米国政府は、国家安全保障上の懸念を理由に、新たに19カ国からの入国を厳格に制限する大統領令を発表しました。この措置は、観光目的の渡航者だけでなく、すでにビザを保持している就労者や留学生、さらには米国への投資を計画している投資家にも影響を及ぼすものであり、国際社会に大きな波紋を広げています。
背景にある国家安全保障への懸念
今回の入国制限の背景には、テロ対策や国家安全保障の強化という米政府の強い意志があります。政府関係者によると、対象となった国々は、身元確認情報の共有が不十分である、あるいは国内にテロリストの活動拠点が存在するといった基準に基づき選定されたとされています。
このような入国制限措置は過去の政権でも見られましたが、今回の特徴は対象国が19カ国と広範囲にわたっている点です。具体的な国名は公表されていませんが、中東、アフリカ、アジアの一部の国々が含まれていると報じられており、ビジネスや人的交流への影響は避けられない見通しです。
ビジネス、学術、投資への具体的な影響
この大統領令は、単なる旅行禁止にとどまらず、米国の経済や学術活動にも深刻な影響を与える可能性があります。
ビジネスおよび学術分野への打撃
米国企業で働く多くの外国人専門職(H-1Bビザ保持者など)や、米国の大学で学ぶ留学生(F-1ビザ保持者)が、一時帰国後の再入国が困難になる、あるいは新規ビザの発給が停止される事態が懸念されます。
NAFSA(国際教育者協会)のデータによると、2022-2023年度において、留学生は米国経済に約380億ドル(約5.9兆円)もの経済効果をもたらしました。優秀な留学生や研究者の流入が滞ることは、米国の国際競争力やイノベーションの源泉を損なうことにも繋がりかねません。
投資家マインドの冷え込み
特に深刻なのが、投資家ビザ(EB-5など)への影響です。EB-5プログラムは、米国内の特定地域に最低80万ドルを投資し、雇用を創出した外国人に永住権を与える制度ですが、対象国からの投資家はこの道が閉ざされる可能性があります。
これにより、米国内で計画されていた大規模な開発プロジェクトが資金不足に陥るリスクや、米国外の投資家が米国市場を敬遠し、カナダや欧州など他の国へ投資先を切り替える動きが加速する可能性があります。
予測される未来と国際社会への影響
この入国制限がもたらす影響は、短期的・長期的に様々な側面に及ぶと予測されます。
短期的には、対象国からの渡航が全面的に停止されることで、航空業界や観光業界は直接的な打撃を受けます。また、突然の発表により、すでに渡航を計画していた人々や米国内に家族を持つ人々の間で大きな混乱が生じるでしょう。
長期的には、米国の「開かれた国」というイメージが損なわれることが最大の懸念点です。世界中から優秀な人材や資本を引き寄せることで成長してきた米国にとって、この措置は自らの強みを削ぐことになりかねません。
さらに、対象国との外交関係が悪化し、米国国民に対するビザ発給の厳格化といった報復措置につながる可能性も否定できません。
今回の入国制限措置は、その是非をめぐって米国内でも議論を呼んでおり、今後、裁判所による差し止め判断や議会での反発が起こる可能性もあります。simvoyageでは、旅行者やビジネス渡航者の皆様に正確な情報をお届けするため、引き続きこの問題の動向を注視してまいります。









