大手オンライン旅行会社の調査で、アジア太平洋地域では映画やドラマのロケ地を訪れる「聖地巡礼」が新たな旅行トレンドとして急速に広まっている。旅行者の7割が映像作品に旅先を影響され、ヒット作公開後はロケ地の検索や予約が大幅に増加。動画配信の普及、体験重視の「コト消費」へのシフト、SNSでの共有がこの動きを加速させている。旅行業界も専門ツアーを企画し、地方活性化の起爆剤としても期待されており、映像作品が旅の新たな動機となっている。
大手オンライン旅行会社トリップ・ドットコムが発表した最新の調査により、アジア太平洋地域の旅行者の間で、映画やテレビ番組の舞台を訪れる「ロケ地めぐり(聖地巡礼)」が新たな旅行の形として急速に広まっていることが明らかになりました。映像作品の世界に没入し、その物語を追体験したいという欲求が、多くの人々の旅の目的地を決定づける強力な動機となっています。
7割が影響を受ける、映像コンテンツの驚異的な集客力
今回の調査で最も注目すべきは、アジア太平洋地域の旅行者の実に7割が「映像作品が旅行先の検討に影響を与えた」と回答した点です。これは、旅行計画において、従来の観光ガイドブックや人気ランキングだけでなく、NetflixやDisney+などで視聴したドラマや映画が極めて重要な役割を果たしていることを示しています。
実際に、世界的にヒットした作品の公開後、そのロケ地となった場所の検索数や航空券、ホテルの予約が大幅に増加する現象が確認されています。このデータは、映像コンテンツが持つ影響力が、単なる文化的な現象に留まらず、具体的な旅行需要を創出する経済的なエンジンとなっていることを裏付けています。
なぜ今、「ロケ地めぐり」が注目されるのか?
このトレンドの背景には、いくつかの要因が考えられます。
動画配信サービスのグローバルな普及
かつては特定の国や地域でしか視聴できなかった映像作品が、グローバルな動画配信サービスを通じて世界中の人々に届けられるようになりました。特に、韓国ドラマや日本のアニメ、インド映画などは国境を越えて多くのファンを獲得し、視聴者は画面越しの美しい風景や文化に強い憧れを抱くようになっています。
「コト消費」への価値観シフト
旅行の目的が、単に名所旧跡を見物する「モノ消費」から、そこでしかできない体験を重視する「コト消費」へと移行していることも大きな要因です。ロケ地めぐりは、物語の主人公と同じ場所に立ち、同じ空気を吸うという、非常にパーソナルで感情的な体験を提供します。この「物語への没入感」こそが、旅行者にこれまでにない満足感を与えているのです。
SNSによる体験の共有
InstagramやTikTokなどのSNSは、このトレンドをさらに加速させています。お気に入りのシーンを再現した写真を撮影し、「#聖地巡礼」といったハッシュタグと共に投稿することで、その体験は瞬く間に拡散されます。他者の投稿が新たな旅行意欲を刺激し、次の訪問者を生み出すという好循環が生まれています。
旅行業界の新たな戦略と今後の展望
この新たな需要を受け、旅行業界も積極的に動き出しています。
ロケ地を巡る専門ツアーの登場
旅行会社は、特定の作品のファンをターゲットにした「聖地巡礼ツアー」の企画・販売を強化しています。作品の撮影エピソードを聞きながら巡るガイド付きツアーや、関連グッズがセットになった宿泊プランなど、より付加価値の高い商品が今後も増えていくでしょう。
地方都市活性化の起爆剤に
これまで観光地として脚光を浴びることのなかった地方の町や村が、人気作品のロケ地に選ばれることで、世界中から観光客を呼び込む「フィルムツーリズム」の成功例も生まれています。これは、地域経済に大きなインパクトを与え、新たな観光資源を発掘する絶好の機会となり得ます。
映像作品をきっかけとした旅は、私たちに新しい世界の扉を開いてくれます。次の旅行計画を立てる際には、お気に入りの映画やドラマの舞台を地図で探してみてはいかがでしょうか。そこには、スクリーンの中だけで見ていた憧れの景色と、忘れられない体験が待っているかもしれません。

