政府閉鎖の直撃を受ける米国の空の玄関口
米国で連邦政府機関の一部閉鎖(シャットダウン)が開始され、その影響は国立公園の閉鎖だけに留まらず、旅行者にとって最も重要なインフラである空港運営にも深刻な影を落としています。特に、米国の空の安全を支える連邦航空局(FAA)の職員が直面する状況は、全米のフライトに遅延や欠航をもたらす重大なリスクとして懸念されています。
なぜ空港運営が危機に瀕するのか
「必要不可欠」な職員の無給勤務という現実
米国の空港で働く航空管制官や、手荷物検査を行う運輸保安庁(TSA)の職員の多くは、連邦政府の職員です。彼らは国の安全保障やインフラ維持に不可欠な「エッセンシャルワーカー(必要不可欠な職員)」と見なされており、政府機関が閉鎖されても勤務を続ける義務があります。
しかし、問題は政府閉鎖中は給与が支払われないことです。彼らは無給での勤務を強いられることになり、これが士気の低下や経済的な困窮を招き、結果として空港のオペレーション全体に影響を及ぼすのです。
過去の事例が示すリスク
この状況がもたらす混乱は、決して憶測ではありません。過去最長となった2018年末から2019年にかけての35日間の政府閉鎖では、実際に米国の航空システムに大きな混乱が生じました。
当時、無給勤務が続いたことで航空管制官の病欠が相次ぎ、ニューヨークのラガーディア空港やニューアーク・リバティー国際空港など、主要なハブ空港で大規模なフライト遅延が発生しました。一部の職員は経済的な理由から副業を探さざるを得なくなり、職場への集中力が削がれるという事態も報告されています。
また、運輸保安庁(TSA)職員の欠勤率も急増しました。2019年の政府閉鎖33日目には、TSA職員の欠勤率が10%に達し、これは前年の同日の3.1%を大きく上回る異常な数値でした。これにより、保安検査場では長蛇の列が発生し、多くの旅行者が影響を受けました。
予測される未来と旅行者への影響
フライトの遅延・欠航と空港での混雑
今回の政府閉鎖が長期化した場合、2019年と同様、あるいはそれ以上の混乱が予測されます。
- フライト遅延・欠航のリスク増大
航空管制官の人員が不足すれば、航空機が安全に離着陸できる間隔を確保するため、1時間あたりに処理できる便数を減らさざるを得ません。これは、フライトの遅延や欠航の直接的な原因となります。
- 空港保安検査での待ち時間増加
TSA職員の欠勤が増えれば、保安検査場のレーンが閉鎖され、旅行者はチェックインから搭乗ゲートにたどり着くまで、通常よりはるかに長い時間待たされる可能性があります。
安全性への長期的な懸念
短期的には、現場の職員のプロフェッショナリズムによって空の安全は維持されるでしょう。しかし、政府閉鎖が長引けば、職員の疲労とストレスは限界に達し、ヒューマンエラーのリスクが高まるという専門家の指摘もあります。また、新しい航空機の安全認証や航空会社の監査といった、将来の安全を確保するためのFAAの業務も停滞するため、長期的な影響も無視できません。
旅行者はどう備えるべきか
米国への渡航や米国内での移動を計画している方は、政府閉鎖の動向を注視する必要があります。
出発前には、必ず利用する航空会社のウェブサイトや公式アプリで最新の運航状況を確認してください。また、空港での予期せぬ混雑や手続きの遅延に備え、通常よりも時間に十分な余裕を持って空港に到着することを強くお勧めします。
政府閉鎖が解除されるまで、米国の空の旅は不確定要素を多く含みます。最新の情報を入手し、柔軟な計画を立てることが、スムーズな旅行の鍵となるでしょう。









