2024年の旧正月(テト)休暇期間中、ベトナムの旅行市場はかつてないほどの熱気に包まれました。国内外への旅行需要が大幅に増加し、特に「より質の高い体験」を求める旅行者の姿が浮き彫りになっています。今回は、この活況の背景と、今後の旅行トレンドに与える影響について深く掘り下げていきます。
記録的な予約状況と高級志向の高まり
今年のテト休暇における旅行市場の盛り上がりは、具体的な数字にも表れています。ベトナムの大手旅行会社が発表した統計によると、旅行予約のペースは前年比で約10%から15%増加しました。この力強い成長は、パンデミック後の回復基調が本格化していることを示しています。
特に注目すべきは、旅行の「質」に対する意識の変化です。単に目的地へ行くだけでなく、快適で特別な体験を求める傾向が強まっています。その証拠に、ダナン、フーコック、ニャチャンといった国内の人気リゾート地では、多くの5つ星ホテルや高級リゾートがテト期間中に満室となりました。これは、旅行者が宿泊施設やサービスに対して、より高い付加価値を求めていることの表れと言えるでしょう。
旅行トレンドの変化:国内と海外が拮抗、北東アジア人気が急上昇
今年のテト旅行のもう一つの大きな特徴は、海外旅行への関心の高さです。前述の旅行会社のデータでは、予約されたツアーのうち海外旅行と国内旅行の割合はほぼ半々となり、海外旅行が国内旅行と肩を並べるほどの人気を見せました。
海外旅行の行き先トレンド
海外旅行先として特に人気が急上昇しているのが、日本や韓国といった北東アジア地域です。これらの国々は、地理的な近さに加え、独自の文化、美食、ショッピングといった多様な魅力があり、ベトナム人旅行者を強く惹きつけています。また、比較的長期となった休暇を利用して、より遠方への旅行を選択する旅行者が増えていることも、この傾向を後押ししています。
活況の背景にあるもの
この旅行ブームの背景には、いくつかの要因が考えられます。
経済成長と中間層の拡大
第一に、ベトナムの着実な経済成長が挙げられます。所得水準の向上に伴い、旅行に支出できる中間層および富裕層が拡大しました。彼らは可処分所得を、物質的な所有から「体験」という価値へと振り向けるようになっており、旅行はその最も代表的な消費先となっています。
長期休暇の影響
今年のテト休暇が比較的長かったことも、旅行需要を刺激する大きな要因となりました。十分な休暇期間があることで、旅行者は心身ともにリフレッシュできる長期滞在型の旅行や、移動に時間がかかる遠方の目的地を計画しやすくなったのです。
今後の予測と観光業界への影響
ベトナムのテト旅行市場に見られるこの新たな動きは、今後の世界の観光業界にも重要な示唆を与えます。
アウトバウンド市場としてのベトナムの重要性
ベトナムは、観光客を受け入れる「インバウンド大国」としてだけでなく、海外へ旅行する人々を送り出す「アウトバウンド市場」としても、その重要性を急速に高めていくでしょう。特に、日本の観光業界にとって、質の高い体験を求めるベトナム人富裕層・中間層は、非常に魅力的なターゲットとなり得ます。彼らのニーズに応えるパーソナライズされたツアーや、高品質なサービスの提供が今後の鍵となります。
旅行商品の質の競争へ
ベトナム国内および周辺国の旅行業界では、価格競争から「価値競争」へとシフトが進むことが予測されます。ユニークな文化体験、手付かずの自然を満喫するアドベンチャーツアー、ウェルネスを目的としたリトリートなど、旅行者の多様化・高度化するニーズに応える付加価値の高い旅行商品が求められる時代になるでしょう。
今年のテト旅行市場の活況は、ベトナムの人々のライフスタイルと価値観の変化を象徴する出来事です。このダイナミックな市場の動きは、アジア、そして世界の旅行トレンドを占う上で、今後も目が離せないものとなりそうです。

