悠久の歴史と未来都市の顔を併せ持つ、中国の首都・北京。紫禁城の壮麗な瓦、胡同(フートン)に響く人々のざわめき、天にそびえる近代的なビル群。そのすべてが旅人を魅了してやまないこの街は、訪れる季節によって全く異なる表情を見せてくれます。ある時はうららかな春の陽気に包まれ、またある時は肌を刺すような厳しい寒さに凍える。この劇的な変化こそが、北京の気候の最大の特徴であり、旅の印象を大きく左右する鍵となります。
「万里の長城を歩くならいつがいい?」「故宮の雪景色を見てみたいけど、寒さはどれくらい?」「夏の北京は蒸し暑いって本当?」そんな疑問を抱えるあなたのために、この記事では北京の年間の天気と気候を徹底的に解剖します。春・夏・秋・冬、それぞれの季節の気温や天候の特徴から、最適な服装、おすすめの過ごし方、そして旅行者が知っておくべき注意点まで、プロの視点で詳しく解説。あなたの北京旅行が最高の思い出になるよう、完璧な準備をサポートします。さあ、一緒に北京の四季を巡る旅に出かけましょう。
この準備を基に、より深く北京の旅の魅力を探求するのもおすすめです。
北京の気候の大きな特徴とは

北京への旅を計画する際に、まず押さえておきたいのは、この都市が「大陸性モンスーン気候」に属しているという点です。海から遠く離れた内陸に位置するため、夏は非常に暑く、冬は厳しく寒いという大きな寒暖差が特徴です。また、日本の多くの都市とは異なり、一年を通じて湿度が高いわけではなく、季節ごとに乾燥したり蒸し暑くなったりと、空気の状態がダイナミックに変わります。
北京の四季は日本のそれよりも輪郭がはっきりしています。
- 春(3月~5月): 短期間ですが過ごしやすい季節。ただし、乾燥や黄砂には注意が必要です。
- 夏(6月~8月): 気温と湿度が高く、日本の真夏を思わせる蒸し暑さ。夕立も多く発生します。
- 秋(9月~10月): 「天高くして気さわやかなり(天高气爽)」と称される、年間で最も快適なシーズンです。
- 冬(11月~2月): シベリアからの寒気の影響で、厳しい寒さと乾燥が続き、氷点下になるのが当たり前となります。
このように、訪れる時期によって服装や持ち物、さらには観光プランも大きく変わるのが北京旅行の魅力であり、同時にしっかりと準備が求められるポイントでもあります。続く章では、それぞれの季節ごとの魅力を、具体的なデータや旅のアドバイスとともに詳しくご紹介していきます。
春(3月〜5月)の北京:芽吹きの季節と注意点
長く厳しい冬が終わりを迎え、街中が徐々に色づき始める春の季節。柳の新緑が芽吹き、桃や杏の花が咲き誇る北京の春は、新たな生命の息吹に満ちあふれています。気温がどんどん上がり、街歩きが楽しくなるこの季節ですが、特有の注意点も押さえておきたいところです。
春の気候と気温の特徴
3月に入ると、日中の最高気温が10℃を超える日が増えてきますが、朝晩はまだ氷点下近くまで冷え込むことも珍しくありません。まさに「三寒四温」を体現するような気候で、一日を通して気温差が15℃以上になることも多く、服装選びには工夫が必要です。
4月になると平均気温は15℃前後に上昇し、日中は20℃を上回る日が出てきて、とても過ごしやすくなります。桜やライラックが見頃を迎え、北京がもっとも華やかな季節といえるでしょう。
5月は初夏のような暖かさとなり、平均気温は20℃を越え、日によっては30℃近くまで上がることもあります。Tシャツ一枚で過ごせる日が増え、本格的な観光シーズンの到来を感じさせます。
- 3月の平均気温: 約5℃(最高12℃ / 最低-1℃)
- 4月の平均気温: 約14℃(最高21℃ / 最低7℃)
- 5月の平均気温: 約20℃(最高27℃ / 最低14℃)
春の服装と持ち物のポイント
北京の春旅行で特に大切なのは「重ね着(レイヤリング)」です。朝晩や日陰と日なたで体感温度が大きく異なるため、脱ぎ着しやすい服装が望まれます。
持っていきたい服装・アイテム
- 基本の服装: 長袖Tシャツやシャツの上にセーターやフリースを重ね、その上からスプリングコートや薄手のダウンジャケット、ウインドブレーカーなどを羽織るのが理想的です。特に3月はまだ寒さが残るため、防寒性のあるアウターは必須です。
- 黄砂対策グッズ: 北京の春を特徴づけるのが「黄砂」です。日本で経験する黄砂とは比べものにならないほど濃く、空が黄色く霞むこともあります。健康を守るため、性能の良いマスク(N95規格など推奨)は必ず持参してください。さらに、砂埃から目を守るためのサングラスや髪や首元を覆うスカーフやストールも重宝します。
- 保湿用品: 春は乾燥が特に強い時期のひとつです。リップクリームやハンドクリーム、保湿力の高いフェイスクリームは必需品。ホテルの室内も乾燥していることが多いため、携帯用の加湿器があると快適さが格段に向上します。
- 歩きやすい靴: 北京の観光地は広大なエリアが多いです。故宮や天壇公園などを一日中歩くことも多いため、履き慣れたスニーカーやウォーキングシューズをおすすめします。
春のおすすめスポットとアクティビティ
- お花見: 玉淵潭公園の桜、頤和園(いわえん)の桃の花、景山公園の牡丹など、市内各地の公園が色とりどりの花々で彩られます。地元の人々といっしょにゆったりとお花見を楽しむのはいかがでしょうか。
- 万里の長城ハイキング: 夏は暑すぎて、冬は寒すぎる万里の長城も、春はハイキングに最適な季節。新緑に覆われた長城の壮大な景観は、一生の思い出になるでしょう。観光客が比較的少ない「慕田峪長城」などは、ゆったりと自然を満喫するのにぴったりです。
- 胡同散策: 北京の昔ながらの雰囲気を残す路地裏「胡同」を散策するのも春にぴったり。人力車の「三輪車」に乗って、柳の並木道をのんびり巡れば趣深い時間を過ごせます。
春の注意点:黄砂(沙尘暴)について
春の北京で避けて通れないのが、ゴビ砂漠などから飛来する黄砂(中国語では「沙尘暴」)です。特に3月から4月にかけて発生しやすく、ひどい場合は視界が数百メートルにまで悪化し、航空機の遅延や欠航の原因にもなります。
黄砂対策の具体策
- 毎日の天気予報チェック: 中国の天気予報アプリやウェブサイトでは黄砂の予報もあるため、旅行中は毎朝確認し、黄砂が激しい日は屋外での長時間の行動を控えるなど、計画の変更を柔軟に行いましょう。
- 外出時の万全な防備: 先述の通り、マスク、サングラス、帽子やスカーフは必携です。コンタクトレンズを使っている場合、砂が目に入ると痛みが強いため、旅行中は眼鏡に変えるのが賢明です。
- 帰宅後のケア: 外出から戻ったら、まず手洗いとうがいを徹底してください。シャワーで髪や体についた砂を洗い流すことも重要です。鼻うがいも効果的です。
黄砂はやや厄介な存在ですが、しっかり対策を行えば旅行を十分楽しめます。澄んだ青空が広がる日も多いので、あまり心配しすぎずに春の北京を満喫してください。
夏(6月〜8月)の北京:情熱の季節と過ごし方

緑がいっそう濃くなり、街全体が活気に満ちあふれる北京の夏。太陽の光は眩しく、気温もぐんぐん上昇しますが、この季節ならではの楽しみ方も数多くあります。照りつける日差しの下で、情熱的な北京の夏を思い切り堪能するためのポイントをご紹介します。
夏の気候と気温
6月に入ると北京は本格的な夏の到来を迎えます。平均気温はおよそ25℃前後ですが、日中は30℃を超える日が多く、時には35℃以上に達することもあります。7月と8月は年間で最も暑い時期で、平均気温は26℃から27℃程度。最高気温が40℃近くになることも珍しくありません。
北京の夏の特徴は、高温に加えて「湿度の高さ」にあります。モンスーンの影響で南方から湿った空気が流れ込むため、日本の都市部に似た蒸し暑さを感じます。また、大気の状態が不安定になりやすく、午後には急に激しい雷雨、いわゆる「ゲリラ豪雨」に見舞われることも少なくありません。
- 6月の平均気温: 約24℃(最高30℃ / 最低18℃)
- 7月の平均気温: 約26℃(最高31℃ / 最低22℃)
- 8月の平均気温: 約25℃(最高30℃ / 最低21℃)
夏の服装と持ち物ガイド
北京の夏は、日本の真夏とほとんど同じ服装で問題ありません。ただし、強い日差しや急な雨、そして屋内外の温度差に対応できる準備が必要です。
持っていきたい服装とアイテム
- 基本の服装: Tシャツやポロシャツ、ワンピースなどの通気性と速乾性に優れた素材(綿、リネン、機能性素材)が快適です。ボトムスはショートパンツや風通しの良いパンツがおすすめです。
- 日差し対策: 強烈な日差しを防ぐため、帽子やサングラス、日焼け止めクリームは必ず持参しましょう。特に万里の長城など日陰の少ないスポットを訪れる際はしっかりと対策を。男女問わず日傘の利用者も多く、直射日光を避けるのに非常に効果的です。
- 雨具: 北京の夏は急な豪雨が多いため、折りたたみ傘は常に携帯しましょう。撥水性のあるウインドブレーカーも雨よけだけでなく、冷房対策としても重宝します。
- 室内の冷房対策: 屋外は非常に暑いですが、デパートや地下鉄、飲食店の中は冷房が強めに効いています。寒暖差で体調を崩さないよう、カーディガンやストールなど軽く羽織れるものを用意しておくと安心です。
- その他の便利アイテム: 汗を拭くタオルやハンカチ、携帯用扇風機、虫よけスプレーもあると便利です。
夏のおすすめスポットとアクティビティ
- 頤和園で涼をとる: 西太后が愛した避暑地、世界遺産の頤和園。広大な昆明湖からの風は涼しく、龍の形を模した船に乗り湖上を巡るのも楽しめます。長距離の回廊「長廊」を歩けば、日陰で涼みながら庭園の美しさを堪能できます。
- 夜の后海(ホウハイ)散策: 日中の暑さが和らぐ夕暮れ以降が夏の北京の魅力が花開く時間帯です。什刹海(しーちゃーはい)エリアの后海周辺は、湖のそばにバーやレストランが軒を連ねる人気のナイトスポット。ライトアップされた湖畔を散歩したり、オープンテラスのバーで一杯楽しんだりして夏の夜を満喫できます。
- 美術館や博物館巡り: 厳しい暑さの日は屋内で過ごすのも賢い選択。中国国家博物館や首都博物館、798芸術区のギャラリーなど、見応えのある文化施設が多数あります。悠久の歴史や現代アートに触れる絶好の機会です。
夏の注意点:熱中症とゲリラ豪雨への備え
北京の夏に旅行するとき、特に注意したいのが熱中症です。故宮や万里の長城など、日陰が少なく広大なエリアを観光する際は特に気をつけましょう。
熱中症や豪雨に備える具体的なポイント
- こまめな水分補給: 喉が渇く前に意識して水分を摂りましょう。ミネラルウォーターはコンビニやキオスクで簡単に購入可能。スポーツドリンクで塩分も補うとさらに効果的です。
- 行動時間帯の工夫: 日差しが強い正午から午後3時頃までは屋外での長時間観光を避け、博物館やショッピングモールなど屋内施設を訪れる計画にするのがおすすめです。朝早くや夕方からの活動も快適です。
- ゲリラ豪雨への準備: 雨マークがなくても折りたたみ傘を常に持ち歩きましょう。激しい雨が降ったら無理をせずカフェや建物の中で雨が弱まるのを待つのが安全です。短時間で道路が冠水する場合もあるため足元にも注意が必要です。
- 交通機関への影響: 激しい雷雨はフライトの遅延や、一部地下鉄の運行停止など交通機関に影響を与えることがあります。移動日には余裕のあるスケジュールを組むことが大切です。フライトが欠航・遅延した際は、速やかに航空会社のカウンターで代替便の手配や案内を受けましょう。万一に備えて、在中国日本国大使館の連絡先を控え、海外旅行保険に加入しておくことも必須です。
秋(9月〜10月)の北京:黄金のベストシーズン
夏の蒸し暑さが嘘のように消え去り、澄み渡る青空が広がる秋。北京は一年の中でも最も輝きを増す季節を迎えます。空気は乾燥して爽快で、気温も穏やか。まさに観光に最適な時期です。中国ではこの時期を「天高气爽(空は高く澄み、空気は爽やか)」と表現しますが、その通りの心地よさを感じられます。
秋の天候と気温
9月に入ると、日中の最高気温はおおよそ25℃前後となり過ごしやすくなりますが、朝晩は15℃を下回る日も増え、少しずつ秋の気配が深まっていきます。
10月は北京のベストシーズンの中でも特に優れた時期です。平均気温は約13℃で、日中は20℃近くまで上昇し、長袖シャツ一枚で心地よく過ごせる日が多くなります。晴天率が高く、降雨も少ないため旅行の計画が立てやすいのも大きな魅力です。ただし、10月下旬に近づくにつれ冷え込みが増し、冬の到来を感じさせるようになります。
- 9月の平均気温: 約20℃(最高26℃ / 最低15℃)
- 10月の平均気温: 約13℃(最高20℃ / 最低7℃)
秋の服装と持ち物
秋の服装は春と同じく「重ね着」が基本です。日中は暖かくても、朝晩や日陰ではひんやり感じることがあるため、体温調整がしやすい服装が重要です。
用意しておきたい服装と持ち物
- 基本の服装: 昼間は長袖シャツやブラウス、薄手のニットで十分ですが、朝晩の冷え込みに備えジャケットやカーディガン、トレンチコートなど羽織りものを必ず準備しましょう。10月後半に訪れる場合は、薄手のダウンジャケットやフリースがあると安心です。
- 乾燥対策: 秋は空気が非常に乾燥するため、肌や唇、喉の乾燥を防ぐ保湿クリームやリップクリーム、ハンドクリームが欠かせません。のど飴やマスクも喉の不快感を和らげるのに役立ちます。ホテルの部屋で濡れタオルを干すだけでも乾燥対策に効果的です。
- 歩きやすい靴: 涼しい気候につられてつい歩きすぎてしまいがちな秋の北京では、スニーカーなど快適な靴を選ぶのがおすすめです。
秋の見どころと楽しみ方
- 紅葉狩り: 北京の秋の風物詩といえば紅葉です。市内から少し足を伸ばした「香山公園」は、中国でも指折りの紅葉スポット。鮮やかな赤や黄色に染まる木々が山一面を覆う光景は圧巻です。万里の長城周辺の山々も紅葉に彩られ、夏とは異なる壮大な景観を堪能できます。
- 世界遺産の散策: 故宮博物院、天壇公園、頤和園など広大な世界遺産群を、穏やかな気候のもとじっくり巡るのに最適な季節です。空気が澄んでいるため、景山公園の頂上から見下ろす故宮の金色の瓦は一際美しく輝いて見えます。
- アートとグルメめぐり: 798芸術区で現代アートに触れたり、カフェでゆったりと休憩したりするのも心地よい時間です。また、この季節は北京ダックはもちろん、栗や柿、棗(なつめ)といった秋の味覚を存分に楽しめます。
旅行のポイント:国慶節に注意
秋の北京旅行を計画する際にぜひ知っておきたいのが「国慶節(こっけいせつ)」です。10月1日の建国記念日を中心に約1週間続く大型連休で、中国全土から多くの国内観光客が北京に集中します。
国慶節期間の旅行で気をつけたいこと
- 非常に混雑する観光地: 天安門広場や故宮、万里の長城など主要スポットは、まるで芋を洗うような混雑に見舞われます。人混みが苦手な方は、この期間の訪問を避けるのが賢明です。
- 交通機関と宿泊の予約: 航空券や高速鉄道のチケットはすぐに売り切れ、価格も高騰します。ホテルも数ヶ月前から予約が埋まり、料金は通常の数倍に跳ね上がることがあります。やむを得ずこの時期に旅行する場合は、少なくとも3~4ヶ月前にすべての予約を済ませておきましょう。
- 観光施設のチケットは事前予約必須: 故宮博物院など人気のある施設は、ほとんどが事前オンライン予約制・実名制です。国慶節期間は発売と同時に売り切れることも多いため、旅行が決まったら北京観光公式サイトでチケット予約方法を確認し、予約開始を逃さないようにしましょう。WeChat(微信)アプリのミニプログラムから予約するのが一般的ですが、外国人向けにパスポート番号で予約可能な公式サイトも増えています。
国慶節の混雑を避ければ、秋の北京は最高の旅を約束してくれます。穏やかな陽射しの中、歴史の深さと文化の薫りを存分に満喫してください。
冬(11月〜2月)の北京:静寂と厳しい寒さの季節

シベリアから吹きつける乾いた寒風が街中を駆け抜け、冬の北京は凛とした冷気に包まれます。気温は氷点下にまで下がり、厳しい寒さが続きますが、この時期ならではの幻想的な風景や冬ならではの楽しみも味わえます。しっかりとした防寒対策を整え、静寂に満ちた冬の北京を体験してみませんか。
冬の気候と気温
11月に入ると、北京は本格的な冬の訪れを感じさせます。平均気温はおよそ5℃前後ですが、月の後半には氷点下になる日も見られます。
12月から2月にかけては冬のピークを迎え、平均気温は氷点下に沈みます。特に1月は最も寒く、日中でも0℃に届かない「真冬日」が連日続き、最低気温が-10℃以下となることも珍しくありません。風の強い日が多いため、体感温度はさらに低く感じられます。
北京の冬は非常に乾燥しており、雪の降る量は多くありません。しかし、一度雪が降れば、歴史的建造物がまるで水墨画のように白く彩られ、美しい冬景色が広がります。
- 11月の平均気温: 約5℃(最高10℃ / 最低0℃)
- 12月の平均気温: 約-2℃(最高4℃ / 最低-7℃)
- 1月の平均気温: 約-4℃(最高2℃ / 最低-9℃)
- 2月の平均気温: 約-1℃(最高6℃ / 最低-7℃)
(出典:中国気象局過去データをもとに算出)
冬の服装と持ち物ガイド
冬の北京旅行では、防寒対策が最も重要です。寒さを甘く見ず、可能な限りしっかりと備えましょう。
必携の服装・装備
- 強力な防寒アウター: ロング丈のダウンコートや、防風・防水性に優れたアウトドアジャケットが欠かせません。その下にはヒートテックなどの高機能インナー、カシミアやウールのセーター、フリースを重ねて保温を強化しましょう。
- 冷えやすい首回り・手首・足首を守る小物: ニット帽(耳までしっかり覆えるもの)、マフラーやネックウォーマー、スマホ操作も可能な手袋は必ず用意してください。
- 足元の防寒対策: 底冷えしやすいため、厚手の靴下やタイツを重ね履きすると良いでしょう。内側がボア素材のブーツや、厚底で滑りにくいスノーブーツが最適です。故宮の石畳は凍結し滑りやすくなることがあるため、ヒールのある靴は避けるのが安全です。
- その他の便利アイテム: 貼るカイロや靴用カイロは屋外観光の際に非常に役立ちます。また、屋内の強い暖房による乾燥にも注意が必要なので、保湿ケア用品は春や秋以上に念入りに準備しましょう。
冬の主要スポットとアクティビティ
- 雪化粧を纏った故宮・頤和園: 雪が降った翌朝は早起きして世界遺産を訪れる絶好の機会。赤い壁と金の瓦に積もる白雪のコントラストは圧巻です。観光客が少なく、静寂に包まれた荘厳な雰囲気をじっくり味わえます。
- 天然の氷上でスケートを楽しむ: 什刹海(后海)や頤和園の昆明湖は冬に凍結し、巨大な自然のアイスリンクになります。地元の人々に交じって氷上そりやスケートを楽しむのは、冬の北京ならではの貴重な体験です。
- 温まる火鍋(ホゥグォ): 寒さで冷え切った体を芯から温めるのにぴったりなのが北京名物の火鍋。特に伝統的な銅鍋でいただく羊肉しゃぶしゃぶ「涮羊肉(シュアンヤンロウ)」は絶品。香ばしいごまだれの味わいと体の内側から温まる感覚は、冬の旅の思い出になります。
- 春節(旧正月)の華やかな賑わい: 毎年1月下旬から2月中旬頃にかけての春節期間中は、街が赤い提灯で彩られ華やかな雰囲気に包まれます。公園などで開催される「廟会(ミャオフイ)」では伝統芸能や屋台グルメが並び、新年のお祝いムードを肌で感じられます。ただし、帰省ラッシュや多くの店舗休業により観光は一筋縄ではいきませんので注意が必要です。
冬の過ごし方で注意すべきこと:寒さと暖房のギャップ
北京の冬で気をつけたいのは、屋外の極寒と屋内の強力な暖房「暖気(ヌアンチー)」による温度差です。多くの建物にはセントラルヒーティング(スチームヒーター)が設置され、屋内はTシャツ一枚でも過ごせるほど暖かい場所もあります。
こうした温度差に対応するため、アウターの下は脱ぎ着しやすい服装、例えば前開きのフリースやカーディガンなどを重ね着すると快適です。また、強い暖房により空気が非常に乾燥します。就寝時にマスクを着用したり、ホテルで加湿器を借りたり、バスタブにお湯を張って加湿したりといった工夫で、喉や肌の乾燥を防ぎましょう。
北京旅行の計画に役立つ情報
季節ごとの特性を踏まえつつ、より快適で安全な旅行を実現するための実践的な情報をお伝えします。
大気汚染(PM2.5)について
かつて深刻な問題として取り上げられた北京の大気汚染は、近年政府の取り組みによって大幅に改善が進んでいます。特に夏や秋の季節は、晴れた青空の日が増えています。
しかし冬季は暖房需要の増加や気象条件の影響で、大気汚染指数(AQI)が悪化する日も依然として存在します。健康面が気になる場合は、旅行前に準備を整えておくことをお勧めします。
大気汚染対策
- AQIの確認: スマートフォン用アプリ「AirVisual」や「Air Matters」を活用すると、リアルタイムの大気汚染状況を簡単に把握できます。指数が高い日は、激しい屋外運動を控えたり、長時間の観光を避けるなどの対策を行いましょう。
- 高性能マスクの携帯: 通常の風邪用マスクではPM2.5の微細粒子を防ぎきれません。「N95」や「KN95」などの規格のマスクを日本から持参するのがおすすめです。現地の薬局でも購入可能です。
航空券とホテルの予約のタイミング
北京旅行にかかる費用は、航空券とホテルの予約時期によって大きく左右されます。
- ハイシーズン(秋、国慶節、春節など): 需要が非常に高まるため、早めの予約が基本です。航空券は出発の3〜4ヶ月前、ホテルは2〜3ヶ月前には確保したいところです。
- オフシーズン(冬季など): 比較的リーズナブルに航空券や宿泊先を見つけやすい時期です。ただし、年末年始は料金が高騰する傾向があります。
- 予約のポイント: 航空会社やホテルの公式サイトだけでなく、複数の予約サイトを比較検討することで、よりお得なプランに巡り会える可能性が高まります。
便利なアプリとウェブサイト
現代の中国旅行では、スマートフォンアプリが必須のアイテムとなっています。渡航前にいくつかインストールしておけば、現地での行動が格段にスムーズになります。
- 地図アプリ: Googleマップは中国国内での正常な動作が難しいことが多いです。そのため「百度地図(Baidu Maps)」や「高徳地図(Amap)」が主流です。交通機関の乗り換え案内やタクシー配車も利用できます。
- 翻訳アプリ: 「百度翻訳」や、あらかじめオフライン辞書をダウンロードしておける「Google翻訳」が便利です。音声認識やカメラ翻訳機能も重宝します。
- 配車アプリ: 「DiDi(滴滴出行)」は中国版Uberにあたるサービスです。目的地を文字で指定でき、キャッシュレス決済も可能なので、タクシーの利用が難しい場面で特に役立ちます。
- VPNサービス: 中国のネット環境では、Google、X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、LINEなどが利用制限を受けています。これらのサービスを使いたい場合は、渡航前にVPN(Virtual Private Network)サービスを契約し、スマートフォンにアプリをインストールしておく必要があります。
トラブルが起きた際の対応方法
十分な準備をしていても、海外旅行にはトラブルがつきものです。万が一のときのために、対応法を把握しておきましょう。
- 体調を崩した場合: 大都市には外国人向けの対応が充実した病院や日本語が通じるクリニックがあります。出発前に「北京 日本語 病院」などで検索し、候補を確認しておくと安心です。「北京新世紀日航クリニック」などが有名です。海外旅行保険のサポートデスクに連絡して適切な医療機関を紹介してもらうのが最も安心です。
- パスポートを紛失した場合: まず最寄りの公安局(警察署)を訪れて紛失証明書を発行してもらいます。その後、証明写真を用意したうえで日本国大使館または総領事館に行き、「帰国のための渡航書」の申請手続きを行います。手続きには時間がかかるため、パスポートの管理は厳重に行い、コピーや写真データを別途保存しておきましょう。
- 緊急連絡先: 警察は「110」、消防は「119」、救急は「120」です。また、在中国日本国大使館の連絡先も必ず控えておくことをおすすめします。
あなたの北京旅行、最高の季節はいつ?

ここまで、北京の四季それぞれの気候や服装、そして見どころについて詳しくご紹介してきました。どの季節にも独特の魅力があり、また少し気をつけておくべきポイントがあることを感じ取っていただけたのではないでしょうか。
もしあなたが、歴史的な建築物や広大な史跡を一年で最も快適な気候の中でじっくり巡りたいとお考えなら、迷わず秋(9月~10月)を訪れることをおすすめします。澄み渡った青空のもと、黄金色に輝く故宮の屋根や紅葉に染まる万里の長城は、きっと心に深く刻まれる美しい光景となるでしょう。
また、雪に包まれた水墨画のような世界遺産の風景に魅了され、厳しい寒さの中で熱々の火鍋を楽しみたいのであれば、防寒対策をしっかり整えて冬(11月~2月)に訪れるのも格別な体験です。観光客が少ない静かな中で、歴史の重みを五感で感じられる特別な時間が待っています。
さらに、生命力あふれる緑や、地元の人々の熱気あふれる夏の夜を満喫したいアクティブな方には、夏(6月~8月)が最適です。頤和園の涼しい湖畔や后海の賑やかなバーで、情熱的な北京の一面に触れてみてください。
そして、街が色づきはじめる美しい季節に、過ごしやすい陽気の中でゆったり散策したい場合は、黄砂対策を忘れずに春(3月~5月)の訪問を計画するのもおすすめです。
北京は、一度訪れただけでは語り尽くせない深い魅力を持つ都市です。季節ごとに訪れるたびに、新しい発見や感動があなたを待っています。この記事を参考に、ご自身にぴったりの「ベストシーズン」を見つけて、忘れがたい北京の旅を計画してください。悠久の歴史が息づくこの地で、あなたの物語が幕を開けるのを楽しみにしています。

