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ワイン発祥の地ジョージア 8000年の歴史とクヴェヴリが織りなす文化

「ワインはどこで生まれたのか?」

この問いに、ワインを愛する人々は一度ならず思いを馳せたことがあるのではないでしょうか。フランスのボルドーやブルゴーニュ、イタリアのトスカーナ、あるいは新世界のカリフォルニアやチリ。綺羅星のごとく存在する銘醸地が頭に浮かぶかもしれません。しかし、そのすべての源流をたどっていくと、ある一つの国に行き着きます。黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス山脈の麓に位置する国、ジョージアです。

こんにちは。食品商社に勤務し、世界の食文化を追いかけるグルメライターの隆(たかし)です。私は仕事柄、多くの国の食と、それに寄り添うお酒に触れてきましたが、ジョージアのワイン文化ほど、その国の歴史、精神性、そして人々の暮らしに深く溶け込んでいるものに出会ったことはありません。彼らにとってワインは単なる飲み物ではなく、生命そのものであり、アイデンティティの核なのです。

この記事では、なぜジョージアが「ワイン発祥の地」と呼ばれるのか、その考古学的な証拠から、ユネスコ無形文化遺産にも登録された伝統製法「クヴェヴリ」、そしてワインが織りなす豊饒な文化史までを、深く、そして熱く掘り下げていきます。さらに、この記事を読み終えたあなたが、実際にジョージアワインの世界を体験するための具体的な旅のプランニング方法や現地での楽しみ方まで、余すところなくご案内します。遥か8000年の時を超えて受け継がれる魂の液体、その物語を一緒に紐解いていきましょう。

ジョージアの旅で感じた文化と精神性の豊かさは、旅を通じて「幸福度」を高める暮らしのヒントを探求する上でも、大いに参考になるでしょう。

目次

なぜジョージアが「ワイン発祥の地」なのか? – 考古学的証拠が語る真実

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「ワイン発祥の地」という称号は、単なる伝説や口伝ではなく、科学的根拠に裏付けられた揺るぎない事実です。その背景には、地道な発掘作業と最先端の科学技術が存在しています。

8000年前のワインの証跡

ワインの歴史を書き換えるような発見が世界を驚かせたのは、2017年のことでした。ジョージアの首都トビリシの南約50キロに位置する新石器時代の遺跡群、「シュラヴェリス・ゴラ」と「ガダチリリ・ゴラ」でのこと。ここから出土した紀元前6000年頃の土器の破片に、ワインの存在を示す決定的な証拠が確認されたのです。

研究チームは、これらの土器片に付着していた残留物を化学分析しました。結果、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸など、ブドウとワインに特有の有機酸が組み合わさっていることが判明しました。中でも、酒石酸はユーラシア大陸においてブドウ以外にはほとんど存在しないため、ワインの強力な化学的証拠として際立っています。

この発見は、それまで最も古いとされていたイランのザグロス山脈で見つかった紀元前5400年頃のワインの痕跡を500年以上遡らせるものでした。まさに人類が初めてブドウを発酵させ、神秘的なワインという液体を生み出した瞬間に迫る歴史的な大発見でした。出土した土器にはブドウの房や踊る人々の姿が描かれており、当時からワインが人々の生活に喜びをもたらす特別な存在だったことを物語っています。この研究成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表され、ジョージアがワイン醸造の発祥地であることが科学的に証明されました。

野生ブドウから栽培ブドウへの変遷 - 人類とブドウの深い歴史

では、なぜコーカサス地方で世界最古のワインが誕生したのでしょうか。その理由は、この地の豊かな自然環境にあります。コーカサス地域は、現在世界各地で栽培されているワイン用ブドウの祖先にあたる「ヴィティス・ヴィニフェラ」の原産地の一つと考えられているのです。

新石器時代、人類は農耕と牧畜を覚え、定住生活を始めました。周囲にはおそらく野生のブドウが自生しており、最初は食料としてその実を摘んでいたことでしょう。しかし、ある時、潰れたブドウが偶然にも自然の酵母によって発酵し、心地よい酔いをもたらす液体へと変わることを偶然発見した可能性があります。この奇跡的な発見が、人類とワインの約8000年にわたる長い物語の始まりでした。

やがて人々は、より糖度が高く、良質な実を実らせるブドウの木を選抜し栽培するようになりました。野生のブドウから栽培ブドウへと進化したのです。これは人類が自然を制御し、文化を築き上げる過程そのものでした。ジョージアの地で始まったワイン造りは、単なる食料生産技術の域を超え、人類文明の発展と深く結びついた偉大な発明だったのです。

魂を醸す巨大な甕「クヴェヴリ」 – ジョージアワインの心臓部

ジョージアワインの独自性を語る上で欠かせない存在が「クヴェヴリ(Qvevri)」です。これは、卵に似た形状をした大きな土製の甕であり、ワインの醸造や貯蔵に使われています。クヴェヴリを活用した伝統的なワイン造りこそがジョージアワインの本質であり、その独特な風味の源泉でもあります。

クヴェヴリ製法とは? – ユネスコ無形文化遺産に登録された伝統技術

クヴェヴリ製法は2013年にユネスコ無形文化遺産に認定されました。この技法は約8000年前からほとんど形を変えずに受け継がれてきた、非常に貴重な伝統的製法です。

まず、収穫したブドウを足で優しく踏み潰します。この際、果汁だけでなく、果皮や種子、時には果梗(ブドウの茎)も含めて丸ごとクヴェヴリに入れます。これがジョージアワインの力強さと複雑さを構成する要素となっています。

その後、全てのブドウを入れたクヴェヴリを地中に掘った穴に埋めます。クヴェヴリを土中に埋めることには深い意味があり、地中の温度が年間を通じてほぼ一定であるため、特殊な温度管理装置を使わずにワインの発酵・熟成に適した環境を自然に作り出せます。まさに、母なる大地の胎内でワインがゆっくりと育まれていくようなイメージです。

クヴェヴリの中では、ブドウの果皮に付着する天然酵母の働きにより自然発酵が始まります。発酵終了後は果皮や種子などの固形分が自身の重みでゆっくりと甕の底に沈降します。ワインは数カ月間、これらの成分とともに寝かされます。この「マセラシオン(醸し)」の期間が長いことがクヴェヴリ製法の特徴で、果皮や種子からタンニン(渋み)や旨味、色素、香りがじっくりと抽出され、ワインに複雑で深みのある味わいと長期熟成に耐えうる骨格をもたらします。

春になると、上澄みの透明なワインだけが別のクヴェヴリに移され、さらなる熟成を経ます。このようにして生まれる白ワインは、果皮から抽出された色素により美しい琥珀色やオレンジ色に染まり、「アンバーワイン(オレンジワイン)」と呼ばれます。果汁のみを発酵させる一般的な白ワインとは異なり、個性的で豊かな味わいを持つ唯一無二のスタイルです。

クヴェヴリが織りなす家族と共同体の結びつき

クヴェヴリとそれを収納する「マラニ」と呼ばれるワインセラーは、ジョージアの家庭にとって単なる醸造器具ではありません。それは家族の核であり、先祖から受け継がれてきた伝統と誇りの象徴なのです。

秋の収穫祭「ルトヴェリ」では、家族や親戚、友人たちが一堂に会し、皆で協力してブドウを収穫してワインを仕込みます。子供たちは遊びながらブドウを運び、大人たちは歌を歌いながら踏む。これは単なる作業であるだけでなく、世代を超えて文化と技術を受け継ぐための重要な儀式でもあります。

新たにクヴェヴリをマラニに設置するときには、神父を招いて祝福の祈りを捧げることも多々あります。また、子供が生まれればその子のためのクヴェヴリを、結婚の際には夫婦のためのクヴェヴリを用意し、人生のさまざまな節目にワイン造りが寄り添います。

クヴェヴリによって生み出されたワインは、日常の食卓を豊かにするだけでなく、冠婚葬祭や宗教行事など共同体の様々な場面で振る舞われます。ワインの杯を交わすことで、人々の絆はいっそう深まっていくのです。クヴェヴリは単にワインを醸す器具であるだけでなく、人々の心と魂を結びつける役割も果たしてきたと言えるでしょう。

ジョージア文化に深く根差したワインの存在

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ジョージアにおいて、ワインはその文化そのものと言える存在です。これは言語や宗教、さらには人々の日常生活の隅々にまで深く根付いています。特に、ジョージアの宴会文化とキリスト教との結びつきは、ワインの重要性を雄弁に物語っています。

祝宴「スプラ」と乾杯の名手「タマダ」

ジョージアの宴会「スプラ(Supra)」を体験しなければ、ジョージア文化を理解することはできません。スプラは単なる食事会にとどまらず、食事とワイン、歌、そして詩的な乾杯が一体となった、一種の芸術的なパフォーマンスです。

テーブルにはハチャプリ(チーズパン)、ヒンカリ(肉汁たっぷりの餃子)、バドリジャーニ(クルミとナスのペースト)、ムツヴァディ(串焼き肉)など、多彩なジョージア料理が豊富に並びます。そして、中央には必ずクヴェヴリから注がれた自家製ワインが置かれています。

このスプラを仕切るのが「タマダ(Tamada)」と呼ばれる乾杯進行役です。タマダは宴の参加者の中から尊敬される人物が選ばれ、その役割は単に乾杯の声をかけるだけに留まりません。彼は乾杯のテーマを定め、そのテーマに沿って深みのあるスピーチや詩、物語を披露し、宴を哲学的な高みに導いていきます。

乾杯のテーマは多様で、「神への感謝」から始まり、「祖国ジョージア」、「平和」、「家族」、「両親」、「子供たち」、さらには「故人への追悼」など、人生のあらゆる面が語られます。タマダのスピーチのあと、参加者たちはそれに続いて自分の思いを述べ、全員で杯を掲げます。この流れが一晩に何十回も繰り返されるのです。

酒を重ねるごとに人々の心は開かれ、普段は口にしない真剣な言葉が交わされます。スプラはワインを通して人々が魂で交わる、神聖なコミュニケーションの場となっています。この素晴らしい文化は、ジョージア人の温かさとおもてなしの精神を象徴しています。

キリスト教との結びつき – 「ワインの十字架」の伝説

ジョージアは4世紀に世界で2番目にキリスト教を国教とした、極めて信仰心の厚い国です。そのキリスト教の布教に際し、ワイン、すなわちブドウが決定的な役割を果たしました。

伝説によると、ジョージアにキリスト教をもたらしたのは「亜使徒」と呼ばれる聖ニノという女性でした。彼女は自らの髪とブドウの木の枝を編んで十字架を作り、それを掲げて布教したと伝えられています。この「ブドウの十字架(Grapevine Cross)」はジョージア正教会の象徴となり、現在でも国内の多くの教会でその姿を見ることができます。

この伝説は、キリスト教が伝来するよりはるか以前から、この地でブドウやワインがいかに神聖視されていたかを示唆しています。古来の自然信仰と新たな宗教がワインを介して見事に融合したのです。

さらに、キリスト教においてワインはイエス・キリストの血の象徴とされ、聖体拝領の儀式に欠かせないものとなっています。そのため、多くの修道院が自らブドウを栽培しワイン造りの中心となりました。特にカヘティ地方に位置するアラヴェルディ修道院は、11世紀から続くワイン造りの歴史を誇り、そのクヴェヴリワインは最高品質として名高いです。祈りを捧げながらワインを製造する修道士たちによるそのワインは、まさに神聖な飲み物として、今も人々の信仰と暮らしを支えています。

ジョージアワインの多様性 – 500種を超える土着品種の宝庫

ジョージアワインの魅力は、歴史や製造方法だけにとどまりません。世界的にも類を見ないブドウ品種の豊富さも、大きな特徴のひとつです。ジョージアでは、実に525種類もの土着品種が現存すると言われており、これは世界中で栽培されているブドウ品種の約6分の1にあたります。カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなど国際的な品種に頼らずとも、自国のブドウだけでこれほど多彩なワインを造り出せる国は他にありません。

白ワイン(アンバーワイン)の代表的品種 – ルカツィテリとムツヴァネ

ジョージアの白ブドウ品種の中で、最も広範囲に栽培されているのが「ルカツィテリ(Rkatsiteli)」です。この名は「赤い茎」を意味し、力強くしっかりとした酸味が特徴のため、クヴェヴリでの長期熟成に非常に適しています。クヴェヴリ由来のルカツィテリは、ドライアプリコットやクルミ、紅茶、蜜蝋のような複雑で豊かな芳香を持ち、しっかりとしたタンニンと骨格のある味わいが魅力です。ジョージア料理全般、とりわけスパイスの効いた肉料理やチーズと非常に良い組み合わせになります。

もうひとつの代表的な白ブドウは「ムツヴァネ(Mtsvane)」です。その名称は「緑」を意味し、フレッシュで華やかな香りが特徴です。白桃や柑橘系の果実、さらに白い花のようなアロマが広がり、生き生きとした酸味を持っています。単品で用いられることもありますが、ルカツィテリにブレンドして、華やかさやアロマティックな複雑味を加えることが多いです。ムツヴァネ主体のワインは、魚介類やサラダなどの比較的軽やかな料理とよく合います。

赤ワインの王者 – サペラヴィ

ジョージア黒ブドウの代表格は「サペラヴィ(Saperavi)」です。この名前は「染料」や「色を与えるもの」を意味し、果肉までも赤みを帯びた色素の濃いブドウであることを示しています。そのため、出来上がるワインはインクのように深く濃いガーネット色をしています。

サペラヴィのワインは、ブラックチェリーやカシス、桑の実といった黒系果実のアロマに加え、スパイスやなめし革、タバコのような複雑なニュアンスを持ちます。タンニンが非常に豊富で骨太であり、酸味もしっかりしているため、圧倒的な長期熟成力を誇ります。優れたヴィンテージのサペラヴィは、数十年もの熟成を経て、驚くほどエレガントで深淵な味わいへと進化します。牛肉や羊肉のグリル、ジビエなど力強い肉料理とのペアリングは絶妙です。私が初めてクヴェヴリから直接注がれたサペラヴィを味わった際、その濃密な果実味と大地の力強いエネルギーを感じさせる味わいの衝撃は今も忘れられません。

ソ連時代を経て甦った土着品種

これほど多彩なブドウ品種を誇るジョージアですが、その伝統が危機に瀕した時代もありました。20世紀のソビエト連邦時代、ソ連政府はジョージアのワイン産業を「ソ連のワインセラー」と位置づけ、安価で甘口または半甘口のワイン大量生産に特化させました。効率化が優先され、ルカツィテリやサペラヴィなど生産量の多い品種に偏って栽培され、希少な土着品種は忘れ去られ、絶滅の危機に直面しました。

しかし1991年の独立以降、ジョージアのワイン生産者たちは自身のアイデンティティを取り戻すべく動き始めました。失われつつあった伝統的なクヴェヴリ製法と忘却されていた土着品種の復興に情熱を注いだのです。小規模な家族経営のワイナリーが中心となって、祖父の代から受け継いだ畑を再生し、キシ、ヒフヴィ、チヌリなどの希少品種を再び植え始めました。彼らの地道な努力の甲斐あって、ジョージアワインはかつての多様性と輝きを取り戻し、現在では世界中のワイン愛好家から熱い注目を浴びる存在となっています。

ジョージアワインを巡る旅へ – 計画から実践まで【読者ができること】

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ここまで読み進めて、ジョージアワインの豊かな魅力に惹かれ、「いつか現地を訪れたい」と思った方も多いのではないでしょうか。ここからは、その願いを実現するための具体的な手順をお伝えします。この記事を参考にすれば、あなたもジョージアへのワイン旅を計画し、実行に移すことができるでしょう。

ワインの聖地、カヘティ地方への招待

ジョージアでワインを楽しむ旅を計画するなら、まずは東部に位置するカヘティ(Kakheti)地方を目指すのがおすすめです。ジョージア国内のブドウ畑の7割以上が集まる、まさにワインの聖地と呼べる場所です。アラザニ川がもたらす豊かな土壌と、コーカサス山脈による特有の気候条件が、品質の高いブドウを育んでいます。カヘティには大小さまざまなワイナリーが点在しており、多くが訪問者を歓迎しています。

主要な都市はテラヴィ(Telavi)と、愛の町として知られるシグナギ(Sighnaghi)です。これらの街を拠点に、ワイナリー巡りを楽しむのが一般的なスタイルとなっています。

ワイナリー訪問の準備と計画

素晴らしい体験をするためには、事前の準備と計画が欠かせません。以下のポイントを押さえておきましょう。

訪問の流れ(予約方法)

  • 予約は必ず行いましょう: 特に有名なワイナリーや、小規模な家族経営のワイナリーを訪れる場合は、事前予約が必須です。当日突然訪問すると断られることが多いため注意が必要です。予約は各ワイナリーの公式ウェブサイトの予約フォーム、またはメールや電話で行います。ほとんどのワイナリーは英語での対応が可能です。
  • ツアーやテイスティング内容を確認: 多くのワイナリーでは、複数のツアーや試飲プランが用意されています。ブドウ畑やマラニ(伝統的なワイン醸造所)の見学が含まれているか、試飲可能なワインの種類数、食事の有無など、事前に確認して自分の希望に合ったプランを選びましょう。料金はワイナリーやコース内容により幅がありますが、一人あたり約20米ドルから100米ドル程度が目安となります。
  • 現地ツアーの活用も便利: 個別の予約に不安がある場合や、効率良く複数のワイナリーを訪れたい方は、トビリシ発のカヘティ地方日帰りワインツアーに参加するのも手です。「GetYourGuide」や「Viator」といったオンラインプラットフォームや、現地の旅行会社から申し込むことができます。ドライバー付きの車をチャーターする方法もおすすめです。

持ち物と服装のポイント

  • 歩きやすい靴を用意しましょう: ワイナリーでは、舗装されていないブドウ畑や滑りやすい地下のセラーを歩く場面があります。スニーカーなど歩きやすい靴を準備することが大切です。
  • 季節に合わせた服装を: 夏は日差しが強くなるため、帽子やサングラス、日焼け止めを持参すると良いでしょう。春や秋は朝晩の冷え込みがあるため、羽織るものを用意してください。地下のセラーは夏でも冷えることがあります。
  • 試飲記録のためのノートとペン: 飲んだワインの感想をメモすると、後で振り返る楽しみが増えますし、お気に入りのワインを見つけやすくなります。
  • 水分補給用の水: テイスティングでは想像以上にアルコールを摂取するため、合間に水を飲み、水分補給を心がけましょう。脱水や二日酔い防止につながります。
  • ワインボトル保護用の緩衝材: お気に入りのワインをお土産に購入する予定があるなら、日本から「ワインスキン」や「ジェットバッグ」などのボトル専用保護材を持参すると、スーツケース内の破損を防げて便利です。

訪問時の注意点とマナー

  • 修道院内ワイナリーの服装: アラヴェルディ修道院など、宗教施設にあるワイナリーを訪れる際は服装に気をつけましょう。女性は髪を隠すスカーフを用意し、男女ともに肩と膝を隠す服装が求められます。現地でスカーフやスカートを貸し出す場合もあります。
  • テイスティング時のマナー: 強い香りの香水やオーデコロンはワインの繊細な香りを妨げるため、訪問当日は控えましょう。また、試飲したワインをすべて飲み干す必要はなく、多種類を味わう場合は吐器(スピトゥーン)を利用しても問題ありません。

ジョージア渡航および滞在に関する情報

渡航手続きと滞在準備

  • アクセスについて: 2024年現在、日本からジョージアへの直行便は運航していません。一般的にはイスタンブール(トルコ)、ドバイ(UAE)、ドーハ(カタール)などを経由してトビリシ国際空港(TBS)へ向かいます。
  • ビザに関して: 日本国籍保持者は観光目的で1年以内の滞在であれば基本的にビザ不要です。ただし、渡航条件は変更されることがあるため、出発前には必ず在ジョージア日本国大使館や外務省の海外渡航情報サイトで最新情報を確認してください。
  • 公式情報の活用: 最も正確かつ最新の渡航・観光情報は、上述した大使館サイトやジョージア政府の公式観光ポータル「Georgia Travel」を参照するのが安心です。

トラブル発生時の対処法

  • フライト遅延・欠航時: 経由路線を利用する場合は遅延や欠航の可能性があります。その際は冷静に航空会社カウンターで代替便の手配を相談しましょう。海外旅行保険に加入していれば、遅延による宿泊代などの補償が受けられる場合があります。
  • 現地でのトラブル対応: 万一の盗難や事故、病気に備え、海外旅行保険の加入は必須です。クレジットカード付帯の保険だけでなく、補償内容が手厚い保険を別途利用することも検討しましょう。パスポート紛失時の対応のため、在ジョージア日本国大使館の連絡先を控えておくことも大切です。
  • ツアーキャンセル時の注意: 予約したワイナリーツアーなどが主催者側の都合で中止になった場合、返金規定を事前に確認しておきましょう。予約時のメールや契約書などの記録は必ず保管してください。

ワインだけじゃない!ジョージアの食文化とおすすめのお土産

ジョージアの旅はワインだけで終わるものではありません。世界無形文化遺産にも登録されている、豊かで美味しい料理をワインとともに味わうことも大きな魅力です。

ワインと楽しむ絶品のジョージア料理

  • ハチャプリ: 「ジョージアのピザ」とも称されるチーズ入りのパンです。地域ごとに形は異なりますが、最も知られているのは船の形をした中央に生卵をのせた「アジャルリ・ハチャプリ」。とろけるチーズと卵をパン生地に絡めて味わう絶妙な美味しさは格別です。爽やかな酸味の白ワイン、ツィナンダリと抜群の相性を誇ります。
  • ヒンカリ: スープがたっぷり詰まった見た目が小籠包に似た肉入り餃子です。コリアンダーなどのスパイスが効いており、一口かじると肉汁があふれ出します。頭の部分は食べずに残すのが伝統的な食べ方。チャチャ(ブドウの蒸留酒)や軽やかな赤ワインと一緒にどうぞ。
  • シュクメルリ: 鶏肉をニンニクと牛乳(または生クリーム)でじっくり煮込んだ料理で、近年日本でも人気が高まっています。濃厚かつクリーミーな味わいは、クヴェヴリ製法で造られた力強いアンバーワイン(オレンジワイン)と素晴らしいマリアージュを見せます。

グルメライターが選んだ、日本に持ち帰りたい一押しの品々

  • ジョージアワイン: やはり最もおすすめしたい一品です。現地のワイナリーや専門のワインショップで購入しましょう。日本への持ち込みは、1人あたり760mlのボトル3本までが免税の対象となります。スーツケースに入れる際は、事前に述べた緩衝材を使うか、衣類でしっかり保護して破損を防ぎましょう。
  • チュルチヘラ: クルミやヘーゼルナッツを糸に通し、ブドウ果汁を煮詰めた「タタラ」を何度も塗り重ねて乾燥させた伝統的なお菓子です。見た目はソーセージのようですが、自然な甘さとナッツの香ばしさが特徴で、栄養価も高いです。市場などで手軽に手に入ります。
  • スヴァヌリ・マルリ: コーカサス山脈の奥地、スヴァネティ地方発祥のスパイス塩。塩にコリアンダー、フェヌグリーク、マリーゴールドなど複数のハーブやスパイスがブレンドされており、肉料理やサラダに振りかけるだけで、一気にジョージアの風味が楽しめます。

ジョージアワインの未来 – 伝統と革新の融合

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8000年にもわたる、人類文明の歴史に匹敵する長い伝統を誇るジョージアワイン。その物語は過去のものにとどまらず、今まさに新たな時代の幕開けを迎えようとしています。

世界中で広がるナチュラルワインやオレンジワインのムーブメントの中で、その起源とも言えるクヴェヴリ製法が再び注目を集めています。ジョージアの若き醸造家たちは、先祖から受け継いだ伝統技術に誇りを持ちつつも、現代の醸造学の知見や衛生管理を取り入れることで、ワインの品質を飛躍的に高めています。

彼らは、かつて忘れ去られていた土着品種の潜在力を最大限に引き出し、今まで味わったことのないような、澄んで生命力あふれるワインを造り出しています。伝統は守るべきものと同時に進化させるべき存在であることを、彼らのワインは静かに、しかし力強く語りかけてくるのです。

この記事を通して、ジョージアという国の深みと、その魂が宿るワインに少しでも興味を持っていただけたなら幸いです。まずは日本のワインショップやレストランで、一本のジョージアワインを手に取ってみてください。そのグラスの中には、コーカサスの雄大な自然や8000年の時の流れ、そしてワインを愛する人々の温かな笑顔が溶け込んでいるのを感じられるはずです。いつか、その源流を訪ねる旅へ出かけてみてください。クヴェヴリが眠るマラニの静かな薄暗さの中で、本物の歴史と文化の息吹に包まれる、心に残る体験があなたを待っています。

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この記事を書いたトラベルライター

食品商社で世界中の食を探求してきました。旅の目的は「その土地でいちばん美味い一皿」に出会うこと!市場や屋台でのグルメハントが得意です。

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