イタリアの旅と聞いて、多くの人がローマの遺跡やフィレンツェの芸術、ヴェネツィアの水路を思い浮かべるかもしれません。しかし、イタリアの本当の魅力は、華やかな観光都市の喧騒から少し離れた、地方の小さな町にこそ隠されています。今回ご紹介するのは、そんな知る人ぞ知る美食の都、ロンバルディア州に佇む「モルタラ」。ここは、ガチョウを使った絶品のサラミ「Salame d’oca di Mortara」でその名を知られる、食を愛する者たちの聖地なのです。
ミラノから電車でわずか1時間弱。日帰りでも訪れることができるこの町は、豊かな水と緑に囲まれたロメッリーナ地方の中心に位置します。歴史的な教会が静かに時を刻む石畳の道を歩けば、ふと香ってくるのは、サルーメリア(食肉加工品店)から漂う芳醇な香り。そこには、何世紀にもわたって受け継がれてきた食文化と、職人たちの誇りが息づいています。
この記事では、ただ観光スポットを巡り、名物を食べるだけではない、一歩踏み込んだモルタラの旅をご提案します。サステナブルな視点を取り入れながら、この土地の文化を深く味わい、旅人として地域に敬意を払う。そんな心豊かな旅の準備を、私と一緒に始めませんか? 具体的なアクセス方法から、地元の人に愛されるお店の選び方、さらには旅先で役立つちょっとしたイタリア語まで。あなたのモルタラ旅行が、忘れられない体験になるための全てを、ここに詰め込みました。
さあ、まずは地図を広げて、美食の都への旅の始まりです。
そして、イタリアにはモルタラのように、華やかな観光地とは異なる独自の魅力を放つ場所が他にもあります。例えば、時が止まったかのような迷宮都市マテーラも、あなたを唯一無二の旅へと誘うでしょう。
モルタラってどんな街? ロンバルディアの隠れた宝石

モルタラという名前を聞いて、すぐにその場所を思い浮かべられる人は、相当なイタリア通かもしれません。この町は、ファッションとデザインの都ミラノと歴史ある古都トリノを結ぶ路線上に位置し、ロンバルディア州パヴィーア県の基礎自治体(コムーネ)に属しています。広大なポー川流域の平野、特に「ロメッリーナ」と呼ばれる稲作の中心地として、長い間農業が盛んに営まれてきました。
一見すれば、どこにでもあるイタリアの地方都市に見えますが、その歴史と文化は実に奥深く、特に食文化ではイタリア全土の中でも独自の存在感を放っています。その主役は「ガチョウ」なのです。
ミラノから日帰り圏内! 優れた交通アクセス
モルタラの大きな魅力のひとつが、そのアクセスのしやすさにあります。ミラノ中央駅(Milano Centrale)やミラノ・ポルタ・ジェノヴァ駅(Milano Porta Genova)からモルタラ行きのローカル列車(Regionale)に乗れば、乗り換えなしでおよそ50分から1時間で到着します。都会のビル群がだんだんと広大な田園風景に変わっていく窓外の眺めは、旅の気分を一層盛り上げてくれることでしょう。
旅の計画を立てる際には、環境への配慮も忘れてはなりません。車での移動も便利ですが、CO2排出を抑えるためにはぜひ鉄道を利用してみてください。イタリアの鉄道網は非常に充実しており、小さな地方の町にもスムーズにアクセスできます。
読者が実践できる:鉄道チケットのスマートな購入方法
イタリア国鉄のTrenitalia(トレニタリア)の公式ウェブサイトや公式アプリを使うのが、最も簡単で安全な方法です。
- ステップ1:検索条件の入力
出発駅(例:Milano Centrale)、到着駅(Mortara)、日付、時間、人数を入力し、検索をかけます。
- ステップ2:列車の選択
表示された中から、時間や料金の条件に合う列車を選びます。ローカル線は料金が一定の場合が多いですが、高速列車では早期予約で割引が適用されることもあります。
- ステップ3:支払い
乗客情報を入力し、クレジットカードで決済を行います。
- ステップ4:チケットの受け取り
購入完了後、QRコード付きの電子チケットがメールで届きます。アプリ利用時は、そのままアプリ内にチケットが保存されます。
この電子チケットがあれば、駅で紙のチケットを発券する必要はありません。検札の際には、スマートフォンでQRコードを見せるだけで済みます。紙の使用を減らすという点でも、環境にやさしい選択と言えるでしょう。ただし、ローカル線のチケットを駅の券売機で紙で購入した場合は、必ずホームにある緑色または黄色の刻印機で打刻(validare)することを忘れないでください。打刻を忘れると、高額な罰金が科される恐れがあるため注意が必要です。
歴史が息づく町並み
モルタラの歴史は非常に古く、その名前は773年に起こったフランク王国のカール大帝とランゴバルド王国のデシデリウス王の間での「モルタラの戦い」にちなむと言われています。名称「Mortara」はラテン語の「Mors Ara(死の祭壇)」に由来し、この戦いで多くの兵士が命を落としたことから名付けられたという説もあるほど、歴史的に重要な場所となってきました。
こうした深い歴史の痕跡は、町のあちこちで見受けられます。中世の面影を残す建造物、静謐な雰囲気に包まれた教会、そしてまるで迷路のように入り組んだ石畳の路地。中心部の広場から少し歩くだけで、まるで時代を遡ったかのような不思議な感覚に包まれます。観光名所を無理に探し回る必要はなく、気の向くままに散策するだけで、モルタラ独特の魅力を存分に味わえることでしょう。
モルタラ観光のハイライト! 見逃せないスポットを巡る
モルタラの街はコンパクトな造りのため、主要な見どころはすべて徒歩で回ることができます。自分のペースでゆったりと歩きながら、歴史の息遣いを感じて散策を楽しんでみてください。歩きやすい靴は必ず用意しましょう。
街の中心「サン・ロレンツォ聖堂(Basilica di San Lorenzo)」
モルタラの核心部、マッツィーニ広場(Piazza Mazzini)に面して堂々とそびえるのがサン・ロレンツォ聖堂です。14世紀に建立されたこの聖堂は、レンガ造りの重厚なファサードが特徴的なゴシック・ロンバルド様式の代表作と言えます。美しいバラ窓や聖ロレンツォの生涯を描いた精緻なレリーフは、思わず足を止めじっくり見入ってしまうほどの見応えがあります。
一歩内部に足を踏み入れると、外の喧騒が嘘のように静かで荘厳な空気に包まれます。身廊を飾るルネサンス期のロンバルディア派の画家たちによる数々のフレスコ画は見逃せません。特にベルナルディーノ・ルイーニの弟子たちとされる作品群は必見です。ステンドグラスから差し込む柔らかな光が、新旧が融合した空間を幻想的に演出しています。
訪問時の注意とエチケット
イタリアの教会は地域の人々にとって今なお大切な祈りの場です。観光客として訪れる際は、十分な敬意を払うことが求められます。
- 服装について:多くの教会では、肌の露出が多い服装(タンクトップやショートパンツ、ミニスカートなど)が禁止されています。特に夏季は、肩や膝を覆うためのストールやカーディガンを持参すると安心です。この規定は男女ともに適用されます。
- 静粛を心がける:聖堂内では大声での会話を控え、静かに見学しましょう。ミサが行われている時間帯は信者の妨げにならないよう、特に配慮が必要です。
- 写真撮影について:撮影が許可されていても、フラッシュの使用は禁止されている場合が多いです。また、祭壇や祈りを捧げている人々を撮影するのは避けましょう。
これらのマナーを守ることは、その土地の文化を尊重し、持続可能な観光を実現する第一歩と言えます。
歴史を刻む「サンタ・クローチェ教会(Chiesa di Santa Croce)」
サン・ロレンツォ聖堂から少し歩いた場所にあるサンタ・クローチェ教会も、訪問に値する歴史的な建築物です。16世紀に建てられたこの教会は、ルネサンス様式の影響が色濃く現れた八角形のドームが特徴的です。内部にはガウデンツィオ・フェッラーリ派の画家たちによる美しい祭壇画が残されています。中心地から少し離れているため、より静かで落ち着いた環境の中でじっくりと芸術鑑賞が楽しめます。
街の象徴「市民の塔(Torre Civica)」
サン・ロレンツォ聖堂の隣にそびえる市民の塔は、かつて街の防衛と監視の役割を果たしていました。現在ではモルタラの象徴的なランドマークとして親しまれています。常時公開されているわけではありませんが、特別イベント時には内部も見学可能なことがあります。塔の上から見渡すモルタラの街並みと、その先に広がるロンバルディア平原の景色は格別です。訪問を計画される際は、事前にモルタラ市の公式サイトなどで公開状況を確認されることをおすすめします。
これぞモルタラの真髄! ガチョウとサラミの美食探訪

モルタラの観光を語るうえで、この街が誇る食文化に触れないわけにはいきません。街のあちこちにあるサルーメリアのショーケースには、多彩な種類のサラミやハムがまるで芸術作品のように美しく並び、食通たちの心を強く惹きつけます。なかでも頂点に立つのが、IGP(保護地理的表示)にも認定されている「Salame d’oca di Mortara(モルタラ産ガチョウのサラミ)」です。
モルタラが「ガチョウの都」と呼ばれる理由
モルタラでガチョウの飼育とその加工が発展した背景には、いくつかの説が存在します。中でも最も有力なのは、中世以降この地に定住したユダヤ人コミュニティの影響とされています。ユダヤ教の食事規定では豚肉の摂取が禁止されていたため、彼らは豚肉の代わりにガチョウの肉を用い、サラミやハムに似た保存食を作り始めました。この製法は地元の人々にも伝承され、やがて豚肉とガチョウ肉を巧みに組み合わせる独自のスタイルへと進化していきました。
「Salame d’oca di Mortara」は、ガチョウの赤身肉と脂身に少量の豚肉を混ぜ、ガチョウの皮で包み熟成させたものです。その味わいは、豚肉だけのサラミとはまったく異なり、ガチョウ肉ならではの繊細かつ深みのある旨味と滑らかな舌触りが特徴です。噛むほどに広がる豊かな香りは、一度味わうと忘れられないほどの感動を呼び起こします。まさに、歴史と文化が紡いだ食の芸術品といえるでしょう。この伝統と品質を守っているのがConsorzio di Tutela del Salame d’Oca di Mortara(モルタラ産ガチョウのサラミ保護コンソーシアム)です。彼らの取り組みにより、私たちは安心して本物の味を楽しむことができます。
絶対に訪れたい!おすすめのサルーメリア(食肉加工品店)
モルタラには、自家製サラミに自信を持つサルーメリアが数多く点在しています。どのお店も魅力的ですが、その中でも地元で高い評価を得ている老舗をいくつかご紹介します。
- Salumeria Nicorelli: 創業100年以上の歴史を誇る名店。伝統的手法を守り続けるガチョウのサラミはもちろん、ガチョウのレバーペーストや燻製品なども多彩に揃っています。店内に足を踏み入れた瞬間、香りが立ち込め、期待感が一気に高まります。
- Macelleria Garavaglia: こちらも地元住民から厚い信頼を寄せられる店。ショーケースに並ぶ多種多様なサラミの数々は見応え十分です。スタッフに相談すれば、おすすめ商品や食べ方を親切に教えてくれるでしょう。
実際に使える!サルーメリアでのスマートな注文フレーズ
イタリアのサルーメリアでは、サラミをブロックで購入することもあれば、量り売りでスライスしてもらうことも可能です。観光客にとっては、その場で気軽に食べられるスライスが便利でしょう。簡単なイタリア語のフレーズを覚えておくと、やり取りがスムーズになります。
- 「Un etto di Salame d’Oca, per favore.」
(ウン・エット・ディ・サラーメ・ドーカ、ペル・ファヴォーレ) 意味:「ガチョウのサラミを100グラムください。」 「etto」は100グラムを意味し、少量を試したい時に便利です。200グラムなら「due etti(ドゥエ・エッティ)」となります。
- 「Lo può affettare?」
(ロ・プオ・アッフェッターレ?) 意味:「スライスしてもらえますか?」
- 「Sottile / Grosso」
(ソッティーレ / グロッソ) 意味:「薄く / 厚く」 スライスの厚さを指定したい際に使います。「un po’ più sottile(ウン・ポ・ピュウ・ソッティーレ/もう少し薄く)」と伝えるとより好みに近付きます。
- 「Sottovuoto, per favore.」
(ソットヴオート、ペル・ファヴォーレ) 意味:「真空パックにしてください。」 日本への持ち帰りや数日間保存したい場合に必須のお願いです。
日本への持ち帰りに関する重要な注意点 ここで非常に重要なのは、日本の動物検疫では多くの国からの肉製品(ハム、ソーセージ、サラミなど)の持ち込みに厳しい制限や禁止が設けられていることです。検査証明書がない肉製品は、たとえ真空パック済みであっても日本への持ち込みはできません。知らずに持ち込もうとすると罰則を受ける可能性があります。モルタラの美味しいサラミは、ぜひ現地でじっくり味わい、お土産にはお菓子や調味料など別の品を選ぶのが賢明です。これらの規制は、日本の家畜を海外の伝染病から守るための大切なルールであり、旅人として守るべき責任です。
モルタラ料理を心ゆくまで味わいたい方におすすめのレストラン&トラットリア
サルーメリアでサラミを買い、街のベンチでつまむのも一興ですが、やはり本格的な料理としてじっくり味わいたいもの。モルタラには伝統的な郷土料理を提供する素晴らしいレストランやトラットリアが点在しています。
- Ristorante La Pesa: 地元の食材を活かした洗練された料理で評判のレストラン。伝統的なガチョウ料理はもちろん、季節の野菜やリゾットも絶品です。少し特別な日のディナーに最適です。
- Trattoria Guallina: アットホームな雰囲気が魅力のトラットリア。心を込めた家庭料理が楽しめます。ガチョウ肉のラグーソースパスタやローストなど、ここでしか味わえない逸品がそろっています。
レストランでの振る舞い方と予約のポイント
- 予約: 特に週末の夜は混み合うため、事前予約が確実です。電話が一番手軽ですが、言葉に自信がなければホテルのフロントに依頼したり、レストランの公式ウェブサイトに予約フォームがないかも確認してみましょう。
- メニュー選び: ガチョウ料理はぜひ一品は試してください。「Antipasto di salumi d’oca(ガチョウの加工品盛り合わせ)」は、いろいろな種類を少しずつ楽しめるので、最初の一皿におすすめです。また、モルタラ周辺は米の産地でもあるため、「Risotto(リゾット)」も名物として外せません。
- チップについて: イタリアではチップは必須ではありません。多くの場合、料金に「Coperto(コペルト)」という席料やサービス料が含まれています。ただし、特に良いサービスを受けたと感じた場合や感謝を伝えたい際には、会計の端数を切り上げてテーブルに置いたり、数ユーロをそっと残すのがスマートです。
サステナブルな旅人になるためのモルタラ滞在術
旅をすることは、その地域の経済を支える一方で、環境に負担を与える側面もあります。しかし、ほんの少しの意識と工夫を加えることで、その負荷を軽減し、より地域に寄り添った旅が実現できます。特にモルタラのような小さな町では、その効果をより身近に感じられるかもしれません。
地元の市場(メルカート)へ足を運ぼう
滞在中にモルタラの市場(メルカート)が開催される日があれば、ぜひ訪れてみてください。市場は地元の暮らしに触れる最高の場所で、新鮮な野菜や果物、地元産のチーズやパンなどが並び、活気に満ちています。
市場で買い物をすることは、地産地消を支援することに直結します。長距離輸送によるエネルギーを使わない旬の食材は、鮮度も味わいも抜群なうえ、環境にも優しい選択肢です。
読者の皆さんが実践できる市場でのエコな買い物
- マイバッグを持参する: イタリアの市場ではビニール袋が有料の場合が多く、環境保護のためにもエコバッグの持参が推奨されます。折りたためてコンパクトなものをバッグに忍ばせておくと便利です。
- 過剰な包装を避ける: 果物などを買う際、不要であれば袋詰めを断り、そのまま受け取ることでごみの削減に繋がります。
市場の開催日時や場所は季節によって変わることもあるため、事前に観光案内所や公式ウェブサイトでチェックすると安心です。
電車と徒歩を使った、環境に配慮した旅の計画
前述のとおり、モルタラへは鉄道でのアクセスが便利です。町に着いたら、主要な観光スポットは徒歩で十分に回れます。車を使わずに公共交通機関と歩行を組み合わせる旅は、CO2排出を大幅に減らせるサステナブルな行動のひとつです。
石畳の道をゆったり歩きながら、建物の細部を眺めたり、カフェのテラスでひと休みしたりする時間は、モルタラの魅力をより深く味わうことができるでしょう。自分の足で歩くことで、地図には載らない小さな発見や地元の人々との思いがけない交流も生まれるかもしれません。
旅の準備と持ち物リスト:賢く軽やかな旅のために
持続可能な旅は、自宅を出る前の準備から始まります。不要なものを持たず、環境に配慮したアイテムを選ぶことで、旅先でのごみを大幅に減らせます。
モルタラ旅行におすすめの持ち物リスト
- 基本の必需品
- パスポート
- 現金(ユーロ):市場や小さな個人商店ではカード不可の場合もあります。
- クレジットカード/デビットカード
- 海外旅行保険証
- 各種予約確認書(Eチケットなど)
- サステナブルな旅をサポートする便利グッズ
- 歩きやすい靴: モルタラの石畳には足への負担がかかるため、必須アイテムです。
- エコバッグ: 市場やお店での買い物時に活躍します。
- マイボトル/水筒: 「fontanella」と呼ばれる街中の公共水飲み場で、美味しい水を無料で補給できます。ペットボトルのゴミ削減になる優れたアイテムです。
- 携帯用カトラリーセット: テイクアウトの際に使い捨てカトラリーの使用を減らせます。
- 固形シャンプー/石鹸: 液体製品より軽量で、プラスチックゴミの発生を抑えます。
- あると便利なその他のもの
- 変換プラグ(Cタイプ)
- モバイルバッテリー
- 教会訪問用の羽織もの(ストールやカーディガン)
- 季節に合わせた服装(夏は日よけ対策、冬は防寒対策をしっかりと)
- 簡単な医薬品(胃腸薬、鎮痛剤、絆創膏など)
荷物はなるべく軽く、シンプルにまとめましょう。身軽な旅が心も体も軽やかにしてくれます。
知っておくと安心! モルタラ旅行のQ&A

旅では予期せぬトラブルがつきものですが、あらかじめ対処法を知っておけば落ち着いて対応できます。ここでは、モルタラ旅行で起こりやすいトラブルとその解決策をまとめました。
チケット購入や予約時にトラブルが発生したら?
- 鉄道の遅延・ストライキ:イタリアの鉄道、とくにローカル線では遅延がよく起こります。また、ストライキ(Sciopero)が予告なく実施されることもあります。
- 対処法:まず落ち着いて、Trenitaliaのアプリや駅の電光掲示板で最新情報を確認しましょう。大幅な遅延や運休があれば、駅の窓口(Biglietteria)やカスタマーサービスで代替の列車を尋ねることが可能です。ストライキ期間中でも、最低限運行される便(Treni garantiti)が用意されることが多いため、その情報を探しましょう。購入済みのチケットが使えなくなった場合は、払い戻し手続きができます。駅窓口やオンラインで手続きを行いましょう。
- レストランの予約トラブル:予約が伝わっていなかった、日時を間違えたといったケースがあります。
- 対処法:電話予約の場合、言葉の聞き違いが起こることもあります。可能であれば公式サイトの予約フォームを利用し、確認メールを保管しておくのが安心です。トラブルが生じたときは、そのメールを見せて説明しましょう。もし席が確保できなければ、潔く諦めて別のお店を探す柔軟な姿勢も大切です。
言葉の壁はどう乗り越える?
モルタラのような地方都市では、ミラノなど大都市に比べて英語が通じにくいことがありますが、それも旅の醍醐味です。
- 基本的な挨拶を覚えておく:
- 「Buongiorno(ボンジョルノ)」:おはよう・こんにちは
- 「Buonasera(ボナセーラ)」:こんばんは
- 「Grazie(グラーツィエ)」:ありがとう
- 「Prego(プレーゴ)」:どういたしまして
- 「Scusi(スクーズィ)」:すみません
- 「Per favore(ペル・ファヴォーレ)」:お願いします
これらの簡単な言葉を笑顔で使うだけで、相手の反応がぐっと良くなります。
- 翻訳アプリを活用する:スマホの翻訳アプリは強力な助っ人です。特に、レストランのメニューを理解したい時や、細かな要望を伝えたい場合に便利です。
- ジェスチャーも交えてコミュニケーション:イタリア人はジェスチャーが豊かです。指差しや身振り手振りでも意外に意思は伝わるので、怖がらずに楽しみながらコミュニケーションをとりましょう。
現金はどのくらい用意すればいい?
イタリアはカード社会が進んでいますが、現金も全く不要というわけではありません。
- 現金が必要になる場面:市場(メルカート)、小規模な個人経営のサルーメリアやパン屋、ジェラート店、カフェで10ユーロ以下の少額支払い、公衆トイレのチップなど。
- 目安の金額:1日あたり30〜50ユーロ程度の現金を持っていると安心です。高額な現金は持ち歩かず、必要に応じて街中のATM(Bancomat)で引き出すのが安全です。ATM利用時は、周囲に不審な人物がいないか確認し、カードのスキミングにも注意してください。
緊急時の連絡先は?
もしもの事態に備えて、緊急連絡先を控えておきましょう。
- 救急・警察・消防の共通番号:112
- 警察の番号:113
- 救急車の番号:118
- 消防の番号:115
- 在イタリア日本国大使館:ローマにあります。パスポート紛失や盗難などの際には連絡が必要です。公式サイトで連絡先を確認し、メモしておきましょう。
モルタラの魅力をさらに深掘りする旅のヒント
モルタラの旅をより特別に彩るための、貴重な情報をお届けします。
毎年9月開催!「ガチョウのサラミ祭り(Sagra del Salame d’Oca)」
モルタラの町が最も賑わうのは、毎年9月の最終日曜日に開催される「ガチョウのサラミ祭り」です。この日、町の広場は巨大な市に変わり、多くの生産者が誇るサラミがずらりと並びます。試食を楽しみながら、お気に入りの一本を見つけるひとときは何物にも代えがたい喜びです。
祭りの見どころは、中世の服装を身にまとった人々が繰り広げる歴史的なパレードと、地区対抗で競われる「パリオ・デッローカ(ガチョウのゲーム)」です。町は祝祭の雰囲気に包まれ、訪れた人々を温かく迎え入れてくれます。この時期にモルタラを訪れることができれば、忘れ難い思い出になるでしょう。
訪問時のポイント
祭り期間中は国内外から多くの観光客が集まるため、宿泊施設やミラノからの鉄道は非常に混雑します。この時期の訪問を予定している場合は、早めに数ヶ月前から予約することを強くおすすめします。事前の準備が、快適な旅を実現する鍵となります。
近隣の街へ足をのばす
モルタラを拠点にして、ロンバルディア州の魅力的な近隣都市へ足を延ばすことも、充実した旅のプランにぴったりです。鉄道を利用すれば、気軽に日帰り旅行が楽しめます。
- パヴィーア(Pavia): モルタラから電車で約30分の距離にある歴史ある街です。パヴィーア大学を中心に栄え、街の北側に位置する「チェルトーザ・ディ・パヴィーア(カルトゥジオ会修道院)」は、ルネサンス建築の傑作として名高く、その壮麗さには圧倒されることでしょう。
- ヴィジェーヴァノ(Vigevano): こちらも電車で約30分です。ルネサンス期の理想都市の姿を今に伝える「ドゥカーレ広場」は、「イタリアで最も美しい広場」と称えられるほどの美しさを誇ります。レオナルド・ダ・ヴィンチが設計に関わったとも伝えられています。
一つの街に連泊しながら周辺の都市を訪れるスタイルは、毎日ホテルを替える旅に比べて荷物の整理が楽で、移動にかかる体力も節約できます。これは心身に優しく、環境にも配慮したサステナブルな旅の一例と言えるでしょう。
モルタラの風土が育んだ、食と文化の物語

モルタラの旅を終える頃には、あなたの心もお腹も、きっと深い満足感で満たされていることでしょう。この街の魅力は、美味しいサラミがあるというだけにとどまりません。そこには、ロンバルディアの豊かな大地がもたらす恵みと、歴史を通じて人々が育んできた知恵、そして自らの文化に対する強い愛情と誇りが複雑に絡み合って息づいています。
ガチョウのサラミが厳しい基準をクリアしたIGP(保護地理的表示)に認定されていることは、その味の素晴らしさに加え、モルタラの人々が伝統と製法を守り続け、未来へしっかりと伝えていこうという姿勢の証明でもあります。旅人としてその逸品を味わうことは、彼らの文化や努力に敬意を払い、その継承を応援することにほかなりません。
電車に乗って現地へ向かい、自らの足で街を歩き、マイボトルで水を飲む。地元の市場で季節の味覚に触れ、作り手の顔が見えるお店で買い物をする。こうした行動は、環境への負荷を軽減しながら、旅をより豊かで意味深いものにしてくれます。
華やかな観光スポットを巡る旅も楽しいですが、たまには地図の片隅にひっそりと佇む小さな町へ足を運んでみませんか。そこには、まだ知られていない物語や心温まる出会いがきっと待っています。次の旅では、美食の都モルタラで、この土地の風土に溶け込むような忘れがたい体験をしてみてください。

