アフリカ東部に位置し、「アフリカの真珠」と称されるウガンダが、巨大な潜在力を持つ中国の旅行市場に向けて、その魅力を大々的にアピールしました。広州で開催された「中国(広州)国際観光産業博覧会(CITIE)」において、ウガンダは独自の文化と手つかずの自然を前面に押し出し、新たな観光客層の開拓に乗り出しています。この動きは、アフリカ観光の未来を占う重要な一歩として注目されています。
なぜ今、ウガンダは中国市場を目指すのか?
ポストコロナで変化する世界の観光地図
これまで、ウガンダをはじめとする多くのアフリカ諸国の観光は、主に欧米からの旅行者に支えられてきました。しかし、世界の観光市場は大きな転換期を迎えています。特に、コロナ禍以前から世界最大の海外旅行市場であった中国の存在感は、無視できないものとなっています。
中国旅游研究院(China Tourism Academy)のデータによると、パンデミック前の2019年には、中国からの海外旅行者数は延べ1億5500万人に達し、その消費額も世界一を記録しました。ポストコロナ時代に入り、海外旅行への意欲が回復する中で、中国の旅行者はよりユニークで体験価値の高いデスティネーションを求める傾向にあります。手つかずの自然や文化体験を求める層にとって、ウガンダは非常に魅力的な選択肢となり得るのです。
観光市場の多角化という国家戦略
ウガンダ政府は、特定の市場への依存から脱却し、観光収入を安定させるために市場の多角化を重要な戦略と位置づけています。その中で、巨大な中間層を抱え、経済的にも繋がりの深い中国は、最重要ターゲットの一つです。今回の博覧会への出展は、国家戦略に基づいた積極的なマーケティング活動の一環と言えるでしょう。
博覧会で披露されたウガンダの魅力
今回の博覧会で、ウガンダ野生生物局(UWA)が中心となり、ブースではウガンダの持つ多様な魅力が紹介されました。
圧倒的な野生動物との出会い
ウガンダ観光の最大の目玉は、何と言っても野生動物です。特に、絶滅の危機に瀕するマウンテンゴリラを間近で観察できるブウィンディ原生国立公園のゴリラトレッキングは、世界中の旅行者の憧れです。また、クイーン・エリザベス国立公園で見られる珍しい「木登りライオン」や、マーチソン・フォールズ国立公園の壮大な滝とナイル川クルーズなど、ユニークなサファリ体験が豊富に揃っています。
活気あふれる文化と人々の温かさ
展示では、ウガンダの伝統舞踊や音楽、色鮮やかな手工芸品も紹介され、その豊かな文化が来場者の注目を集めました。50以上の異なる民族が共存するウガンダは、多様な文化が交じり合う魅力的な国です。こうした文化体験や、現地の人々との交流も、ウガンダ旅行の大きな魅力としてアピールされました。
予測される未来と旅行者への影響
アフリカ観光の新たな潮流が生まれるか
ウガンダのこの積極的なプロモーションは、アフリカ観光全体に大きな影響を与える可能性があります。
まず、中国からの観光客が大幅に増加することが予測されます。これにより、ウガンダ国内では中国語対応可能なガイドの育成や、中国の食文化・決済システム(AlipayやWeChat Payなど)に対応したホテルや施設の増加といった、インフラの整備が進む可能性があります。将来的には、中国の主要都市とウガンダのエンテベ国際空港を結ぶ直行便の就航も現実味を帯びてくるでしょう。
ウガンダの成功は、同様に豊かな観光資源を持つルワンダ、ケニア、タンザニアといった近隣諸国にも刺激を与え、アフリカ大陸全体で中国市場へのアプローチが加速する可能性があります。これにより、アフリカを訪れる旅行者の国籍はさらに多様化し、観光地は新たな活気を見せることになるでしょう。
日本人旅行者への影響は?
私たち日本人旅行者にとっても、この変化は無関係ではありません。中国人観光客の増加によって人気の観光スポットが混雑したり、ツアーのスタイルが変化したりする可能性はあります。
一方で、観光インフラが整備されることで、旅行の快適性は向上するかもしれません。また、中国経由の航空券の選択肢が増え、より安価にアフリカへ渡航できるルートが生まれるといったメリットも期待できます。
ウガンダが仕掛ける中国市場へのアプローチは、アフリカ観光の新しい時代の幕開けを告げるものかもしれません。これまでとは違う顔を見せ始める「アフリカの真珠」の今後の動向に、ぜひ注目してみてください。









