ベトナムのフラッグキャリアであるベトナム航空と、アジア最大級の航空会社である中国南方航空が、初の合弁事業(Joint Venture, JV)を開始することを発表しました。この歴史的な提携は、両国間の航空ネットワークを強化し、旅行者やビジネス渡航者に新たな価値を提供することが期待されています。
背景:回復する旅行需要と戦略的提携の狙い
この合弁事業が実現した背景には、新型コロナウイルス禍を経て急速に回復する国際的な旅行需要、特に中国とベトナム間の旺盛な需要があります。
パンデミック以前の2019年、ベトナムを訪れた中国人観光客は約580万人に達し、国別で最多のインバウンド市場でした。現在、その回復が加速する中で、両航空会社はより強固な協力体制を築くことで、この巨大な需要を確実に取り込む狙いがあります。
両社はともに航空アライアンス「スカイチーム」のメンバーであり、これまでもコードシェア(共同運航)などで協力関係にありました。今回の合弁事業は、その関係をさらに一歩進め、運航スケジュールや運賃設定、販売戦略までを一体化させるものです。これにより、シームレスで競争力のあるサービスを提供し、市場での主導権を握ることを目指します。
合弁事業がもたらす具体的な変化
今回の合弁事業は、2024年から2025年にかけての冬ダイヤから開始される予定です。具体的には、以下の主要路線が対象となります。
- 広州(Guangzhou)- ハノイ(Hanoi)
- 広州(Guangzhou)- ホーチミンシティ(Ho Chi Minh City)
- 深圳(Shenzhen)- ハノイ(Hanoi)
- 深圳(Shenzhen)- ホーチミンシティ(Ho Chi Minh City)
この提携により、旅行者は以下のようなメリットを享受できると期待されます。
- フライトの選択肢拡大と利便性の向上:両社のフライトスケジュールが最適化され、より多くの出発時間やスムーズな乗り継ぎが可能になります。
- 一貫したサービス体験:予約から搭乗、乗り継ぎに至るまで、両社が連携してシームレスなサービスを提供します。
- マイレージプログラムの連携強化:両社のマイレージ会員は、マイルの積算や特典航空券への交換がより容易になります。
未来への影響:アジア太平洋地域の航空業界に新たなモデルを提示
この合弁事業は、単なる二社間の協力にとどまりません。アジア太平洋地域の航空業界全体に大きな影響を与える可能性があります。
旅行者と観光業への影響
中越間の往来がさらに活発化することで、ベトナムの観光業には大きな追い風となります。中国人観光客のさらなる増加が見込まれるだけでなく、両国のハブ空港(広州、ハノイ、ホーチミンなど)を経由して、ヨーロッパやオセアニア、東南アジア諸国へと向かう旅行者の利便性も高まります。これにより、ベトナムは東南アジアにおける重要な乗り継ぎ拠点としての地位を確立する可能性があります。
航空業界への影響
この提携は、中国と東南アジアの航空会社間における新たな協力モデルとなるかもしれません。特に、巨大な中国市場へのアクセスを求める東南アジアの航空会社が、同様の合弁事業を模索する動きが広がる可能性があります。一方で、LCC(格安航空会社)を含む他の航空会社との競争は、価格面だけでなく、サービスの質やネットワークの広さといった面で、より一層激化することが予測されます。
今回のベトナム航空と中国南方航空の提携は、変化の激しい航空業界において、ポストコロナ時代の新たな成長戦略を示す重要な一歩と言えるでしょう。今後の両社の動向が、アジアの空の未来を大きく左右することになりそうです。









