かつて世界中の旅行者を魅了した米国が、今、国際観光の分野で大きな課題に直面しています。旅行業界の専門家からは、米国への国際観光客が大幅に減少し、パンデミック前の水準に回復していない唯一の西側諸国であるとの警鐘が鳴らされています。simvoyageでは、この現象の背景にある要因と、今後の観光業界に与える影響について深く掘り下げます。
パンデミック後も回復しない米国の国際観光
最新のデータは、米国観光の厳しい現実を浮き彫りにしています。2023年に米国を訪れた国際観光客は6700万人。この数字はパンデミックの最中と比較すれば改善しているものの、2019年の水準には依然として1200万人も及んでいません。
米国旅行協会(U.S. Travel Association)の試算によれば、この1200万人の減少は、実に590億ドル(約9兆円)もの観光消費の損失に相当します。これは単なる数字の問題ではなく、米国内のホテル、レストラン、航空会社、小売店など、観光に依存する数多くのビジネスと雇用に直接的な打撃を与えていることを意味します。
なぜ観光客は米国を避けるのか?
専門家が指摘する観光客減少の要因は、一つではありません。複数の複雑な問題が絡み合い、旅行者の米国離れを加速させています。
最大の障壁:長期化するビザ取得プロセス
最も大きな障壁となっているのが、ビザ取得の煩雑さと長い待ち時間です。特に、主要な観光客源である一部の国々では状況が深刻化しています。例えば、コロンビアやメキシコといった国では、観光ビザを取得するための面接予約に2年以上も待たされるケースが報告されています。
これほど長い待ち時間は、旅行計画を立てる上で致命的な障害となります。結果として、多くの潜在的な旅行者が米国訪問を諦め、よりビザ取得が容易な、あるいはビザが不要な他の国へと目的地を変更しているのです。
経済的損失と国際競争の激化
前述の通り、観光客の減少は590億ドルという巨額の経済損失を生み出しています。この損失は、米国経済全体に影響を及ぼすだけでなく、国際的な観光市場における米国の競争力低下を物語っています。
ヨーロッパ諸国やアジアの観光大国が積極的にプロモーションを行い、パンデミック後の観光客誘致に成功している中、米国は回復のペースで後れを取っています。強力なドル高も、他国からの旅行者にとって旅行費用を押し上げる一因となり、米国旅行の魅力を相対的に下げています。
政治的イメージが与える影響
近年の米国の厳格な移民政策や、国内の政治的な分断に関する報道も、国際的なイメージに影響を与えていると指摘されています。旅行者にとって「歓迎されている」と感じられるかどうかは、行き先を決める上で重要な要素です。現在の米国の政治的なメッセージが、一部の旅行者に敬遠される要因となっている可能性は否定できません。
米国観光の未来と求められる対策
このまま観光客の減少が続けば、経済的な打撃はさらに深刻化し、文化交流の機会損失や米国のソフトパワー低下にも繋がりかねません。
状況を打開するため、旅行業界からは政府に対して具体的な対策が求められています。その中心にあるのが、ビザ発給プロセスの抜本的な見直しと迅速化です。待ち時間を劇的に短縮し、オンライン申請のプロセスを簡素化することが急務とされています。
また、米国が「開かれた国」であり、世界中の旅行者を歓迎しているというポジティブなメッセージを、官民一体となって発信していくことも重要です。空港での入国審査プロセスの改善など、旅行者の体験価値を高める努力も求められるでしょう。
まとめ:旅行者が今知っておくべきこと
現在、米国への旅行は、かつてないほど計画性が求められる状況にあります。特にビザが必要な国からの渡航を計画している方は、可能な限り早期に申請手続きを開始することをお勧めします。
米国がこの課題をどう乗り越え、再び世界トップクラスの観光大国としての地位を確固たるものにできるのか。simvoyageでは、今後も米国の観光政策や最新の動向に注目し、旅行者の皆様に有益な情報をお届けしていきます。

