最も古い都市の一つ。その歴史の地層に足を踏み入れる旅は、他のどんな旅とも比較できない、唯一無二の体験を約束してくれるのです。

ビジネスの合間に訪れたこの街は、私にとって単なる観光地ではなく、時間という概念そのものを見つめ直すための壮大な舞台となりました。この記事では、マテーラが持つ圧倒的な魅力と、その旅を最大限に楽しむための具体的な方法を、私の経験を交えながらご紹介します。さあ、時が止まった迷宮への扉を、一緒に開けてみましょう。

マテーラで「時」という概念を見つめ直した後は、地中海に浮かぶサルデーニャ島へと足を延ばし、カタルーニャの風が誘うアルゲーロ旧市街歴史の迷宮を巡る旅の記事はこちらから。

目次

マテーラとは? – 歴史の地層に刻まれた洞窟都市

マテーラという名前を耳にしても、すぐにその場所を思い浮かべられる人は、まだ多くないかもしれません。イタリアの「かかと」にあたるバジリカータ州に位置するこの街は、グラヴィーナ渓谷の石灰岩の岩壁をくり抜いて築かれた洞窟住居群「サッシ(Sassi)」で世界的に知られています。

その歴史は非常に古く、ここに人類が住み始めたのは旧石器時代にまで遡るとされています。つまり、マテーラは継続的に人が居住し続けている世界最古級の都市の一つに数えられるのです。何千年もの間、人々は自然の洞窟を住まいとし、時代と共にその空間を拡大しては、教会や生活の場を岩の中に築き上げてきました。サッシの迷路のような路地を歩いていると、まるで時間の層を一枚一枚めくりながら過去へと旅をするかのような不思議な感覚を味わえます。

しかし、このマテーラの歴史は決して輝かしいものばかりではありませんでした。20世紀の半ば、この地域は劣悪な衛生環境と極度の貧困のため「イタリアの恥」と呼ばれるようになりました。作家カルロ・レーヴィが著書『キリストはエボリで止まった』の中で、サッシにおける苛酷な暮らしぶりを描いたことで、この状況が国内外に広く知られるようになったのです。これを受け、イタリア政府は1950年代にサッシの住民を新たに整備された市街地へ強制移住させる政策を実施。その結果、サッシは人影のないゴーストタウンと化してしまいました。

人が去った洞窟都市は長い間、まるで時が止まったかのような静けさに包まれていました。しかし、やがてその類まれな歴史的・文化的価値が再評価され、1980年代から復興プロジェクトが始まります。そして1993年、マテーラはユネスコ世界遺産に登録され、かつての「恥」はいまや世界に誇るべき人類の貴重な遺産として新たな輝きを放つこととなりました。

現在のサッシは修復・改修が施され、洗練されたレストランやブティック、そして何よりもユニークな洞窟ホテルとして新たな姿を見せています。古代の風景に現代の感性が溶け込むこの街は、世界中の旅人を魅了してやみません。ただの観光地ではなく、人類の記憶が刻まれた生きた博物館、それこそがマテーラなのです。

マテーラへのアクセス – 旅の始まりは計画から

この隔絶されたかのような古代都市への旅は、それ自体がひとつの冒険の始まりとも言えます。アクセスは決して便利とはいえませんが、だからこそ、現地にたどり着いた際の感動は格別です。ここでは、マテーラへの主なアクセス方法を具体的にご紹介します。

空路と陸路を組み合わせるのが基本ルート

日本からマテーラへ向かう際は、まず空路で南イタリアの主要都市まで飛び、その後陸路に切り替えるのが一般的です。もっとも便利な玄関口は、プーリア州の州都であるバーリ(Bari)に位置するバーリ・カロル・ヴォイティワ国際空港(BRI)です。日本からの直行便はなく、ローマ、イスタンブール、フランクフルトなどのヨーロッパのハブ空港で乗り継ぐ必要があります。

バーリ空港に到着した後、マテーラまでは約65kmの距離があり、ここからの移動が次の段階となります。選べるのは主に鉄道、バス、レンタカーの三つ。それぞれの特徴を理解したうえで、ご自身の旅のスタイルに合った方法を選ぶことが肝要です。

鉄道利用の場合:ローカル線ならではの趣きを楽しむ

バーリ中央駅からは、地元の私鉄であるアプーロ・ルカーネ鉄道(Ferrovie Appulo Lucane、通称FAL)がマテーラとを結んでいます。バーリ空港からバーリ中央駅へは、FALが運行するメトロ(FM2線)で移動でき、乗り換えもスムーズです。

  • 所要時間と料金:バーリ中央駅からマテーラ中央駅(Matera Centrale)まで約1時間40分から2時間で、料金は片道およそ5ユーロと非常にお得です。
  • チケット購入方法:駅の窓口(Biglietteria)や自動券売機で購入できます。オンライン購入も可能ですが、現地駅で購入するのも特に難しくありません。なお、乗車前に駅に設置された黄色い刻印機でチケットに打刻(validare)するのを必ずお忘れなく。これを怠ると、検札時に罰金を科されるリスクがあります。
  • 注意点:FAL線は、日曜や祝日に運行本数が大幅に減るか、あるいは運休となる場合があります。南イタリアのローカル線ではよくあることで、旅程を組む際には特に気をつける必要があります。日曜日の移動が必要な場合は、後述するバス利用を検討しましょう。最新の時刻表は公式サイトで必ずご確認ください。

バス利用の場合:手軽で確実な選択肢

バーリ空港からマテーラへの直通バスを運行する会社が複数あり、これがもっともシンプルでストレートな移動手段かもしれません。

  • 主な運行会社:Cotrab社などが空港とマテーラの中心街を結ぶ路線を運行しています。
  • 所要時間と料金:所要時間は約1時間15分で、料金は路線によりますが3ユーロから10ユーロ程度です。
  • 予約と乗り場について:特に繁忙期は満席となる可能性が高いため、事前にオンライン予約を強く推奨します。空港到着ロビーを出て案内表示に従うと、各社のバス乗り場が見つかりやすいです。予約確認メールのQRコードなどはすぐに提示できるように準備しておきましょう。
  • トラブル対応:予約したバスに乗り遅れた場合、基本的には自己責任となり返金は難しいことが多いですが、次の便に空席がある時は追加料金で乗車可能な場合もあります。まずは乗り場のスタッフや運転手に冷静に相談してみることをおすすめします。

レンタカー利用の場合:自由な旅を楽しみたい方へ

南イタリアの美しい田園風景を満喫しながら、自分のペースで移動したい場合はレンタカーが理想的です。マテーラのほか、アルベロベッロといった周辺の町も訪れる予定があるなら、その利便性は格段に高まります。

  • メリット:時間に縛られず、好きな場所に立ち寄れる自由度の高さ。重い荷物を運ぶ負担も減ります。
  • 最大の注意点-ZTL規制:ただし、マテーラでレンタカーを利用する際に必ず知っておきたいのが、「ZTL(Zona a Traffico Limitato)」という交通規制区域の存在です。歴史あるサッシ地区を含む旧市街の大部分はZTLに指定され、許可のない車両の通行は禁止されています。監視カメラが設置されているため、うっかり侵入すると後日、日本の自宅に高額な罰金請求書が国際郵便で送られてくることになります。
  • 駐車場の確保:ZTLエリアを避けるため、旧市街の外側にある有料駐車場に車を停め、徒歩やタクシーでホテルまで向かうのが基本です。サッシ地区のホテルに宿泊する場合は、事前にホテルに連絡し、提携駐車場や送迎サービスの有無、最寄りの駐車場の場所について確認しておくことが不可欠です。Googleマップで「Parcheggio Matera」と検索すると複数の駐車場が見つかります。

どの交通手段を選ぶにせよ、事前の情報収集と計画がマテーラへの旅を円滑に進める鍵となります。特に公共交通機関を利用する場合は、最新の時刻表を必ず確認し、余裕を持って行動することを心がけましょう。

マテーラ観光のハイライト – サッシを歩き、時を体感する

マテーラの中心に位置するサッシ地区は、大きく二つのエリアに分かれています。グラヴィーナ渓谷を挟んで、南側がサッソ・カヴェオーゾ(Sasso Caveoso)、北側がサッソ・バリサーノ(Sasso Barisano)です。どちらも魅力的ですが、それぞれ異なる趣があります。

  • サッソ・カヴェオーゾ: 名前の通り「洞窟」を意味し、より原始的で手つかずの洞窟住居が色濃く残るエリアです。迷路のような細い小路、むき出しの岩肌、そして渓谷に立つ岩窟教会。まるで古代にタイムスリップしたかのような独特の雰囲気が、この地区の大きな魅力となっています。
  • サッソ・バリサーノ: こちらは比較的修復や改修が進み、多数のレストラン、ホテル、工房などが立ち並んでいます。洗練された空気が漂い、夜にはライトアップされた街並みが幻想的な美しさを演出します。

まずはどちらかの地区に拠点を構え、自由気ままに歩き回るのがマテーラ観光の醍醐味でしょう。地図を手に目的地を目指すのもいいですが、時には道に迷うことも楽しんでみてください。曲がり角をひとつ曲がれば、思わず息を飲むような絶景が広がっている、そんな発見がこの街には満ちています。

マテーラ必見のスポット:この街の記憶をたどる

広大なサッシ地区には、見逃せないスポットが点在しています。ここではマテーラの歴史や文化を深く知るために、ぜひ訪れてほしい場所をご紹介します。

カーサ・グロッタ・ディ・ヴィーコ・ソリタリオ (Casa Grotta di Vico Solitario)

「昔のサッシでの暮らしを知りたいなら、ここを訪れてみては」と、現地で出会った老人は教えてくれました。サッソ・カヴェオーゾ地区にあるこの施設は、20世紀半ばまで実際に使われていた洞窟住居を、当時の家具や生活道具とともに保存・公開している小さな博物館です。

中に入ると、一つの大きな洞窟空間に寝室、台所、さらには家畜小屋までが共存していることに驚かされます。ベッドの下には家畜の餌を入れる場所があり、壁のくぼみは食器棚として利用されていました。電気も水道もない時代に、一つの空間で家族と動物が共に暮らした、過酷ながらも温かな生活の息吹が伝わってきます。数ユーロの入館料で、マテーラを理解するうえで非常に価値のある体験ができるでしょう。所要時間は約30分。当時の人々の暮らしを想像しながら、じっくりと見学してください。

岩窟教会 (Chiese Rupestri)

マテーラの信仰の歴史を知る上で欠かせないのが、岩をくり抜いて築かれた数々の岩窟教会です。多くは8世紀から13世紀にかけて、ビザンツ帝国から逃れてきた修道士たちによって造られ、内部には見事なフレスコ画が残されています。

  • サンタ・マリア・デ・イドリス教会 (Chiesa di Santa Maria de Idris): サッソ・カヴェオーゾの中心に聳える大岩山「モンドローネ」の頂上に建つ教会。内部は他の教会とつながっており、壁面に残るビザンツ様式のフレスコ画はぜひご覧いただきたい逸品です。
  • サンタ・ルチア・アッレ・マルヴェ教会 (Chiesa di Santa Lucia alle Malve): ベネディクト会の女子修道院として利用されていた教会で、女性の守護聖人を描いた数多くのフレスコ画が残り、とても興味深いスポットです。

これらの岩窟教会を効率よくまわるなら、複数教会を訪問できる共通チケットの購入がおすすめです。観光案内所や主要教会で入手可能で、個別購入よりもお得になります。教会内は神聖な場所のため、見学時は静粛を心がけてください。また、服装規定にも注意が必要です。特に夏場はタンクトップやショートパンツなど露出が多い服装では入場を断られることがあります。肩や膝を覆う服を選ぶか、ストールやカーディガンを携帯すると安心です。撮影は許可されている場合が多いものの、フラッシュはフレスコ画を損なうため禁止されています。

ドゥオーモ(マテーラ大聖堂)

サッシの街並みを見下ろす丘の上に壮麗に建つのは、13世紀完成のプーリア・ロマネスク様式を代表する大聖堂です。サッシ地区の最も高い位置にあり、ここからの眺望はまさに圧巻。サッソ・バリサーノの街並みを眼下に一望でき、その複雑で美しい景観を堪能できます。

外観は素朴かつ力強い印象ですが、内部は18世紀に改修され華やかなバロック様式となっており、その対比も見どころのひとつです。特に夕暮れ時の訪問がおすすめで、夕日に染まるサッシの街の景色に心奪われることでしょう。

ムルジェッキア公園 (Parco della Murgia Materana)

マテーラの本当の姿を知るには、サッシ地区を離れてグラヴィーナ渓谷の対岸へ足を運ぶことが必要です。そこに広がるムルジェッキア自然公園の展望台(ベルヴェデーレ)からは、サッシの全景をパノラマで望めます。

この展望台からの風景は、ポストカードやガイドブックでおなじみの、マテーラを象徴する美しい景色です。特に街灯りが灯る夕暮れから夜にかけての時間帯は言葉を失うほどの感動をもたらします。オレンジに輝く灯が洞窟住居の一つ一つを照らし、まるで巨大なクリスマスのプレゼピオ(キリスト降誕の場面の模型)を眺めているかのような幻想的な世界が広がります。

  • アクセス: 展望台へはサッシ地区から徒歩で渓谷を渡ることも可能ですが、急な坂道が多く時間もかかるため、タクシーや観光用乗り合いバンの利用が現実的です。
  • 準備: 素敵な写真を撮りたい場合は三脚が必須です。また夜間は足元が暗くなるため、小型の懐中電灯を用意しておくと便利です。夏場は渓谷周辺に虫が多いこともあるので、虫よけスプレーも携帯すると快適に過ごせます。

この対岸からの景観を体験せずして、マテーラを語ることはできません。ぜひ時間をかけて訪れてみてください。

マテーラでの滞在を特別なものにする – 洞窟ホテルと美食体験

マテーラを訪れる際には、ぜひ「サッシでの宿泊」を体験してみてください。かつて人々が暮らした洞窟住居を改装したホテルに泊まることは、この街の歴史と深く結びつく、他では味わえない特別な体験となります。

洞窟ホテル(Sassi Hotel)での宿泊体験

洞窟ホテルと聞くと、暗くて湿った部屋を想像するかもしれませんが、その点は心配いりません。現代の洞窟ホテルは、古代の建築様式を大切にしつつ、快適に過ごせるよう最新設備と洗練されたデザインが取り入れられています。

厚い岩盤に囲まれた客室は、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる快適さがあります。静けさに包まれた空間で迎える朝の目覚めは格別です。窓から差し込む光が古代の壁を照らし、何千年もの歴史の中に自分がいることを実感させてくれます。

  • ホテルの選び方: マテーラには、高級ラグジュアリーホテルから、リーズナブルなB&B(ベッド&ブレックファスト)まで、多種多様な洞窟ホテルが揃っています。
  • ラグジュアリーを求めるなら: Sextantio Le Grotte della CivitaSant’Angelo Luxury Resort などが、シンプルながら洗練されたデザインと至高のサービスで人気です。特別な記念旅行にぴったりでしょう。
  • コストパフォーマンス重視なら: サッシ地区には、温かみのある家族経営のB&Bも多数あります。
  • 予約のポイント: マテーラは世界的な観光地であり、人気の高い洞窟ホテルは数か月前から予約で埋まることも珍しくありません。旅行計画が決まり次第、早めに予約サイトで部屋を押さえることをおすすめします。立地や部屋の眺望、朝食の評価などの口コミを参考にし、自分に合った宿を見つけてください。

マテーラの食文化:大地の恵みを堪能する

旅の楽しみのひとつは、その土地ならではの料理に触れることです。バジリカータ州の料理は、南イタリアの他地域と同様、シンプルながらも素材の味を活かした素朴で力強い味わいが魅力です。

ぜひ味わいたいマテーラの名物

  • パーネ・ディ・マテーラ (Pane di Matera): マテーラに来たらまず試してほしいのがこのパンです。硬質小麦(セモリナ粉)を使い伝統的に焼き上げられたパンは、特徴的な山形で、外はカリッと香ばしく、中はもっちりとした食感。高い品質からEUのPGI(保護地理的表示)認定を受けています。オリーブオイルと塩だけで味わうと、小麦本来の豊かな風味が広がります。
  • クラピアータ (Crapiata): 古代ローマ時代から伝わる、豆や穀物をじっくり煮込んだ栄養豊富なスープ。かつては収穫祭で農民たちに振る舞われた料理で、その素朴な味わいがマテーラの歴史を感じさせます。
  • ペペローニ・クルスキ (Peperoni Cruschi): 「カリカリのピーマン」を意味する、地域特有の食材。甘みのある赤ピーマンを乾燥させ、オリーブオイルで軽く揚げており、サクサクの食感と凝縮された旨味が特徴です。パスタや肉料理のアクセントとして、一度食べると忘れられない味です。
  • オレッキエッテ (Orecchiette): 「小さな耳」という名のパスタで、プーリア州やバジリカータ州でよく親しまれています。野菜ソースやチーマ・ディ・ラーパ(カブの菜の花)を絡めるのがおすすめです。

レストラン選びのポイント

サッシ地区には、洞窟を改装した独特の雰囲気を持つレストランが数多くあります。絶景を楽しめるテラス席のある店から、迷路のような路地の奥に静かに佇む隠れ家的なお店まで様々です。

ビジネスシーンにも使える格式のあるレストランから、地元の家族で賑わうアットホームなトラットリアまで、多彩な選択肢があります。人気店は予約必須のため、特に夕食はホテルのコンシェルジュに頼むか、自分で電話やオンラインで早めに予約を入れておきましょう。イタリアでは夜の食事は比較的遅めで、夜8時以降に賑わい始めます。少し早めの時間帯を狙うと予約が取りやすいこともあります。

マテーラ観光を成功させるための実践ガイド

この個性的な街を思う存分楽しむためには、いくつかの実用的な知識を持っておくと便利です。天候の特徴や服装のポイント、街歩きの注意点など、快適かつ安全な旅を実現するための要点をまとめました。

旅の最適な時期

マテーラは一年中訪れることができますが、気候が穏やかで過ごしやすい春(4月〜6月)と秋(9月〜10月)が特におすすめのシーズンです。春は花が咲き誇り、秋は収穫の季節を迎えるため、散策にもぴったりの季節といえます。

  • 夏(7月〜8月): 日差しが強烈で、気温は40度近くまで上昇することもあります。この時期に訪れる際は、帽子やサングラス、日焼け止めが必須アイテムです。特に日中の最も暑い時間帯は無理をせず、シエスタ(昼休憩)を取るなど体調管理に注意を払いましょう。こまめな水分補給も忘れずに。
  • 冬(11月〜3月): 観光客が少なく、静かなマテーラを味わえる季節です。ただし、天候は不安定で雨が降ることも多く、朝晩は冷え込むため防寒対策が必要です。また、オフシーズンはレストランや観光施設が営業時間を短縮したり、休業したりする場合もあるので、事前の確認が重要です。

準備と持ち物のポイント

マテーラの独特な地形を考慮して持ち物を選ぶことが、旅をより快適にします。

服装や靴について

  • 歩きやすい靴を用意する: 最も重要なアイテムです。マテーラの道は滑りやすい石畳や急な坂、階段が多数あるため、履き慣れたスニーカーやウォーキングシューズが不可欠です。ヒールの高い靴や底が薄いサンダルは危険を伴い、怪我のもとになります。
  • 重ね着できる服装が便利: 一日の中で気温の変化が大きいため、特に渓谷からの風が吹くと肌寒く感じることもあります。Tシャツの上にシャツやカーディガン、薄手のジャケットを重ねられる服装がおすすめです。
  • 教会訪問時の服装配慮: 先述の通り、教会の内部に入る際は肩や膝を覆う服装が求められます。夏場でも薄手のストールやパレオをバッグに携帯しておくと、さっと羽織れて便利です。

持っていると役立つアイテム

  • 日よけ用品: 帽子、サングラス、日焼け止めは季節を問わず持ち歩くと安心です。
  • 水分補給用のボトル: 街中には「fontanella」と呼ばれる水飲み場が点在しています。マイボトルを持参すれば環境にも優しく、いつでも水分補給が可能です。
  • モバイルバッテリー: Googleマップの使用や写真撮影でスマートフォンのバッテリーは予想以上に減ります。特に古い街並みではGPSの感度が悪くなることもあり、バッテリー消耗が激しくなるため携帯しておくと安心です。
  • 現金: クレジットカードが使える店舗は多いものの、小さなカフェや市場、公共トイレなど現金が必要な場面もあります。少額のユーロを用意しておくことをおすすめします。
  • 簡易応急セット: 慣れた靴でも歩行量が多いと靴擦れが起きることがあります。絆創膏などの応急処置用品があると安心です。

観光時の注意事項

  • ZTL(交通制限ゾーン)の確認を忘れずに: レンタカー利用者は、「Varco Attivo」という標識を見逃さないようにしましょう。これは「監視カメラ作動中」を意味し、無断で進入すると違反となります。
  • 体力に合わせた計画を: サッシ地区の散策は想像以上に体力を消耗します。特に高齢者や小さな子ども連れの方は無理のないスケジュールを組み、疲れたらカフェで休憩したり、観光用の電動ミニカー「アペ・カレッシーノ(Ape Calessino)」を利用したりするのも良い方法です。
  • 迷路のような街の散策を楽しむ心構えを: 道に迷うこともこの街の醍醐味ですが、夜間に一人で人気のない路地に入るのは避けましょう。スマートフォンのオフラインマップを活用したり、ホテルのフロントで紙の地図をもらったりして、いざという時に備えてください。
  • 地元住民への配慮を忘れずに: サッシ地区は世界遺産であると同時に多くの人々の生活の場です。観光中は無断で民家の敷地に入ったり、窓から中を覗き込んだり、プライバシーを侵害するような写真を撮ったりすることは厳禁です。静かで礼儀正しい散策を心がけ、地域の人々に敬意を示しましょう。

チケット購入と予約の効率的な方法

主要な観光スポットはハイシーズンに行列ができることが多いため、事前準備が時間短縮のカギとなります。

  • オンライン予約の活用: 岩窟教会群や主要博物館の多くは公式サイトで事前チケット購入が可能です。これにより、当日の待ち時間を減らしスムーズに見学を開始できます。
  • 観光案内所の利用: マテーラの中心部にある観光案内所(Ufficio Turistico)では、各種チケットの販売やツアーの申込み、地図の提供などを行っています。行先の組み立て方に迷った際は、スタッフに相談すると親切にアドバイスをもらえます。
  • 予約トラブル時の対応: オンラインチケット予約に問題が生じた場合(日時の間違いなど)、まずは予約確認メールに記載された連絡先へ問い合わせましょう。返金や変更の対応は施設ごとに異なりますが、誠実に対応してもらえる場合が多いです。予約時にはキャンセルポリシーを事前に確認しておくことをおすすめします。最新の情報はマテーラ公式観光情報サイトからも入手可能です。

マテーラから足を延ばす – 南イタリアの更なる魅力

マテーラは、南イタリアの魅力的な町々を巡るための絶好の拠点としても利用できます。もし日程に余裕があれば、ぜひ日帰り旅行を検討してみてください。

  • アルベロベッロ (Alberobello): マテーラから車で約1時間、距離にして約70kmの場所にあるトゥルッリと呼ばれるとんがり屋根の白い家が特徴の世界遺産の町です。まるで童話の世界に入り込んだかのような愛らしい景観が広がり、マテーラとは一味違う南イタリア独特の建築文化を堪能できます。
  • ポリニャーノ・ア・マーレ (Polignano a Mare): アドリア海沿いの断崖絶壁に築かれた美しい町で、透き通る青い海と白壁の街並みのコントラストが息をのむほど美しい光景を作り出しています。特に洞窟内にあるレストラン「グロッタ・パラッツェーゼ」は、世界でも屈指のロマンチックなレストランとして有名です。

これらの町へはマテーラからバスや鉄道を利用してアクセスすることも可能ですが、より効率よく観光を楽しみたい場合はレンタカーの利用や現地のプライベートツアーへの参加をおすすめします。マテーラとは異なる景色や文化を体験することで、南イタリアの旅がいっそう深みのあるものになるでしょう。

マテーラの夜 – 星空と灯りが織りなす幻想的な風景

マテーラでの一日が終わり、太陽がグラヴィーナ渓谷の彼方に沈むと、この古代の町はまるで別の表情を見せ始めます。昼間の喧騒が嘘のように静まり返ったサッシ地区に、ぽつりぽつりとオレンジ色の暖かな灯りがともされる様子は、まさに魔法のような光景です。

対岸にあるムルジェッキア公園の展望台やドゥオーモ前の広場から見渡す夜景は、この旅のハイライトと言えるでしょう。無数の灯りが夜空から零れ落ちた星のように洞窟住居を優しく照らし出し、昼間とは異なる立体感と幻想的な空気を演出します。

ディナーを終え、ライトアップされた静かな路地をゆっくり歩く時間もまた格別です。石畳に自分の足音だけが響くなか、古代の壁に囲まれて歩いていると、何千年もの時を超えてここで生きてきた人々の魂と語り合っているかのような、荘厳な感覚に包まれます。

マテーラは、単に美しい風景を眺めるだけの場所ではありません。訪れる者の五感に深く刻まれ、記憶に残る、生きた歴史の物語そのものです。この時が止まった迷宮都市での体験は、きっとあなたの旅の価値観を少し変えてくれるでしょう。喧騒から離れ、自分自身と人類が歩んできた悠久の時間の流れを見つめ直す。そんな贅沢な旅が、ここマテーラにはあります。次に訪れる時には、どんな新しい発見が待っているのか。期待を胸に、私はこの忘れがたい街を後にしました。

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この記事を書いたトラベルライター

外資系コンサルやってます。出張ついでに世界を旅し、空港ラウンジや会食スポットを攻略中。戦略的に旅をしたいビジネスパーソンに向けて、実用情報をシェアしてます!

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