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天空に聳える黄金の仏塔と、地獄の業火を宿す激辛グルメの街、ナコンパトム探訪記

バンコクの喧騒から西へわずか50キロ。そこには、旅人の想像を遥かに超える歴史と文化、そして食の楽園が広がっています。今回の舞台は、タイ最古の都市のひとつとされ、仏教伝来の地としても知られる古都、ナコンパトム。この街の象徴は、空を突くようにそびえ立つ世界最大の仏塔「プラ・パトム・チェーディー」。その神聖な輝きに多くの人々が惹きつけられます。しかし、スパイスハンターである私の目的はそれだけではありません。聖なる光の影に潜む、舌と胃を焼き尽くすほどの灼熱のグルメ。その最も辛い一皿を求めて、私はこの地に降り立ちました。穏やかな古都の表情と、内に秘めたる燃えるような情熱。その二面性を味わい尽くす旅が、今始まります。

ナコンパトムの穏やかな表情とは対照的に、タイには旅行者が知っておくべき暗号資産マネーロンダリングの闇といった側面も存在します。

目次

バンコクから古都へ、旅の始まりは鉄路の響きと共に

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ナコンパトムへの旅は、まずバンコクからの交通手段を選ぶことから始まります。主な選択肢はロットゥー(ミニバン)とタイ国鉄の二つです。どちらにもそれぞれの魅力がありますが、風情を感じたいなら断然タイ国鉄がおすすめです。列車のガタンゴトンというリズムに身をゆだね、車窓に広がる日常の風景を眺めるひとときは、到着までの期待をより一層高めてくれる最高のアクセントになるでしょう。

タイ国鉄で楽しむノスタルジックな鉄道旅

バンコクからナコンパトムへは、南本線の列車が利用可能です。以前はフアランポーン駅が起点でしたが、現在は長距離列車の多くが「クルンテープ・アピワット中央駅(旧バンスー中央駅)」から発着しています。ただし、普通列車(Ordinary)や快速列車(Rapid)の一部は今もフアランポーン駅発着のため、利用する駅を事前に確認しておくと安心です。

行動の手順:チケット購入の方法

国鉄のチケットはとても簡単に買えます。駅の窓口で行き先「Nakhon Pathom」と人数を伝えるだけでOK。英語が通じにくいことも考慮して、スマートフォンのメモなどに行き先のタイ語(นครปฐม)を表示しておくと、スムーズに購入ができます。普通列車の料金は驚くほどリーズナブルで、2023年時点ではおよそ15バーツ程度。列車によって異なりますが、所要時間は約1時間半から2時間程度です。エアコンのない車両がほとんどですが、窓から入る風は心地良く、タイのローカルな雰囲気を十分に味わえます。

準備と持ち物リスト:快適な列車旅のために

  • 飲み物: 車内販売もありますが、念のために1本用意しておくと安心です。
  • 軽食: 小腹が空いた際に便利。途中の駅で売り子が乗車してくることもあり、これを楽しむのも旅の一部です。
  • ウェットティッシュ: 窓を開けると手が汚れることがあるため、あると重宝します。
  • モバイルバッテリー: 長時間の移動に備えて、スマートフォンの充電は必ず確保しておきましょう。

プラットフォームに入ってくる列車は、どこか懐かしい雰囲気を漂わせています。硬めのプラスチック製の席に腰をおろし、ゆっくりと走りだすとバンコクの高層ビル群が徐々に緑豊かな田園風景へと変わっていく光景は、この鉄道旅ならではの魅力です。

スピーディーで便利なロットゥーを選ぶ理由

より時間を優先したい、もしくは手軽に移動したい方にはロットゥーが便利です。バンコクの主な乗り場は戦勝記念塔周辺や南バスターミナル(サーイタイマイ)などです。料金はおよそ60バーツ前後で、高速道路を利用すれば所要時間は約1時間。満席になるとすぐに出発するため、タイミングが合えばすぐに移動ができます。

トラブル対策:ロットゥー乗り場が分からない場合

戦勝記念塔周辺は乗り場が多数あり、行き先ごとに分かれているため、初めてだと迷うかもしれません。そんなときは遠慮せず、そばにいる制服を着たスタッフや他の乗客に「Nakhon Pathom?」と尋ねてみましょう。親切に案内してくれることがほとんどです。また、近年は配車アプリのGrabやBoltを使い、バンコク市内から直接タクシーで向かう方法もあります。もし複数人で移動する場合は、費用を割り勘できて意外に経済的な選択肢となるでしょう。

黄金に輝く聖地、プラ・パトム・チェーディーの威容

ナコンパトム駅に降り立つと、まず目に飛び込んでくるのが、街のどこからでも見渡せる巨大な仏塔、プラ・パトム・チェーディーです。その高さは120メートルを超え、黄金色のタイルで覆われた釣鐘型の形状が青空と鮮やかに対比し、まるで神聖な輝きを放っています。タイ国政府観光庁の説明によれば、この仏塔は紀元前3世紀にアショーカ王が仏教を伝えた際に建てられたことが起源とされ、「最初の仏塔」を意味し、タイ仏教において最も重要な聖地の一つに数えられています。

境内に足を踏み入れると、その圧倒的なスケールに改めて感嘆します。巨大な仏塔の周囲は回廊で囲まれており、時計回りに歩きながら祈りを捧げるのが伝統的な習わしです。回廊には様々な仏像が並び、熱心に祈る地元の信者たちの姿から、この場所が深く信仰の対象となっていることが感じられます。

訪問者が守るべきルールとマナー

神聖な寺院を訪れる際は、尊敬の念を持った行動が求められます。特に服装に関しては細心の注意が必要で、これはナコンパトムに限らずタイの多くの寺院で共通のルールです。

服装に関するルール

  • 避けるべき服装: タンクトップやキャミソールのように肩が露出するもの、ショートパンツやミニスカートなど膝より上の丈のボトムスは避けましょう。タイトなレギンスなども一部では好ましくないとされています。
  • 推奨される服装: 肩を覆うTシャツやブラウス、膝下まで隠れる長ズボンやロングスカートが適切です。もし適切でない服装で訪れてしまった場合も、多くの寺院の入り口付近でパレオ(巻きスカート)を借りることができますのでご安心ください。ただし、レンタルできる数が限られていたり、有料の場合もあるため、最初から相応しい服装を選ぶのが賢明です。

参拝時の心得

  • 静かに行動: 境内での大声での会話や走り回る行為は禁止されています。
  • 仏像への配慮: 仏像に触れたり、足を向けるのは禁じられています。写真撮影は可能ですが、仏像を見下ろすような角度や、ふざけたポーズでの撮影はマナー違反です。
  • 靴の扱い: 本堂など特定の建物に入る際は靴を脱ぐ必要があります。入り口に設置された靴箱にきちんと靴を揃えて置きましょう。

これらのルールを守ることは単なる規則の遵守ではなく、その土地の文化や信仰への敬意を示すものです。慎み深い心で訪れることで、この神聖な場所の持つ厳かな空気をより一層深く味わえるでしょう。

チェーディーの内部および周辺の見どころ

巨大なチェーディーの内部も見学が可能です。薄暗い空間の中に安置された仏像は荘厳で、外界の喧騒とは切り離された静謐な時間が流れています。ここで心静かに手を合わせるひと時は、旅の思い出として深く心に刻まれることでしょう。

さらに、広大な敷地内には博物館も併設されており、ドヴァーラヴァティー王国時代の貴重な遺物など、この土地の悠久の歴史を物語る品々が展示されています。時間に余裕があればぜひ訪れてみてください。博物館の入場料はチェーディーの拝観料とは別途発生する場合があるため、入口で確認することをおすすめします。

夜になるとチェーディーはライトアップされ、昼間とは異なる幻想的な姿を見せてくれます。その周囲にはナイトマーケットが広がり、多彩な屋台で賑わいを見せます。神聖な仏塔のふもとでローカルフードを味わう体験は、ナコンパトムならではの貴重な思い出となるでしょう。

緑豊かな王の離宮、サナームチャン宮殿

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プラ・パトム・チェーディーから少し歩みを進めると、ラーマ6世によって築かれた美麗な離宮「サナームチャン宮殿」があります。広大な敷地内には、西洋とタイの建築様式が融合した独特で美しい建築物が点在し、緑豊かな庭園がそれらを繋いでいます。まるでヨーロッパの城館を思わせる建物もあれば、伝統的な高床式のチーク材の家屋もあり、その多彩な様子は見ているだけで飽きることがありません。

宮殿の敷地は公園として整備されており、地元の人々の憩いの場としても親しまれています。大きな池の周囲を散策したり、木陰のベンチでくつろいだりするのも心地よい時間です。特に「ヤレー」という王の愛犬の銅像は人気の撮影スポットで、賢く忠誠心の強かったヤレーは王に深く愛され、彼の死を悼んで建てられたと伝えられています。

訪問時の実用情報

  • 入場について: 宮殿の敷地内(公園エリア)への入場は無料ですが、建物内部の見学には別途入場料が必要です。チケットは入り口付近のオフィスで購入できます。
  • 写真撮影のルール: 屋外での撮影は自由ですが、建物内部は撮影禁止の場所が多く設定されています。貴重な調度品や展示物を守るための措置ですので、必ず指示に従いましょう。
  • 持ち込み禁止物: 大型の荷物や飲食物の持ち込みが制限される場合があります。不要な荷物は入り口のロッカーに預けるよう案内されることもあります。

サナームチャン宮殿は、プラ・パトム・チェーディーとは異なる、穏やかで洗練されたナコンパトムの魅力を感じさせるスポットです。歴史的な建築物に興味のある方はもちろん、美しい景観の中でゆったりとした時間を楽しみたい方にも、ぜひ訪れていただきたい場所です。

いざ、スパイスの頂へ!ナコンパトム激辛グルメ探訪

聖地や宮殿を巡り心を清めた後、ついにスパイスハンターとしての使命を果たす時が訪れました。ナコンパトムは食の宝庫としても知られており、中でも名物の「カオムーデーン」が有名です。炭火で香ばしく焼き上げられた赤い焼き豚をご飯にのせ、甘めのタレをかけた一皿は、どなたにも親しみやすい優しい味わいを楽しめます。また、タイを代表する果物の一つであるザボン(ソムオー)の産地としても知られており、その瑞々しく甘酸っぱい果肉は旅の疲れを癒してくれることでしょう。

しかし、私が求めているのは、そうした穏やかな味わいではありません。この街にひそむ、最も辛くて刺激的な料理。それを探し求め、私は地元の人々が集う食堂や屋台が軒を連ねるエリアへと足を踏み入れました。

運命の一皿との遭遇

数軒の店を回り、情報収集を続けるうちに、ある食堂の噂を耳にします。「あそこのゲーンパー(森のカレー)は、地元の人でも涙をこぼしながら食べる」と。ゲーンパーはココナッツミルクを使わず、ハーブと唐辛子のみでストレートな辛さを追求したカレーです。これこそ求めていたものかもしれない。期待を胸に、その店へ向かいました。

店構えは素朴なローカル食堂で、おしゃれとは程遠いですが、厨房から漂うハーブとスパイスの香りが本物であることを確信させます。席に着き、女将さんにメニューを指しながら覚悟を決めてこう告げました。

「ゲーンパー・ヌア、ペット・マーク・マーク・クラップ(牛肉の森のカレー、ものすごく辛くしてください)」

女将さんは一瞬驚いた表情を見せましたが、すぐににやりと笑い、厨房奥に向かって声をかけました。その時、私は勝利を確信しました。これから始まる味覚と胃腸の限界を試す戦いのゴングが鳴ったのです。

地獄の業火、ゲーンパー実食レポート

数分後、運ばれてきた一皿は、カレーとは思えない異様な姿でした。赤黒いスープの中には、牛肉とインゲンが入っており、ハーブが大量に浮かぶ中、おびただしい数のプリッキーヌ(タイの激辛唐辛子)が顔をのぞかせています。立ち上る湯気だけで目が痛くなりそうです。

まずスプーンでスープを一口運ぶと、口内に激しい衝撃が走りました。最初に襲いかかるのは、唐辛子の暴力的な辛さ。しかし、それは単なる痛みではありません。レモングラスやガランガル、クラチャーイ(指生姜)といったタイのハーブの爽やかで複雑な香りが、辛さの波間を縫って鼻を突き抜けていきます。ココナッツミルクを使っていないため、素材の味とスパイスの輪郭が鮮明に感じられるのです。これは相当に辛い。間違いなく、これまでタイで味わった中でもトップクラスの辛さです。

牛肉はじっくり柔らかく煮込まれ、ハーブの風味をまとって極上の美味しさです。しかし進むにつれて、額から汗が噴き出し、口内は次第に麻痺してきます。水を飲んでもほとんど効果がなく、むしろ口内の火事を助長するだけ。それでもスプーンを止めることはできません。辛さの奥に隠された旨味と香りの深みを確かめたくて、無我夢中で食べ続けました。

完食した頃には、もはや正常な思考は叶いませんでした。全身の毛穴が開き、Tシャツは汗でびっしょり。口の周りはヒリヒリと痛み、胃の中では烈火の祭典が繰り広げられているかのようです。しかし、その苦しみとともに、圧倒的な達成感と幸福感が全身を包みました。これこそスパイスハントの醍醐味です。ナコンパトムは聖なる仏塔だけでなく、まるで地獄の炎のような絶品グルメも秘めていたのです。この貴重な体験を提供してくれた店の女将さんに心から感謝しつつ、私は千鳥足で店を後にしました。

読者へのアドバイス:辛さに挑戦する際に

もし激辛料理に挑戦するなら、いくつかの準備が必要です。まず、空腹時にいきなり激辛を食べることは避けましょう。胃に大きな負担をかけてしまいます。また、辛さを和らげる飲み物は、水よりも牛乳やヨーグルトドリンクが効果的です。そして何より、自分の限界を理解することが大切です。無理は禁物。少しでも体調に異変を感じたら、勇気を持って食べるのをやめましょう。在タイ日本国大使館の「もしも」の時のページには、緊急時の医療機関情報などが掲載されているので、万が一に備えてブックマークしておくと安心です。

旅の終わりに、そして次なるスパイスを求めて

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ナコンパトムの旅は、天国のような景色と地獄のような味わいが入り混じる、忘れがたい体験となりました。巨大な仏塔が静かに街を見守る中で、人々は日々の生活を営み、時には燃えるような辛さの料理に舌鼓を打ちます。この街が持つ穏やかさと情熱の二面性は、まさにタイという国の魅力を凝縮しているかのように感じられました。

バンコクから日帰りで気軽に訪れられる場所に、これほどまでに深い歴史と文化、そして刺激的な食が詰まっているとは、訪れる前の想像をはるかに上回っていました。プラ・パトム・チェーディーの黄金の輝きを目に焼き付け、サナームチャン宮殿の美しい庭園を散策し、そしてゲーンパーの激辛という試練を味わう。この地で過ごした時間は、私のスパイスハントの歴史にまた一つ、忘れ難い強烈な一ページを刻み込んでくれたのです。タイ国有鉄道の公式サイトで時刻表を調べて、気ままに列車に乗り込めば、あなたもこの魅力的な古都の虜になるでしょう。

さて、灼熱のゲーンパーとの激闘を終えた私の胃は、いまも静かに、しかし確かな熱を帯びて燃えています。これは戦いの後の心地よい余韻であり、同時に次の挑戦への準備でもあります。しかし今夜は、この聖なる戦いの疲れを癒し、明日の新たなスパイスに備える必要があります。そんな私の旅に欠かせないのが、日本が誇る総合胃腸薬です。特に生薬成分が弱った胃の働きを助けてくれるタイプは、唐辛子の猛攻で疲れた私の胃を優しくいたわってくれます。食前に飲んで胃粘膜を守るのもよし、食後に飲んで消化を助けるのもまた一興。世界中のどんな過酷なスパイス戦線においても、私を支えてくれる頼もしい存在です。皆さんもタイで、美味しくも刺激的な料理を楽しむ際には、ぜひお守りとして胃腸薬を携帯することをおすすめします。

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この記事を書いたトラベルライター

激辛料理を求めて世界中へ。時には胃腸と命を賭けた戦いになりますが、それもまた旅のスパイス!刺激を求める方、ぜひ読んでみてください。

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