MENU

    若者の海外旅行離れは本当か?「行きたい派」と「行きたくない派」の二極化、その背景に迫る

    「最近の若者は海外旅行に行かなくなった」という声を耳にすることが増えました。しかし、その実態は単純な「海外旅行離れ」という言葉だけでは片付けられない、複雑な様相を呈しているようです。株式会社エアトリが2024年6月に発表した調査結果は、若者の海外旅行に対する意識が「行きたい派」と「行きたくない派」で明確に二極化している現状を浮き彫りにしました。

    この記事では、その調査データを基に、若者の海外旅行をめぐるリアルな意識と、その背景にある社会的な要因、そして今後の旅行業界への影響について深掘りします。

    目次

    鮮明になる「行きたい派」と「行きたくない派」

    エアトリが10代・20代の男女787名を対象に行った調査によると、海外旅行に「絶対に行きたい」「行きたい」と回答した「行きたい派」は全体の62.9%にのぼりました。一方で、「あまり行きたくない」「行きたくない」と回答した「行きたくない派」も20.3%存在し、「どちらでもない」が16.8%という結果になりました。

    この数字は、若者全体が海外旅行に背を向けているわけではなく、強い意欲を持つ層と、消極的な層がはっきりと分かれていることを示唆しています。

    なぜ行きたいのか?「体験価値」を求める若者たち

    「行きたい派」が海外旅行に惹かれる最大の理由は、「異文化に触れたい」(62.3%)でした。次いで「現地のグルメを堪能したい」(54.8%)、「観光地や絶景を見たい」(53.4%)と続きます。

    この結果から、彼らが単なる物見遊山ではなく、その土地ならではの文化や食、風景といった「そこでしか得られない体験」に強い価値を見出していることがわかります。SNSを通じて世界の情報をリアルタイムで知ることができる現代だからこそ、バーチャルでは味わえない本物の体験への渇望が高まっているのかもしれません。

    なぜ行きたくないのか?立ちはだかる3つの壁

    一方、「行きたくない派」が抱える不安は非常に現実的です。最も大きな理由は「お金がない」(56.3%)で、半数以上が経済的な問題を挙げています。近年の円安や世界的な物価高は、若者の財布に直接的な打撃を与え、海外旅行を「高嶺の花」に感じさせている大きな要因と言えるでしょう。

    さらに、「言葉が通じるか不安」(42.5%)、「治安が不安」(41.9%)というコミュニケーションや安全面での懸念が続きます。インターネットで現地の情報を容易に得られるようになった反面、ネガティブなニュースに触れる機会も増え、漠然とした不安感を増幅させている可能性も考えられます。

    二極化の核心:分かれ道は「最初の海外旅行」

    この二極化をさらに加速させている要因として、調査では「海外旅行の経験の有無」が大きく影響していることが明らかになりました。

    海外旅行の経験がある若者のうち、「行きたい」と答えた割合は実に84.8%に達します。しかし、未経験者ではその割合は45.9%にまで落ち込みます。一度でも海外の空気に触れた経験が、次の旅行への強いモチベーションに繋がっているのです。

    この「最初の海外旅行」へのハードルの高さは、パスポートの保有率にも顕著に表れています。海外旅行経験者のパスポート保有率が88.6%であるのに対し、未経験者ではわずか11.2%でした。パスポート取得という手続きや費用を含めた「最初の一歩」を踏み出せるかどうかが、その後の海外旅行への意識を大きく左右する分水嶺となっているのです。

    今後の予測と旅行業界への影響

    この二極化の傾向は、今後さらに加速する可能性があります。円安や不安定な国際情勢が続けば、経済的・心理的なハードルは高まり、「行きたくない派」はさらに内向きになるかもしれません。

    旅行業界にとって、これは大きな課題であると同時に、新たなビジネスチャンスでもあります。

    • ターゲットの細分化: 意欲の高い「行きたい派」に対しては、より深い文化体験やアドベンチャーなど、付加価値の高い旅行商品を提案することが求められます。
    • 「最初の一歩」のサポート: 海外旅行未経験者に対しては、言葉や治安の不安を払拭するようなサポート体制の充実したツアーや、比較的安価で行ける近隣アジア諸国への旅行プランの強化が鍵となります。パスポート取得のキャンペーンなども有効でしょう。
    • 国内旅行との差別化: 海外でしか得られない体験価値を明確に伝え、国内旅行や他のエンターテイメントとは異なる魅力を訴求していく必要があります。

    若者の海外旅行は、単なる「離れ」ではなく、価値観の多様化と経済状況を反映した「二極化」の時代に入りました。彼らが抱える不安に寄り添い、海外への扉を開くきっかけをいかに提供できるか。旅行業界の未来は、その一点にかかっていると言っても過言ではないでしょう。

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!

    この記事を書いたトラベルライター

    SimVoyage編集部は、世界を旅しながら現地の暮らしや食文化を体感し、スマホひとつで快適に旅する術を研究する旅のプロ集団です。今が旬の情報から穴場スポットまで、読者の「次の一歩」を後押しするリアルで役立つ記事をお届けします。

    目次