世界中を飛び回る喧騒の日々。クライアントとのミーティング、分刻みのスケジュール、そして深夜まで続く資料との格闘。そんなビジネスの最前線からふと解放された週末、私が求めるのは派手な観光地ではなく、心から静寂とインスピレーションを得られる場所です。今回のストックホルム出張で得た束の間のオフ。多くの同僚がガムラスタン(旧市街)の散策や美術館巡りを選ぶ中、私はストックホルム中央駅から北西へ向かう列車に飛び乗りました。目指すは、メーラレン湖畔に佇む古都、ベステルオース(Västerås)。
「スウェーデンの隠れた宝石」「ヴァイキングの魂が眠る地」――そんな言葉に惹かれ、訪れたこの街は、私の期待を遥かに超える魅力に満ち溢れていました。ストックホルムの洗練とは異なる、地に足のついた歴史の重みと、湖のきらめきがもたらす穏やかな時間。それは、日々のプレッシャーで凝り固まった思考を解きほぐし、新たな視点を与えてくれるような、まさに「ワンランク上の休日」でした。
この記事では、単なる観光ガイドでは語られない、ベステルオースの深い魅力と、この街を最大限に楽しむための具体的な方法を、私の実体験を交えてご紹介します。歴史が息づく旧市街の歩き方から、地元の人々に愛される美食、そして旅をより豊かにするためのヒントまで。さあ、あなたも次の週末、ストックホルムから少しだけ足を延ばして、特別な時間を探しに出かけませんか。
ストックホルムから足を延ばす旅にご興味を持たれた方は、北欧の知の都、ウプサラを巡る一日も、きっと新たな発見をもたらしてくれるでしょう。
ストックホルムからの小旅行:ベステルオースへのスマートなアクセス術

旅の満足度は、目的地に辿り着くまでの過程でほぼ決まると言っても過言ではありません。限られた時間の中で最大限の体験を得るためには、移動手段の選択と準備が非常に重要です。ベステルオースはストックホルムの西約100kmに位置し、そのアクセスの良さも大きな魅力のひとつです。
鉄道(SJ)がもっとも快適かつ信頼できる選択肢
結論を述べると、ストックホルム中央駅(Stockholm Centralstation)からスウェーデン国鉄(SJ)を利用するのが最善の方法です。所要時間はおよそ1時間で、新幹線のように正確な運行に加え、清潔で快適な車内環境が整っています。車窓からは、スウェーデンらしい豊かな森や畑の美しい田園風景が広がり、旅情を一層高めてくれます。
チケット購入から乗車までの流れ
旅に慣れていない方でも安心して利用できるよう、具体的な手順を紹介します。スウェーデンの公共交通機関はデジタル化が進んでおり、便利に利用できます。
- 事前準備:SJ公式アプリのインストール
まず最初に、スマートフォンにSJの公式アプリをインストールすることを強くおすすめします。チケットの購入や時刻表の確認、遅延情報の取得、さらには乗車時のチケット提示まで、このアプリひとつで完結します。App StoreやGoogle Playで「SJ」と検索すればすぐに見つかります。ユーザー登録も簡単で、クレジットカード情報を登録すれば数回のタップで購入が完了します。
- チケット購入のタイミングと種類
チケットは、乗車日が近づくにつれて価格が上がる傾向があります。旅程が決まったら早めに購入するのが賢明です。SJのチケットは主に以下のタイプがあります。
- Non-rebookable(変更・返金不可): 最も料金が安く、スケジュールが確定している場合に適しています。
- Rebookable(変更可能): 手数料を支払うことで便の変更が可能で、予定が変わりやすい場合に安心です。
- Refundable(返金可能): 最も価格は高めですが、キャンセルして全額返金が受けられます。
私の場合は出張の間のタイトなスケジュールだったため、念のため「Rebookable」を選択しました。一方、週末の気軽な旅行であれば「Non-rebookable」で十分でしょう。料金は時期や時間帯により変動しますが、片道で200~400スウェーデン・クローナ(SEK)程度が目安です。
- 乗車時のポイント
ストックホルム中央駅は大きなターミナル駅です。電光掲示板で、自分が乗る列車のプラットフォーム番号(Spår / Track)を必ず確認してください。発車の15~20分前に表示されます。 乗車は改札がなく、直接プラットフォームへ進むスタイルです。車内検札時にスマートフォンアプリに表示されるQRコードを提示すれば良く、紙のチケットは不要です。非常にスムーズな乗車体験ができます。
トラブル発生時の対処方法
万一、列車が大幅に遅延したり運休したりした場合はどうするべきでしょうか。EUでは鉄道旅客の権利が定められており、SJもそれに準拠しています。 60分以上の大幅な遅延が生じた場合、運賃の一部返金を請求できる権利があります。また、代替の交通手段(バスなど)が提供される場合もあります。困った時は駅のSJインフォメーションカウンターに相談するか、アプリのカスタマーサービスを利用しましょう。英語で丁寧に対応してもらえます。事前に[SJ公式サイト](https://www.sj.se/en/home.html#/)の旅客権利に関するページを確認しておくと、万が一の際に冷静に対処できるでしょう。
その他のアクセス手段
- ストックホルム・アーランダ空港(ARN)から
空港から直接ベステルオースへ向かう場合、バス会社「Flygbussarna」や鉄道を乗り継ぐ方法があります。ただし、本数や所要時間を考慮すると、一旦ストックホルム中央駅に出てからSJに乗り換える方が効率的な場合が多いです。
- レンタカー利用
アヌンドの墳墓など郊外の観光地へ自由にアクセスしたい場合はレンタカーも選択肢となります。しかし、ストックホルム市街の運転は複雑で、駐車料金も高額です。ベステルオース市内は比較的コンパクトで、公共交通機関も充実しているため、まずは鉄道利用によるアクセスをおすすめします。
時間が止まったかのような旧市街「シルクバッケン」を歩く
ベステルオース中央駅に降り立ち、近代的な駅舎を抜けてから10分ほど歩くと、まるで時代を遡ったかのような景色が広がります。そこは、ベステルオースの中心部ともいえる旧市街、シルクバッケン(Kyrkbacken)です。
石畳と色とりどりの木造住宅が織りなす風景
シルクバッケンはその名が示す通り「教会の丘」という意味で、ベステルオース大聖堂の麓に広がる地区です。曲がりくねった不規則な石畳の小道や、ファールンレッドと呼ばれる鮮やかな赤、マスタードイエロー、パステルブルーなど多彩な色で彩られた木造家屋が隙間なく並んでいます。これらの建物の多くは17世紀から18世紀のもので、今なお人々が生活していることに驚きを覚えます。
この街並みでの過ごし方に特別なルートはなく、気の向くまま路地へ入り込んでみるのがおすすめです。窓辺に飾られた可愛らしいゼラニウムの鉢植えや、歴史を感じさせる木製の扉に目を向けながら、あてもなく散策することこそが何よりの贅沢でしょう。時折、地元の住民たちが気軽に「Hej(ヘイ)!」と挨拶を交わしてくれるのも、この街の温かな雰囲気を感じられる瞬間です。
散策に適した服装と持ち物のポイント
- 服装や持ち物について
シルクバッケンを歩く際に特別な服装の規定はありませんが、何よりも大切なのは歩きやすい靴です。石畳は見た目以上に凸凹が多く、ヒールの方は歩きにくいため、スニーカーやウォーキングシューズを選ぶのが賢明です。 冬季に訪れる場合は、石畳が凍結して滑りやすくなることがあるため、滑り止め付きのブーツがあると安心です。また、スウェーデンの気候は変わりやすいため、夏でも薄手のジャケットや折りたたみ傘があると便利です。
北欧文化の真髄「フィーカ」を体験する
散策で少し疲れたら、スウェーデン文化を象徴する「フィーカ(Fika)」のひとときを楽しみましょう。フィーカは単なるコーヒーブレイクではなく、家族や友人、職場の同僚などとコーヒーや紅茶を飲みながらお菓子を味わい、会話を楽しむ大切な社交の習慣です。
シルクバッケンには、このフィーカに理想的な魅力あるカフェが点在しています。私が訪れたのは、「Systrarna på Gaggeska Gården」という歴史ある建物の中庭にあるカフェです。緑豊かな中庭のテラス席で、焼きたてのシナモンロール(Kanelbulle)と淹れたてのコーヒーを注文しました。シナモンの甘い香りとカルダモンのスパイシーな風味が口いっぱいに広がり、歩き疲れた体に心地よく染みわたります。周囲では地元の老夫婦が静かに語り合い、若いカップルが笑顔で談笑しており、この穏やかで温かな空気こそがベステルオースの魅力の核心だと感じました。
カフェでの注文方法とマナー
スウェーデンのカフェの多くはセルフサービス方式で、カウンターで注文と会計を済ませた後、商品を受け取ってから自由に席を選びます。コーヒーは、1杯分の料金で何回かおかわり(Påtår)が可能な場合も多いので、注文時に確認すると良いでしょう。
スウェーデンの歴史を見守る荘厳な大聖堂

シルクバッケンの丘の頂に堂々とそびえ立つのが、ベステルオース大聖堂(Västerås Domkyrka)です。13世紀に建立されて以来、幾度となく改修を経てきたこの大聖堂は、単なる宗教施設を超えて、スウェーデンの歴史を象徴する存在となっています。
赤レンガで造られたゴシック様式の外観は、重厚さを湛えつつもどこか温もりを感じさせます。内部に一歩足を踏み入れると、涼やかな空気が肌を包み込み、高くそびえる天井から差し込む柔らかな光が荘厳な空間を幻想的に照らし出していました。ステンドグラスを通した色彩豊かな光が床を彩る様子は、思わず息を呑むほどの美しさです。
歴史に名を刻む王の安息の地
この大聖堂の歴史的重要性の一端を担うのが、スウェーデン王エリック14世の墓所であることです。彼は著名なグスタフ・ヴァーサ王の長男でありながら精神を病み、弟に王位を奪われた後、幽閉先で毒殺されたとされる悲劇の王です。彼を納める黒い石棺は静謐ながらも強い存在感を放ち、権力の栄華がどれほど儚いものであったかを私たちに語りかけています。
また、大聖堂の宝物庫では、中世の貴重な織物や聖杯が展示されており、こちらも非常に見応えがあります。中でも、複雑な刺繍が施された司教の祭服は、当時の職人たちの卓越した技術が窺える逸品です。
大聖堂訪問の際に心得ておきたいこと
- 入場・マナーについて
大聖堂は無料で入場できますが、現役の礼拝施設であるため、訪問の際は敬意を持ち静粛に振る舞いましょう。
- 服装について: 厳格な服装規定はありませんが、タンクトップやショートパンツなど過度に露出の多い服装は避けるのが望ましいです。ミサや特別行事の際は見学が制限される場合があるため、その際は静かに場所を離れるか、後方で終わるのを待ちましょう。
- 写真撮影: 基本的に撮影は許可されていますが、フラッシュの使用は禁止です。また、祈りを捧げている方々にカメラを向けるのは控えてください。
- 開館時間: 季節や曜日によって開館時間が変わることがあります。訪問前に、[スウェーデン国教会ベステルオース教区の公式サイト](https://www.svenskakyrkan.se/vasteras/vasteras-cathedral)で最新情報を確認することをおすすめします。
静寂に包まれた堂内でパイプオルガンの荘厳な響きを聴くと、日常のビジネスの悩みがいかに些細なものかを改めて感じさせられます。ここは歴史と向き合い、自己と対話するための神聖な場所なのです。
ヴァイキングの時代へ誘う、アヌンドの墳墓
ベステルオースの魅力を語る際に、絶対に外せないスポットがアヌンドの墳墓(Anundshög)です。市街地の中心から東へ数キロ進んだ、のどかな田園風景の中に突如として現れるこの大規模な墳丘は、スウェーデン最大級のヴァイキング時代の遺跡であり、訪れる人々を遥か1000年以上前の時代へと誘います。
圧倒的な規模と謎に包まれた歴史
アヌンドの墳墓は、直径およそ60メートル、高さ約9メートルという巨大なマウンドです。頂上に立つと爽やかな風が吹き抜け、周囲に広がる広大な麦畑を一望できます。この墳墓の築造者や建造時期については今なお明確な解明がなされていません。しかしこれほどの巨大な墳墓を造ることができた人物は、絶大な権力を持つ王か族長であったことは間違いなさそうです。伝説によれば、イングリング朝の王アヌンドがここに眠ると伝えられていますが、確固たる証拠は存在しません。その謎めいた背景が、訪れる人々の想像力を一層かき立てます。
墳墓のふもとには、石が船の形に配列された「ストーンシップ(Stone Ship)」が2基あります。これはヴァイキングの葬送儀礼の一環で、死者を船に乗せてあの世へ送り出す信仰の形跡です。最大のものは長さが50メートルを超え、その輪郭をたどりながら歩くと、頑強なヴァイキングたちが儀式を執り行う光景が目に浮かぶかのようでした。
また、ルーン文字が刻まれた石碑も点在しており、古代スカンディナヴィアの神秘的な空気を強く感じさせます。これらの遺跡群が一体となって、この地がかつて古代の人々にとって非常に神聖な場所だったことを物語っています。
アヌンドの墳墓へのアクセスと準備について
アヌンドの墳墓は郊外に位置しているため、訪れる際には事前の準備が必要です。
- 市バス(VL)を利用する場合
ベステルオース中央駅から市バスを使うのが最も一般的な方法です。バス会社は「VL」で、最寄りのバス停は「Anundshög」です。バス停からは徒歩数分で現地に到着します。
- チケットの購入方法: スウェーデンのバスは基本的にキャッシュレス対応で、運転手から現金でチケットを買うことはできません。事前に「VL」の公式アプリをダウンロードし、クレジットカードを登録してデジタルチケットを購入するのがスムーズです。また、駅にあるキオスク「Pressbyrån」などでチャージ式の交通カードを購入する方法もあります。
- 乗車方法: 乗車時にはアプリのQRコードか交通カードを運転席横のリーダーにかざします。降車したいバス停が近づいたら、車内の赤いストップボタンを押して運転手に知らせてください。
- タクシーやレンタサイクルの利用
時間を効率的に使いたい場合や、自分のペースでゆったり観光したい場合はタクシーが便利です。晴れた日には市中心部からサイクリングで向かうのも爽快な体験となるでしょう。
- 準備と注意事項
アヌンドの墳墓は完全に屋外の史跡です。
- 持ち物: 屋根や日陰がほとんどないため、夏場は帽子、サングラス、日焼け止め、そして十分な水分補給が必須です。春や秋は風が冷たく感じることもあるため、ウインドブレーカーなど風を防げる上着があると快適です。
- 服装: 歩きやすい靴を履き、天候に合わせた服装を心がけましょう。
- 施設: 現地には小規模なカフェとインフォメーションセンターがありますが、営業時間は季節によって変わります。特にオフシーズンに訪れる際は、飲み物や軽食を持参することをおすすめします。トイレはインフォメーションセンターに併設されています。
- 禁止事項: 遺跡を傷つける行為は厳禁です。石碑を無断で触ったり、墳墓を掘るような行為は避けましょう。ドローンの飛行にも制限が設けられている場合があります。
夕暮れ時、茜色の空を背景にシルエットとして浮かび上がるアヌンドの墳墓とストーンシップの姿は、まさに息を呑む美しさです。千年の時を越えて、ヴァイキングたちの力強い息遣いが今も聞こえてくるかのような、忘れがたい光景でした。
産業遺産とモダンデザインの融合:湖畔の新たな魅力

ベステルオースは歴史的な魅力だけでなく、現代的な感覚を活かしたスポットも豊富に揃っています。特にメーラレン湖のほとりにあるエリアは、古い産業遺産を巧みにリノベーションし、独特で洗練された空間へと生まれ変わっています。
蒸気発電所が生まれ変わった「The Steam Hotel」
赤レンガ造りで湖畔にひときわ目立つ大きな建物。それが、100年以上前の蒸気発電所をリノベーションしたデザインホテル「The Steam Hotel」です。インダストリアルな骨格を大胆に残しつつ、ラグジュアリーかつモダンなインテリアを融合した空間は、まさに圧巻。多くのデザインホテルを訪れた私も、その独創性とスケールの大きさには驚かされました。
今回は宿泊しませんでしたが、このホテルの魅力は宿泊者でなくても十分に味わえます。
- 18階のルーフトップバー「Locavore」
エレベーターで最上階に上がると、メーラレン湖の絶景を一望できるバーが広がっています。インダストリアルな雰囲気と洗練されたカクテルメニューが特徴です。夕暮れ時に訪れて湖に沈む夕日を眺めながら一杯楽しむ時間は、まさに至福の瞬間。ビジネスの接待にも使えば、確実に強い印象を残せるでしょう。
- 予約とドレスコード: 人気のバーなので、特に週末は公式サイトから事前予約をするのがおすすめです。ドレスコードは厳しくありませんが、雰囲気に合わせてスマートカジュアルの服装が望ましいでしょう。
- 複数のレストランとスパ
ホテル内には、アジア料理の「Chamberlin Grill」や、カジュアルな「The Grand Hall」など複数のレストランがあります。リラクゼーションを求めるなら、湖を見渡せるスパ施設「Voltage Lounge」も利用可能です(予約必須・別料金)。
大人も楽しめるウォーターパーク「Kokpunkten」
The Steam Hotelと同じ建物内にあるのが、スウェーデン有数のアクションウォーターパーク「Kokpunkten Actionbad」です。かつての発電所のボイラー室や配管をそのまま活かしたスチームパンク風の内装が特徴で、単なるプール施設とは一線を画しています。
真っ暗なチューブを猛スピードで滑り降りるスライダーや、8階の高さから垂直に落下するスリリングなアトラクションは、大人でも思わず声を上げてしまうほどの迫力。もちろん、流れるプールやジャグジーなどリラックスできるエリアも充実。家族連れはもちろん、友人やカップルで訪れても間違いなく楽しめる新感覚のエンターテインメント空間です。
Kokpunktenを存分に楽しむためのポイント
- チケットの購入:
当日券もありますが、週末や祝日は混雑が予想されるため、公式サイトでのオンライン事前購入がおすすめです。オンラインチケットは割引がある場合が多く、スムーズな入場が可能です。
- 持ち物チェックリスト:
- 必需品: 水着
- 推奨品: タオル、ビーチサンダル、シャンプーや石鹸(施設にも備え付けはありますが、持参すると便利です)
- その他: ロッカーの施錠に南京錠が必要な場合もありますが、多くはリストバンドで施錠できるシステムです。詳細は公式サイトでご確認ください。水着やタオルは現地でレンタル・購入も可能です。
- 持ち込み禁止事項:
飲食物の持ち込みは基本的に禁止されています。施設内にカフェやレストランがあるため、そちらをご利用ください。また、安全面からガラス製品や鋭利なものの持ち込みも不可です。
この湖畔エリアは、ベステルオースが歴史的な産業遺産を尊重しつつ未来へ向かって進化し続けていることを象徴しています。歴史散策を楽しんだ後に、こうしたモダンな空間で過ごすことで、街の多面的な魅力をより深く感じられるでしょう。
ベステルオースの美食を巡る:健司のレストラン&カフェリスト
旅の醍醐味は、その土地独自の食文化に触れることだと、私は常に感じています。ベステルオースは、伝統的なスウェーデン料理から洗練されたモダンキュイジーヌまで、多彩な食の選択肢が揃う驚きの街でした。ここでは、私が実際に訪れて心から満足したお店を厳選してご紹介します。
モダンと伝統が融合するディナーのひととき
出張先でのディナーは、ビジネスの緊張を解きほぐし、その土地の空気を肌で感じる貴重な時間です。ベステルオースの夜のひとときは、期待を超える刺激的な体験となりました。
Frank Bistro
旧市街のすぐそば、街の中心に位置するこのビストロは、「モダン・ヨーロピアン」という言葉がぴったりの一軒です。コンクリート打ちっぱなしの壁に、温かなウッドテーブルとデザイナーズチェアが調和し、洗練されながらもどこか居心地の良い空間が広がっています。
私が選んだのは、シェフのおまかせコース。一品目は、軽くスモークされたメーラレン湖産パイクパーチ(淡水魚)のカルパッチョ。ディルの爽やかな香りと地元産ベリーを使ったソースのほのかな酸味が、繊細な白身の美味しさを引き立てます。メインは、低温でじっくりと火を通した鹿肉のロースト。驚くほど柔らかくジューシーな肉に、ジュニパーベリーの香りが漂う濃厚なソースが絶妙に絡みます。一皿ごとにシェフの創造性と地元食材への敬意が感じられ、ワインとのペアリングも完璧でした。
- 訪問時のポイント:
Frank Bistroは地元でも非常に人気が高く、特に週末のディナータイムは予約必須です。公式サイトから手軽にオンライン予約ができるので、旅のスケジュールを立てる段階で予約を済ませておくのが賢明です。アレルギーがある場合は、予約時に事前に伝えておくとスムーズに対応してもらえます。
Di Spagna
時には、馴染み深いクラシックな味を最高のクオリティで味わいたくなります。そんな気分の夜にぴったりなのが、本格イタリアンレストラン「Di Spagna」です。白いテーブルクロスが掛けられたテーブルにキャンドルの柔らかな灯りが揺れる落ち着いた空間は、大切な人との食事や少しフォーマルなディナーに理想的です。
こちらでいただいたトリュフ香るクリームパスタは絶品でした。手打ちの生パスタのもちもちとした食感と、豊潤なトリュフの香りが鼻腔をくすぐり、思わず目を閉じ味わいに浸ってしまうほどです。ワインリストも充実しており、ソムリエと相談しながら料理に合わせた一本を選ぶ楽しみも味わえます。サービスは非常にプロフェッショナルで、程よい距離感を保ちつつ常にテーブルに目を配る姿勢も、人気店ならではの質の高さを感じさせました。
気軽に味わうランチとフィーカのひととき
日中はもっとカジュアルに、地元の人々の暮らしに溶け込むような食の体験を楽しみましょう。
Saluhallen Slakteriet
ベステルオースでランチに迷ったら、まずここを訪れることをおすすめします。Saluhallen Slakterietは、かつての食肉処理場をリノベーションした洒落たフードマーケットです。レンガ造りの建物の中にデリカテッセン、シーフードバー、ベーカリー、複数のレストランが軒を連ねています。
活気にあふれた場内を歩くだけでも楽しく、どのお店で何を食べるか選ぶだけでワクワクします。私はシーフードバーで新鮮なエビをたっぷりのせたオープンサンド「Räksmörgås」を堪能しました。プリプリのエビとディルマヨネーズ、レモンのコンビネーションが、まさにスウェーデンの夏の味を感じさせます。マーケット内のテーブルで、さまざまな店の料理を持ち寄って楽しむ人たちの姿も多く見られ、ここはベステルオースの「今」を体感できるスポットです。
Kajplats 9
メーラレン湖畔の散策途中に立ち寄りたいのが、マリーナに面したモダンなレストラン&カフェ「Kajplats 9」です。ガラス張りの店内や広々としたテラス席からは、ヨットが浮かぶ湖の美しい景色が存分に楽しめます。
ここではフィーカの時間に訪れ、スウェーデン伝統のプリンセスケーキ(Prinsesstårta)をいただきました。スポンジケーキ、ラズベリージャム、カスタードクリームの層を、鮮やかな緑色のマジパンで包んだ愛らしいケーキです。見た目の甘さとは裏腹に上品な味わいで、コーヒーとの相性も抜群。湖畔を渡る風を感じながら過ごす午後の時間は、他には代えがたい贅沢なひとときとなりました。
旅の終わりは、次への始まり

ベステルオース中央駅のホームに立ちながら、ストックホルムへ戻る列車を待つ間、私はこの街で過ごした時間をじっくりと思い返していました。ヴァイキングの時代を物語る壮大なアヌンドの墳墓、中世の趣が色濃く息づくシルクバッケンの石畳、そして廃れた発電所を現代的なデザインで蘇らせた空間。過去と現在、歴史と革新がメーラレン湖の穏やかな水面のように自然と調和している——それこそが、ベステルオースという街の本質的な魅力なのかもしれません。
ストックホルムの華やかさも素敵ですが、そこからほんの1時間足を伸ばすだけで、これほど深く心に響く体験が待っている場所が存在します。日々の忙しさに追われ、効率や結果を求められる私たちビジネスパーソンにとって、こうした旅は単なるリフレッシュ以上の意味を持つのです。それは、凝り固まった思考を解きほぐし、新たなインスピレーションをもたらす自己投資とも言えるでしょう。
もしこの記事を読んでベステルオースに少しでも興味を抱かれたのなら、次回のスウェーデン訪問の際にはぜひ旅程に加えてみてください。SJのアプリでチケットを手配し、歩きやすい靴を用意するだけで、未知の北欧の原風景への扉が開かれます。きっと、あなただけの特別な発見や忘れがたい思い出が待っているはずです。その体験は、日々の暮らしに新たな彩りと活力をもたらしてくれることでしょう。ベステルオースは、そんな可能性を秘めた、知る人ぞ知る魅力的なデスティネーションです。詳しい観光情報は[Visit Västeråsの公式サイト](https://visitvasteras.se/en/)でもご覧いただけるので、ぜひ旅の参考にしてください。









