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イタリア旅行中の「もしも」に備える!病院・薬局・薬の完全ガイド

太陽の光がきらめく石畳、歴史の息吹を感じる遺跡の数々、そして心もお腹も満たされる絶品グルメ。五感を刺激する魅力にあふれた国、イタリア。ファッションやアートを巡る旅は、いつだって私に新しいインスピレーションを与えてくれます。しかし、どれだけ綿密に計画を立てたとしても、旅に予期せぬトラブルはつきもの。特に、慣れない環境での体調不良は、楽しみにしていた旅の思い出を曇らせてしまう大きな要因になりかねません。

「急に熱が出たらどうしよう…」「お腹が痛いけど、どの薬を買えばいいの?」「言葉が通じない病院で、ちゃんと診てもらえるか不安…」そんな心配を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。でも、安心してください。事前にイタリアの医療事情を少しだけ知っておけば、いざという時に落ち着いて、そして正しく対処することができます。

この記事では、イタリアを旅するすべての人が安心して「もしも」の事態に備えられるよう、病院のかかり方から薬局の利用方法、市販薬の選び方まで、具体的で実践的な情報をぎゅっと詰め込みました。旅行前の準備リストから、現地でのステップ別行動ガイド、さらには知っておくと便利なイタリア語フレーズまで、あなたの旅のお守りになるような情報が満載です。さあ、不安を知識に変えて、心からイタリアの旅を満喫するための準備を始めましょう。

体調に不安がなくなれば、次はイタロ・カルヴィーノの足跡を辿る旅で、イタリアの文学と自然に触れる旅のインスピレーションを得てみませんか。

目次

イタリアの医療事情をサクッと予習

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まず初めに、イタリアの医療システムの基本的な仕組みについて簡単に説明しておきましょう。現地の医療体制を理解しておくことは、適切な対応を取るための重要な第一歩です。

公的医療と私的医療の構成

イタリアの医療は、国民皆保険制度(Servizio Sanitario Nazionale, SSN)を基盤とする「公的医療」と、自己負担または民間保険を利用する「私的医療(プライベート)」の二つの柱で成り立っています。イタリアの国民やEU内の居住者は、原則として公的医療サービスを無料または低価格で受けることが可能です。これには公立病院(Ospedale Pubblico)や家庭医(Medico di Base)が含まれます。

一方、私的医療は私立病院(Clinica Privata)や専門医(Specialista)が提供する診療です。このサービスは予約が取りやすく、待ち時間も短く、より快適な環境で最新の医療を受けられるのが特徴です。その反面、費用は高額になる傾向があります。

旅行者が利用するのは主に「私立病院」や「観光客向け医療サービス」

旅行者の場合、どちらの医療を利用することになるのでしょうか。ほとんどの場合、「私的医療」を利用することになります。公的医療は基本的に居住者向けの制度であり、旅行者が利用するには手続きが複雑で現実的ではありません。特に言葉の壁や長い待ち時間を考慮すると、迅速かつ適切な対応が望める私立病院を選ぶのが一般的です。

多くの海外旅行保険では、この私立病院での診療費をカバーしており、保険会社と提携する医療機関であればキャッシュレス(現金不要)で治療を受けることも可能です。これが、後ほど説明する海外旅行保険への加入が極めて重要である理由の一つです。

また、主要な観光地には「観光客向け医療サービス(Guardia Medica Turistica)」が設置されている場合があります。これは旅行者や短期滞在者向けに提供される公的医療で、軽度の症状に対応しています。一般の診療所のような役割を担い、私立病院に行くほどではないが医師の診察を受けたい場合に便利な存在です。

救急車(118番)は真の緊急時のみ利用を

イタリアで救急車を呼ぶ際の番号は「118」です。(EU統一の緊急番号「112」も利用可能です)。ただし、この番号は命に関わる重篤な事故や急病時に使用するものであり、例えば交通事故に遭った、意識を失った、呼吸困難などの緊急事態に限られます。

軽度の腹痛や発熱といった症状で軽々しく救急車を呼ぶのは避けましょう。イタリアでは救急車の利用に料金が発生し、緊急性が低いと判断された場合には高額な請求を受ける可能性があります。まずは落ち着いて、後述する手順に従い保険会社や宿泊施設のスタッフに相談することが重要です。

旅行前に日本で準備すべきことリスト

旅先での安全安心は、日本にいる間の準備次第と言っても過言ではありません。ここでは、イタリアへ旅立つ前に必ず確認しておきたい「準備リスト」を具体的にご紹介します。備えがあれば心配も減ります。

最優先!海外旅行保険の加入

この記事で一つだけ覚えて帰っていただくとすれば、「必ず海外旅行保険に加入すること」です。イタリアの医療費は特に私立病院での費用が日本に比べて非常に高額になることがあります。例えば、盲腸の手術で入院すると数百万円、救急車で搬送される場合は数十万円の請求が発生することも珍しくありません。

クレジットカードの付帯保険もありますが、補償内容が不十分なケースもしばしば見られます。特に「治療・救援費用」は最低でも2,000万円以上、できれば無制限のプランを選ぶと安心です。万が一、医療専用の飛行機で日本に緊急搬送されるような事態になると、費用は数千万円に達することもあります。

補償内容の確認ポイント

保険を選ぶ際は、以下のポイントを必ずチェックしましょう。

  • 治療・救援費用: 病気やケガの治療費、入院費用、さらに日本への搬送費などをカバーします。最も重要な項目で、金額は無制限が望ましいです。
  • キャッシュレス・メディカルサービス: 保険会社が提携病院の治療費を直接支払うサービスです。これがあれば高額な治療費を現地で立て替える必要がありません。利用可能な病院リストや利用方法を事前に確認しておきましょう。
  • 日本語サポートデスク: 24時間365日日本語で対応するサポートデスクの有無は精神的な安心につながります。病院予約や医療通訳の手配など、緊急時に非常に心強いサポートです。
  • 携行品損害: スーツケースの破損やカメラなどの盗難を補償します。高価な機材を持ち運ぶ場合は忘れずに確認しましょう。
  • 航空機遅延費用: 航空機の遅延や欠航に伴う宿泊費や食事代を補償してくれます。

保険証券と緊急連絡先の携行について

保険契約後は、保険証券(または加入者証)を必ず印刷してパスポートとは別の場所に保管しましょう。スマートフォンにPDFで保存するだけでなく、紙でも持参すると、スマホ紛失や故障時にも対応可能です。また、保険会社の緊急連絡先(日本語サポートデスクの電話番号)はスマホの連絡先と手帳などのアナログ媒体の両方に控えておくことを強くおすすめします。

日本から持参したい常備薬リスト

海外で薬を探すのは意外に困難です。表示言語が異なるだけでなく、成分や効き目も日本のものと異なることが多いです。普段使い慣れた薬が最も安心です。

慣れた薬が一番安心

以下は私がいつも旅に持っていく常備薬の例です。ご自身の体調に応じてカスタマイズしてください。

  • 総合感冒薬: 発熱や喉の痛み、鼻水など風邪の初期症状に対応。
  • 鎮痛剤: 頭痛や生理痛、歯痛などに。慣れ親しんだ薬が最適です。
  • 胃腸薬: 食べ過ぎや飲み過ぎ、胃もたれ、食あたりなどに対処でき、消化促進剤と下痢止めを両方用意すると安心です。
  • 整腸剤: 環境変化で乱れやすいお腹の調子を整えます。
  • 絆創膏・消毒液: 靴擦れや小さな切り傷は意外と多いものです。様々なサイズの絆創膏と個包装の消毒用ウェットシートが便利です。
  • 虫刺され薬・かゆみ止め: 特に夏場や自然の多い場所への旅行には必須です。
  • 酔い止め薬: 長距離バスや船、山道ドライブなどに備えて。
  • 保湿クリーム・リップクリーム: ヨーロッパの空気は乾燥しています。特にホテルの室内は乾燥しがちなので、肌や唇のケアを心がけましょう。

これらの薬は、機内持ち込み用ポーチと預け入れスーツケースに分けて入れておくと、万が一のロストバゲージに備えられて安心です。

処方薬を持参する場合の注意点(英文の処方箋・診断書)

持病があり、毎日服用している薬がある場合は特に注意が必要です。旅行日数プラス予備を必ず持参しましょう。また、かかりつけ医に英文の処方箋(Prescription)や薬剤証明書、さらに英文の診断書(Medical Certificate)を発行してもらうことを強くおすすめします。

これらは現地で薬を紛失・盗難に遭った際に同じ成分の薬を探す手助けになったり、税関で所持薬の説明を求められる場合に重要な証明書となります。特に睡眠薬や精神安定剤など規制対象薬を持ち込む場合は必須です。詳しくは厚生労働省の公式サイトで薬の持ち込みルールを必ず確認しましょう。

イタリアでの薬の持ち込みルールと禁止事項

個人用の常備薬や処方薬を常識的な量で持ち込むことは基本的に問題ありません。ただし、国によっては特定成分が規制対象となることがあります。前述の通り、精神科関連の薬や医療用麻薬を含む鎮痛剤などは、英文証明書を用意して入国時に税関申告を行うようにしましょう。

サプリメント類も成分によっては規制対象になる可能性がありますが、市販されている一般的なものなら問題ないことが多いです。心配な場合は製品の成分表(英語表記)を持参すると安心です。

持っていると便利な医療関連グッズ

常備薬に加え、以下のアイテムも携帯すると緊急時に役立ちます。

  • 体温計: 自分の体調を客観的に把握するのに便利です。コンパクトなデジタルタイプがおすすめです。
  • マスク: 乾燥した機内や混雑した場所での感染予防に。イタリアでは現在義務化されていませんが、咳やくしゃみのエチケットとして持っていると安心です。
  • 除菌用ウェットティッシュ・携帯用アルコールジェル: 外出先での食事前など手を清潔に保つのに役立ちます。
  • コンタクトレンズの予備・メガネ: コンタクト使用者は洗浄液も含めて滞在日数より余裕を持って用意しましょう。万が一のトラブルに備えメガネも必ず持参してください。

イタリア語の医療関連フレーズ集

少しでも現地の言葉を知っているとコミュニケーションが格段にスムーズになります。緊急時に役立つ簡単なフレーズをいくつか覚えておきましょう。

  • 助けて!: Aiuto!(アユート!)
  • 気分が悪いです: Mi sento male.(ミ セント マーレ)
  • 病院に行きたいです: Vorrei andare in ospedale.(ヴォレイ アンダーレ イン オスペダーレ)
  • 医者を呼んでください: Può chiamare un medico?(プオ キャマーレ ウン メディコ?)
  • 頭が痛いです: Ho mal di testa.(オ マル ディ テスタ)
  • お腹が痛いです: Ho mal di pancia.(オ マル ディ パンチャ)
  • 熱があります: Ho la febbre.(オ ラ フェッブレ)
  • アレルギーがあります: Ho un’allergia.(オ ウンナッレルジーア)

これらのフレーズはメモ帳やスマートフォンのメモ機能に保存し、いつでもすぐに参照できるようにしておくと安心です。

イタリアで体調を崩したら?ステップ別行動ガイド

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準備を入念にしていても、体調を崩してしまうことは避けられません。大事なのは、慌てず冷静に、一つずつ順序立てて対処することです。ここでは、実際にイタリアで体調不良になった際の具体的な行動を段階ごとに詳しくご案内します。

STEP1: まずは落ち着いて症状を把握する

突然の体調不良で不安になる気持ちはよく理解できます。しかし、まずは深呼吸をして、自身の体の状態を冷静に観察してみましょう。どのような症状が現れていますか?

軽度の症状(風邪、頭痛、腹痛など)の場合

「少し頭が痛い」「昨夜食べ過ぎて胃が重い」「喉が少しヒリヒリする」といった比較的軽い症状で、意識もはっきりし、自分で動ける場合は、すぐに病院に行く必要は必ずしもありません。

まずは携帯している常備薬を服用し、宿泊先の部屋でゆっくり休みましょう。十分に水分を補給し、体を温めて安静にすることが重要です。無理をして観光を続けると症状が悪化する恐れがあります。その日の予定をキャンセルまたは変更する勇気も必要です。

緊急の症状(意識障害、呼吸困難、重度のけがなど)の場合

一方で、「激しい痛みで身動きが取れない」「呼吸が非常に苦しい」「事故で大怪我を負った」「意識がもうろうとしている」など、明らかに緊急を要する症状の場合は、躊躇せず救急車(118番)を呼びましょう。周囲に人がいれば、「Aiuto!(アユート!)」と大声で助けを求め、救急車の手配を依頼してください。この時点で可能なら、後述の海外旅行保険サポート窓口にも連絡を入れるのが望ましいです。もし家族や友人が一緒であれば役割を分担し、効率よく対応しましょう。

STEP2: 宿泊先のホテルやホストに相談する

自力で動けるものの、自分で病院を探したり連絡したりするのに不安がある時は、まず宿泊先のホテルのフロントやアパートのホストに相談しましょう。彼らは近隣の医療機関の事情に詳しい場合が多いです。

「Mi sento male. Conosce un medico che parla inglese?(ミ セント マーレ。コノーシェ ウン メディコ ケ パルラ イングレーゼ?/気分が悪いのですが、英語が話せる医師を知っていますか?)」など伝えると、旅行者向けクリニックや評価の良い私立病院を紹介してもらえるかもしれません。タクシーの手配も頼めるでしょう。

STEP3: 海外旅行保険サポートデスクへ連絡する

ここが最も重要な段階です。病院へ行く前に、必ず加入している海外旅行保険の24時間日本語対応サポートデスクに連絡してください。保険証券を手元に用意し、証券番号、氏名、現在の状況、宿泊場所などを落ち着いて伝えましょう。

なぜ最初に連絡すべきか?(キャッシュレスサービス利用のため)

サポートデスクに最初に連絡する一番の利点は、「キャッシュレス・メディカルサービス」の利用が可能になることです。保険会社はあなたの現在地から最も近い提携病院を探し、予約を手配。病院と直接連絡を取り、治療費を保険会社が直接支払う仕組みを整えます。

もし自分の判断で勝手に病院に行くと、まず全額を自費で支払い、帰国後に膨大な書類と共に保険金請求手続きを行う必要が生じます。現地通貨での高額な支払いは大きな負担ですし、帰国後の手続きも非常に手間がかかります。こうした負担を避けるためにも、最初に保険会社へ連絡することが鉄則です。

連絡時に準備すべき情報

サポートデスクに電話する際は、以下の情報を簡潔に伝えられるようあらかじめ準備しておきましょう。

  • 保険証券番号
  • 氏名、生年月日
  • 現在の詳しい症状(いつから症状が出ているか、どこがどのように痛むかなど)
  • 現在いる場所(ホテル名、住所)
  • 連絡可能な電話番号

オペレーターは状況に合わせて適切な病院の紹介、予約代行、必要であれば医療通訳の手配など、一連のサポートを日本語で行ってくれます。慣れない異国の地で体調不良時に日本語で相談できる相手がいることは、非常に心強いものです。

STEP4: 病院へ行く

保険会社やホテルから案内された病院に向かう際は、必ず持参すべきものを確認しておきましょう。

  • パスポート: 身分証明書として必須です。
  • 海外旅行保険の保険証券: 保険の確認に必要です。
  • クレジットカード: 保険適用外の費用が発生した場合に備えて。
  • 現金: 少額の支払いに対応可能なため持っていると便利です。
  • スマートフォン: 翻訳アプリや連絡手段として活用します。

私立病院(Clinica Privata)での受診手順

多くの旅行者が利用するのは私立病院です。受付(Accettazione)でパスポートと保険証券を提示し、予約済みであることを伝えます。保険会社が手配していればスムーズに進みます。待合室(Sala d’attesa)で案内を待ち、名前が呼ばれたら診察室(Ambulatorio)へ入ります。

医師には症状をできるだけ具体的に伝えることが大切です。翻訳アプリを使ったり、痛む場所を指さしたりしながらゆっくり説明しましょう。医療通訳が保険会社から手配されていれば、電話を通じて通訳を介しながら診察が進みます。診察後は必要に応じて検査(Esame)、処置や薬の処方(Ricetta)が行われます。キャッシュレスサービス適用であれば、基本的に会計(Cassa)での支払いは不要です。

旅行者向け医療サービス(Guardia Medica Turistica)について

リゾート地や主要な観光都市では、主に夏季に「Guardia Medica Turistica」という旅行者専用の公的診療所が開設される場合があります。ここでは比較的軽度の症状(風邪、腹痛、軽いケガなど)に対応し、私立病院ほど設備は整っていませんが、診療費用が比較的安く予約なしで利用できるのが特徴です。ただし、対応は基本的にイタリア語となるケースが多いです。海外旅行保険のサポートデスクに利用可能かどうか問い合わせるのも良いでしょう。

公立病院の救急外来(Pronto Soccorso)は最後の手段

公立病院の救急外来(Pronto Soccorso)は24時間体制で重症患者を受け入れていますが、常に混雑しており、症状の緊急度に応じて診察の優先順位(トリアージ)が決まります。命に関わらないと判断されると、長時間の待機を強いられることも珍しくありません。言語の壁も高く、旅行者が快適に医療サービスを受けるには向いていません。前述の通り、緊急事態で生命に危険が迫っている場合を除き、まずは私立病院を利用するのが賢明です。この点については、在イタリア日本国大使館の公式ウェブサイトにも詳しい情報が掲載されています。渡航前に一度目を通すことをおすすめします。

イタリアの薬局(Farmacia)徹底活用術

病院へ行くほどではないけれど薬が欲しい、そんな時に頼りになるのが街の薬局「Farmacia(ファルマチーア)」です。イタリアの薬局は日本のドラッグストアとは異なり、より医療的な役割を果たす場所です。その特徴や利用方法を理解して、上手に活用しましょう。

緑の十字が目印!薬局の見つけ方

イタリアの街中を歩いていると、緑色に輝く十字の看板をよく見かけます。これが薬局のサインです。特に都市部では、主要な通りや広場(Piazza)の付近にほぼ必ず見つけることができます。外観は歴史を感じさせる重厚な建物から、モダンで清潔感のあるものまで様々ですが、緑の十字を目印にすれば間違いありません。

営業時間と夜間・休日の当番薬局(Farmacia di Turno)

薬局の営業時間は店舗によって異なり、お昼の休憩時間(シエスタ)がある場合が多いので注意が必要です。例えば、午前9時から午後1時まで、そして午後4時から午後7時半までといったパターンです。日曜日や祝日は休業のところも多いですが、ご安心ください。

イタリアでは各地域ごとに「当番薬局(Farmacia di Turno)」の制度があり、夜間や休日でも必ずどこかの薬局が営業しています。閉まっている薬局の入口には、その日の当番薬局の住所と地図が掲示されていることが一般的です。また、「Farmacie di Turno a [都市名]」とインターネットで検索すれば、当番薬局の一覧を簡単に見つけることができます。

薬局でできること・できないこと

イタリアの薬局は単なる薬の販売店ではありません。薬剤師は高度な専門知識を持つ医療従事者として、地域住民の健康を支える大切な役割を担っています。

薬剤師(Farmacista)は健康相談のパートナー

薬局にいる薬剤師(Farmacista/ファルマチスタ)は、軽い症状であれば医師の代わりに相談に乗ってくれます。例えば、「喉が痛くて咳がある」「お腹の調子が少し悪い」といった症状を伝えると、それに合った市販薬をいくつか提案してくれます。薬に関する専門家なので、症状を伝えれば適切な薬を選んでくれるでしょう。都市部では英語を話せる薬剤師も増えていますが、不安がある場合は症状を紙に書くか翻訳アプリを活用するとスムーズです。

ただし薬剤師は医師ではないため、診断はできません。症状が重い場合や数日経っても改善しないときは、必ず医師の診察を受けるように勧められます。

薬局で購入できる薬の種類(処方箋不要薬と処方箋薬)

薬局で扱う薬は大きく分けて二つあります。

  • 処方箋不要薬(Senza Ricetta): 日本の市販薬に相当し、薬剤師との相談のうえ誰でも購入可能です。カウンターの奥に保管されていて、自分で手に取るのではなく、症状を伝えて薬剤師から出してもらう形が一般的です。鎮痛剤、風邪薬、胃腸薬などが該当します。
  • 処方箋薬(Con Ricetta): 医師の処方箋(Ricetta/リチェッタ)が必要な薬で、抗生物質やより強力な薬などが含まれます。

また、カウンターの外の店内に陳列されている商品には、ビタミン剤、サプリメント、ハーブティー、スキンケア用品、日焼け止め、ベビー用品などがあり、これらは日本のドラッグストアのように自由に手に取ってレジに持っていくことができます。

イタリアで薬を購入する際の流れと注意点

実際に薬局で薬を買う場合の流れを見てみましょう。

症状を伝えるポイント

まずカウンターの薬剤師に声をかけます。「Buongiorno(こんにちは)」と挨拶してから症状を伝えるのが基本です。できるだけ簡潔かつ具体的に説明するのがコツです。

  • 喉が痛い場合:Ho mal di gola. (オ マル ディ ゴーラ)
  • 咳が出る場合:Ho la tosse. (オ ラ トッセ)
  • 鼻水が出る場合:Ho il raffreddore. (オ イル ラッフレッドーレ)
  • 熱がある場合:Ho la febbre. (オ ラ フェッブレ)
  • 頭が痛い場合:Ho mal di testa. (オ マル ディ テスタ)

身振り手振りを加えたりスマートフォンの翻訳アプリを見せたりするのも効果的です。単純な英語表現(例:「I have a headache.」)で伝えても構いません。薬剤師はアレルギーの有無などいくつか質問したうえで、最適な薬を選んでくれます。

日本の薬との違いに注意!成分や強さを理解する

イタリアの市販薬は日本のものと比べて、一つの成分に特化しているケースが多く、1錠あたりの成分量が多い傾向にあります。例えば風邪薬は「解熱鎮痛」「咳止め」「鼻水」など症状別に細かく分類されており、日本の総合感冒薬のように一本で全ての症状をカバーするタイプはあまり一般的ではありません。

そのため、薬剤師の指示した用法・用量は必ず守るようにしてください。効き目が強く感じられることもあるので、不安な場合は「子ども用(per bambini)」や、より穏やかなタイプがあるか尋ねると良いでしょう。

ジェネリック医薬品(Generico)も広く普及

イタリアではジェネリック医薬品(Farmaco Generico または Farmaco Equivalente)が広く利用されています。薬剤師から「ジェネリックにしますか?」と聞かれることもあるでしょう。先発医薬品と同じ有効成分・効果を持ちながら、価格が安いのがメリットです。特にこだわりがなければ、ジェネリックを選ぶことで費用を抑えられます。

具体的な症状別・イタリアで買える市販薬ガイド

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いざ薬局に足を運んでも、どの薬を選べばいいか分からず不安になることもありますよね。ここでは、代表的な症状ごとに、イタリアの薬局でよく見かける市販薬の例をいくつかご紹介します。もちろん最終的には薬剤師さんと相談して決めるのが最良ですが、事前に知識を持っておくと安心できるでしょう。

風邪・喉の痛み(Raffreddore, Mal di gola)

イタリアの風邪薬は、症状に合わせて選ぶのが基本です。

  • Tachipirina(タキピリーナ): イタリアで最も一般的な解熱鎮痛剤で、主成分はパラセタモール(日本でいうアセトアミノフェン)です。発熱時や頭痛、体の痛みに幅広く使われています。錠剤のほか、水に溶かして飲む発泡タイプやシロップもあります。
  • Zerinol(ゼリノール): 発熱や鼻水、鼻づまりなど風邪の多様な症状に対応する総合感冒薬に近いタイプの薬です。
  • Benagol(ベナゴル): 喉の痛みを和らげるトローチ(のど飴)で、さまざまなフレーバーがあり薬局で手軽に購入可能です。喉のイガイガを感じ始めた初期段階で舐めると効果的です。
  • Tantum Verde(タントゥム・ヴェルデ): 喉の痛みや腫れに効くスプレータイプの薬で、患部に直接噴射できるため即効性が期待できます。

頭痛・生理痛(Mal di testa, Dolori mestruali)

鎮痛剤にはさまざまな種類があります。

  • Moment(モーメント): 主成分はイブプロフェンで、頭痛や生理痛、歯痛などに効果があります。日本でも馴染みのある成分なので安心して使えるかもしれません。
  • Okitask(オキタスク): 主成分はケトプロフェンで、強い鎮痛作用があります。水なしで飲める口腔内崩壊錠タイプもあり、外出先で急な痛みが出た際に便利です。
  • Buscofen(ブスコフェン): 特に生理痛などの痙攣性痛みに効果がある鎮痛剤です。

胃痛・消化不良(Mal di stomaco, Indigestione)

美味しいものが多いイタリアでは、つい食べ過ぎることも。

  • Gaviscon(ガビスコン): 胃酸の逆流による胸やけや胃痛に効果的です。食後に服用する液体タイプやチュアブルタイプが一般的です。
  • Buscopan(ブスコパン): 胃の痙攣による差し込むような痛みを和らげます。
  • Geffer(ジェッフェル): 消化不良や胃のもたれに使用する発泡性の顆粒薬で、水に溶かして飲みます。食後に飲むとすっきりし、独特の風味がありますが地元の人には定番の胃腸薬です。
  • Enterogermina(エンテロジェルミーナ): 腸内環境を整えるプロバイオティクス(生菌製剤)で、下痢や便秘など腸の調子が気になる時に。小さなバイアル入りの液体で、そのまま飲めます。

乗り物酔い(Mal d’auto/mare/aria)

Xamamina(ザマミーナ): イタリアでよく使われる乗り物酔い対策の薬です。大人用と子ども用があり、長距離バスや船での移動時に用意しておくと安心です。

軽い切り傷・火傷(Piccole ferite, Scottature)

  • Betadine(ベタジン): 日本でも馴染みのある、ポビドンヨードを主成分とする消毒液です。
  • Connettivina(コネッティヴィーナ): ヒアルロン酸を主成分としたクリームやガーゼで、傷の治癒を促進します。軽度の切り傷や擦り傷、火傷の手当てに使われます。

ここに挙げたのはあくまで一例です。購入時には必ず薬剤師に相談し、ご自身の症状やアレルギーの有無を伝えた上で適切な薬を選んでもらうようにしましょう。

知っておきたいイタリア医療のトラブルと対処法

備えがあっても、予期しないトラブルは発生し得ます。ここでは、医療に関わる代表的なトラブルとその対処法について確認しておきましょう。

高額な医療費を請求された場合は?

もし保険のキャッシュレスサービスが利用できない病院で治療を受け、高額な医療費をその場で請求されたときは、まず落ち着いて、すぐに保険会社のサポートデスクに連絡しましょう。オペレーターが病院と直接交渉してくれたり、今後の手続きについて適切な案内をしてくれます。

支払い前に、必ず請求書(Fattura)と診療明細書(Ricevuta)を受け取り、内容を確認してください。これらは後から保険金請求を行う際の重要な書類となります。支払いはクレジットカードが使える場合が多いものの、限度額も確認しておくことをおすすめします。こうしたトラブルを避けるためにも、病院を訪れる前に一報を入れておくことが何より重要です。なお、外務省の海外安全ホームページでは、現地の医療事情についても注意喚起がされています。

言葉が通じない場合のコミュニケーション方法

医師や薬剤師が英語を話せないことも十分に考えられます。そのような際は、スマートフォンの翻訳アプリが頼もしい味方になります。音声入力を活用すれば、リアルタイムのやり取りも可能です。また、症状や質問をあらかじめイタリア語でメモに書いて見せる方法も効果的です。大切なのは、慌てずに正確に意思を伝えようと努めること。単語やジェスチャーだけでも、あなたの真剣さは十分伝わります。

処方箋を受け取ったらどうする?

診察の結果、処方箋(Ricetta)を受け取ることがあります。通常は白い紙に医師の署名と薬の名前が記されています。これを持って、最寄りの薬局(Farmacia)へ行きましょう。カウンターで処方箋を渡せば、薬剤師が指定された薬を準備してくれます。薬代は海外旅行保険の補償対象となる場合が多いので、必ず領収書(Scontrino)を受け取り、大切に保管してください。

旅を最高に楽しむための健康管理術

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最後に、何よりも重要なのは、そもそも体調を崩さないよう日頃から注意することです。最高のコンディションで旅を満喫するために、私が普段心がけているポイントを少しご紹介します。

こまめな水分補給を忘れずに

特に夏のイタリアは強い日差しと乾燥が特徴です。観光に夢中になると、知らず知らずのうちに水分不足に陥ることもあります。定期的に水を飲む習慣をつけると良いでしょう。街中には「ナゾーネ」と呼ばれる無料の給水スポットが多く存在するため、空のペットボトルを携帯すると経済的かつ環境にも配慮できます。

慣れない食べ物とうまく付き合う

イタリア料理は本当に美味しいですが、オリーブオイルやチーズの使用が多いため、慣れていない方には重く感じられる場合があります。毎食フルコースを楽しむのではなく、ときにはシンプルなパスタやサラダで胃を休ませる日を設けるなど、バランスを整えることも大切です。また、生水は避け、必ずミネラルウォーター(Acqua Minerale)を購入してください。炭酸入り(Frizzante)と炭酸なし(Naturale)があるので、お好みのタイプを選びましょう。

十分な休息で旅の疲れをリセットする

限られた時間の中で、あれもこれも欲張りたくなる気持ちはよくわかります。しかし、無理なスケジュールは体調不良の最大の原因です。時にはカフェでゆったり休憩したり、早めにホテルに戻ってしっかり休む勇気を持ちましょう。十分な睡眠をとることで、身体も心もリフレッシュされ、翌日からの旅をより一層楽しむことができます。

イタリアでの「もしも」の事態は、少しの知識と準備さえあれば決して怖いものではありません。この記事が、あなたのイタリア旅行の不安を和らげ、より充実した安心の旅を実現するお手伝いになれば幸いです。どうぞ、素敵な旅を! Buon Viaggio!

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この記事を書いたトラベルライター

アパレル企業で培ったセンスを活かして、ヨーロッパの街角を歩き回っています。初めての海外旅行でも安心できるよう、ちょっとお洒落で実用的な旅のヒントをお届け。アートとファッション好きな方、一緒に旅しましょう!

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