「イギリス料理はまずい」。それは、まるで古いことわざのように、旅人の間で語り継がれる伝説。世界中の辺境で、灼熱のスパイスが効いた料理を求めてきた私、スパイスハンター・リョウにとっても、その噂は無視できないものでした。果たして、大英帝国の食文化は、本当に美食家たちを絶望させるだけの力しか持たないのでしょうか。それとも、厚い霧の向こうに、まだ見ぬ美味が隠されているというのでしょうか。刺激を求める私の舌が、今回は「まずい」という未知の刺激を確かめるべく、霧の都ロンドンへと飛び立ちました。この旅は、単なる食レポではありません。英国料理という巨大な謎に挑む、一人のフードファイターの冒険譚なのです。さあ、一緒にこの食文化の光と闇を巡る旅に出かけましょう。
英国料理の光と闇を探求した後は、英国のもう一つの魅力である芸術と産業が交差する街、グラスゴーへの旅もおすすめです。
英国料理の「闇」:伝説は真実だったのか?衝撃のグルメたち

ロンドンのヒースロー空港に降り立ったとき、私の胸は期待と不安でいっぱいでした。今回は灼熱の唐辛子ではなく、冷たい視線と厳しい批評にさらされてきた料理たちとの対決です。フードファイターとしての闘志が自然と湧き上がります。まずはウォーミングアップも兼ねて、噂高い「闇」の住人たちに挨拶をしに向かうことにしました。
味覚への挑戦状:マーマイトとの遭遇
最初の対戦相手は、英国の朝食には欠かせないとされる「マーマイト」です。スーパーマーケットのジャム売り場で、黒くずんぐりとした瓶がひときわ異様な存在感を放っています。ラベルには「Love it or hate it(好きになるか嫌いになるか)」の文字が踊ります。面白い、受けて立ちましょう。ホテルに戻り、トーストを用意して蓋を開けると、一気に強烈な香りが立ち上りました。醤油や味噌を煮詰め、そこにビールの酵母を混ぜ込んだかのような、発酵食品特有の匂いです。これは簡単には攻略できそうにありません。ナイフの先に少量を取り、こんがり焼いたトーストに薄く広げます。見た目はまるでチョコレートペーストですが、香りは全く異なります。覚悟を決めて一口噛みしめると…!強烈な塩味と凝縮された旨味、それに酵母の香りが鼻を突き抜け、一瞬で舌が痺れるような刺激が襲います。飲み込んだ後もその風味が口の中に居座り続けるのです。なるほど、「Love it or hate it」という意味がよくわかりました。これは食べ物というより、味覚を鍛えるための特訓用具に近いかもしれません。少量なら料理の隠し味として深みを出せるポテンシャルを感じますが、これをジャムのように塗って食べる英国人の味覚は本当に恐るべきです。私にとっては「Hate」に分類されましたが、初戦から強烈な洗礼を受け、英国料理の懐の深さ(?)を痛感させられました。
見た目の衝撃、そして味は…:ウナギのゼリー寄せ
次の挑戦は、ロンドンの下町イーストエンド発祥の伝統料理「ジェリード・イールズ(Jellied Eels)」です。名前の通り、ウナギをぶつ切りにし、煮こごりで固めたゼリー寄せ。歴史を辿ると、テムズ川で豊富に獲れたウナギを安く美味しく食べるため、労働者階級の知恵が詰まっています。私は伝統的なパイ&マッシュの店でこの料理と対面しました。透明なカップの中に、灰色のウナギの切り身が琥珀色のゼリーに閉じ込められていて、素直に言って食欲をそそる見た目ではありません。まるで理科室の標本のようです。店主に「ビネガーと白胡椒をたっぷりかけるのが通の食べ方」と教えられ、その通りに振りかけてからスプーンですくい口に運びます。ぷるんとしたゼリーの食感の後に、ウナギの身がほろっと崩れます。味は意外にあっさりしていて、ウナギ自体の風味も控え目でわずかに泥臭さが残ります。ゼリーの部分は魚介の出汁が効いていますが、これも優しい味わい。ビネガーの酸味と胡椒のピリッとした刺激がないと、何の味かわかりにくいかもしれません。骨が多いのも難点で、慎重に食べないと口中に小骨が刺さってしまいます。味の判定は「まずい」寄りですが、マーマイトのような強烈な不快感はなく、どこか物悲しくつかみどころのない味です。過酷な時代を生き抜いた食文化への敬意は感じますが、現代の美食として楽しむには相当な覚悟と歴史的理解が必要だと痛感しました。Historic UKの解説によると、この料理は今なおロンドン市民に愛されるソウルフードだそうで、文化の厚さを改めて感じさせられます。
羊の内臓よ、こんにちは:ハギスとの対峙
厳密にはスコットランド料理ですが、「まずいイギリス料理」の代表として必ず名前が挙がるのが「ハギス」です。羊の胃袋に、心臓、肝臓、肺などの内臓を細かく刻み、オートミールや玉ねぎ、スパイスと混ぜて詰めた後蒸し上げます。説明だけ聞くと、多くの人が顔を背けたくなるでしょう。私もそのグロテスクなイメージに少し怯みつつ、スコティッシュ・パブで注文しました。皿に盛られたのは、茶色く丸い塊。ナイフを入れると、中からほろほろとした具材が溢れてきます。香りは意外にスパイシーで、食欲をそそるレバーペーストやソーセージに近いもの。付け合わせのマッシュポテト(タティース)とカブのピュレ(ニープス)と共に口に運ぶと…おや、これは美味しい!内臓特有のクセはあるものの、スパイスがうまくそれを中和し、濃厚な旨味へと昇華させているのです。オートミールのプチプチとした食感も良いアクセント。ウイスキーソースをかければ風味が一層豊かになり絶品です。全くもって嬉しい誤算でした。見た目や材料のインパクトに損をしているものの、味は間違いなく保証できます。日本のホルモン料理が好きな人なら、きっと気に入るはずです。ハギスよ、今まで誤解していてごめんなさい。君は「闇」の住人ではなく、隠れた「光」の戦士だったようです。
英国料理の「光」:心と体を満たす、真の英国グルメ
ハギスとの出会いをきっかけに、私の英国料理に対する印象は徐々に変化していきました。「まずい」というイメージは、一部の個性的な料理に過ぎず、誤解によって作り出されたものかもしれないと感じるようになったのです。そう信じて、今度は積極的に「輝き」を求めて旅に出る決意をしました。そして、その輝きは意外なほど身近な場所で、温かく光を放っていたのです。
日曜日のごちそう:サンデーローストがもたらす幸せ
イギリスの食文化を語るうえで欠かせないのが「サンデーロースト」です。その名前の通り、日曜日に家族や友人が集まって楽しむ伝統的な食事。ビーフやラム、ポーク、チキンなどのロースト肉に加え、ローストポテトや季節の野菜、そしてヨークシャープディングが添えられ、濃厚なグレイビーソースがたっぷりかけられます。私は日曜日の午後、予約で満席の活気あるパブへと足を運びました。注文したのは定番のローストビーフ。運ばれてきた料理の豪華さに目を見張りました。厚切りのローストビーフは美しいロゼ色で、カリッと焼きあがったローストポテトがゴロゴロと散らばり、人参やブロッコリーが彩り豊かに添えられています。そして、皿の端にはシュークリームの皮のように膨らんだヨークシャープディングが誇らしげに鎮座しています。ナイフを入れると柔らかな肉がすっと切れ、グレイビーソースを絡めて口に運べば…ああ、まさに幸福の味わいです。肉の旨味と濃厚なソースの調和、そしてハーブの香りが絶妙なハーモニーを奏でています。外はカリカリ、中はふっくらのポテト。野菜の自然な甘みも心地よく感じられます。ヨークシャープディングは外側がサクッとし、内側はもちもちの食感。味は控えめですが、肉汁とグレイビーソースを吸って絶好の「ご飯代わり」となります。洗練されたフレンチやイタリアンとは違い、素朴で温かみがあり、心から満たされる味わいです。毎週こんなごちそうを楽しんでいるイギリス人が、羨ましくてなりません。サンデーローストを食べずして英国料理を語るべからず、これは私の切なる思いです。BBC Good Foodのレシピを見ると、その多彩な構成と家庭での重要性がよく理解できます。
国民食の真髄:本場フィッシュ&チップスの魅力
「フィッシュ・アンド・チップスはただの魚フライとポテトでしょ?」そう思うなら、それは大きな誤解です。本場で味わう、揚げたての絶品フィッシュ・アンド・チップスはもはや芸術品の域に達しています。肝心なのは「店選び」。観光地の冷凍食品を使う店ではなく、地元の人が行列を作る「チッピー」(フィッシュ・アンド・チップス専門店の愛称)を探すのが絶対条件です。私が訪れたのは、地域で評判の老舗店。注文後、大きなタラの切り身に衣をまとわせ、巨大なフライヤーに投入します。ジュワッという揚げ音とともに濃厚な香りが店内に広がりました。数分待ち、熱々でずっしり重たい包みを受け取ります。近くの公園のベンチに腰掛けて開けると、湯気を立てる黄金色の魚のフリットと山盛りのチップス(フライドポテト)が顔を出します。まずは魚から。衣は驚くほど軽やかでサクサク。その中に隠れるタラの白身は蒸し上げたかのようにふわふわでジューシー。衣の塩加減と魚の繊細な甘味が口中で一体となります。次にチップス。日本のフライドポテトよりも太めで、外はカリッと、中はしっかりと芋の風味が感じられるほくほくの食感。塩とモルトビネガー(麦芽酢)をたっぷりとかけるのがイギリス風。ビネガーの酸味が油っぽさを中和し、さっぱりとした後味に仕上げてくれるので、いくらでも食べられそうです。タルタルソースやマッシーピーズ(エンドウ豆のペースト)を添えるのもおすすめ。シンプルながら素材の良さと揚げの技術が問われる深みのある料理です。フィッシュ・アンド・チップスは、間違いなく英国が世界に誇るべきソウルフードと言えるでしょう。
朝食は王様のように:フルイングリッシュブレックファストの満足感
「朝は王様のように、昼は王子のように、夜は貧者のように」という格言がありますが、それを体現しているのが「フル・イングリッシュ・ブレックファスト」です。そのボリュームはまさに王様級。ベーコン、ソーセージ、目玉焼きまたはスクランブルエッグ、ベイクドビーンズ、焼きトマト、マッシュルームのソテー、そしてブラックプディング(豚の血のソーセージ)が一皿に並びます。これにトーストと紅茶かコーヒーが付きます。初めて目にすると品数の多さとカロリーの高さに圧倒されるかもしれませんが、一口食べればその絶妙な組み合わせに感嘆することでしょう。カリカリのベーコンの塩気、ジューシーなソーセージの肉汁、とろりとした卵の黄身。甘みのあるベイクドビーンズが驚くほど全体をまとめ、焼きトマトの酸味がさっぱりと口をリセットしてくれます。怖々試すブラックプディングは、少し鉄分を感じさせる独特な風味がありつつも、コク深く美味。各々の食材がそれぞれに役割を持ち、一皿の中で見事な調和を見せています。これを朝に食べれば、一日中エネルギッシュに過ごせることは間違いありません。観光で歩き回る日にはぴったりの朝食です。ただし、毎日食べるには健康面も考慮が必要でしょうが…。
英国の心が宿るパイ:ステーキ&エールパイの魅力
イギリス人はパイをこよなく愛しています。甘いデザートパイから食事用のセイボリーパイまで、その種類は実に多彩です。私のお気に入りは「ステーキ&エールパイ」。牛肉をエールビールでじっくりと煮込み、それをパイ生地で包んで焼き上げた伝統的な料理です。パブの定番メニューでもあり、店ごとに少しずつ異なる味わいが楽しめるのも魅力です。私が注文したパイは、こんもりと盛り上がった美しいドーム型。ナイフを入れるとサクッと軽やかな音とともに湯気が上がり、中からはゴロゴロとした牛肉と芳醇なビールの香りがあふれ出します。パイ生地をほぐしながら、中のシチューと一緒に味わいます。牛肉はスプーンでほぐれるほど柔らかく、エールの苦味とコクが凝縮したソースが絶品です。サクサクのパイ生地は濃厚なソースをしっかり吸収し、贅沢な美味しさを生み出します。付け合わせのマッシュポテトやグリーンピースとともに楽しめば、もう箸もスプーンも止まりません。寒い日には体の芯から温めてくれる究極のコンフォートフードと言えるでしょう。英国のパブ文化と食文化が、この一皿にぎゅっと詰まっているのです。
スパイスハンター、ロンドンで「激辛」に出会う

伝統的な英国料理の明るい面と影の部分を体験した私ですが、スパイスハンターとしての本能がまだ何か物足りなさを感じていました。そんな折、ふと思い出したのは、大英帝国がかつて広大な植民地を有し、世界中の文化やスパイスを取り入れてきた歴史のことでした。とりわけインドとの結びつきは強く、今や「チキン・ティッカ・マサラ」は英国の国民食と呼ばれるほどです。私が求める刺激は、伝統的な英国料理の中ではなく、その多文化主義の中にこそ存在するのではないかと確信し、ロンドン東部にある「ブリック・レーン」へと向かいました。
ブリック・レーンは「カレー・マイル」とも呼ばれ、多数のインドやバングラデシュ料理店が軒を連ねるエリアです。通りの看板は英語とベンガル語が混在し、スパイスの香りが街中に漂っています。ここなら、私の渇望を満たす一皿に出会えるはずです。数ある店の中から、ひときわオーラを放つ一店に足を踏み入れました。メニューを見ると、ヴィンダルーやティンダルー、そして「ファール(Phaal)」の文字が目に入ります。ファールカレーは、世界で最も辛いカレーの一つとして名高く、ギネスブックにも掲載されたことのある、まさに辛さのラスボス的存在です。もちろん、私が頼んだのはファールでした。
店員は「本気か?これは本当に、本当に辛いぞ」と何度も念を押しますが、私はフードファイターとしての誇りを胸に、「望むところだ」と答えました。しばらくして運ばれてきたのは、赤黒く溶岩のように煮えたぎるカレー。見た目からして尋常ではありません。ナンを少しちぎって恐る恐るカレーに浸し、口に運びます。…来た!口に入れた瞬間、味を感じる前に暴力的な痛みが舌を襲います。まるで無数の針で刺されているかのようです。唐辛子の辛さだけでなく、様々なスパイスが複雑に絡み合い、味覚中枢を直撃してくるような衝撃。額や首筋からは汗が滝のように流れ落ちます。呼吸が荒くなり、心臓の鼓動が速まるのがわかります。しかし、不思議なことにスプーンは止まりません。痛みの奥に、確かに存在する旨味と深いスパイスの香り。それを確かめたくて、水やラッシーで舌を冷やしつつ、一歩一歩、辛さの頂点を目指して食べ進めました。完食した時、私はまるで燃え尽きたボクサーのようでした。しかしその疲労感と共に、圧倒的な達成感と幸福感が全身を包み込みました。これです、まさに私が求めていた刺激。伝統的な英国料理とは真逆にあるこの激辛カレーも、現代の英国を形作る重要な食文化の一部なのです。英国は、恐るべき懐の深さと熱さを持っていました。私の想像以上に、その懐は広く、そして熱かったのです。
【読者実践編】あなたも英国グルメ探訪へ!知っておくべきことリスト
さて、私の食の冒険記を読んで、実際にイギリスで美味しい料理を味わいたいと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、ただ何の準備もなく街に出かけると、残念ながら「まずい」料理に当たってしまうリスクも否定できません。そこで、皆さんが最高の英国グルメ体験を得るために、具体的な行動のコツと心構えをお伝えします。この記事を読めば、もう迷うことはありません!
レストラン&パブ選びの極意と予約のコツ
美味しい食事を楽しむための第一歩は、適切なお店を選ぶことです。特にロンドンのような大都会では飲食店の数が非常に多いため、失敗を避けるためのポイントをいくつかご紹介します。
- 情報収集が重要:渡航前に、Googleマップのレビューやトリップアドバイザー、現地のフードブロガーの記事などをしっかりチェックしましょう。日本語の情報だけでなく、英語で「best sunday roast in London」のように検索すれば、より広範な情報を得られます。評価の数や内容をよく吟味することが肝心です。
- 行列は美味しさの証拠:地元の人たちが行列を作っているお店は、味に間違いがない可能性が高いです。特にランチタイムの「チッピー」や週末のブランチで列ができている店は、期待して間違いありません。
- 予約は必須と心得る:特にディナータイムに人気のレストランや、日曜限定のサンデーローストを提供するパブは、予約なしでの入店はほぼ不可能です。数週間前、場合によっては1ヶ月以上前に予約する必要があることもあります。多くの店では公式ウェブサイトからオンラインで予約ができ、「TheFork」や「OpenTable」などの予約サイトも便利です。当日どうしても行きたい場合は、開店直後の早い時間を狙うか、電話でキャンセルの有無を確認する方法もあります。
- 公式サイトで雰囲気を確認:予約時には公式サイトでメニューや価格帯、そして「Dress Code(服装規定)」を確認しましょう。高級店ではジャケットの着用や、Tシャツ・短パン・スニーカーの禁止といった規定がある場合があります。一方、大多数のパブは非常にカジュアルで、服装を気にする必要はほとんどありません。TPOに合わせた服装選びがスマートな旅のコツです。
準備と持ち物:快適な美食旅のために
最高の食体験は、しっかりした準備から生まれます。些細なことかもしれませんが、これらがあるかないかで旅の快適さは大きく変わります。
- 支払い手段:イギリスはキャッシュレス化が進んでおり、クレジットカードやデビットカードのタッチ決済(コンタクトレス)が主流です。VISAやMastercardはほぼ全ての場所で利用可能で、スマートフォンにカードを登録しておくとさらに便利です。ただ、小さな市場の屋台や一部のパブでチップを渡す際のために、少額の現金(ポンド)を少し持っておくと安心です。
- 服装と靴:イギリスの天気は変わりやすく、「一日に四季がある」とも言われます。晴れていても急に雨が降ることが多いため、脱ぎ着しやすい上着や撥水ジャケットがあると便利です。そして特に重要なのが「歩きやすい靴」。石畳の道が多く、たくさん歩くことになるため、スニーカーやウォーキングシューズを用意しましょう。
- 必携アイテム:
- 変換プラグ:英国のコンセントはBFタイプで、日本のAタイプと形状が異なるため、変換プラグは必須です。
- エコバッグ:スーパーなどではレジ袋が有料のことが多いため、折りたたみのできるエコバッグを一つ持っていると買い物に便利です。
- 胃腸薬:イギリスの食事は揚げ物やボリューム満点のものが多く、慣れないと胃に負担がかかります。フィッシュ&チップスやフル・イングリッシュ・ブレックファストを楽しむなら、普段使用している胃腸薬を必ず携帯しましょう。
パブでの注文方法:これで安心!
イギリスの食文化を味わうにはパブは欠かせません。しかし、日本の居酒屋とはシステムが異なるため、初めてだと戸惑うこともあるでしょう。安心してください、流れはシンプルです。
- ステップ1:座席を確保:まず空いている席を見つけて座ります。テーブルに番号がついている場合が多いので覚えておきましょう。メニューはテーブルに置かれているか、壁に掲示されています。
- ステップ2:カウンターで注文&支払い:何を注文するか決まったら、カウンター(バー)に行き、スタッフにテーブル番号を伝えて注文します。注文後はその場で支払いをするのが基本です。
- ステップ3:ドリンクを受け取り食事を待つ:ドリンクはその場ですぐ受け取ることが多く、自分で席に運びます。食事はスタッフが後から席まで運んでくれます。
- ビールの頼み方:「a pint of lager, please(ラガーを1パイントください)」や「half a pint of ale, please(エールをハーフパイントください)」と注文します。1パイントは約568ml、ハーフパイントはその半分です。迷ったら、バーテンダーに「What’s popular?(おすすめはどれですか?)」や「Can I try this one?(これを試飲できますか?)」と尋ねると親切に教えてくれます。
もしものトラブル対応法
旅先でのトラブルは避けがたいものですが、事前に対処法を知っていれば慌てずに対応できます。
- 料理に問題があったら:注文と異なる料理が出てきた、料理に異物が混入していたなどの場合は、遠慮せずスタッフに声をかけましょう。「Excuse me, but there seems to be a problem with my dish.(すみません、料理に問題があるようなのですが)」と丁寧に伝えれば、交換や作り直しに誠実に応じてくれます。黙って我慢する必要はまったくありません。
- 予約のキャンセルや変更時:急な予定変更で予約をキャンセルまたは変更したくなった場合は、できるだけ早くレストランに連絡しましょう。無断キャンセルは厳禁です。人気店ではキャンセル料がかかることもあるので、予約時にキャンセルポリシーを事前に確認しておくことが大切です。英国政府観光庁のグルメガイドもお店選びに役立つでしょう。
- 体調が悪くなった場合:食べ過ぎや慣れない料理で胃の調子が悪くなった際は、無理をせず休みましょう。持参した胃腸薬を服用し、その後の食事はスープやパンなど消化に良いものに切り替える決断も必要です。旅を最後まで楽しむには体調管理が何より大切です。
英国料理は「まずい」のか?旅を終えたスパイスハンターの答え

ロンドンで長期間にわたる食の旅を終え、今私はヒースロー空港のラウンジでこの文章を書いています。私の舌と胃には、マーマイトの独特な塩気、ウナギのゼリー寄せの淡泊さ、サンデーローストの満ち足りた幸福感、そしてファールカレーの激しい辛さが深く刻まれています。さて、ここで結論を述べましょう。果たして英国料理は「まずい」のでしょうか。
私の答えは「いいえ」です。ただし、単純に「美味しい」とも言い切れません。正確には、「味の当たり外れが大きく、その歴史と文化を理解することで味わいが何倍にも豊かになる料理」と表現すべきでしょう。
産業革命の時代、人々は安価で高カロリーの食事を必要としていました。二度の世界大戦では厳しい食料配給に耐えました。こうした歴史的背景が、飾り気よりも実用性を重んじた素朴で堅実な料理の基盤を築いたと考えられます。ウナギのゼリー寄せや、煮込んだ具材をパイに詰めるという食文化は、まさにその名残りです。
一方で、豊かな自然がもたらす素晴らしい食材も存在します。ジューシーな牛肉やラム、新鮮な魚介類、滋味豊かな野菜など。これらの素材の魅力を最大限に活かしたサンデーローストやフィッシュ・アンド・チップスは、紛れもなく世界クラスの逸品です。さらに、大英帝国の歴史が形成した多文化主義が、ロンドンの食シーンを世界で最も刺激的なものの一つにしています。インドのスパイスや中東のハーブ、カリブの風味が伝統と融合し、絶えず新しい「英国料理」を生み出しているのです。
英国料理は均一なものではありません。それは無骨な岩肌もあれば、磨き上げられた宝石もあり、また異国からやってきた多彩な鉱物が混ざり合った巨大な地層のようなものです。「まずい」という評判は、その地層のほんの一部だけを見て語られた物語に過ぎません。その深みと多様性を知れば、きっとあなたも英国料理の魅力に取り憑かれるでしょう。
今回の旅は、私のフードファイター人生においても忘れ難い経験となりました。辛さだけが刺激ではありません。未知の味覚に挑み、そこに隠された文化や歴史に触れることこそが、最上の刺激であると英国料理は教えてくれました。しかし、連日のボリューム満点な食事と、あのファールカレーの攻撃は、私の頑強な胃に確かな負担を与えました。空港の薬局で胃粘膜を保護し、弱った胃の働きを助ける「太田胃散A錠剤」を購入し、機内で服用したのは言うまでもありません。皆さんも英国グルメの旅では、信頼できる胃腸薬を忘れずに携帯してください。それでは、また次なる世界の食卓でお会いしましょう。

