政府閉鎖の余波、航空業界を直撃
米国で連邦政府機関の一部閉鎖(ガバメント・シャットダウン)が現実味を帯びる中、多くの旅行者が国立公園や博物館の閉鎖に気を取られがちです。しかし、その影響は地上だけでなく、私たちが利用する空の旅の根幹にも静かに、しかし深刻に及んでいます。米国の空の安全を守る航空管制官たちが、政府閉鎖によって「無給」で働き続けなければならないという厳しい現実に直面しており、空港の運営や航空安全そのものへの懸念が高まっています。
なぜ航空管制官は無給で働き続けるのか?
「必須職員」としての重責
政府閉鎖が発生すると、政府機関の多くの職員は一時帰休(自宅待機)となります。しかし、国民の生命や財産、安全に直接関わる業務を担う職員は「必須(essential)」と見なされ、給与の支払いが停止された状態でも勤務を継続することが法律で定められています。
連邦航空局(FAA)に所属する約14,000人の航空管制官は、まさにこの「必須職員」です。彼らは、1日に平均約45,000便ものフライトと、それに搭乗する数百万人の乗客の安全を上空で守るという、極めて重要な役割を担っています。彼らが業務を止めれば、米国の航空システムは即座に麻痺してしまうため、無給であっても管制塔に立ち続けなければならないのです。
無給勤務がもたらす現実
給与が支払われないまま、高い集中力と責任が求められる仕事を続けることは、管制官たちに深刻な経済的・精神的ストレスをもたらします。住宅ローンや日々の生活費の支払いに不安を抱えながら、一瞬の判断ミスも許されない業務に集中することは極めて困難です。この士気の低下が、結果的に航空システム全体の安全性に影響を及ぼすのではないかという懸念は、専門家や労働組合から繰り返し指摘されています。
過去の事例から見るリスク:2018-2019年の教訓
こうした懸念は、決して杞憂ではありません。過去最長となる35日間に及んだ2018年から2019年の政府閉鎖では、航空業界に具体的な混乱が生じました。
当時、無給勤務が続いたことで航空管制官や、同じく必須職員である運輸保安庁(TSA)の保安検査官の間で病欠者が急増。人員不足が深刻化し、ニューヨークのラガーディア空港やニューアーク・リバティー国際空港などで大規模なフライト遅延が発生し、一部の便が欠航する事態に至りました。
この時、航空管制官全国協会(NATCA)は「我々はシステムの限界点に達している」との声明を発表し、航空システムの脆弱性を強く警告しました。この教訓は、政府閉鎖が単なる政治的な駆け引きではなく、国民の安全を脅かす現実的なリスクであることを示しています。
予測される未来と旅行者への影響
もし今回も政府閉鎖が長期化した場合、旅行者は以下のような影響に備える必要があります。
短期的な影響:空港での混乱
フライトの遅延や欠航が増加する可能性があります。管制官の人員不足が深刻化すれば、航空会社は安全を確保するために便数を減らさざるを得なくなるかもしれません。また、TSA職員の不足は保安検査場に長蛇の列を生み、飛行機に乗り遅れるリスクを高めます。特に乗り継ぎを予定している場合は、通常よりはるかに長い時間を確保する必要が出てくるでしょう。
長期的な影響:航空システムの脆弱化
より深刻なのは、長期的な影響です。政府閉鎖が繰り返されれば、経験豊富な航空管制官が不安定な雇用環境を嫌い、早期退職や他業種への転職を選ぶ可能性があります。さらに、FAAはかねてから管制官不足の問題を抱えていますが、政府閉鎖中は新規採用や訓練プログラムも凍結されるため、問題はさらに悪化します。
人材の流出と育成の停滞は、将来にわたって米国の航空管制システムの能力を低下させ、世界で最も安全と言われる米国の空に、長期的な影を落とすことになりかねません。
旅行者が今、知っておくべきこと
米国政府の閉鎖問題は、ワシントンの政治家だけの問題ではありません。それは、私たちの旅行計画、そして何よりも空の安全に直接関わる重要な問題です。
これから米国への渡航や米国内での移動を計画している方は、航空会社のウェブサイトやアプリで運航状況をこまめに確認することをお勧めします。また、空港での予期せぬ遅延に備え、時間に余裕を持ったスケジュールを組むことが賢明です。
simvoyageは、今後もこの問題の推移を注視し、旅行者の皆様に最新の情報をお届けしていきます。

