「ミラノは少し人が多すぎるかも…」。そんな風に感じたことはありませんか?世界中から人々が集まるファッションとデザインの都ミラノは、刺激的で魅力的な街ですが、時にはその喧騒から離れて、ゆったりとした時間を過ごしたくなるものです。そんなあなたに、心からおすすめしたいのが、ミラノから南へわずか35キロ、電車で30分ほどの場所にある古都「パビア(Pavia)」です。
ロンゴバルド王国の首都として栄え、ヨーロッパで最も古い大学の一つが息づくこの街は、訪れる者を穏やかに、そして知的に迎えてくれます。石畳の小道を歩けば、歴史の重みを感じさせる教会や建物が次々と現れ、ティチーノ川のほとりに佇めば、穏やかな水の流れが心を洗ってくれるようです。
この記事では、ミラノの喧騒を抜け出して、パビアで過ごす豊かな一日をご提案します。壮麗な建築物から、素朴で心温まる郷土料理、そして旅人として私たちができるサステナブルなアクションまで。この記事を読み終える頃には、きっと次の週末の列車に乗り込みたくなるはずです。さあ、一緒に知られざるパビアの扉を開けてみましょう。
さあ、一緒に知られざるパビアの扉を開けてみましょう。イタリアには他にも、時が止まった迷宮都市マテーラでの唯一無二の旅路のように、時間を忘れるほどの感動をくれる古都が待っています。
なぜ今、パビアなのか?〜ミラノの隣に佇む知の古都〜

多くの旅行者がミラノを拠点にコモ湖やヴェネツィアへ足を伸ばす一方で、なぜ私がパビアを強く推奨するのか。その理由は、この街ならではの特別な魅力にあります。
まず第一に、アクセスの良さが挙げられます。ミラノ中央駅やロゴレド駅、ポルタ・ガリバルディ駅からローカル線(Regionale)に乗れば、わずか約30分でパビア駅に着きます。事前の予約も不要で、思い立ったその日に気軽に訪れることができるため、旅の計画に柔軟性を持たせることが可能です。
次に、歴史と文化が凝縮されている点も見逃せません。かつてパビアは、6世紀から8世紀にかけてイタリア半島を支配したロンゴバルド王国の首都でした。街のあちこちにその名残が感じられ、特にサン・ミケーレ・マッジョーレ教会では、かつて神聖ローマ皇帝の戴冠式が執り行われた歴史的な舞台を実感できます。さらに、1361年創立のパヴィア大学は今なお現役の学び舎として街の中心にあり、若々しい活気と学術的な雰囲気が広がっています。アインシュタインがかつてここに在籍していたことや、電池を発明したヴォルタが教壇に立っていたことも知られています。
そして第三の魅力は、「ちょうどよい」サイズ感です。フィレンツェやローマのような広大さはなく、主要な見どころはすべて徒歩圏内にまとまっています。観光客で混雑することが少なく、自分のペースで石畳の道を歩き、カフェでくつろぎながら地元の人々の日常風景を垣間見ることができます。こうした環境は、旅先でゆったりと時間を過ごしたいと願う人にとって、何よりの贅沢でしょう。
これらの要素が組み合わさることで、パビアは単なる「観光地」ではなく、「暮らすように旅をする」体験が味わえる希少な場所となっているのです。
パビアへのアクセス:環境に優しい鉄道の旅
パビアへの旅は、環境への負荷が少ない鉄道を利用するのが、最も賢明で快適な選択です。ここでは、ミラノからパビアへ向かう際の具体的な手順と、知っておくと便利なポイントをご案内します。
チケットの購入方法:オンラインと駅での購入
イタリアの鉄道チケットの購入方法は主に二通りあります。ひとつは事前にオンラインで購入する方法、もうひとつは駅の窓口や券売機で購入する方法です。
- オンラインでの事前購入
イタリア国鉄のTrenitalia(トレニタリア)公式サイトや公式アプリ「Trenitalia」を使うのが最も便利です。 サイトやアプリは英語対応しているため、落ち着いて操作すれば難しくありません。
オンライン購入のステップ
- 出発駅(例:Milano Centrale)と到着駅(Pavia)を入力します。
- 日付とおおよその出発時間を選択します。
- 表示された列車一覧から希望の列車を選びます。ミラノからパビア間は主に「Regionale」という各駅停車に近い普通列車が頻繁に運行されており、所要時間は30分から40分ほどです。
- 乗客情報を入力し、クレジットカードなどで決済を行います。
- 購入手続きが完了すると、QRコード付きの電子チケットがメールで届きます。このメールを保存するか、アプリ内にチケットを保管しておけば、当日はスマートフォンの画面を見せるだけで乗車可能です。
事前のオンライン購入は、駅での行列を避けられるうえ、ペーパーレスで環境にも配慮した方法です。
- 駅での当日購入
もちろん、駅の窓口(Biglietteria)や自動券売機(Biglietteria Automatica)でもチケットは購入できます。券売機は英語表示に切り替え可能なので、画面の案内に従って操作しましょう。現金またはクレジットカードが利用できます。
注意:チケットの刻印(Convalida)について 駅の窓口や券売機で紙のチケット(Regionaleの切符など、座席指定のない有効期限付きのタイプ)を購入した場合、絶対に忘れてはならない手続きがあります。それが「刻印(Convalida)」です。 駅のホームや通路に設置されている緑色や黄色の小さな機械にチケットを挿入し、発券日時を打刻してください。この作業をせずに乗車し、車内検札で発覚すると高額な罰金が科せられることがあります。乗車直前に必ず刻印を済ませる習慣をつけましょう。 なお、オンラインで購入したQRコード付きの電子チケットは、刻印の必要がありません。
パビア駅に到着後の歩き方
パビア駅は街の中心から徒歩圏内に位置しています。駅を出て正面のヴィットーリオ・エマヌエーレ2世通りをまっすぐ進むと、数分で街の中心であるヴィットーリア広場に到着します。大きな荷物がある場合には駅のロッカーを活用できますが、日帰り旅行であれば身軽な格好でそのまま街歩きを始めるのがおすすめです。車を使わず自分の足でゆっくり巡ることが、パビアの魅力をより深く実感できるサステナブルな旅のスタイルです。
パビアで訪れるべき珠玉の観光スポット

コンパクトな街ながら、パビアには歴史の息吹を感じさせる見どころがぎゅっと詰まっています。ここでは、ぜひ訪れてほしい珠玉のスポットを、その魅力とともにご案内します。
パヴィア大学(Università di Pavia)-歴史が息づく学びの場
パビアの中心的存在であるのが、1361年に創立されたパヴィア大学です。実はその起源は9世紀まで遡り、ヨーロッパでも最古級の大学のひとつとされています。街の中心に広がるキャンパスは観光客も自由に立ち入ることができ、歴史ある建物と若い学生たちの活気が融合した特有の雰囲気を体感できます。
大学の敷地内には、趣ある回廊に囲まれた中庭が数多く存在します。中でも「Cortile delle Statue(彫像の中庭)」や「Cortile del Leoni(ライオンの中庭)」は、その美しさに思わずカメラを向けたくなるスポットです。回廊の壁には、かつてこの大学で教えた教授の肖像や紋章が並び、長い歴史を感じさせます。
時間が許せば、大学歴史博物館(Museo per la Storia dell’Università)を訪ねるのもおすすめです。ここでは解剖学や物理学の歴史的器具が展示されており、特に18世紀の解剖学教室の様子を再現した蝋人形のコレクションは圧巻です。電池を発明したアレッサンドロ・ヴォルタが使った実験器具なども見られ、科学史に関心がある方には格別な場所でしょう。
訪問時のポイント
- マナー: 大学は現役の教育機関です。授業中の教室に無断で立ち入ることや、学生の迷惑となる大声での会話は控え、静かに敬意をもって散策しましょう。
- 最新情報: 見学できるエリアや博物館の開館時間は変わることがありますので、訪問前にパヴィア大学公式サイトで最新情報を必ず確認してください。
- 写真撮影: 中庭など屋外の撮影は基本的に問題ありませんが、博物館や建物内は撮影が制限される場合があります。現地の掲示を守りましょう。
ヴィスコンティ城(Castello Visconteo)と市立美術館
パヴィア大学から北へ少し歩くと、赤レンガの重厚な城壁が目に入ります。14世紀にミラノ公国のヴィスコンティ家が築いたヴィスコンティ城です。かつては豪華な居城かつ要塞だったこの城は、現在パビア市立美術館(Musei Civici)として、街の歴史と芸術を伝える重要な拠点となっています。
城内部は広々としており、考古学と絵画の二つの部門に分かれています。考古学部門では古代ローマ時代のガラス製品や、ロンゴバルド王国の首都であったことを示す貴重な出土品(金細工の装飾品など)を鑑賞できます。
絵画部門(Pinacoteca Malaspina)には、ルネサンスの巨匠ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノやジョヴァンニ・ベリーニをはじめ、19世紀の地元画家の作品まで幅広いコレクションが収められています。特にアントネロ・ダ・メッシーナの「男の肖像」は必見です。観光客が比較的少ないため、一枚一枚の絵画とじっくり向き合う贅沢な時間を過ごせます。
訪問時のポイント
- チケット購入: チケットは城の入口で購入可能。オーディオガイドがあれば受付で確認してみましょう。
- 荷物管理: 大きなリュックなどは入口のクロークで預けるよう案内される場合があります。身軽な服装での訪問がスムーズです。
屋根付き橋(Ponte Coperto)-ティチーノ川の象徴
パビアを南北に流れるティチーノ川に架かる屋根付き橋「ポンテ・コペルト」は、この街を代表する美しいシンボルの一つです。現存の橋は第二次世界大戦で破壊された後、1949年に再建されましたが、起源は14世紀にまでさかのぼります。
赤レンガ造りの橋は5つのアーチを持ち、その上を屋根が覆います。橋の中央には小さな教会があり、かつて船乗りや川で働く人々の信仰の対象でした。橋の上から眺めるティチーノ川の流れや対岸のボルゴ・ティチーノ地区のカラフルな家々の景色は、まるで一幅の絵画のようです。
特におすすめは夕暮れ時。夕日が川面を黄金色に染め、橋のシルエットが美しく浮かび上がる光景は、旅の忘れがたい思い出になるでしょう。橋を渡った先の川辺を散策するのも心地よい時間です。
訪問時のポイント
- 環境を守る: 美しい景観を保つため、散策中に出たゴミは必ず持ち帰りましょう。川辺にはごみ箱もありますが、ポイ捨ては厳禁です。マイボトルを持参し、街中の給水スポット(Fontanella)で水を補給することで、ペットボトルのごみ削減にもつながります。
- 写真撮影: 橋全体を美しく写すなら少し離れた川岸からの撮影がおすすめ。橋の上からは川と街並みを絡めた構図が狙えます。
パヴィア大聖堂(Duomo di Pavia)-ダ・ヴィンチの息吹を感じて
街の中心、ヴィットーリア広場近くにそびえる巨大なクーポラ(円屋根)がパヴィア大聖堂です。15世紀に建設が始まったものの、完成までに何世紀もかかり、イタリアで三番目に大きいクーポラを有しています。
この大聖堂の設計には、ルネサンスの巨匠ドナト・ブラマンテに加え、あのレオナルド・ダ・ヴィンチも関与していたと伝えられています。内部は広大で荘厳な空間が広がり、ステンドグラスから差し込む光が神秘的な雰囲気を演出しています。主祭壇の奥には街の守護聖人、聖シロの遺骸が安置されています。
ゆったりと堂内を歩き、その壮大さと静けさに身をゆだねてみてください。歴史の重みと人々の祈りが積み重なった空間は、心を落ち着かせてくれます。
訪問時のポイント
- 服装: 多くのイタリアの教会同様、肌の露出が多い服装(タンクトップやショートパンツなど)は入場を断られることがあります。特に夏場は肩や膝を覆うショールやカーディガンを持参すると安心です。信仰の場への敬意を表す大切なマナーです。
- ミサ中: ミサが行われている際は、信者の方々の妨げにならないよう静かに控えめに鑑賞し、写真撮影も控えましょう。
サン・ミケーレ・マッジョーレ教会(Basilica di San Michele Maggiore)
パビアで最も重要かつ美しい教会のひとつといえば、サン・ミケーレ・マッジョーレ教会です。現在の建物は11~12世紀に再建されましたが、その歴史はロンゴバルド時代までさかのぼります。
この教会の最大の魅力は、風化しやすい黄色い砂岩で作られたファサード(正面)です。一見控えめにも見えますが、近づけば聖人や動物、怪物、狩猟の場面など、非常に細やかな彫刻が多数施されているのがわかります。これらは聖書の物語や当時の人々の世界観を生き生きと伝え、つい時間を忘れて魅入ってしまいます。
内部はロマネスク様式の重厚な造りで、地下のクリプタ(地下聖堂)も神秘的な雰囲気を漂わせています。ここは神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世(バルバロッサ)がイタリア王として戴冠した場所でもあり、その歴史的舞台に立つことで、中世ヨーロッパの壮大な歴史の一端に触れた感動を味わえるでしょう。
パビアの食を巡る旅:ロンバルディアの味覚を堪能
歴史と芸術を楽しむ散策の後、お腹が空いたらいよいよパビアならではの美食の世界へ足を踏み入れましょう。パビアが位置するロンバルディア州は、イタリアでも特に米作りが盛んな地域として知られています。ポー川の流域に広がる肥沃な土地で育まれた食材を用いた、素朴ながらも味わい深い料理が訪れる人々の舌を喜ばせてくれます。
パビアで絶対に味わいたい名物料理
レストランのメニューを開いたら、ぜひ以下の郷土料理を探してみてください。
- リゾット・アッラ・チェルトジーナ (Risotto alla Certosina)
パビア近郊の壮麗なパヴィア修道院(チェルトーザ・ディ・パヴィーア)に住む修道士たちが考案したといわれる、土地を代表するリゾットです。伝統的には、ティチーノ川や周辺運河で獲れるザリガニやカエル、淡水魚などが使われています。現在では、エビやマッシュルームなどを加え、より食べやすくアレンジしたスタイルを提供する店も多いです。魚介の出汁がしっかり染みたアルデンテのお米は格別で、パビアに訪れたらぜひ味わいたい一品です。
- ズッパ・アッラ・パヴェーゼ (Zuppa alla Pavese)
「パビア風スープ」と名づけられたこの料理は、驚くほどシンプルでありながら、心身にしみわたる優しい味わいが魅力です。熱々のブロード(出汁)を張った器にトーストしたパンを浮かべ、その上に卵を割り入れてパルメザンチーズを振りかけたもの。16世紀のパヴィアの戦いで敗れたフランス王フランソワ1世が、空腹のあまり立ち寄った農家で振る舞われたという逸話も残っています。歴史に思いを馳せながらいただくと、素朴な美味しさがより一層心に響くでしょう。
- サラメ・ディ・ヴァルツィ (Salame di Varzi)
パビア県のヴァルツィという町で作られるDOP(原産地名称保護)認定の高級サラミです。厳選された豚肉を用い、時間をかけてじっくり熟成させたこのサラミは、豊かな香りと深い旨みが特徴です。前菜としてワインとともにシンプルに味わうのがおすすめ。地元の食料品店(Salumeria)で購入し、ホテルでゆっくり楽しむのも良いでしょう。
- トルタ・パラディーゾ (Torta Paradiso)
「天国のケーキ」という名前が示す通り、シンプルで素朴ながらも、ふわふわとした食感とレモンの爽やかな香りが口いっぱいに広がる焼き菓子です。パビアのパスティッチェリア(菓子店)のショーケースでよく見かける定番のスイーツで、散策の合間のコーヒーブレイクにぴったりです。
おすすめのレストラン&トラットリア
パビアには観光客向けのレストランから、地元の常連客で賑わうアットホームなトラットリアまで多彩なお店があります。
- お店の選び方: 中心地のストラーダ・ヌォーヴァ(Strada Nuova)やヴィットーリア広場(Piazza della Vittoria)周辺には多くのレストランが軒を連ねていますが、一本路地に入った小さなお店にこそ、本場の味が楽しめることが多いです。手書きのメニューが掲げられている店や、地元の言葉で談笑する声が聞こえるお店はおいしいトラットリアである可能性が高いでしょう。
- 予約について: 特に週末の夜や人気店の場合は、事前予約(Prenotazione)をしておくのが賢明です。電話予約が一般的ですが、最近はオンライン予約が可能な店も増えています。簡単なイタリア語フレーズ「Vorrei prenotare un tavolo per due persone per le otto di stasera.(今夜8時に2名で予約をお願いしたいのですが)」を覚えておくと便利です。
- チップの習慣: イタリアのレストランでは、サービス料(Servizio)が料金に含まれていることが多いため、アメリカのように厳密なチップは必ずしも必要ありません。ただし、レシートに「Coperto」というパン代や席料が含まれている場合がほとんどです。特に満足のいくサービスを受けた場合は、感謝の気持ちを込めて会計の端数を切り上げたり、数ユーロをテーブルに置いたりするとスマートです。
アペリティーヴォ文化を体験しよう
夕暮れ時、パビアの街が最も活気づくのがアペリティーヴォの時間帯です。これは、夕食前に軽く一杯飲みながらおつまみを楽しむイタリア独特の素敵な習慣です。特に大学街として知られるパビアでは、若者で賑わうバール(Bar)が多く、アペリティーヴォが盛んに行われています。
システムもシンプル。カクテルやワインなどのドリンクを一杯注文すると、カウンターに並んだサラミやチーズ、ブルスケッタ、フリッタータなどの多彩なおつまみを自由に取って楽しめます。料金は飲み物代に含まれており、相場は10ユーロ前後です。
ヴィットーリア広場周辺やそこから延びる路地にはアペリティーヴォにぴったりのバールがたくさんあります。地元の人々と一緒に、スプリッツ(プロセッコとリキュールをソーダで割った人気のカクテル)を片手に、パビアの夜のひとときを満喫してみてはいかがでしょうか。
サステナブルな旅人になるためのヒント in パビア

旅をすることは、新たな文化との出会いを通じて視野を広げる貴重な体験です。しかし同時に、訪れる地域の環境や文化を尊重する責任ある旅行者でありたいものです。ここパビアで、環境や地域社会に配慮したサステナブルな旅を少し実践してみませんか?
地元の交通手段を活用する
先述したように、パビアは徒歩で十分に楽しめるコンパクトな街です。自分の足で歩くことはCO2を出さない最も環境に優しい移動方法であるとともに、地図に載っていない隠れた魅力(小さな中庭や趣のある看板、魅力的なパン屋など)を発見する楽しみもあります。
- 徒歩での散策: パビア散策には履き慣れた歩きやすい靴が必須です。石畳の道が多いため、ヒールのある靴は避けるのが賢明です。
- 公共バスの利用: もしパヴィア修道院のようなやや離れた場所に行く際は、公共バスを利用しましょう。チケットは「タバッキ」(Tの看板が目印の売店)や一部のニューススタンド(Edicola)で購入が可能です。乗車後は車内の刻印機で必ず打刻してください。
地産地消を意識した食の選択
旅の楽しみのひとつである「食」を通じて、地域の持続可能性に貢献できます。
- メルカート(市場)を訪問: パビアでは定期的に青空市場が開かれ、地元農家が育てた新鮮な野菜や果物、チーズ、サラミなどが並び賑わっています。旬のフルーツを少し購入し散策のお供にするのも楽しい体験です。生産者の顔が見える食材を選ぶことは地域農業の支援に繋がります。
- Oltrepò Pavese(オルトレポ・パヴェーゼ)のワインを選ぶ: パビア県南部はロンバルディア州最大のワイン産地「オルトレポ・パヴェーゼ」として知られています。レストランでワインを選ぶ際は、この地域産をぜひお試しください。輸送エネルギーの削減だけでなく、その土地特有のテロワール(土壌や気候由来の味わい)を楽しめます。特にピノ・ネロ(Pinot Nero)やバルベーラ(Barbera)が有名です。
- マイボトルとエコバッグの携帯: イタリアの街中には「Fontanella(フォンテネッラ)」と呼ばれる無料の公共水飲み場が多数あります。ここで汲める水は飲用に適し、とても美味しいです。マイボトルを持参すれば、ペットボトル飲料を買う必要がなく、プラスチックごみの大幅削減に繋がります。また、お土産や買い物の際にはエコバッグを活用しましょう。
責任ある観光客としての心得
美しい街並みや文化遺産を未来へと受け継ぐためには、一人ひとりの行動が欠かせません。
- 歴史的建造物への敬意: 教会や城壁に触れたり、落書きをしたりすることは決して避けましょう。古い建物は非常に繊細です。静かに鑑賞し、その場所に対する敬意を持つことが重要です。
- ゴミの分別: イタリアでもゴミの分別は一般的です。ホテルの客室や街中のゴミ箱を利用するときは、プラスチック、紙、ガラス、生ゴミなどの分別ルールにできる限り協力しましょう。
こうした小さな心掛けが、パビアの魅力を守り続け、持続可能な観光を実現する大きな一歩となります。
パビア旅行のプランニングと実用情報
パビア旅行が現実に近づいてきた今、具体的な準備や知っておくと安心な情報をまとめました。ここに目を通せば、パビアでの滞在がよりスムーズかつ快適になるでしょう。
準備と持ち物チェックリスト
旅行の成功は準備の良し悪しにかかっていると言っても過言ではありません。基本的なアイテムに加え、パビア旅行で特に役立つ持ち物を挙げてみました。
- 必携品
- パスポート: 有効期限を事前にしっかり確認しておきましょう。
- クレジットカード・現金: 多くのお店でクレジットカードが使えますが、小さなバールや地元の市場ではユーロの現金が必要となる場合があります。
- 海外旅行保険証: 万が一の病気やケガ、盗難に備え、必ず加入を。証書はコピーやスマホの写真でも携帯すると安心です。
- スマートフォン用充電器・モバイルバッテリー: 地図アプリや写真撮影でバッテリー消耗が激しいため、モバイルバッテリーは必ず持ちましょう。
- 変換プラグ: イタリアではCタイプのプラグが主流です。
- あると便利なアイテム
- 歩きやすい靴: 何度も言及しますが、石畳の道を歩くために最も重要な持ち物です。
- エコバッグ: お土産や市場での買い物時に便利。コンパクトに折りたためるタイプがおすすめです。
- マイボトル: 公共の水飲み場「Fontanella」を利用して、環境に配慮しつつ水分補給ができます。
- ショールやカーディガン: 教会の服装マナー対策、朝晩の冷えや冷房対策にも役立ちます。
- 簡単なイタリア語会話帳や翻訳アプリ: 「こんにちは(Buongiorno)」「ありがとう(Grazie)」の一言でも、現地の人との交流がぐっと円滑になります。
- ウェットティッシュ・除菌ジェル: 外出先で手を清潔に保ちたい時に重宝します。
トラブル対処法:万が一の場合に備えて
楽しい旅のはずが突如トラブルに見舞われることもあります。しかし、あらかじめ対処法を知っていれば落ち着いて対応できるはずです。
- 鉄道の遅延・ストライキ
イタリアの鉄道は遅延やストライキ(Sciopero)が比較的多く発生する傾向があります。
- 対処ポイント: 慌てずに、Trenitaliaの公式アプリや駅の電光掲示板で最新情報を確認しましょう。ストライキは事前告知されることが多いため、旅行前にニュースをチェックしておくと安心です。大幅な遅延や運休があれば、駅窓口で代替列車の手配や払い戻し(Rimborso)の手続きを受けられます。時間にゆとりを持った計画を立てることが最善策です。
- 体調不良・ケガ
慣れない土地で体調を崩すと心細いものです。
- 対処ポイント: 軽い症状なら、薬局(Farmacia、緑色の十字マークが目印)で薬剤師に相談し、薬を購入可能です。症状の説明に不安があれば翻訳アプリ等を活用しましょう。緊急時には救急車を呼ぶ番号「112」に電話してください。この「112」は警察や消防にもつながる統一緊急番号です。海外旅行保険に加入していれば、日本語サポート付きの提携病院案内サービスもあるため、保険会社の連絡先は必ず携帯しましょう。
- 盗難・紛失
パビアは治安の良い街ですが、油断は禁物。特に人が多い場所ではスリや置き引きに注意が必要です。
- 対処ポイント: パスポートやクレジットカードを盗まれた場合は、まず最寄りの警察署(PoliziaまたはCarabinieri)に届け出て、盗難証明書(Denuncia di furto)を発行してもらいましょう。クレジットカードは直ちにカード会社へ連絡し利用停止を。パスポート紛失時は在イタリア日本国大使館または総領事館へ連絡し、再発行や「帰国のための渡航書」発行の手順を確認してください。
パビアから足を延ばして:魅惑の近郊スポット

パビアでの滞在に余裕があれば、ぜひ近郊の魅力的なスポットを訪れてみてください。
パヴィア修道院 (Certosa di Pavia)
パビアを語るうえで欠かせないのが、このパヴィア修道院です。パビア市街の北約8キロに位置する、ルネサンス建築の傑作のひとつとして知られています。14世紀末、ミラノ公ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティが自身の一族の霊廟として建設を始めました。
まず訪れる人を圧倒するのが、その壮麗な正面ファサードです。大理石で装飾され、聖人や預言者の像、精巧なレリーフが隙間なく施されている様は、まさに圧巻の光景と言えるでしょう。一つひとつの彫刻の緻密さに見入っていると、時間を忘れてしまいます。
内部もまた華麗そのもの。フレスコ画や見事な装飾が施された教会、静謐な雰囲気の大小二つの回廊など、どの場所もまるで絵画のような美しさです。現在もカルトゥジオ会の修道士がここで暮らしており、一部見学は修道士によるガイドツアー形式で案内されます。彼らの静かな案内に耳を傾けながら巡る体験は、他では味わえない特別なものです。
- アクセス: パビア駅からはバス(175番線など)で約20分ほどで行けます。
- 注意点: 修道院は神聖な祈りの場です。見学時は大聖堂と同様に肌の露出を控え、静かに行動することを心掛けましょう。敷地内にある売店では、修道士が手作りするリキュールやハーブ製品、はちみつなどが購入可能です。これらをお土産に選ぶことは、修道院の維持活動を支えることにもつながります。
ワインの楽園、オルトレポ・パヴェーゼ (Oltrepò Pavese)
ワイン愛好家の方には、パビア県南部の丘陵地帯・オルトレポ・パヴェーゼを訪れることをおすすめします。この地名は「ポー川の向こう側」を意味し、美しいブドウ畑が広がるロンバルディア州最大のワイン産地として知られています。
ここでは、アグリツーリズモ(農家民宿)に泊まったり、ワイナリーでテイスティングを楽しんだりすることが可能です。赤ワインではボナルダ(Bonarda)やバルベーラ(Barbera)、白ワインではリースリング(Riesling Italico)が有名ですが、中でも特に注目したいのがピノ・ネロ(Pinot Nero)です。シャンパーニュ地方に次ぐ栽培面積を誇り、高品質なスパークリングワイン(Metodo Classico)とスティルワインが生み出されています。
- アクセス: この地域を効率良く巡るにはレンタカーが便利です。車が無い場合は、パビア発のワイナリーツアーに参加するのも良いでしょう。
穏やかな丘陵風景を眺めながら、地元の美味しいワインと郷土料理に舌鼓を打つひとときは、旅の豊かさをさらに深めてくれます。
ミラノの隣に、ここまで深く落ち着きがあり、味わい豊かな魅力を秘めた街があるとは驚きです。パビアはまだ多くの人に知られていない、まさに隠れた宝石のような場所。歴史の重みと若々しいエネルギー、そしてティチーノ川の豊かな自然が織りなす調和を、ぜひ五感で感じてみてください。きっとイタリアの新たな一面を発見し、忘れられない旅の思い出となることでしょう。







