フランス北東部、ドイツとの国境に流れるライン川のほとりに、まるで時が止まったかのような美しい街があります。その名はストラスブール。アルザス地方の中心都市であり、フランスの文化とドイツの文化が絶妙に溶け合い、唯一無二の魅力を放つ場所です。木組みの家々が運河の水面に映り込む「プティット・フランス」、天を突くようにそびえ立つゴシック建築の傑作「ストラスブール大聖堂」、そして冬には世界最古にして最大級のクリスマスマーケットが開かれ、「クリスマスの首都」として世界中の人々を魅了します。
歴史に翻弄されながらも、二つの大国の文化を吸収し、独自のアイデンティティを築き上げてきたストラスブール。その街並みは、ただ美しいだけではありません。石畳の一歩一歩に、建物の梁の一本一本に、物語が息づいています。この記事では、そんなストラスブールの魅力を余すところなくお伝えします。初めて訪れる方はもちろん、再訪を誓う方にも新たな発見があるはず。さあ、一緒に奇跡の街への旅を始めましょう。
まずは知っておきたい、ストラスブールの基本とアクセス
旅の計画を立てる前に、ストラスブールがどのような場所なのか、基本情報を押さえておきましょう。歴史的背景や交通事情を知ることで、街歩きが何倍も楽しく、そしてスムーズになります。
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二つの文化が交差する歴史の舞台
ストラスブールは、フランスのグラン・テスト地域圏、アルザス・ヨーロッパ共同体(Collectivité européenne d’Alsace)の首府です。その地理的な位置から、古くからローマ帝国の要塞が築かれ、交通の要衝として栄えてきました。しかし、その立地は同時に、フランスとドイツ(神聖ローマ帝国やプロイセン)との間で絶えず領有権が争われる宿命を意味していました。
17世紀にフランス王国領となりますが、普仏戦争後の1871年にはドイツ帝国領に。第一次世界大戦後にフランスに復帰するも、第二次世界大戦中には再びナチス・ドイツに併合され、戦後にようやくフランス領として確定しました。街を歩けば、フランス語の通りの名前に混じって、ドイツ語由来の響きを持つ地名や人名が聞こえてくるのは、こうした複雑な歴史の証です。
このような歴史的背景から、ストラスブールは「和解の象徴」と見なされるようになります。現在では、欧州評議会や欧州人権裁判所、そしてEUの欧州議会本会議場が置かれるなど、ヨーロッパ統合を象徴する「ヨーロッパの首都」としての一面も持っています。
日本からの旅路と市内の移動術
日本からストラスブールへの直行便はありません。最も一般的なのは、パリのシャルル・ド・ゴール空港(CDG)まで飛び、そこからフランス国鉄(SNCF)が誇る高速鉄道TGVに乗り換えるルートです。空港駅から直接TGVに乗車でき、約2時間から2時間半ほどでストラスブール中央駅に到着します。パリ市内の東駅(Gare de l’Est)からも頻繁にTGVが出ており、こちらは最短で1時間50分ほど。車窓からフランスの田園風景を眺めるひとときも、旅の醍醐味と言えるでしょう。
ストラスブール市内の観光は、主に徒歩で楽しむことができます。特に旧市街である「グランド・イル」は、道が狭く一方通行も多いため、車よりも自分の足で散策するのが最適です。石畳の道をゆっくりと歩きながら、気になるお店にふらりと立ち寄る。そんな気ままな散策こそが、ストラスブール観光の極意です。
少し広範囲に移動したい場合は、CTSが運営するトラム(路面電車)が非常に便利です。AからFまでの路線が市内を網羅しており、主要な観光スポットや駅、郊外へも簡単にアクセスできます。券売機は各停留所にあり、クレジットカードも利用可能。1回券や24時間券など、滞在プランに合わせてチケットを選びましょう。トラムの窓から眺める街並みもまた、格別な趣があります。
絶対に外せない!世界遺産「グランド・イル」を巡る
ストラスブール観光のハイライトは、何と言っても1988年にユネスコの世界遺産に登録された「グランド・イル」です。フランス語で「大きな島」を意味するこのエリアは、その名の通りイル川とその支流にぐるりと囲まれた中州に広がっています。この島全体が旧市街であり、中世からルネサンス期にかけての美しい建築物が奇跡的に保存されているのです。さあ、歴史が凝縮された宝箱のような島へ、足を踏み入れましょう。
天にそびえるゴシックの傑作「ストラスブール大聖堂」
グランド・イルの中心に、女王のように君臨するのが「ストラスブール大聖堂(Cathédrale Notre-Dame de Strasbourg)」です。文豪ヴィクトル・ユーゴーが「巨大で繊細な驚異」と称賛したこの大聖堂は、ゴシック建築の最高峰の一つに数えられます。
魂を揺さぶるファサード
まずあなたを迎えるのは、ヴォージュ山脈から切り出されたピンク色の砂岩で造られた、荘厳かつ繊細な西側ファサード(正面)。無数の聖人や預言者の彫刻が、まるで石のレース編みのように壁面を埋め尽くしています。その精緻さと圧倒的なスケールには、誰もが息をのむことでしょう。晴れた日の午前中、朝日に照らされてバラ色に輝く姿は神々しく、曇りの日には重厚な歴史の影を落とします。時間や天候によって表情を変えるこのファサードは、何度訪れても新しい発見を与えてくれます。
特筆すべきは、142メートルの高さを誇る北側の尖塔です。1439年の完成から19世紀にケルン大聖堂が完成するまでの約400年間、キリスト教世界で最も高い建築物でした。もともとは南側にも同じ尖塔が建てられる計画でしたが、財政難や地盤の問題で断念されたため、左右非対称のユニークな姿となっています。このアンバランスさこそが、ストラスブール大聖堂の忘れがたい個性となっているのです。
光と祈りの内部空間
一歩聖堂内に足を踏み入れると、外の喧騒が嘘のような静寂と荘厳な空気に包まれます。高く、どこまでも伸びる天井のヴォールト(穹窿)が、訪れる者を優しく抱きしめるかのようです。そして、あなたの視線はきっと、壁面を彩る壮麗なステンドグラスに釘付けになるでしょう。12世紀から14世紀にかけて作られたものが多く残り、聖書の物語を色鮮やかに描き出しています。特に、直径約13メートルの西側ファサードの「バラ窓」は圧巻の一言。差し込む光が色とりどりのガラスを透過し、幻想的な光のシャワーとなって聖堂内に降り注ぎます。
聖堂の南翼廊には、もう一つの至宝「天文時計」があります。現在の時計は16世紀のものを基に19世紀に改修されたもので、単に時刻を告げるだけでなく、天体の運行や宗教的な暦を示す複雑なからくり時計です。毎日12時30分になると、等身大のキリストと十二使徒の人形が現れ、鶏が3度鳴いて時を告げるというパフォーマンスが行われます。この時間には多くの観光客が集まるので、良い場所で見たければ早めにスタンバイすることをおすすめします。
天国への階段と絶景のご褒美
体力に自信がある方は、ぜひ尖塔の展望台へ挑戦してみてください。受付でチケットを購入し、332段の螺旋階段をひたすら上ります。狭く、目が回りそうな階段は、まるで天国へと続く試練のよう。しかし、息を切らしながらたどり着いた先には、言葉を失うほどの絶景が待っています。眼下には、オレンジ色の屋根瓦が波のように広がるストラスブールの街並み、蛇行するイル川、そして遠くにはドイツの黒い森(シュヴァルツヴァルト)やフランスのヴォージュ山脈まで一望できます。風を感じながらこの景色を眺めれば、登ってきた疲れなど一瞬で吹き飛んでしまうでしょう。
プティット・フランス – 絵本の世界へ迷い込む
大聖堂の喧騒から少し離れ、イル川の下流へと歩を進めると、そこはまるで中世の絵本から飛び出してきたかのような地区「プティット・フランス(La Petite France)」が広がっています。ストラスブールで最も美しいと称されるこの一角は、訪れる誰もがロマンティックな気分に浸れる場所です。
水辺に佇む木組みの家々
プティット・フランスの魅力は、何と言っても運河沿いに密集して建つ、白壁に黒や茶色の木骨が走る「コロンバージュ」様式の家々です。16世紀から17世紀にかけて建てられたこれらの建物は、もともと漁師や粉挽き職人、そして革なめし職人たちが暮らした場所でした。特に革なめし職人たちの家は、なめした皮を干すために風通しを良くした大きな屋根裏部屋が特徴的で、傾斜のついた屋根が独特の景観を生み出しています。
運河の水面に映り込む色とりどりのゼラニウムで飾られた窓辺や、少し傾いたように見える愛らしい家々。その間を縫うように石畳の小径が続き、どこを切り取っても絵葉書のような風景が広がります。カメラを片手に、気の向くままに散策するのが最高に楽しいエリアです。
絶景ポイント「ポン・クヴェール」と「ヴォーバン・ダム」
プティット・フランスの象徴的な景観といえば、「ポン・クヴェール(Ponts Couverts)」でしょう。「屋根付きの橋」という意味ですが、現在は屋根は失われ、14世紀に建てられた4つの見張り塔が残る石橋となっています。この橋の上から眺めるプティット・フランスの街並みは、定番ながら必見の美しさです。
そして、ポン・クヴェールのすぐ上流にあるのが「ヴォーバン・ダム(Barrage Vauban)」です。17世紀にルイ14世の軍事技術者ヴォーバンによって設計されたこの要塞ダムは、有事の際には水門を閉じて街の南側を水浸しにし、敵の侵攻を防ぐためのものでした。現在は遊歩道として開放されており、その屋上テラスは街一番のパノラマビューポイントとして知られています。ここからは、ポン・クヴェールの4つの塔と、その奥にそびえる大聖堂の尖塔までを一枚の写真に収めることができます。夕暮れ時には、街が黄金色に染まる幻想的な光景に出会えるかもしれません。
運河から眺める特別な景色 – バトラーマ体験
徒歩での散策も素晴らしいですが、ストラスブールの魅力を別の角度から発見するには、遊覧船「バトラーマ(Batorama)」に乗船するのがおすすめです。イル川の水面から見上げる街並みは、陸上からとは全く異なる表情を見せてくれます。
大聖堂近くのパレ・ロアンの麓から出発するこの遊覧船は、約70分のコースでストラスブールの主要な見どころを巡ります。日本語を含む多言語の音声ガイドがイヤホンで提供されるため、街の歴史や建物の解説を聞きながら、効率よく観光することができます。
船はまず、絵のように美しいプティット・フランス地区へと進みます。ここでは、水位を調整するための閘門(こうもん)を通過する貴重な体験ができます。水門が閉まり、船がゆっくりと上下する様子は、大人も子供も興奮すること間違いなし。水面ぎりぎりの視点から眺める木組みの家々は、より一層ロマンティックに映ります。
その後、船はUターンし、グランド・イルを抜けて、近代的な「ヨーロッパ地区」へと向かいます。中世の面影が残る旧市街から、ガラス張りのモダンな欧州議会の建物へと移り変わる景色は、ストラスブールが持つ二つの顔、つまり「歴史の街」と「未来への街」を象徴しているかのようです。歩き疲れた足を休めながら、ゆったりと街の全体像を掴むことができるバトラーマは、特に滞在時間が限られている方や、家族旅行には最適なアクティビティと言えるでしょう。
アルザスの美食を堪能する – ストラスブールのグルメ体験
ストラスブールの旅は、その豊かな食文化を抜きにしては語れません。フランスの美食とドイツの素朴で力強い食文化が融合したアルザス料理は、旅人の胃袋を確実に掴んで離しません。ボリューム満点の郷土料理から、繊細なパティスリー、そして世界的に名高い白ワインまで、美食の都ストラスブールで味わうべきグルメをご紹介します。
これぞアルザスの味!必食の名物料理
ストラスブールのレストランに入ったら、ぜひメニューから探してほしい郷土料理の数々。どれもこの土地の気候と歴史が生み出した、魂のこもった一皿です。
シュークルート・ガルニ(Choucroute garnie)
アルザス料理の王様といえば、間違いなくシュークルートです。これは、塩漬けして発酵させたキャベツ(フランス版ザワークラウト)を、ジャガイモや、ベーコン、ソーセージ、豚のすね肉など、様々な豚肉加工品と一緒に煮込んだ豪快な料理。酸味の効いたシュークルートが、肉の脂っこさを見事に中和し、食欲をそそります。お店によって肉の種類や味付けが異なり、食べ比べるのも楽しみの一つ。キリっと冷えたアルザス産のリースリング(白ワイン)や、地ビールとの相性は抜群です。
タルト・フランベ(Tarte flambée)
「アルザス風ピザ」と称されるタルト・フランベは、地元では「フラムクーヘン(Flammekueche)」というドイツ語名で親しまれています。パン生地を極限まで薄くのばし、フロマージュ・ブラン(フレッシュチーズ)やクレーム・フレッシュ(サワークリームの一種)を塗り、薄切りの玉ねぎとベーコン(ラルドン)を散らして、薪窯でパリパリに焼き上げたシンプルな一品。軽やかな食感で、前菜やお酒のおつまみにぴったり。いくらでも食べられてしまう危険な美味しさです。伝統的なものの他に、きのこやチーズを加えたバリエーションも楽しめます。
ベックオフ(Baeckeoffe)
ベックオフは、アルザス地方の家庭で古くから作られてきた肉と野菜の煮込み料理です。「パン屋のかまど」という意味の名前の通り、かつて主婦たちが月曜の洗濯日に、肉や野菜を入れた陶製の鍋をパン屋に預け、パンを焼いた後のかまどの余熱で長時間じっくりと火を通してもらったことに由来します。牛肉、豚肉、羊肉の3種類の肉と、ジャガイモ、玉ねぎ、人参などを白ワインとハーブでマリネし、ココット鍋で蒸し焼きにしたもので、肉は驚くほど柔らかく、野菜には旨味がたっぷりと染み込んでいます。心も体も温まる、寒い日にぴったりのごちそうです。
クグロフ(Kouglof)
食事の締めくくりや、カフェでの休憩には、アルザスの象徴的なお菓子クグロフをどうぞ。王冠のような独特のクグロフ型で焼かれた、酵母を使った発酵菓子です。生地にはレーズンやアーモンドが練り込まれ、しっとりとしていながらも軽い食感が特徴。朝食に、おやつにと、地元の人々の生活に深く根付いています。パティスリーやパン屋さんで手軽に購入でき、お土産としても大変喜ばれます。
美食の舞台 – おすすめレストラン&ウィンナーシュトゥーベ
ストラスブールには、星付きの高級レストランから、地元民で賑わう気軽なビストロまで、数えきれないほどの食の選択肢があります。特にアルザスらしい雰囲気を楽しみたいなら、「ウィンナーシュトゥーベ(Winstub)」と書かれたお店を探してみましょう。これは「ワイン部屋」を意味するアルザス風の居酒屋で、温かみのある木の内装、赤白のギンガムチェックのテーブルクロスが特徴です。手頃な価格で本格的な郷土料理と地元のワインが楽しめます。
- Maison Kammerzell(メゾン・カメルツェル): 大聖堂の広場に面して建つ、15世紀からの歴史を誇る木組みの建物。外観もさることながら、内部の装飾も見事です。レストランとしては少々高級ですが、ストラスブールを代表するランドマークの一つで、特にシュークルートに定評があります。
- Chez Yvonne(シェ・イヴォンヌ): 多くの著名人も訪れたという老舗のウィンナーシュトゥーベ。家庭的で温かい雰囲気の中、伝統的なアルザス料理を心ゆくまで堪能できます。予約必須の人気店です。
- Le Gruber(ル・グリュベール): プティット・フランスの近くにある、こちらも雰囲気の良いウィンナーシュトゥーベ。特にタルト・フランベの種類が豊富で、様々な味を試したい方におすすめです。
アルザスワイン街道の入り口で嗜む白ワイン
ストラスブールは、南北に約170km続く「アルザスワイン街道」の北の玄関口です。この地方は、辛口で香り高い白ワインの産地として世界的に有名。ドイツの影響を受け、ブドウ品種名をラベルに表示するのが特徴で、フルート型と呼ばれる背の高いボトルに詰められています。
レストランでは、ぜひ料理に合わせてワインを選んでみてください。シュークルートにはキレのある「リースリング(Riesling)」、フォアグラには甘口の「ゲヴュルツトラミネール(Gewurztraminer)」や「ピノ・グリ(Pinot Gris)」が定番の組み合わせ。迷ったら、お店の人におすすめを聞いてみるのが一番です。
市内にはワインカーヴ(ワインショップ)も多く、試飲をさせてくれるお店もあります。お気に入りの一本を見つけて、旅の思い出と一緒に日本へ持ち帰るのも素敵な体験です。
ストラスブールの四季とイベント
ストラスブールは、どの季節に訪れてもそれぞれの魅力がありますが、季節ごとのイベントを知っておくと、旅の計画がさらに豊かなものになります。特に冬のクリスマスマーケットは、この街を最も輝かせる一大イベントです。
冬 – 世界最古のクリスマスマーケット「クリシュキンドゥルメリック」
ストラスブールが「Capitale de Noël(クリスマスの首都)」と呼ばれる所以、それは1570年から続く世界最古のクリスマスマーケット「クリシュキンドゥルメリック(Christkindelsmärik)」があるからです。11月の最終週からクリスマスイブ(一部は年末)まで、街全体が魔法にかかったかのように、光と喜びに包まれます。
街中がマーケット会場に
期間中、旧市街の至る所に「シャレー」と呼ばれる木製の屋台が立ち並び、それぞれがテーマを持ったマーケットを展開します。
- 大聖堂前広場(Place de la Cathédrale): 荘厳な大聖堂を背景に、最も伝統的で美しいマーケットが広がります。温かいヴァン・ショー(スパイス入りホットワイン)を片手に、精巧なクリスマスのオーナメントや民芸品を眺めて歩くだけで、心はすっかりクリスマス気分に。
- クレベール広場(Place Kléber): ストラスブールの中心広場には、毎年ノルウェーなどから贈られる高さ30メートルもの巨大なクリスマスツリーが飾られます。その荘厳な姿は圧巻の一言。根本には慈善活動のための屋台が並び、人々の温かい気持ちが集まる場所でもあります。
- ブロイ広場(Place Broglie): ここが「クリシュキンドゥルメリック」発祥の地。最も歴史のあるマーケットで、食料品やクリスマスの飾りなど、多種多様な屋台がずらりと並びます。アルザスのクリスマス菓子「ブレデル(Bredele)」を探すなら、この広場がおすすめです。
- プティット・フランス地区: 運河沿いのロマンティックな地区も、クリスマスイルミネーションで彩られます。特にアルザスの小生産者たちが出店するマーケットは、ユニークな手作り品や地元の特産品を見つけるのに最適です。
ヴァン・ショーを飲むと、デポジット制でオリジナルデザインのカップがもらえ、返却するとお金が戻ってきますが、多くは旅の記念に持ち帰ります。年によってデザインが変わるので、コレクションするのも楽しみの一つです。凍えるような寒さの中、甘くスパイシーな香りに包まれながらイルミネーションを眺める時間は、忘れられない思い出となるでしょう。
春夏 – 花咲き乱れる運河と爽やかな季節
長い冬が終わり春が訪れると、ストラスブールは色鮮やかな花々に包まれます。プティット・フランスの木組みの家の窓辺にはゼラニウムが咲き誇り、公園や広場は生命力に満ち溢れます。日も長くなり、カフェのテラス席でくつろいだり、運河沿いを散策したりするのに最高の季節です。
夏になると、街はさらに活気づきます。夜には大聖堂のプロジェクションマッピングなど、光と音のショーが開催されることもあり、夜遅くまで賑わいます。また、少し足を延ばして「オランジュリー公園(Parc de l’Orangerie)」でピクニックを楽しむのもおすすめです。広大な敷地には美しい庭園や湖があり、ボート遊びもできます。アルザスのシンボルであるコウノトリが野生の姿で暮らしている様子も見られるかもしれません。
秋 – ぶどうの収穫とワイン祭りの季節
秋は、アルザス地方が黄金色に染まる季節です。ワイン用のぶどうの収穫(ヴァンダンジュ)が始まり、近隣の村々ではワイン祭りが開催され、陽気な雰囲気に包まれます。観光客のピークが過ぎ、街は少し落ち着きを取り戻すため、じっくりと芸術鑑賞や街歩きを楽しみたい方には最適なシーズンと言えるでしょう。落ち葉が舞う石畳の道を歩きながら、ベックオフのような温かい煮込み料理に舌鼓を打つ。そんなしっとりとした大人の旅が楽しめます。
歴史と文化の深淵へ – 博物館・美術館めぐり
ストラスブールの魅力は、美しい街並みだけではありません。その豊かな歴史と文化を深く知るための素晴らしい博物館や美術館が点在しています。特に、大聖堂のすぐ南に位置する「パレ・ロアン」は、必見の文化施設です。
ひとつの宮殿に三つの美術館 – パレ・ロアン
かつてストラスブール大司教の邸宅だった「パレ・ロアン(Palais Rohan)」は、フランスの小ヴェルサイユとも称される壮麗な宮殿です。18世紀に建てられたこのバロック様式の建築物の中には、現在3つの異なるテーマを持つ美術館・博物館が入っており、一日中いても飽きることがありません。
- 装飾美術館(Musée des Arts décoratifs): 宮殿の1階部分を占め、かつての枢機卿たちの豪華絢爛な居室を見学できます。金箔で飾られた壁、見事なタペストリー、中国磁器のコレクションなど、当時の貴族の暮らしぶりを垣間見ることができます。また、地元の名窯「アノング(Hannong)」の陶器コレクションも充実しています。
- 美術館(Musée des Beaux-Arts): 宮殿の2階にあり、中世から19世紀までのヨーロッパ絵画のコレクションを誇ります。イタリアのジオットやボッティチェリ、スペインのエル・グレコ、フランドルのルーベンス、そしてフランスのドラクロワやクールベなど、巨匠たちの作品が一堂に会します。規模は大きすぎず、じっくりと名画と向き合えるのが魅力です。
- 考古学博物館(Musée Archéologique): 宮殿の地下にあり、アルザス地方の先史時代から中世初期までの歴史をたどることができます。ローマ時代の出土品やメロヴィング朝時代の装飾品など、この土地のルーツを知る上で非常に興味深い展示が揃っています。
アルザスの暮らしと芸術 – アルザス博物館
パレ・ロアンからイル川を渡ってすぐの場所にある「アルザス博物館(Musée Alsacien)」は、ストラスブールを訪れたならぜひ立ち寄ってほしい場所の一つです。複数の古い民家を連結して作られたこの博物館は、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえます。
館内には、18世紀から19世紀にかけてのアルザスの人々の暮らしが、様々なテーマで再現されています。伝統的な家具が置かれた居間、キッチン、寝室、そして陶器や織物を作る工房など、当時の生活の息吹が感じられるようです。特に、地方ごとに異なるデザインの伝統衣装や、婚礼の際に使われた豪華な装飾品の数々は見ごたえがあります。アルザス文化の魂に触れることができる、温かみに満ちた博物館です。
近現代アートに触れる – 近現代美術館(MAMCS)
プティット・フランスの対岸、イル川のほとりに建つガラス張りのモダンな建物が「ストラスブール近現代美術館(Musée d’Art Moderne et Contemporain de Strasbourg, MAMCS)」です。1870年の印象派から現代アートまでの幅広いコレクションを収蔵しています。
モネ、ピカソ、カンディンスキー、マグリットといった巨匠たちの作品から、地元アルザス出身のアルプやグスタフ・ドレの重要なコレクションまで、その内容は非常に充実しています。古典的な街並みとは対照的な、広々とした開放的な空間でアートを鑑賞するのは、また新鮮な体験です。屋上にはカフェレストランがあり、ヴォーバン・ダムやプティット・フランスの素晴らしい景色を眺めながら休憩することができます。
もうひとつの顔「ヨーロッパの首都」ストラスブール
中世の面影を色濃く残す旧市街からトラムに乗って北東へ向かうと、風景は一変します。ガラスと鋼鉄でできた未来的なデザインの建物が立ち並ぶエリア、それが「ヨーロッパ地区(Quartier Européen)」です。ここは、ストラスブールが持つもう一つの重要な顔、「ヨーロッパの首都」としての役割を象 徴する場所です。
第二次世界大戦後、二度と悲劇を繰り返さないという願いからヨーロッパ統合の動きが始まり、その象徴として、歴史的に独仏和解の地であったストラスブールに主要な欧州機関が設置されました。
- 欧州議会(Parlement européen): EUの立法機関の一つで、EU市民によって直接選挙された議員たちがここで議論を交わします。特にルイーズ・ワイス・ビルディングは、その巨大なガラスのファサードと未完成のタワーのようなデザインが特徴的で、民主主義が常に発展途上であることを象徴していると言われています。本会議が開催されていない時期には、内部見学ツアーに参加することも可能です。
- 欧州評議会(Conseil de l’Europe): EUとは異なる国際機関で、ヨーロッパ全体の人権、民主主義、法の支配を守ることを目的としています。宮殿のような重厚な建物がその役割の重要性を示しています。
- 欧州人権裁判所(Cour européenne des Droits de l’Homme): 近未来的なデザインが目を引くこの建物では、欧州人権条約に関する訴訟が扱われます。
これらの近代建築群は、グランド・イルの歴史的な景観とは全く異なりますが、これこそがストラスブールの多面的な魅力を物語っています。歴史を背負いながらも、未来を見据えて歩み続ける街の姿を、この地区は静かに、しかし力強く示しているのです。
旅のプランニングとヒント
最後に、あなたのストラスブール旅行がより快適で思い出深いものになるよう、いくつかの実践的なアドバイスをお届けします。
おすすめの滞在日数とモデルコース
ストラスブールの魅力を満喫するには、どれくらいの時間が必要でしょうか。もちろん長ければ長いほど良いのですが、一般的な目安としては以下の通りです。
- 1泊2日(弾丸コース): グランド・イルに集中し、大聖堂(展望台含む)、プティット・フランス散策、バトラーマ乗船をメインに。食事はウィンナーシュトゥーベで名物料理を堪能。時間が許せばパレ・ロアンのどれか一つの美術館を訪れる、というプランが考えられます。
- 2泊3日(標準コース): 上記に加えて、複数の美術館・博物館めぐりや、ショッピングの時間をゆっくりと取ることができます。夜のライトアップを楽しんだり、少し高級なレストランでディナーを味わったりと、より深く街の文化に浸れます。
- 3泊以上(じっくりコース): ストラスブールを拠点に、近郊の街へ足を延ばすのがおすすめです。おとぎ話の世界が広がる「コルマール」や、美しいぶどう畑が続く「アルザスワイン街道」の村々(リクヴィル、リボヴィレなど)への日帰り旅行は、旅の満足度を格段に上げてくれるでしょう。
ショッピングとお土産
旅の楽しみの一つがお土産探し。ストラスブールには、この土地ならではの魅力的な品々がたくさんあります。
- 食べ物: クグロフはもちろん、スパイスの効いたパン・デピス(Pain d’épices)、クリスマス時期のブレデル、そしてアルザスワインや地ビールは定番です。フォアグラの缶詰も人気があります。
- 雑貨: アルザスのシンボルであるコウノトリ(シゴーニュ)をモチーフにしたグッズは、ぬいぐるみからキッチン用品まで様々。幸せを運んでくると言われています。また、ベックオフ用の陶器の鍋や、スフレンハイム焼きなどの伝統的な陶器も、食卓を温かく彩ってくれます。
- ショッピングエリア: 大聖堂周辺や、クレベール広場から伸びる歩行者天国には、お土産物屋さんからデパート(ギャラリー・ラファイエット)、ブティックまで様々なお店が軒を連ねています。
旅を快適にするためのアドバイス
- 歩きやすい靴は必須: ストラスブールの旧市街は美しい石畳に覆われています。雰囲気は最高ですが、ヒールのある靴では非常に歩きにくいです。スニーカーやフラットシューズなど、歩きやすい靴を用意しましょう。
- 天候と服装: 大陸性の気候で、夏は暑く、冬は厳しい寒さに見舞われます。特に冬は石造りの建物からの底冷えも厳しいため、最大限の防寒対策が必要です。夏でも朝晩は冷え込むことがあるので、羽織るものを一枚持っていると安心です。
- 言葉: 公用語はフランス語ですが、ドイツ語を理解する人も多く、観光地では英語も通じやすいです。しかし、「Bonjour(こんにちは)」「Merci(ありがとう)」「S’il vous plaît(お願いします)」といった簡単な挨拶だけでもフランス語で話すと、ぐっとコミュニケーションがスムーズになります。
歴史と未来、美食と芸術、そして人々の温かさ。ストラスブールは、訪れる者の五感を優しく刺激し、心に深く刻まれる思い出を残してくれる街です。このガイドを手に、あなただけの素晴らしい物語を、この奇跡の街で紡いでください。Bon voyage

