米国務省は2025年8月、世界各国の安全情報に関する定期的な見直しを行い、新たな渡航勧告を発表しました。今回の更新では、米国人にとって人気の旅行先である日本を含む複数の国・地域で勧告レベルが変更され、今後の国際旅行の動向に大きな影響を与える可能性があります。
日本を含む主要観光地への新たな勧告
今回の発表で最も注目されるのは、日本が「レベル1:通常の注意(Exercise Normal Precautions)」から「レベル2:注意の強化(Exercise Increased Caution)」へと引き上げられた点です。国務省は、この変更の理由として、特定の都市部における散発的なデモ活動の増加や、自然災害に対する備えの必要性を挙げています。これは渡航を禁止するものではありませんが、旅行者に対して通常以上の注意を払うよう促すものです。
日本以外にも、メキシコの一部の州や東南アジアの数カ国で勧告レベルの変更が行われました。これにより、多くの米国人旅行者が夏休みや今後の旅行計画の見直しを迫られる可能性があります。
勧告更新の背景にあるもの
渡航勧告は、テロ、犯罪、内乱、健康上のリスク、自然災害など、多岐にわたる要因を総合的に評価して決定されます。今回の世界的な更新は、近年の地政学的な緊張の高まりや、パンデミック以降変化した各国の社会情勢を反映したものと見られています。
特に、観光客が集中するエリアでの治安状況の変化や、予測が困難な自然災害へのリスク管理が、評価の重要な要素となった模様です。米国政府は、自国民の安全を確保する観点から、これらのリスクを旅行者に事前に周知することを目的としています。
予測される影響と今後の見通し
旅行者と観光業界へのインパクト
この渡航勧告の変更は、旅行者と観光業界の双方に大きな影響を与えると予測されます。
- 旅行者の動向:
勧告レベルが引き上げられた国への渡航をためらう旅行者が増える可能性があります。特に、家族旅行や初めてその国を訪れる層は、より安全と見なされる目的地へと計画を変更することが考えられます。また、海外旅行保険の保険料が変動したり、補償内容に影響が出たりする可能性も指摘されています。
- 日本のインバウンド市場への影響:
米国は、日本のインバウンド市場において極めて重要な国です。日本政府観光局(JNTO)の統計によれば、パンデミック前の2019年には約172万人の米国人が訪日し、その消費額は国・地域別で上位に位置していました。2024年にはその数を大幅に上回るペースで回復しており、今回の勧告がこの好調な流れに水を差すことが懸念されます。特に、個人旅行者が多い米国市場の動向は、地方の観光経済にも影響を及ぼしかねません。
代替旅行先の浮上
一方で、今回の勧告を受けて、メキシコのカンクンやロスカボスといったリゾート地、米国内のハワイやカリフォルニア、そして同じアジアでも比較的安定していると見なされるタイなどが、代替の旅行先としてさらに注目を集める可能性があります。旅行業界では、これらの地域へのフライトやツアーの需要が増加することを見越した動きも出てくるでしょう。
旅行を計画する上でのアドバイス
渡航勧告は、あくまで旅行のリスクを判断するための一つの指標であり、渡航を法的に禁止するものではありません。しかし、自身の安全を確保するためには、最新の情報を常に確認し、賢明な判断を下すことが不可欠です。
これから海外旅行を計画している方は、米国務省の公式ウェブサイトや、日本の外務省が提供する「海外安全情報」を定期的に確認し、渡航先の状況を正確に把握するようにしてください。その上で、十分な安全対策を講じ、充実した旅の計画を立てることをお勧めします。









