米国への渡航を計画しているビジネスパーソンやその家族にとって、ビザ申請プロセスに大きな変更が加わります。米国務省は、2024年12月15日より、専門職従事者向けのH-1Bビザおよびその家族向けのH-4ビザ申請者に対し、オンラインプレゼンス(ソーシャルメディアアカウント情報など)の審査を拡大することを発表しました。
この変更は、米国の安全保障審査強化の一環であり、申請者の準備とプロセスへの理解がこれまで以上に重要になります。
SNS審査拡大の概要
今回の変更の核心は、非移民ビザ申請書「DS-160」にあります。2024年12月15日以降にDS-160を提出するH-1BおよびH-4ビザ申請者は、以下の情報を申告することが義務付けられます。
- 申告対象: 申請時から遡って過去5年間に使用した、特定のソーシャルメディア(SNS)プラットフォームにおける自身のユーザー名。
この要件は、これまで一部のビザカテゴリーで実施されていましたが、今回、IT技術者や専門職が多く利用するH-1Bビザとその家族にまで対象が広がった点が大きな特徴です。申請者は、自身が利用しているSNSアカウントを正確に把握し、正直に申告する必要があります。
変更の背景 – 安全保障審査の強化
この動きは、決して突然のものではありません。2017年に発令された大統領覚書に基づき、米国政府はビザ申請者のスクリーニングを強化する方針を打ち出しました。その一環として、国務省は2019年5月、ほぼすべての米国ビザ申請者に対し、SNSアカウント情報の提出を義務付ける規則を導入しました。
この規則により、当時、年間約1,470万人のビザ申請者が影響を受けると推定されていました。当初、一部の外交・公用ビザは対象外とされていましたが、今回の発表により、これまで除外されていたH-1BやL-1(企業内転勤者)などの主要な就労ビザカテゴリーにも、このSNS審査が段階的に適用される流れが明確になりました。
今回のH-1BおよびH-4ビザへの拡大は、この既存方針を徹底し、安全保障上の潜在的リスクを特定するための情報収集を強化する目的があります。
予測される影響と今後の展望
申請プロセスへの影響
SNS情報の申告が義務化されることで、ビザ申請の準備はより煩雑になります。過去5年間のアカウント情報を正確に思い出し、記載する必要があるため、申請者の負担は増大します。
また、提出されたSNSアカウントの内容は、領事による審査の対象となります。投稿内容によっては、テロ活動との関連や不法行為、虚偽申告などの疑義を持たれる可能性があり、審査が長期化したり、追加の面接が要求されたりするケースが想定されます。これにより、ビザ発給までのリードタイムが不安定になる可能性があります。
プライバシーへの懸念と申請者の心構え
オンライン上の個人的な発言や思想、交友関係がビザ審査の判断材料となることに対し、プライバシーに関する懸念は依然として残ります。どのような投稿が「問題」と見なされるのか、その基準は明確にされておらず、申請者にとっては不透明な部分が多いのが現状です。
米国への渡航や赴任を計画している個人や企業は、この変更を念頭に置いた準備が必要です。
- 正確な情報申告: DS-160には、すべての情報を正直かつ正確に記入することが極めて重要です。意図的かどうかにかかわらず、情報の省略や虚偽の記載は、ビザの不許可だけでなく、将来的な米国への入国資格にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
- オンライン上の情報管理: 今後、米国ビザを申請する可能性のある方は、自身のSNSアカウントの公開範囲や投稿内容について、日頃から意識しておくことが賢明と言えるでしょう。
この度の審査拡大は、米国が安全保障を最優先事項と捉えていることの表れです。国際的な人の移動において、オンライン上の個人の足跡がますます重要な意味を持つ時代になったことを示しており、渡航者はこの新しい現実に対応していく必要があります。

