台湾の大手航空会社であるエバー航空は、2025年9月9日より、台北(桃園)とプノンペンを結ぶ便の発着空港を、現在のプノンペン国際空港(PNH)から、新しく開港するテチョ国際空港(KTI)へ移転することを正式に発表しました。この移転は、カンボジアの航空インフラが新たな時代を迎えることを象徴する重要な動きであり、旅行者やビジネス渡航者に大きな影響を与えることが予想されます。
エバー航空の空港移転計画の詳細
エバー航空の発表によると、2025年9月9日以降、台北(桃園)-プノンペン線の全便(BR265/BR266便など)が新設のテチョ国際空港(KTI)を利用することになります。現在利用されているプノンペン国際空港(PNH)での運航は、同日をもって終了します。
この変更に伴い、エバー航空は旅行者に対し、航空券の予約情報や空港名を再確認するよう呼びかけています。特に、9月9日前後にプノンペンへの渡航を計画している方は、利用する空港がどちらになるのか、出発前に必ず確認することが重要です。
カンボジアの未来を担う「テチョ国際空港(KTI)」とは
今回、エバー航空が移転先に選んだテチョ国際空港(KTI)は、カンボジア政府が国家的な威信をかけて建設を進めてきた巨大プロジェクトです。その背景と概要を見ていきましょう。
背景:限界に達した現行空港と経済成長への期待
現在のプノンペン国際空港(PNH)は、プノンペン市街地から約10kmという利便性の高い場所にありますが、市街地に囲まれているため拡張が困難であり、急増する航空需要に対応しきれないという課題を抱えていました。カンボジア政府は、観光業と経済の持続的な成長のためには、大規模な国際ハブ空港が必要不可欠と判断し、新空港の建設を決定しました。
新空港のスペックとポテンシャル
テチョ国際空港(KTI)は、プノンペン中心部から南へ約19kmのカンダル州に位置し、総工費約15億米ドル(約2,300億円)を投じて建設されました。その主な特徴は以下の通りです。
- 圧倒的な規模: 4F等級の滑走路を備え、世界最大級の旅客機であるエアバスA380の離着陸も可能です。
- 高い旅客処理能力: 開港当初の第1フェーズで年間1,300万人の旅客に対応可能。将来的には年間3,000万人、最終的には5,000万人規模への拡張が計画されており、東南アジアの主要ハブ空港に匹敵するキャパシティを誇ります。
- 最新鋭の設備: 利用者の快適性を追求したモダンなターミナルビルには、スムーズな出入国審査システムや充実した免税店、レストランなどが整備される予定です。
新空港移転がもたらす影響と今後の予測
エバー航空の空港移転は、旅行者、そしてカンボジア経済全体に多岐にわたる影響を及ぼすと予測されます。
旅行者への影響
旅行者にとっては、メリットと注意すべき点の両方が存在します。最新鋭の空港施設を利用できるため、より快適でスムーズな旅行体験が期待できるでしょう。長期的には、大型機材の就航が可能になることで、欧米などからの長距離直行便の誘致が進み、アクセスの選択肢が増える可能性も秘めています。
一方で、注意点としてはプノンペン市街地からのアクセスが挙げられます。現行のPNH空港に比べて市街地からの距離が遠くなるため、移動時間や交通費が増加する可能性があります。新空港と市内を結ぶ高速道路や公共交通機関の整備状況が、利便性を左右する鍵となります。渡航者は、事前にタクシーやシャトルバスなどのアクセス手段と所要時間を確認しておくことが推奨されます。
カンボジア経済へのインパクト
テチョ国際空港の本格稼働は、カンボジア経済の新たな起爆剤となることが確実視されています。大幅に向上した受け入れ能力は、観光客数の増加に直結し、特にASEAN諸国や中国からの旅行者のさらなる誘致に貢献するでしょう。
また、巨大な貨物処理能力は、カンボジアを地域の物流ハブへと押し上げる可能性を秘めています。これにより、縫製品や農産品といった主要な輸出品の国際競争力が高まり、外国からの投資を呼び込む要因ともなり得ます。空港周辺では、新たな商業エリアや住宅地の開発も進み、広範囲にわたる経済効果と雇用創出が期待されています。
エバー航空による今回の発表は、テチョ国際空港が国際的なハブとして本格的に機能し始める号砲と言えるでしょう。今後、他の国際的な航空会社も続々と新空港へ移転することが予想されます。カンボジアへのご旅行や出張を計画される際は、この新しい空の玄関口の情報を常にチェックすることをお勧めします。









