ヨーロッパの旅が大きく変わる:新システム「EES」とは?
2025年10月6日より、ヨーロッパのシェンゲン協定加盟国への渡航ルールが大きく変更されます。UAEからの旅行者を含む、EU市民以外の短期滞在者を対象とした新しい出入国管理システム「エントリー/エグジット・システム(EES)」が導入されるのです。これは、国境管理を近代化し、セキュリティを強化するための重要なステップであり、旅行者には事前の理解と準備が求められます。
これまで、シェンゲン協定加盟国への入国時にはパスポートにスタンプが押されていましたが、EES導入後はこの手続きが廃止されます。代わりに、旅行者の氏名、渡航書類、指紋、顔写真といった生体認証データが電子的に収集・登録されることになります。このシステムは、国境通過の効率化を目指すとともに、不法滞在者の特定を容易にすることを目的としています。
旅行者への具体的な影響と手続きの変更点
この新システムの導入により、UAEからヨーロッパへ渡航する旅行者の手続きにはいくつかの変更が生じます。
空港での新しい手続き
EES導入後、シェンゲン圏に初めて入国する際には、空港などに設置されたセルフサービスのキオスク端末で生体認証データ(顔写真と指紋)を登録する必要があります。この初回登録には多少の時間がかかることが予想されており、特に導入初期や旅行のピークシーズンには、空港での待ち時間が長くなる可能性があります。一部の空港当局は、手続きに最大で1時間程度の追加時間を見込むよう警告しています。
一度登録が完了すれば、その後3年間は再登録の必要はありません。2回目以降の渡航では、自動化ゲートなどを利用して、よりスムーズな出入国手続きが期待できます。
滞在期間の厳格な管理
EESは、短期滞在のルールである「あらゆる180日の期間内で最大90日間」の滞在を電子的に追跡します。これにより、滞在期間の管理がこれまで以上に厳格化されます。旅行者自身が滞在日数を正確に把握し、オーバーステイにならないよう注意することが極めて重要になります。
ETIAS(エティアス)との関連
EESと並行して、2025年半ばには「欧州渡航情報認証制度(ETIAS)」の導入も予定されています。UAEのパスポート保持者を含む、これまでビザなしでシェンゲン圏に渡航できていた60カ国以上の国民は、渡航前にオンラインでETIASの申請が必要となります。申請には7ユーロの手数料がかかり、一度認証されれば3年間有効です。EESは出入国時の手続きに関するシステム、ETIASは渡航前の認証システムであり、両者は連携して機能します。
導入の背景と未来予測
なぜ今、新システムが必要なのか?
EES導入の背景には、近年の国際情勢の変化に伴うセキュリティ強化の必要性があります。テロ対策や不法移民問題への対応として、EUは国境を越える人の流れをより正確に把握し、管理する必要に迫られました。パスポートへのスタンプというアナログな方法から、生体認証データを活用したデジタルシステムへ移行することで、国境管理の精度と効率を飛躍的に向上させる狙いがあります。
この計画は2016年に初めて提案され、技術的な課題や加盟国間の調整により複数回延期されてきましたが、いよいよ2025年10月に本格始動となります。
予測される影響と今後の展望
短期的には混乱も 導入直後は、旅行者や空港職員が新しい手続きに慣れていないため、一時的な混乱や待ち時間の増加が予測されます。特に、家族旅行や団体旅行など、一度に多くの人が手続きを行う場面では注意が必要です。
長期的にはより快適な旅へ しかし、システムが安定すれば、長期的には多くのメリットが期待できます。出入国手続きの自動化は、ヒューマンエラーを減らし、通過時間を短縮します。パスポートのページをスタンプで埋めてしまう心配もなくなり、よりスマートで安全な国境管理が実現するでしょう。
2025年10月以降にUAEからヨーロッパへの渡航を計画している方は、これらの変更点を念頭に置き、時間に余裕を持ったスケジュールを組むことをお勧めします。また、渡航前にはEUの公式サイトなどで最新情報を確認するようにしてください。









