デジタル技術の進化は、私たちの働き方を劇的に変えました。オフィスに縛られることなく、好きな場所で好きな時間に働く「デジタルノマド」というライフスタイルが、今や多くの人にとって現実的な選択肢となっています。中でも、豊かな文化、温かい人々、そして魅力的な物価で、世界中のデジタルノマドを惹きつけてやまないのが「タイ」です。
熱帯の気候の中で、クリエイティブな仕事に没頭し、仕事が終われば美味しいタイ料理を味わい、活気あるナイトライフに身を置く。そんな夢のような生活を、タイ政府が提供する「DTV(Digital Nomads/Remote Workers Visa)」、通称「デジタルノマドビザ」が現実のものにしてくれます。
今回は、このDTVビザを取得し、タイの首都バンコクでウェブデザイナーとして活躍されているAさんにインタビュー。なぜタイを選んだのか、DTVビザ取得の道のり、そしてバンコクでのリアルな暮らしについて、たっぷりと語っていただきました。この記事を読めば、あなたもきっと、タイでの新しい働き方に挑戦したくなるはずです。
タイの活気ある街並みを少しだけ覗いてみませんか?
なぜ今、タイなのか?DTVビザが拓く新しいワークスタイル

はじめまして、Aと申します。ウェブデザイナーとして独立してから5年が経ちます。フリーランスとして活動を始めて以来、ずっと海外での生活に憧れていました。特にアジア圏には物価の安さやおいしい食事といったイメージがあり、いつかそこで暮らしてみたいと考えていたのです。
朗らかな笑みを浮かべながらそう話してくれたAさんは、30代後半。独立後は日本を拠点に働いていましたが、コロナ禍を経て働き方に対する考え方が大きく変わったと語ります。
「コロナ禍でリモートワークが一般的になり、場所に縛られずに仕事ができることを改めて実感しました。クライアントとのやりとりもほとんどオンラインになり、正直なところ日本にいる必要性をあまり感じなくなっていました。そんな折、海外で働く友人からタイのDTVビザの話を聞いて、『これだ!』と直感しました。」
コロナ禍は世界中の人々に働き方の多様性を強く意識させました。多くの企業がリモートワークを取り入れ、インターネット環境さえあればどこからでも働ける環境が整ったことで、デジタルノマドというライフスタイルが急速に注目を浴びるようになりました。その中でも、特にタイは高い人気を誇っています。
「タイを選んだ理由は複数あります。まずは物価の安さ。日本の地方都市と比較しても、食費や交通費が格段に安いです。そして人々の温かさ。笑顔が絶えず、困っているとすぐに助けてくれるホスピタリティには感動しました。そして何よりも食事がとてもおいしい!パクチーや辛い料理が好きなので、タイ料理は毎日食べても飽きません(笑)。」
Aさんの言葉からは、タイに対する深い愛着が感じられます。実際にタイはデジタルノマドにとって非常に魅力的な要素が多く揃っています。
- 手頃な生活費: 食費、交通費、住居費などが欧米諸国や日本と比べて安く、コストを抑えながら快適な生活を送れます。
- 豊かな文化と多彩な食体験: 仏教文化が息づく歴史的建築や活気あふれるストリートフード、さらに洗練されたカフェやレストランも多彩にあります。
- 親しみやすい人々: 「微笑みの国」として知られる通り、タイの人々は親切でフレンドリーです。
- 充実したインフラ: 特にバンコクなどの大都市では、高速インターネットやコワーキングスペース、便利な交通網が整っており、仕事に不便を感じることはほとんどありません。
- アクセスの便利さ: アジアの中心に位置し、周辺国への移動が容易なので、週末の気分転換にも最適です。
こうした背景から、タイは長年にわたり世界中のバックパッカーや長期旅行者に愛されてきました。さらに最近ではDTVビザの登場により、タイは単に旅をする場所としてだけでなく、「生活する場所」「働く場」としての価値が一層高まっています。
DTVビザ取得への道のり:挑戦と乗り越えた壁

タイでの新生活を決意したAさんにとって、次なるチャレンジはDTVビザの取得でした。ただし、その道のりは決して平坦ではなかったといいます。
DTVビザとは?特徴と対象者について
「DTVビザは正式名称を『Digital Nomads/Remote Workers Visa』と言い、2024年6月25日からタイ政府が新たに設けたビザ制度です。もともとは『LTR(Long-Term Resident)ビザ』の一カテゴリーでしたが、より多様なデジタルノマドやリモートワーカーを対象に、独立したビザとして運用されるようになりました。」
Aさんの説明のとおり、DTVビザはタイをデジタルノマドの拠点とする狙いがはっきり表れた制度です。主な対象者は、タイ国外の企業から給与を得るリモートワーカー、フリーランサー、さらに海外の投資家やスタートアップ起業家などが含まれます。最長で5年間の滞在が可能で、年に一度の報告義務はあるものの、安定した収入と生活基盤を備えていれば更新も認められます。
「このビザの魅力は、何といっても長期間の滞在が許されることです。従来は観光ビザの短期延長や、就労ビザを得るためにタイ現地法人を設立する必要がありましたが、DTVビザなら自分のスキルを活かしたまま合法的に長期滞在が叶います。これは非常に革新的だと思います。」
DTVビザ取得に必要な主な条件は以下の通りです。
- 年齢: 20歳以上。
- 学歴: 学士号以上の学位、または特定分野での職業訓練証明。
- 職務経験: 関連分野で5年以上の実務経験。
- 収入: 過去2年間の年収が一人あたり80,000米ドル(約1,200万円)以上。
- 年収が40,000米ドル(約600万円)以上80,000米ドル未満の場合は、タイでの修士号以上の学位、または5年以上の特定分野での職務経験が求められます。
- 健康保険: タイ滞在中の医療費をカバーする保険(補償額はビザ要件に準拠)。
- 犯罪経歴: 無犯罪証明が必要。
- 雇用状態: タイ国外の企業に雇用されているか、フリーランスとして海外クライアントから収入を得ていること。
「私はウェブデザイナーなので職務経験の要件はクリアできましたが、収入要件が一番の壁でした。ただフリーランスとしての活動実績があったため、何とか達成できました。健康保険については、一般的な海外旅行保険だと条件を満たさない場合が多く、ビザ規定に合うものを見つけるのに苦労しました。」
Aさんは特に収入証明と保険の準備に時間をかけたと振り返ります。この点からも、DTVビザが単なる観光目的ではなく、ある程度の経済力と生活の安定を持った人材を誘致する意図がうかがえます。
詳細はタイ投資委員会(BOI)の公式サイトでも確認可能です。 [タイ投資委員会(BOI) Digital Nomads/Remote Workers Visa](https://www.boi.go.th/index.php?page=digital-nomad-visa-program&lang=en)
申請準備:必要書類と注意点
「DTVビザの申請準備は、正直かなりの労力が必要でした。必要書類の種類が多いうえに、一部はタイ語への翻訳と公証が求められ、何度も役所や大使館に足を運ぶことになりました。」
一般的に以下の書類が要求されます。
- パスポート: 有効期限に十分な余裕があるもの。
- 履歴書: 英語で作成し、学歴や職務経歴を詳述。
- 学歴証明書: 最終学歴の卒業証明や学位証書。
- 職務経歴書: 過去5年分の職務内容、勤務期間、具体的業務を記載。
- 収入証明書: 過去2年間の所得証明、銀行残高証明など。フリーランスは契約書や請求書、入金履歴も有効。
- 健康保険証明: タイでの医療費をカバーする保険の証明。補償内容と対象範囲に留意。
- 犯罪経歴証明書: 日本の警察発行の無犯罪証明。
- 写真: 指定サイズのパスポート写真。
- その他: 居住証明書、推薦状、ポートフォリオ(ウェブデザイナーなどの場合)など。
「とくに苦労したのは、収入証明と犯罪経歴証明です。私はフリーランスなので確定申告だけでなく、契約書や銀行入出金記録など、多様な書類をそろえました。犯罪経歴証明書は発行されるまで時間がかかるため、早めの手配が必要です。」
さらに、「タイ語翻訳と公証」も重要なポイントです。
「多くの書類は英語で問題ありませんが、日本の公的文書はタイの公的機関に提出する際、公証が必須になることも少なくありません。最初は自分で翻訳して提出しようとしましたが、受理されず、結局は専門の翻訳会社と公証役場を利用する羽目に。これが時間と費用の大部分を占めることになりました。」
Aさんからのアドバイス:
- 必要書類はリスト化して、何度も漏れのチェックをする。
- タイ語翻訳が必要な書類は専門の翻訳会社に依頼し、公証も必ず早めに手配する。
- スケジュールに余裕を持ち、とくに犯罪経歴証明の発行には数週間かかることを見込む。
- タイ大使館や領事館の公式サイトを常にチェックし、最新情報の収集を欠かさない。
申請手続き:オンライン申請から面接まで
書類の準備が済めば、いよいよビザの申請段階になります。DTVビザは主にタイ大使館や領事館を通じて申請します。
「私はまず、タイ投資委員会(BOI)のオンラインポータルで事前登録を行い、申請資格の審査を受けました。審査通過後に必要書類を提出し、最終的に居住国のタイ大使館で申請手続きをしました。」
申請の流れは以下のとおりです(国や時期により多少の違いあり)。
- オンライン事前申請: BOIのサイトで申請資格の審査を受け、氏名、国籍、職種、収入などの基本情報を入力し、添付書類を一部提出します。
- 承認レターの取得: 審査合格後、BOIから資格証明書(Qualification Endorsement Letter)が発行されます。
- 正式申請: 承認レターと準備した書類一式を持参し、居住地のタイ大使館または領事館でビザ申請を行います。
- 面接(場合により): 申請者の状況によっては面接があり、タイでの滞在目的や仕事内容、経済状況などについて質問されます。
- ビザ発給: 問題がなければDTVビザが発給されます。
「面接は緊張しましたが、私の場合は仕事内容や生活計画についてシンプルな質問が中心でした。英語でのやり取りでしたが、普段から英語のクライアントとのやりとりに慣れていたので、比較的スムーズに答えられました。タイ語が話せなかったので少しだけ不安はありましたが。」
申請にかかる期間や費用についても聞きました。
「私の場合、オンライン審査からビザ発給まで約2ヶ月かかりました。書類準備も含めるともっと長くなりました。費用はビザ申請料自体はそれほど高くないですが、翻訳・公証費用や健康保険料、専門家への依頼費用も含めると数十万円単位になることがあります。新生活への初期投資と考えていました。」
Aさんの費用感(参考):
- ビザ申請料:約10,000バーツ(約4万円)
- 翻訳・公証費用:数万円から十数万円
- 健康保険料:年間数万円〜数十万円(補償内容により変動)
- その他交通費・郵送費など
これらはあくまで目安で、各自の状況により大きく異なる点に留意が必要です。
Aさんが語るDTVビザ取得の実体験
「正直、予想以上に大変だと感じました(笑)。特にフリーランスなので会社がビザ手続きを代行してくれず、全部自分で行わなければならなかったのが一番のハードルでした。」
数々の壁に直面したそうです。
「何よりタイ語の壁が大きかったです。大使館のウェブサイトも完璧に英語対応されているわけではなく、一部はタイ語しかありません。現地の情報収集もタイ語ができなければかなり制限されます。Google翻訳を駆使しながらも分からないところは友人やネット上のフォーラムを頼りました。」
書類準備でも日本とタイの行政手続きの違いに戸惑ったといいます。
「日本の公的書類は形式が厳格で、少しのミスで再提出になりますよね。タイも厳しいのですが、その“厳格さ”のニュアンスが微妙に違うように感じました。たとえば収入証明一つでも、銀行残高証明だけで良いのか、過去の契約書などの追加書類も必要か、状況によって変わってくる印象でした。最終的にはタイのビザ専門コンサルタントに相談し、不足書類や補足情報を教えてもらい助かりました。」
Aさんの困難だった点:
- 公式情報の不足や言語的な障壁により、情報収集に時間と労力がかかる。
- タイ語翻訳や公証が不十分なため、何度も書類をやり直すことがあった。
- 大使館やBOIからの連絡が遅れて不安になることがあった。
- フリーランスとして安定収入をタイ政府が納得する形で証明するのに苦労した。
反省点および改善案:
- 初めからビザ申請に詳しい弁護士やコンサルタントを利用すれば、手続きがもっとスムーズに進んだ可能性が高い。費用はかかるが時間や労力の節約になる。
- 個人ブログやフォーラムも参考にするが、最終的には大使館やBOIの公式情報を確認し、不明点は直接問い合わせるべき。
- 簡単なタイ語表現(挨拶や数字など)を事前に学んでおくと、現地での手続きや情報収集がしやすくなる。
「何度も心が折れそうになりましたが、タイで新生活を送る強い意志があったからこそ乗り越えられました。今回の経験から、ビザ申請は単なる手続きではなく、自分の覚悟を試される過程だと実感しました。」
Aさんの言葉からは、DTVビザ取得がいかに大きな挑戦だったかが伝わってきます。しかし、その苦労を乗り越えたからこそ、タイでの新たな生活がより輝きを増しているようです。
バンコクでのデジタルノマドライフ:Aさんの1日

苦労を重ねてDTVビザを取得し、念願のバンコクでのデジタルノマド生活をスタートさせたAさん。そのリアルな毎日はどのようなものなのでしょうか?
朝:目覚めと一日のスタート
「バンコクの朝は、鳥のさえずりと街のざわめきで目を覚まします。日本にいた頃は満員電車に揺られていましたが、今は自分のリズムで朝を迎えられるのが何より嬉しいですね。」
Aさんの住まいは、バンコク中心部スクンビット地区にあるコンドミニアムです。BTS(高架鉄道)の駅から徒歩圏内で、周辺にはスーパーマーケットやレストラン、カフェが豊富に揃う人気のエリアです。
「コンドミニアムはセキュリティも万全で、多くはプールやジムも備えているため、とても快適に過ごせています。家賃は日本と比べてやや安いくらいですが、広さや設備を考えると満足度はかなり高いです。」
朝食はその日の気分によって様々だといいます。
「平日は近くの屋台でテイクアウトした『ジョーク』(タイの粥)や『パトンコー』(揚げパン)をよく食べます。コーヒーは、最近増えているおしゃれなカフェでテイクアウトすることもあります。週末は少し贅沢をしてホテルのビュッフェに行ったり、自分で簡単な料理を作ったりもしています。」
仕事前のルーティンも確立しているようです。
「朝食後は軽くストレッチをしたり、ベランダでバンコクの景色を眺めながら瞑想したり。この時間が、仕事に集中するための大切な準備の時間ですね。その後シャワーを浴びて、身支度を整え、いよいよ仕事モードに切り替えます。」
このゆったりとした朝の過ごし方は、かつての忙しい会社員時代には想像もできなかった夢のような時間だとAさんは話します。
昼:仕事とランチを楽しむ時間
Aさんの仕事場は日によって変わることもあります。
「基本的には自宅のワークスペースで作業していますが、気分転換にコワーキングスペースを利用することもあります。バンコクには多くのコワーキングスペースがあって、高速Wi-Fiも完備されているので、非常に快適に仕事ができます。クリエイティブな仕事をしている他のデジタルノマドとの出会いもあり、良い刺激になっています。」
バンコクには、[True Digital Park](https://www.truedigitalpark.com/)のような大型コワーキングスペースから、こぢんまりとしたカフェ併設のスペースまで、さまざまな選択肢があります。
ランチタイムは、Aさんにとってバンコク生活の大きな楽しみのひとつです。
「ランチは基本的に外食が多いですね。タイにはいたるところに屋台があり、本当に安くて美味しいんです。『パッタイ』(タイ風焼きそば)や『ガパオライス』、『グリーンカレー』は常に定番のメニューです。日本では少し躊躇してしまうような辛い料理も、タイでは気軽に挑戦できます。」
時にはクライアントとの打ち合わせを兼ねて、少し格式のあるレストランで食事をすることもあります。
「ウェブデザイナーとしてのクライアントは、日本国内外の企業が多いです。基本はオンラインでの打ち合わせですが、時折日本からの出張で訪れるクライアントと直接会って食事をすることもあります。バンコクは多国籍な都市なので、イタリアンやフレンチ、日本食など美味しいレストランも豊富に揃っています。」
仕事の進め方にはフリーランスならではの柔軟性が見られます。
「日本時間の午前中は主に日本のクライアントとの連絡やミーティングにあてています。タイと日本の時差は2時間なので、日本の午前10時がタイの午前8時です。早めに仕事を始めれば、日本のクライアントともスムーズに連携が取れますね。午後はデザイン作業やコーディング、海外クライアントとのやり取りを自分のペースで進めています。」
夜:仕事の後のリフレッシュと交流
仕事を終えるのは大抵夕方から夜にかけて。その後は自分だけの時間を楽しみます。
「仕事の後は、コンドミニアムのジムで軽く汗を流すことが多いです。日本にいた頃は運動不足になりがちでしたが、今では運動が日常の一部になっています。さらにタイマッサージに行くのも最高のリフレッシュになります。街中に多くあり、リーズナブルなのに技術が高いのが嬉しいですね。」
夕食は友人との交流や新たな発見の場にもなっています。
「一人で屋台をはしごしていろいろなタイ料理を楽しんだり、近所のマーケットで新鮮な食材を買って自炊することもあります。でも、何より楽しいのはバンコクにいる日本人や現地タイ人の友人たちと食事に行くことですね。彼らから新しい店の情報を教えてもらったり、タイの文化について学んだりするのが大好きです。」
バンコクではデジタルノマドや外国人が集うイベントやミートアップも頻繁に開催されています。
「FacebookグループやMeetupアプリで様々なイベント情報を探せます。ウェブデザイナー仲間との交流会や語学学習グループ、趣味のサークルなど、参加できるイベントがたくさんあります。そこで出会った人と一緒に食事に行ったり、週末の旅行計画を立てたりもします。異文化交流は、私のバンコク生活に欠かせない大切な要素です。」
週末:タイの醍醐味を堪能する
週末は仕事を離れて、タイの魅力を思い切り楽しむ時間です。
「バンコク市内には観光スポットがたくさんあります。お寺巡りも好きですし、チャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットのような大規模な市場で掘り出し物を探すのも楽しいですね。ショッピングモールも多く、日本のように買い物も満喫できます。」
時にはバンコクを離れて、国内外へ旅行へ出かけることも。
「タイ国内の旅行先は豊富です。南部にはプーケットやサムイ島といった美しいビーチリゾートがあり、北部のチェンマイでは歴史や文化に触れることができます。さらに近隣のラオスやカンボジア、ベトナムにも気軽に旅行できます。DTVビザがあるおかげで、タイへの再入国もスムーズなので、長期の旅もしやすいですね。」
Aさんはタイでの生活の中で、新たな趣味や学びにも挑戦しています。
「最近はタイ語の語学学校に通い始めました。簡単な日常会話ができるようになるだけで、現地生活が格段に楽しくなります。それにタイ料理教室にも通っていて、料理の作り方を学んでいます。タイの文化に深く触れることが、クリエイティブな仕事にも良い影響を与えていると感じています。」
Aさんのバンコクでのデジタルノマドライフは、仕事とプライベートがバランスよく調和した非常に充実した毎日です。自由な働き方とタイ独自の魅力ある文化が融合し、Aさんならではの唯一無二のライフスタイルが築かれています。
タイで働く・暮らす上で感じたこと:メリットと課題

タイでの暮らしは、Aさんにとって多くの喜びや新たな発見をもたらしました。しかし同時に、いくつかの課題にも直面したと語っています。
タイ生活の「ここが良い!」
Aさんが特に気に入っているタイでの生活の魅力は数多くあります。
「まずは、物価の安さが大きな助けになっています。特に食費は、屋台利用なら1食100バーツ(約400円)以下で美味しいものが楽しめます。交通費も、BTSやMRT(地下鉄)が整備されていて、便利でありながら安価です。日本にいた時と比べて、生活の質を落とすことなく、むしろ向上させつつ、費用を抑えられている実感があります。」
次に挙げられるのは、人々の温かさです。
「『微笑みの国』と称されるだけあって、皆さんの笑顔がとても素敵で親切です。言葉が通じなくても、身振り手振りで助けてくれることが多く、その優しさに触れるたびに心が温まります。」
さらに、食文化の豊かさも欠かせません。
「タイ料理は辛さだけでなく、酸味や甘み、旨味が巧みに組み合わさっていて、奥深い味わいがあります。同じメニューでも店ごとに異なる味を楽しめるため、食べ歩きがとても楽しいです。フルーツも種類が豊富で安くて美味しいため、毎日のように食べています。」
多様なライフスタイルを受け入れる社会の柔軟性もAさんを惹きつけています。
「バンコクは多種多様な人々が共生し、さまざまな価値観が共存しています。デジタルノマドとして働く私も、まったく違和感なく溶け込める雰囲気があります。誰もが自分の好きなスタイルで自由に生きている、その自由なムードがとても気に入っています。」
また、気候や自然環境もAさんの心を満たしています。
「年間を通して温暖で、日本の冬の厳しい寒さが苦手な私には最適な環境です。コンドミニアムのプールで泳いだり、公園を散歩したりと、いつでも気軽にリフレッシュできます。都会の喧騒のなかにも緑豊かな公園や歴史ある寺院が点在しているのも魅力ですね。」
交通インフラの充実も、バンコクでの暮らしを快適にしています。
「BTSやMRTはもちろん、配車アプリのGrabも非常に使い勝手が良いです。どこへ行くにも移動には困りません。渋滞は確かに激しいですが、回避できる交通手段が充実しているのはありがたいです。」
これらの利点は、タイが世界中のデジタルノマドから支持される理由を如実に示しています。快適な生活環境と多彩な異文化体験は、創造的な仕事に刺激を与えてくれることは間違いありません。
[タイ政府観光庁公式サイト](https://www.tourismthailand.org/home)では、タイの文化や観光に関する豊富な情報が得られ、タイ生活をイメージするのに役立ちます。
ぶつかった壁とその解決策
しかし、いかに魅力的な環境でも、生活するうえで全く問題がないわけではありません。Aさんもタイでの暮らしの中でいくつかの壁に遭遇しました。
「最も大きな壁はやはり言葉の壁でした。バンコクの中心部では英語が通じる人も多いですが、路地に入るとタイ語しか通じない場面も頻繁にあります。役所の手続きや病院での診療など、専門的なやりとりになるとタイ語ができないと非常に苦労します。もっと早くから真剣にタイ語学習に取り組めばよかったと後悔しています。」
Aさんの対策:
- タイ語の語学学校に通い、基礎からしっかり学ぶ。
- 日常会話で使えるフレーズを積極的に実践する。
- 翻訳アプリを活用する。
- タイ人の友人と交流し、実践的に言語を習得する機会を増やす。
次に、医療アクセスに関しても不安を感じました。
「タイには質の高い国際病院もありますが、医療費は比較的高めです。DTVビザ取得時には健康保険加入が義務付けられているものの、その補償内容が十分かどうか、事前にしっかり確認する必要があると実感しました。」
Aさんの対策:
- DTVビザの基準を満たすだけでなく、補償額も充分で幅広い医療機関をカバーする保険へ加入する。
- 信頼できる病院やクリニックをあらかじめ調査しておく。
- 常備薬は多めに用意しておく。
また、文化や生活習慣の違いに戸惑うこともありました。
「タイの時間感覚は日本と異なり、『すぐにやる』と言っても必ずしも即座に実行されるわけではありません。最初はイライラすることもありましたが、今では『マイペンライ(気にしないで大丈夫)』の心構えで受け入れています(笑)。また仏教国であるため、お寺でのマナーや国王への敬意など、最低限の文化的知識は持っておくべきだと感じました。」
Aさんの対策:
- タイの文化や習慣について積極的に学び、敬意を持って接する。
- 「マイペンライ」の精神を理解し、寛容な姿勢を身につける。
- 現地の友人に相談してアドバイスをもらう。
住まい探しや契約も、海外生活初心者にとっては大きな課題となりました。
「コンドミニアムの契約は、日本での賃貸契約とは勝手が異なります。不動産エージェントを介して契約しましたが、電気代や水道代の支払い方法、インターネット契約など細かい点で確認すべきことが多く、英語の契約書に使われる専門用語も理解に苦労しました。」
Aさんの対策:
- 信頼できる不動産エージェントを通じて物件探しをし、契約内容を十分に確認する。
- 契約書は細部までよく読み、不明点はエージェントに質問してクリアにする。
- 初期費用(保証金など)が高額になる場合もあるため、資金計画をしっかり立てる。
通信環境については、バンコクでは高速インターネットが普及していますが、地方へ行くと不安定になることがあります。
「バンコク市内のコワーキングスペースやカフェ、コンドミニアムでは高速Wi-Fiが問題なく使えます。ただ、旅行で地方を訪れた際に想像以上にネット環境が悪いと感じることもありました。ウェブデザイナーとして安定した接続が必要なため、サブのSIMカードを契約したり、ポケットWi-Fiを携帯したりして対策しています。」
異文化間でのメンタルヘルスの問題も見逃せません。
「新しい環境での刺激は多い反面、ストレスを感じやすくなることもあります。言葉の壁や文化の違いから孤立感を覚え、日本が恋しくなることも。そんな時には無理せず信頼できる友人に話したり、日本の家族と連絡を取り合うようにしています。」
Aさんの対策:
- 積極的にコミュニティへ参加し、友人をつくる。
- 趣味を見つけてリフレッシュの時間をつくる。
- オンラインで定期的に日本の友人や家族と連絡を取る。
- 必要に応じて専門家のカウンセリングも検討する。
[在タイ日本国大使館のウェブサイト](https://www.th.emb-japan.go.jp/itprja/thliving.html)には、タイでの生活情報や緊急連絡先が掲載されており、海外での生活の強い味方となっています。
Aさんの経験からは、タイでのデジタルノマド生活は素晴らしい一方、事前の準備と予期せぬトラブルに柔軟に対応する姿勢が不可欠であることがよくわかります。
Aさんが描く未来:DTVビザとその先のキャリアプラン

DTVビザを取得し、バンコクでの暮らしを始めてから数ヶ月が経ちました。Aさんは、この新たな働き方が自身のキャリアや人生に大きな影響をもたらしていると実感しています。
「DTVビザを手に入れたことで、長期間タイに滞在できる安心感が生まれました。それによって、短期的な視点ではなく、もっと長い目で自分のキャリアや人生を見つめ直すことができるようになったんです。」
Aさんは、DTVビザが単なる滞在許可以上の意味を持つと語ります。
「このビザのおかげで、タイで合法的に暮らしながら、自分のスキルを活かして自由に働ける大きな自由を手に入れました。日本にいたころは、オフィスへの通勤や人間関係に少し疲れていた部分もありましたが、今では自分らしい働き方を見つけることができています。」
タイでの生活は、ウェブデザイナーとしてのAさんの技術向上にも寄与しているようです。
「タイはウェブデザインやIT分野のスタートアップが盛んで、新しいトレンドが絶えず生まれています。コワーキングスペースで出会う方々から刺激を受けたり、バンコクで開催されるデザイン関連のイベントに参加したりして、常に最新の情報を取り入れながらスキルアップしています。さらに、多国籍のクライアントと仕事をする機会が増えたことで英語でのコミュニケーション能力が磨かれ、異文化の視点を踏まえたデザイン提案も可能になりました。」
将来的には、タイを拠点にしたビジネス展開も見据えているとのことです。
「現段階ではまだ構想中ですが、将来的にはタイに根差し、現地企業向けにウェブデザインやデジタルマーケティングのサービスを提供したり、タイ人デザイナーと協働してプロジェクトを進めたりしたいと考えています。タイの豊かな文化や観光資源を活かしたウェブサイト制作など、新たな分野にも挑戦してみたいですね。」
デジタルノマドとしての働き方は、Aさんの人生観にも変化を促しました。
「以前は『仕事のために生きる』という感覚が強かったのですが、今は『人生を豊かにするために働く』という考え方に変わりました。仕事の合間にタイの美しい風景を楽しんだり、美味しい料理に舌鼓を打ったり、新しい文化に触れたり。そういった体験が、結果的に創造的な仕事に良いインスピレーションをもたらしてくれています。」
DTVビザ取得を検討している人たちへ、Aさんは穏やかな笑顔でメッセージを送りました。
「もしタイでの生活やデジタルノマドの働き方に少しでも興味があるなら、ぜひ勇気を出して一歩踏み出してみてほしいです。確かにビザの取得は簡単ではありませんし、新しい環境にはさまざまな困難も待ち受けています。でも、それらを乗り越えた先には、想像以上の充実した経験と新しい自分との出会いが待っています。」
「私自身、DTVビザを取得するまでは不安でいっぱいでしたが、今ではこの選択をして本当に良かったと感じています。タイは、あなたの可能性を広げ、新しい働き方や生き方を教えてくれる場所です。ぜひ勇気をもってタイでの冒険に踏み出してください。きっと素晴らしい未来が待っているはずです。」
Aさんの言葉からは、DTVビザが単なる入国許可証を超え、自身のキャリアと人生を大きく変えるきっかけとなったことがひしひしと伝わってきます。タイの多彩な文化の中で自分らしい働き方を見つけ、クリエイティブな仕事に没頭する姿は、多くのデジタルノマド志望者に勇気と希望を与えることでしょう。









