国際航空運送協会(IATA)が発表した2025年版のグローバル旅客調査(GPS)により、旅行者の期待が大きく変化していることが明らかになりました。調査によれば、スマートフォンを中心としたモバイル技術の活用と、顔認証などのバイオメトリクス(生体認証)技術が、今後の旅行体験を根底から変える鍵となることが示されています。この新しい波は、日本を含むアジア地域でも急速に広がりつつあります。
スマートフォンが旅行の「リモコン」になる時代
もはやスマートフォンは、単なる連絡手段や情報収集ツールではありません。今回のIATAの調査では、旅行者が予約から搭乗までのあらゆるプロセスにおいて、モバイルデバイスをさらに活用したいと考えていることが浮き彫りになりました。
チェックインから搭乗まで、すべてをスマホで
調査によると、旅行者の88%が、空港に到着する前にスマートフォンでチェックインを済ませたいと回答しています。また、デジタル搭乗券や手荷物タグを自身のデバイスで受け取り、管理することへの期待も高まっています。これにより、空港でのカウンターの行列や、紙の書類を探す手間から解放され、よりスムーズな旅のスタートが可能になります。旅行者は、フライト情報、ゲート変更、遅延通知などもリアルタイムで受け取ることを望んでおり、モバイルアプリが旅のパーソナルアシスタントとしての役割を担う未来がすぐそこまで来ています。
「顔がパスポート」になる、バイオメトリクスの普及
今回の調査で最も注目すべきトレンドの一つが、バイオメトリクス技術への高い期待です。パスポートや搭乗券を提示する代わりに、顔や指紋で本人確認を行うシステムは、空港での待ち時間を劇的に短縮する可能性を秘めています。
旅行者の75%がバイオメトリクス利用に前向き
IATAの報告では、旅行者の75%が、パスポートや搭乗券の代わりに自身の生体認証情報(バイオメトリックID)を使って空港手続きを済ませたいと回答しています。実際にバイオメトリクス技術を利用した搭乗ゲートを体験した乗客の満足度は非常に高く、従来のプロセスと比較して待ち時間が平均で30%も短縮されたというデータもあります。
この技術は、チェックイン、手荷物預け、保安検査、そして搭乗ゲートといった複数のタッチポイントを「ウォークスルー」で通過可能にする「シームレスな旅」を実現します。日本でも、主要国際空港で顔認証による搭乗手続き「Face Express」の導入が進んでおり、アジア太平洋地域全体でこの動きは加速しています。
なぜ今、この変化が加速しているのか
この背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、コロナ禍を経て非接触手続きへのニーズが世界的に高まったことが挙げられます。また、スマートフォンの高性能化と普及により、誰もが高度なデジタル技術をポケットに入れて持ち歩く時代になったことも大きな要因です。
航空会社や空港側にとっても、これらの技術は業務効率を大幅に向上させ、混雑を緩和する切り札となります。限られたスペースと人員で増加する旅行需要に対応するため、デジタルトランスフォーメーションは不可欠な投資となっているのです。
予測される未来と旅行者への影響
このトレンドが進化し続けることで、私たちの旅行は今後どのように変わっていくのでしょうか。
パーソナライズされたシームレスな旅へ
将来的には、空港に到着した瞬間から、あなたのスマートフォンや顔認証データが航空会社や空港のシステムと連携。手荷物を預ける場所、通過すべき保安検査レーン、ラウンジへの最短ルート、さらには好みに合わせた免税店のクーポンまで、すべてが自動的に案内されるようになるかもしれません。物理的な書類が一切不要となり、ストレスフリーでパーソナライズされた旅行体験が当たり前になるでしょう。
プライバシー保護という新たな課題
一方で、利便性が向上するほど、個人情報、特に変更の効かない生体情報のセキュリティとプライバシー保護が重要な課題となります。誰が、どこで、どのようにデータを利用するのか、その透明性を確保し、国際的な統一基準を設けることが不可欠です。IATAやICAO(国際民間航空機関)は、各国政府や関連企業と連携し、安全なデータ管理のためのルール作りに取り組んでいます。
テクノロジーの進化は、私たちの旅をより快適で便利なものへと変えていきます。次の海外旅行では、あなたのスマートフォンと「顔」が、最高の旅のパートナーになっているかもしれません。

