北欧の国、デンマーク。レゴブロック発祥の地であり、アンデルセンの童話が息づく街並み、そして「ヒュッゲ(Hygge)」という独自の心地よい暮らしの哲学で知られるこの国は、多くの日本人にとって憧れの旅先の一つではないでしょうか。洗練されたデザイン、豊かな自然、そして世界幸福度ランキングで常に上位に名を連ねる国民性。そんなポジティブなイメージに満ちたデンマークですが、こと喫煙に関しては、旅行者が知っておくべき厳しい現実があります。食品商社に勤め、世界中の食と文化に触れてきた私、隆が今回は、愛煙家の皆様がデンマーク旅行で肩身の狭い思いをしないための、最新かつ詳細な喫煙事情をナビゲートいたします。美しい国デンマークでの一服が、苦い思い出とならないように。出発前に必ず知っておきたいルール、マナー、そして現地での立ち回り方まで、徹底的に解説していきましょう。
デンマークと同様に北欧のバルト三国に位置するエストニアの喫煙事情についても、旅行前に確認しておくと良いでしょう。
変わりゆく北欧の煙事情 デンマーク喫煙規制の歴史と現在

今日のデンマークにおける厳格な喫煙規制を理解するには、まずその背景にある社会の変化を把握することが欠かせません。かつてはヨーロッパ各国と同様に比較的喫煙に寛容だったデンマークも、健康志向の高まりとともにその姿勢が大きく変わりました。この社会的変革は旅行者の行動にも影響を与えるため、しっかりと理解しておくことが重要です。
2007年の重要な転機「禁煙法(Røgfrihedloven)」
デンマークの喫煙事情を語るうえで外せないのが、2007年8月15日に施行された「禁煙法(Lov om røgfri miljøer)」、通称「Røgfrihedloven」です。この法律は受動喫煙防止を主な目的としており、公共の場での喫煙環境を根本から変えました。具体的には、職場や教育機関、病院、さらにレストランやバー、カフェなどの飲食店内での喫煙を原則として全面禁止としました。この法律が施行された当初は、長年の慣習を変えることに対する抵抗もありましたが、健康を守るという大義名分のもと徐々に社会に浸透しました。この禁煙法の成立は、デンマークが「煙のない社会」を目指す強い意思表明であり、その後のさらに厳しい規制強化の基盤となったのです。旅行者にとっては、「屋内は基本的にすべて禁煙」という大原則をまずはしっかり理解しておく必要があります。
例外規定とその後の変化
法律施行当初にはいくつか例外も設けられていました。例えば、面積が40平方メートル未満の小規模バーで、かつ食事を提供しない場合に限り、経営者の判断で喫煙が許されることがありました。また、企業や施設内で完全に区切られた喫煙室(Rygerrum)の設置も認められていました。しかし、これらの例外も年々見直され、規制は一層厳しくなっています。特に若年層の喫煙防止に向けた取り組みが活発で、新規の喫煙室設置が困難になるほか、電子タバコも同様の規制対象に含まれるなど、愛煙家にとっては厳しい環境へと変わってきています。これらは、デンマーク社会が受動喫煙のリスクを深刻に受け止め、次世代の健康を守ろうとする強い姿勢の表れといえます。
若年層への対策強化「スモークフリー・フューチャー」
デンマーク政府は、特に若者の喫煙防止に重点を置いています。その象徴的な取り組みが「Røgfri Fremtid(スモークフリー・フューチャー)」という官民連携のパートナーシップです。このプロジェクトは2030年までに喫煙を始める子どもや若者をゼロにし、成人の喫煙率も5%未満に減らすという高い目標を掲げています。この目標に向けて、近年タバコ関連の規制は次々と強化されました。2021年にはタバコ製品の陳列販売が禁止され、顧客から見えない場所での保管が義務付けられました。さらに2022年からはロゴやブランドカラーを排除した地味なパッケージデザインの「プレーン・パッケージング」が導入され、若者の購買意欲を抑制する狙いがあります。かつては2010年以降に生まれた世代に生涯タバコを販売しないという抜本的な法案も検討されていました(最終的には実現しませんでしたが)。こうした動きは、デンマークが国をあげて「脱タバコ社会」の実現を目指していることを強く印象づけています。
現在の喫煙率と国民の健康意識
長年の努力の結果、デンマークの喫煙率は着実に減少しています。最新の統計によると、日常的に喫煙する成人の割合は20%を下回り、特に若年層の喫煙率は大きく減少しています。街中でたばこを吸う人の姿も以前よりかなり少なくなりました。国民の意識としては「喫煙は個人の自由」という考え方よりも、「周囲の人の健康を損なってはならない」という公共の健康重視の価値観が根付いています。喫煙者自身も喫煙可能な場所を探し、周囲に配慮しながら喫煙するのが常識となっています。旅行者もまた、このデンマーク社会の共通認識を尊重し、現地のルールやマナーを守ることが強く求められています。
【旅行者必読】デンマークの具体的な喫煙ルールを場所別に解説
それでは、旅行者が訪れるであろう具体的な場所ごとに、喫煙ルールを詳しく解説します。このセクションを読むことで、どこで喫煙が許され、どこで禁じられているのかがはっきりわかるため、現地での戸惑いを避けることができるでしょう。違反した場合は高額な罰金が科される場合もあるので、必ず事前にルールを確認してください。
屋内はほぼ全面禁煙:レストラン、カフェ、バーにおける注意点
先述の通り、デンマークではレストランやカフェ、バー、ナイトクラブなど、飲食を提供するほとんどの屋内施設で法律による全面禁煙が実施されています。これは高級店から路面の小さなカフェまで、例外なく適用されます。店内に灰皿が設置されていることはまずありません。「少しだけなら」という考えは通用せず、喫煙すると店員に注意されるだけでなく、退店を求められたり罰金対象となったりする可能性があります。デンマークの美味しい料理やコーヒーの香りをタバコの煙で台無しにすることは許されません。
喫煙室(Rygerrum / Smoking Cabin)の設置
ごく一部の施設、特に伝統的なパブ(「Bodega」とも呼ばれる)や大規模な場所では、完全に隔離された喫煙室が用意されている場合があります。ただし、ここでの飲食は法律で禁止されており、飲み物や食事を手に持ちながらの喫煙はできません。飲み物を席に置いたまま喫煙室を利用し、終わったら席に戻るのが一般的な利用方法です。喫煙室のドアは常に閉めるのがマナーとなっています。
屋外席(テラス席)での喫煙
屋内が厳しく禁煙されている一方、屋外のテラス席では喫煙が認められている場合が多いです。天気のよい日には、多くのデンマーク人がテラス席で食事やビールを楽しみながらたばこを吸っています。ただし、これはあくまで店舗の方針に依るため、席に着く前に灰皿があるか確認するか、店員に「Må jeg ryge herude?(モー イェイ リューエ ヘルーデ? / ここで喫煙していいですか)」と聞くのがおすすめです。また、喫煙可であっても、近くに子ども連れやタバコを嫌う人がいる場合は、一声かけるか、煙が流れないよう風向きを考慮するなど、ヒュッゲの国らしい気遣いが求められます。
公共交通機関でのルール:電車、バス、空港
移動中に喫煙したくなる気持ちはわかりますが、デンマークの公共交通機関は非常に厳格な規制が敷かれています。旅程を立てる際には、移動中は喫煙できないと心得ておきましょう。
電車・バス・メトロ
電車(DSB)、バス、コペンハーゲンのメトロなど、主要なすべての公共交通機関の車内は完全禁煙です。電子タバコや加熱式タバコも含まれ、長距離列車でも喫煙車両や専用スペースは存在しません。
駅のプラットフォーム
駅のホームでも原則禁煙ですが、一部の大規模駅では、プラットフォームの端に黄色い線で囲まれた喫煙エリア(Rygezone)が設けられていることがあります。灰皿付きのスタンドが目印です。必ずその指定エリア内でのみ喫煙し、エリア外では絶対に吸わないよう注意しましょう。乗り継ぎの合間に慌てて吸うのではなく、余裕を持って喫煙スペースを探すことが望まれます。
コペンハーゲン・カストラップ空港(CPH)
デンマークの玄関口であるコペンハーゲン空港もターミナル内は全面禁煙ですが、喫煙者のためにいくつか喫煙所が用意されています。チェックイン前の屋外エリアには、ターミナル入口から離れた場所に灰皿が設置されています。また、保安検査・出国審査後のエリアにも、例えばターミナル2のCゲート付近やターミナル3の非シェンゲン区域にガラス製の喫煙キャビンがあります。空港内の案内標識に喫煙マークがあるので、それを目印に探しましょう。フライト前に一服したい場合は、時間に余裕を持って喫煙エリアを確認しておくことを強く推奨します。
屋外での喫煙:路上、公園、ビーチ
屋内の規制が厳しい分、屋外での喫煙には比較的自由がありますが、それでも守るべきルールやマナーは存在します。
路上喫煙
日本の多くの自治体のような路上禁煙条例はデンマークには基本的に存在しません。そのため、歩きタバコをしている人も見かけます。ただし、どこでも自由に吸っていいというわけではありません。特に建物の出入り口付近やバス停など、人が集まる場所で喫煙するのは避けるのが暗黙のマナーです。人は煙を避けて屋内に入るのに、その入口で煙を吸わされるのは不快に感じられます。常に周囲に迷惑がかかっていないか気を配ることが必要です。
吸い殻のポイ捨ては禁止
最も厳守すべきなのは、吸い殻のポイ捨てを絶対にしないことです。デンマークは環境保護意識が非常に高く、街の美観を損なうポイ捨て行為には厳しい目が向けられます。路上にあるゴミ箱の多くには、上部に吸い殻を消すための金属プレートが付いています。必ず火をきちんと消してから、ゴミ箱に捨てるか、携帯灰皿を使うようにしましょう。ポイ捨てはマナー違反であるばかりか、自治体によっては罰金の対象にもなり得ます。美しい街並みを汚さない責任ある行動を心がけてください。
公園やビーチ
広い公園やビーチでは喫煙が禁止されていませんが、周囲への配慮やポイ捨て禁止のルールは変わりません。特に子どもが遊んでいるエリア付近での喫煙は控えるべきです。また、ビーチの砂浜に吸い殻を埋める行為は環境汚染につながるため、最悪のマナー違反とみなされます。自然の中での一服は格別ですが、その自然を守る責任が伴うことを忘れないでください。
ホテルでの喫煙:喫煙可能な部屋は希少
旅行中の滞在先であるホテルでの喫煙は特に注意が必要です。予約時に確認しなければ、滞在中に喫煙できる場所が一切ない可能性もあります。
ほとんどが全館禁煙
現在のデンマークでは、多くのホテルが「全館禁煙(Non-smoking property)」を標準ポリシーとしています。火災予防や他の宿泊客への配慮、クリーニングの負担軽減などが理由です。予約サイトで「喫煙可」のフィルターをかけずに検索すると、ほとんどが禁煙ホテルであることに気付くでしょう。
喫煙ルームの予約方法
喫煙可能な客室を希望する場合は、予約時に必ず「喫煙室(Smoking Room)」を指定しなければなりません。Booking.comやExpediaなどの大手予約サイトでは、「喫煙ルーム」フィルターがあるため、必ずチェックしてから検索してください。しかしながら、喫煙室を提供するホテルは非常に限られており、特にコペンハーゲンの中心部では見つけにくい傾向があります。郊外のホテルやビジネス向けの古いタイプの宿泊施設に残っている場合があります。
バルコニーでの喫煙は事前確認を
「バルコニーがあればそこで吸ってもいいだろう」と安易に考えるのは危険です。バルコニーでの喫煙を禁止しているホテルも多く、灰や煙が下の階に流れたり壁に臭いがつくのを防ぐための措置です。予約前にホテルの詳細情報(ファインプリント)をよく読み、直接ホテルに「Is smoking allowed on the balcony?(バルコニーでの喫煙は可能ですか?)」と問い合わせることをおすすめします。無断でバルコニー喫煙をして部屋に臭いが残った場合、高額な特別清掃料を請求されることがあるため、絶対に避けてください。
タバコの購入と持ち込み:知っておきたい基本情報

デンマークで喫煙をする場合、現地で購入するか日本から持ち込むかのいずれかとなります。それぞれに守るべきルールや注意点があるため、詳しくご説明します。
デンマーク国内でのタバコの購入方法
購入可能な場所
タバコはスーパーマーケット(Føtex、Netto、Irmaなど)、コンビニエンスストア(7-Elevenなど)、駅構内のキオスク(DSBのKioskなど)で購入可能です。専門のタバコ店はほとんど見かけません。ご存じの通り、タバコは店頭に並んでおらず、レジの後ろの棚などに隠されているため、レジスタッフに銘柄を伝えて購入するスタイルです。
年齢確認および購入時の表現
デンマークでは18歳未満へのタバコの販売が法律で禁止されているため、年齢確認は頻繁に行われます。特に若く見えるアジア人の場合、パスポートなど写真付きの身分証明書の提示が求められることが多いので、常に携帯しておくことをお勧めします。購入時には「En pakke Marlboro, tak(エン パッケ マルボロ、タック)」のように伝えます。銘柄がわからないときは、店頭にある見本リストを指さして注文することも可能です。
高額な価格設定
デンマークで最も衝撃を受けるのはタバコの価格の高さです。課税が厳しく、主要銘柄の1箱(20本入り)は約60デンマーク・クローネ(2023年時点の為替で約1,200円)となり、日本の約2倍の費用がかかります。滞在中に現地でタバコを購入し続けるとかなりの出費になることを心に留めておきましょう。
プレーン・パッケージの特徴
デンマークで販売されているタバコの箱は、健康被害を示す強い警告写真と文字が大部分を占め、ブランドのロゴは非常に小さく控えめなフォントで表示されています。これはプレーン・パッケージングという規制で、カラフルなパッケージに惹かれて若者が喫煙を始めるのを防ぐ狙いがあります。間違った銘柄を購入しないよう、じっくり確認してから手に取ってください。
日本からのタバコ持ち込み制限(免税範囲)
費用面を考慮すると、日本からタバコを持ち込む方が現実的な選択肢ですが、免税で持ち込める量には上限があります。超過すると高い関税や付加価値税が課されるため、規則は必ず守るようにしてください。
EU域外(日本等)からデンマークへ17歳以上の旅行者が個人使用で免税範囲内に持ち込めるタバコ製品の数量は以下の通りです。
- 紙巻きタバコ:200本(1カートン)
- または 細葉巻(シガリロ、1本あたり3g以下):100本
- または 葉巻(シガー):50本
- または 刻みタバコ:250グラム
これらは「または」の関係なので、例えば、紙巻きを100本(0.5カートン)と葉巻を25本(上限の半分)など、組み合わせて持ち込むことも可能です。詳細はデンマーク税関(Toldstyrelsen)公式サイトでの確認をおすすめします。この範囲内なら税関での申告は不要です。
電子タバコおよび加熱式タバコに関する規制
電子タバコ(Vape)や加熱式タバコ(IQOS、gloなど)の利用者が増加していますが、デンマークではこれらも厳しい規制の対象となっています。愛用者は特に注意が必要です。
禁煙法の適用範囲
デンマークの禁煙法は電子タバコや加熱式タバコにも同様に適用されます。つまり、屋内の公共施設や公共交通機関では、これらの製品の使用も禁止されています。「煙が出ない」「水蒸気だから使える」といった言い訳は通用しません。
ニコチン入りリキッドの規制
電子タバコ用のニコチン入りリキッドの販売には厳しい制限があり、ニコチン濃度は最大20mg/mlまでに制限されています。さらに、2022年4月からはタバコ味とメンソール味以外のフルーツ系やスイーツ系などのフレーバー付きリキッドの販売が全面禁止されました。これは、若者を電子タバコに惹きつけるフレーバーの提供を防ぐための措置です。現地で好みのリキッドを手に入れるのは非常に難しいと考えてください。
日本からの持ち込みについて
個人使用目的であれば、適量のデバイスやリキッド、タバコスティックの持ち込みは可能です。ただし、リキッドは液体物のため航空機の持ち込み規定に従う必要があります。原則として預け荷物に入れますが、デバイス本体にはリチウムイオン電池が含まれるため、機内持ち込み手荷物としなければなりません。予備のバッテリーも同様です。リキッドの量はあくまでも個人使用の範囲内に限定し、過剰に大量な持ち込みは販売目的と疑われる恐れがあるため避けましょう。滞在日数に見合った適切な量の準備が必要です。
愛煙家がデンマーク旅行を快適に過ごすための実践ガイド
ここまで説明してきた厳格なルールを踏まえた上で、愛煙家がデンマーク旅行をより快適かつトラブルなく楽しむための具体的な行動指針と準備についてまとめました。ぜひ旅の計画にお役立てください。
出発前の準備と持ち物チェックリスト
快適なデンマーク滞在は、日本を出発する前の準備が鍵となります。以下のポイントをチェックリストとしてご活用ください。
携帯灰皿は必ず持参を
最重要アイテムの一つです。前述の通り、デンマークでは屋外喫煙は許されていますが、吸い殻のポイ捨ては絶対に禁止されています。ゴミ箱が見つからない状況も想定し、携帯灰皿を持ってスマートに吸い殻を処理できるようにしましょう。匂いが漏れにくい密閉タイプがおすすめで、ポケットやバッグに入れても快適です。携帯灰皿を携えることで、喫煙者としてのマナー意識の高さを示せます。
タバコは日本から持ち込むのが賢明
現地での購入は非常に割高なため、滞在期間中に必要な分は免税範囲内で日本から持ち込むことを強くおすすめします。出発前に空港の免税店で買うと、国内購入よりもお得です。お気に入りの銘柄は、必要な量を余裕をもって用意しておきましょう。
ホテルの喫煙ルールを再度確認
予約済みのホテルの喫煙に関する規則を、出発前にもう一度確認しましょう。「Smoking Room」と明記されているかや、全館禁煙の場合には敷地内の指定喫煙スペースがあるかを、ホテルの公式ウェブサイトや問い合わせで調べておくと安心です。現地で「喫煙可能な場所がまったくない」と慌てる事態を防げます。
電子タバコ利用者の備え
デバイスの充電器や変換プラグ(デンマークはCタイプ)、予備のコイルやカートリッジ、滞在日数分のリキッドやタバコスティックは忘れずに準備しましょう。現地での入手は難しいか、不可能と考えて必要なものは日本から持って行くことが重要です。万が一に備え、予備機を1台持参するとさらに安心です。
現地での喫煙スポットの探し方
デンマークの街中で一服したくなった際、どのように喫煙所を見つければよいか、いくつかのポイントを紹介します。
灰皿が設置されている場所をチェック
分かりやすい目印は灰皿の存在です。レストランやカフェの屋外席、パブの入り口付近、ビルの壁際などに灰皿があれば、その場所は喫煙が許可されています。また、街中のゴミ箱に吸い殻入れが付いていることも多く、その周辺が暗黙の喫煙エリアである場合があります。
Googleマップを活用する
スマホのGoogleマップで「Smoking area」やデンマーク語の「Rygezone」など検索すると、空港や駅にある公式喫煙所が表示されることがあります。ただし、すべての喫煙スポットが登録されているわけではないため、あくまでも補助的な手法として利用しましょう。
現地の喫煙者の行動を観察する
地元の人がどこでタバコを吸っているかを観察することも効果的です。人が集まっている場所は、公共的に認められているか黙認されている可能性が高いです。真似をする際は、吸い殻のポイ捨てを避けるなど、周囲への配慮は忘れずに行いましょう。
トラブル回避のポイント:罰金とマナーについて
もしルール違反をしてしまった場合、どのような影響があるのかを理解し、未然にトラブルを防ぐ知識です。
罰金の重さ
禁煙エリアでの喫煙やポイ捨てに対しては、自治体や状況によって異なりますが、おおむね1,000デンマーククローネ(約2万円)を超える高額な罰金が科せられることがあります。特に鉄道車内での違反は、職員が現場で罰金を徴収することもあります。知らなかったでは済まされず、軽い気持ちでの違反が旅費に大きな影響を及ぼす可能性があります。
周囲からの目線や注意
罰金にならなくても、マナー違反の喫煙は周囲のデンマーク人から冷たい視線を浴びることがあります。場合によっては直接注意を受けることもあるでしょう。デンマークの人々は「ヒュッゲ」と呼ばれる他者の快適さを尊重する精神を大切にしています。自分の喫煙が誰かのヒュッゲな時間を損なっていないか、煙の流れや子どもの有無、開いている窓の位置など細かな配慮が求められます。こうした想像力こそが異文化の中で受け入れられるための重要な鍵です。
公式情報を確認しよう:困ったときの連絡先と情報源

本記事は最新の情報をもとに解説していますが、法律や規制は随時変更される可能性があります。旅行前や現地で疑問が生じた場合は、信頼できる公式情報源を確認することが重要です。
デンマークの公式情報源
デンマーク健康局(Sundhedsstyrelsen)
デンマークの保健・医療行政を担当する機関であり、禁煙法やタバコ規制に関する最新の公式情報は主にこちらのウェブサイトで公開されています(言語は主にデンマーク語)。専門的な内容を含みますが、最も信頼性の高い情報源です。禁煙推進キャンペーンなどの情報も掲載されています。詳しくはデンマーク健康局のタバコ関連ページをご参照ください。
在デンマーク日本国大使館
現地の法律や慣習、安全に関する情報を提供しています。大きな法改正があった際には、在留邦人や旅行者向けに注意喚起が発信されることもあります。渡航前に公式サイトを確認しておくことをおすすめします。万が一、罰金などのトラブルに遭遇した場合は相談も可能です。
旅行者向けの情報サイト
デンマーク政府観光局(VisitDenmark)
VisitDenmarkは、デンマーク観光に関する包括的な情報を提供する公式サイトです。喫煙に特化した情報は少ないかもしれませんが、一般的な習慣やマナー、公共交通機関の利用方法など、旅行に役立つ内容が豊富に揃っています。喫煙ルールとともに、デンマークの文化を深く理解するために活用すると良いでしょう。
グルメライター隆が語る、喫煙とデンマークの食文化
では、ここからは趣向を少し変えて、私・隆の専門分野である「食」の視点から、デンマークにおける喫煙のシーンについて考えてみたいと思います。厳しい規制のなかでも、食事と喫煙をうまく両立させるためのヒントが見つかるかもしれません。
屋外で楽しむスモーブローと一杯
デンマークの食文化の象徴と言えば、オープンサンドイッチの「スモーブロー(Smørrebrød)」が有名です。ライ麦パンの上に、酢漬けのニシンやローストビーフ、エビなどが美しく盛り付けられたスモーブローは、まさにデンマークのソウルフードです。これに合わせるのは、冷えたデンマークビールやスナップス(蒸留酒)で、この最強の組み合わせを楽しみたい愛煙家には、迷わず屋外のテラス席をお勧めします。運河沿いや広場に面したカフェやレストランのテラス席は、多くの場合喫煙が許されていて、デンマークの爽やかな風を感じながら食事と一服を満喫できる特別な場所です。太陽の光を浴びつつ、美味しいスモーブローを味わい、ビールで喉を潤し、食後にゆったり煙草をくゆらせる――これがまさに、デンマーク流ヒュッゲなひとときと呼べるでしょう。ただし、その心地良さは周囲への配慮があってこそ成り立つもの。隣のテーブルとの距離を意識し、煙が他の食事中の人に迷惑をかけないよう気を配ることが、大人の嗜みです。
港町の景色と一服の優雅さ
コペンハーゲンのニューハウンに代表されるような、カラフルな建物が並ぶ港町の風景は、デンマークを象徴する美しい景観です。そういった場所で景色を楽しみながら一服する時間は、愛煙家にとって何物にも代えがたい至福のひとときでしょう。屋外での喫煙は可能ですが、マナーは特に重要です。世界中から観光客が訪れる名所だからこそ、吸い殻のポイ捨ては絶対に避けなければなりません。携帯灰皿は必須アイテムです。船着き場のベンチに腰かけ、カモメの鳴き声を聞きながらゆっくりと煙を燻らせる、その穏やかな時間が、ひとつの無責任なポイ捨てで台無しにならないよう、自覚を持つことが大切です。美しい景観を守る一員であるという意識こそが、旅の価値をさらに高めてくれるでしょう。
食後のコーヒーと一服はどこで?
素晴らしいレストランでのディナーの後、食後のコーヒーとともに一服したいというのは、多くの愛煙家の共通の望みかもしれません。しかし、デンマークにおいてはその願いを叶えるのはかなり難しい現実があります。レストランの屋内は完全禁煙となっているため、その場で吸うことはできません。ではどうするかというと、多くの喫煙者は会計を済ませて店の外に出てから路上で一服します。そしてそのまま解散するか、あるいは喫煙可能な屋外席のあるバーへ移動して飲み直すことが一般的です。食事の余韻に浸りながら席で一服するスタイルはデンマークにはなく、この現地の習慣を受け入れるのが賢明です。食事が終わったら一度気持ちを切り替えて、「さて、次はどこで吸おうか」と夜のコペンハーゲンを散策するのもまた楽しい体験かもしれません。
デンマークで見つける、愛煙家へのお土産

旅の記念品や、日本の愛煙家の友人へのお土産に、デンマークならではの喫煙具を選んでみてはいかがでしょうか。デザイン大国として知られるデンマークには、喫煙者でなくても欲しくなるような洗練されたアイテムが多数揃っています。
デンマークデザインの灰皿
デンマーク製品は、ミニマルで機能的なデザインが特徴です。その考え方は灰皿にも色濃く反映されています。たとえば、アルネ・ヤコブセンが手掛けた「Stelton(ステルトン)」社のシリンダ・ライン回転式灰皿は、シンプルながらも上品なフォルムで、どんなインテリア空間にも自然に溶け込みます。また、王室御用達の「Georg Jensen(ジョージ・ジェンセン)」によるステンレス製灰皿は、その美しい輝きと重量感が所有欲を掻き立てる逸品です。デパートのインテリアコーナーやデザインショップに足を運べば、きっと心惹かれる一品と出会えるでしょう。喫煙しない方でも、小物入れとして使いたくなるほどの美しさがあります。
パイプとパイプタバコ
デンマークは、世界的にも名高いパイプ製造国の一つです。特に「Stanwell(スタンウェル)」や「Poul Winslow(ポール・ウィンズロウ)」といったブランドは、パイプ愛好家から高い評価を受けています。コペンハーゲンには歴史あるパイプとタバコの専門店があり、多彩なデザインのパイプやデンマーク製の質の高いパイプタバコを手に入れることができます。店主と相談しながら、自分だけの一本を選ぶ時間は、大人の楽しみそのものです。紙巻きタバコとは異なる、ゆったりとした喫煙体験の入り口として、デンマークでパイプデビューをするのも、忘れがたい旅の思い出になるでしょう。
ニコチンパウチ(Nikotinposer)
最後に、少し珍しい製品についてご紹介します。スウェーデン発祥の「スヌース」という無煙タバコを知る人もいるかもしれませんが、EU内ではスウェーデン以外の国での販売が禁止されています。しかしデンマークでは、タバコの葉を使わない「ニコチンパウチ」という類似品が合法的に販売され、高い人気を誇っています。これは植物繊維などにニコチンと香料を染み込ませた小袋を歯茎と上唇の間に挟んで使用するもので、煙や臭いが出ません。そのため、禁煙場所でもニコチンを摂取できる代替品として利用されています。スーパーやキオスクで多彩なフレーバーが購入可能です。ただしニコチン依存性があるため使用時は注意が必要です。日本では入手できない珍しい製品として、話題作りに試してみるのも一興でしょう。ただし、日本への持ち込みに関しては規制の有無を事前に確認することをおすすめします。
デンマークの喫煙規制は日本よりもはるかに厳しいですが、ルールやマナーをしっかり守り周囲への配慮を欠かさなければ、愛煙家もこの美しい国を存分に楽しめます。あなたのデンマークの旅が、心に残る素晴らしいものになることを願っています。

