旅行情報メディア「Time Out」が発表した2025年の「世界で最も人気の旅行先ランキング」で、スペインのバルセロナが堂々の世界1位に輝きました。今回のランキングでは、トップ10の多くを欧州の都市が占める結果となり、ポストコロナ時代の旅行トレンドが改めて浮き彫りになっています。この記事では、バルセロナが選ばれた理由と、欧州都市の強さの背景、そして今後の旅行業界に与える影響を深掘りします。
バルセロナ、世界一の座に輝いた理由
アントニ・ガウディの独創的な建築群が街を彩り、地中海の陽光が降り注ぐバルセロナ。その魅力は、歴史と現代性、そして文化と美食が見事に融合している点にあります。
サグラダ・ファミリアやグエル公園といった象徴的な観光名所はもちろんのこと、近年では持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)への先進的な取り組みも高く評価されています。市は公共交通機関のEV化を推進し、地産地消を推奨するレストランを支援するなど、環境に配慮した旅行体験を提供。これが、旅行先の選定基準として「社会貢献」や「環境への配慮」を重視する新しい世代の旅行者から絶大な支持を集めました。
2025年のバルセロナへの国際観光客到着数は、コロナ禍以前のピークであった2019年の水準を約8%上回る3,400万人以上に達すると予測されており、その人気の高さを物語っています。
上位を独占した欧州都市の強みとは?
今回のランキングでは、トップ10のうち7都市を欧州が占め、パリ、ローマ、アムステルダムといった都市が名を連ねました。この背景には、いくつかの要因が考えられます。
まず、比類なき歴史的・文化的遺産の集積です。美術館や史跡、世界遺産が密集しており、知的好奇心を満たす旅を求める旅行者にとって、欧州は依然として最高のデスティネーションです。
次に、交通インフラの利便性が挙げられます。高速鉄道網が発達しており、国境を越えた周遊が容易なため、一度の旅行で複数の文化圏を体験できるコストパフォーマンスの高さも魅力です。特に2025年は、パンデミック中に見送られていた長期休暇を取得し、ヨーロッパ周遊旅行を選択する旅行者が北米やアジアを中心に急増しました。
観光人気がもたらす光と影 – オーバーツーリズムへの挑戦
一方で、この爆発的な人気は「オーバーツーリズム(観光公害)」という深刻な課題を再燃させています。特にバルセロナでは、観光客の集中による家賃高騰や公共サービスの混雑が住民生活を圧迫しており、市は対策に追われています。
バルセロナ市は、観光客に課す宿泊税を2024年に引き上げたのに続き、2025年からはクルーズ船の寄港数を制限し、中心部での新規ホテル建設を凍結する条例を施行。観光客の受け入れキャパシティを管理し、住民との共存を図るモデルを模索しています。この動きは、他の人気都市にとっても重要な試金石となるでしょう。
予測される未来:分散化と「質の高い観光」へのシフト
2025年のランキングは欧州の強さを示すものでしたが、同時に、今後の旅行トレンドの変化を予感させます。オーバーツーリズムへの懸念から、旅行者の関心は、これまで注目されてこなかった「セカンドシティ」や地方へと向かうことが予測されます。スペインであればマドリードやバルセロナだけでなく、アンダルシア地方のセビージャや、美食の街として知られるバスク地方のサン・セバスティアンなどが次の人気候補地として注目されています。
また、単に名所を巡るだけでなく、その土地の文化や自然に深く触れる「体験型観光」や、環境負荷の少ない「サステナブル・ツーリズム」の需要はさらに高まるでしょう。旅行先が提供する「価値」が、単なる知名度や物価の安さから、より本質的で持続可能な体験へとシフトしていくことは間違いありません。
今回のランキングは、2025年の旅行業界の一つの到達点を示すと同時に、私たち旅行者がこれからどのような旅を選択していくべきかを問いかける、重要なマイルストーンと言えるでしょう。









