米国で連邦政府機関の一部閉鎖(ガバメント・シャットダウン)が現実味を帯びており、米国への旅行を計画している多くの観光客に深刻な影響を与える可能性が懸念されています。議会での予算案交渉が不調に終わった場合、国立公園や博物館の閉鎖、パスポート発給の遅延、さらには旅行経済全体に大きな打撃が及ぶと予測されています。
政府機関閉鎖の背景
米国の会計年度は10月1日に始まります。それまでに議会が次年度の予算案を可決、または暫定予算を成立させなければ、政府機関は活動資金を失い、一部の業務を停止せざるを得なくなります。これが「政府機関閉鎖」です。生命や財産保護に直結する「必要不可欠」と見なされる業務は継続されますが、それ以外の多くのサービスが停止するため、国民生活や経済活動に広範な影響が及びます。
旅行者が直面する具体的な影響
政府機関の閉鎖が実施された場合、旅行者は以下のような影響に直面する可能性があります。
国立公園や博物館の閉鎖・サービス縮小
米国旅行のハイライトである国立公園の多くは、内務省国立公園局によって運営されています。過去の政府閉鎖時にも、グランドキャニオン、イエローストーン、ヨセミテといった世界的に有名な国立公園が完全に閉鎖されたり、レンジャーの不在により安全が確保できないとして立ち入りが厳しく制限されました。
また、ワシントンD.C.にあるスミソニアン博物館群など、連邦政府が運営する多くの文化施設も閉鎖の対象となる可能性があります。訪問を計画している方は、旅行前に必ず各施設の公式サイトで最新の運営状況を確認する必要があります。
パスポート・ビザ発給の遅延
パスポートやビザの発給を担当する国務省の業務も、政府閉鎖の影響を受ける可能性があります。特に、新規の申請や更新手続きに大幅な遅延が生じることが予想されます。渡米を計画中で、これからビザやパスポートを申請する方は、通常よりもはるかに長い時間が必要になることを覚悟しなければなりません。
空港運営への懸念
航空管制官や運輸保安庁(TSA)の職員は「必要不可欠な職員」とされ、政府閉鎖中も無給で勤務を続けることが一般的です。しかし、職員の士気低下や、無給勤務を嫌った職員の病欠増加などにより、空港の保安検査場が長蛇の列になるなど、混乱が生じた事例が過去に報告されています。閉鎖が長期化すれば、空港の円滑な運営や航空の安全性への懸念が高まる可能性も否定できません。
旅行経済に週10億ドルの損失も
この問題は、個々の旅行者の計画を狂わせるだけでなく、米国の経済全体にも深刻な影響を与えます。米国旅行協会(U.S. Travel Association)の試算によると、政府機関の閉鎖は、米国の旅行経済に1週間あたり約10億ドル(日本円で約1500億円)もの損失をもたらす可能性があるとされています。
この損失には、国立公園周辺のホテルやレストラン、土産物店の売上減少、航空会社や旅行代理店の収益悪化、そしてそれらの産業で働く人々の賃金や雇用の損失が含まれており、影響は観光地だけでなく国全体に及びます。
今後の見通しと旅行者が準備すべきこと
政府機関閉鎖の期間は、議会の交渉次第であり、数日で終わることもあれば、数週間に及ぶこともあり、予測は非常に困難です。これから米国への旅行を計画している方は、以下の点に注意し、準備を進めることをお勧めします。
- 最新情報の確認: 渡航前には、訪問予定の国立公園、博物館、政府関連施設の公式サイトを定期的にチェックし、運営状況を確認してください。
- 旅程の柔軟性: 万が一、目的地が閉鎖された場合に備え、代替案をいくつか考えておくと良いでしょう。
- 各種予約の確認: 航空券やホテルのキャンセル・変更ポリシーを事前に確認しておくことが重要です。
- 旅行保険の見直し: 加入している、またはこれから加入する海外旅行保険が、政府機関の閉鎖に起因する旅行の中止や変更をカバーしているか確認しましょう。
政府機関の閉鎖は政治的な問題ですが、その影響は国境を越え、私たちの旅の計画にまで直接的な影響を及ぼします。不測の事態に備え、慎重な情報収集と柔軟な計画を心がけることが、安心して旅を楽しむための鍵となります。









