タイ政府は、観光業の本格的な回復と経済成長の加速を目指し、外国人観光客に対するビザ制度を大幅に緩和する新たな方針を発表しました。これにより、ビザなしで60日間滞在できる国・地域が従来の57から93へと一挙に拡大。さらに、リモートワーカーをターゲットとした新しい長期滞在ビザも導入され、世界中の旅行者や長期滞在希望者にとって、タイがより一層魅力的なデスティネーションとなりそうです。
タイ、観光客誘致へ大胆な一手
今回の発表の目玉は、ビザ免除での滞在可能日数を60日とし、その対象国を大幅に増やした点です。これまで57だった対象国・地域は、新たに36カ国が追加され、合計93に上ります。
新たに対象となった国には、これまでビザ取得が必要だった中国やインドといった巨大市場が含まれており、他にもアルバニア、カンボジア、ジャマイカ、カザフスタン、メキシコ、ウズベキスタンなどがリストに加わりました。この措置は、より幅広い国からの観光客を呼び込み、タイの観光市場を多様化させる狙いがあります。
なぜ今、大幅な規制緩和に踏み切ったのか?
観光収入の回復が至上命題
タイにとって観光業は、国の経済を支える極めて重要な柱です。パンデミック以前の2019年には、年間約4,000万人の外国人観光客が訪れ、国内総生産(GDP)の約18%を観光関連収入が占めていました。しかし、パンデミックによる国境閉鎖で観光業は壊滅的な打撃を受け、その回復はタイ経済全体の喫緊の課題となっています。
政府は2024年の外国人観光客数の目標を3,500万人以上と設定しており、今回のビザ緩和は、この目標達成に向けた強力な後押しとなります。特に、巨大な人口を抱える中国とインドをビザ免除対象に加えたことは、観光客数を飛躍的に増加させる起爆剤として大きな期待が寄せられています。
具体的な変更点と注目の新ビザ
ビザ免除:対象国が57から93へ
今回の措置により、93の国・地域のパスポート保持者は、観光目的でタイを訪れる際に事前のビザ取得が不要となり、最大60日間の滞在が許可されます。これにより、旅行の計画が立てやすくなり、短期から中期にかけての滞在を希望する旅行者にとって利便性が格段に向上します。
デジタルノマド必見:「デスティネーション・タイランド・ビザ(DTV)」
今回の発表で、短期観光客だけでなく長期滞在者にとっても画期的な制度が導入されました。それが「デスティネーション・タイランド・ビザ(DTV)」です。
この新しいビザは、特定の場所に縛られずに働くリモートワーカーやデジタルノマド、フリーランサーなどを主な対象としています。
- 滞在期間: 最長5年間(180日ごとに延長手続きが必要)
- 帯同家族: 配偶者と20歳未満の子供を帯同可能
- 就労許可: タイ国内での就労が許可される
- 目的: 高いスキルを持つ人材や長期滞在者を誘致し、彼らが国内で消費活動や事業を行うことで、持続的な経済効果を生み出すことを目指しています。
これまでデジタルノマドの滞在については法的にグレーな部分もありましたが、このDTVの導入により、安心してタイで働きながら暮らす環境が公式に整備されることになります。
今後のタイ観光はどう変わる?予測される影響
観光客数の増加と多様化
ビザ免除対象国の拡大は、間違いなくタイへの観光客数を押し上げるでしょう。特に、これまで手続きの煩雑さからタイ旅行をためらっていた層を取り込むことが可能になります。中国やインドからの旅行者が急増するほか、中南米や東欧からの新たな旅行者の流れも生まれることが期待されます。
長期滞在者の増加と新たな経済効果
DTVの導入は、タイが単なる観光地から「住んで働く場所」へと進化する大きな一歩です。チェンマイやバンコク、プーケットといった都市は、すでに世界中のデジタルノマドから人気を集めていますが、今後はさらに多くの才能ある人々が集まる国際的なハブとなる可能性があります。彼ら長期滞在者は、家賃や生活費といった形で地域経済に直接貢献するだけでなく、新たなビジネスやイノベーションを生み出す源泉ともなり得ます。
期待と同時に課題も
一方で、観光客の急増は、人気観光地におけるオーバーツーリズム(観光公害)の問題を再燃させる可能性もはらんでいます。交通渋滞、環境負荷、インフラへの負担増といった課題に対し、タイ政府がどのように対策を講じていくかが今後の焦点となります。
まとめ:旅行者にとっての新たなチャンス
今回のタイ政府による一連のビザ緩和措置は、パンデミック後の世界において、国際的な人の移動を再び活性化させようとする強い意志の表れです。旅行者にとっては、これまで以上に手軽に、そして長く「微笑みの国」タイの魅力を満喫できる絶好の機会となるでしょう。短期の旅行者から、世界を旅しながら働くデジタルノマドまで、あらゆるスタイルの旅行者にとって、タイは間違いなく最有力候補の一つとなるはずです。

