時計の針が真夜中を指す頃、私の時間は始まる。人々が寝静まり、街が本来の表情を隠す時間。しかし、ここ札幌では、その常識は通用しない。特に、ネオンの光が北国の夜空を焦がす「ススキノ」では、これからが本番なのだ。昼間の顔が、クラーク博士の像に象徴されるような知的で爽やかな青年だとすれば、夜の顔は酸いも甘いも噛み分けた、色気のある大人の男。そのギャップこそが、この街の抗いがたい魅力なのである。
観光客がホテルに戻り、安らかな眠りにつく頃、私はコートの襟を立て、この迷宮へと足を踏み入れる。ビルの隙間から漏れる嬌声、アスファルトを濡らす水、客を待つタクシーの列。五感が刺激され、眠っていた本能がゆっくりと覚醒していくのがわかる。今宵はどんな出会いが、どんな一夜が待っているのか。この街は、訪れる者に常に問いかけてくる。あなたは、この夜をどう遊び、どう生きるのか、と。さあ、北日本最大の歓楽街が、あなたを待っている。
この夜を遊び尽くしたその先には、きっと一生忘れられない北海道の旅があなたを待っているだろう。
深夜の扉を開く前に。札幌ナイトライフの心得

衝動に任せてネオン輝く夜の海へ飛び込むのも悪くない。しかし、大人の男としてはスマートな振る舞いを心掛けたいものだ。札幌の夜、とりわけススキノという名の舞台でトップクラスの観客、いや、最高の役者となるには、いくつか心得ておくべきポイントがある。この街は度量が広いが、不作法な者には決して門戸を開かない。
夜の札幌、その特徴
まず押さえておきたいのは、ススキノの圧倒的な多様性だ。南北に走る札幌駅前通と東西に伸びる月寒通が交差する「ススキノ交差点」を中心に、半径約500メートルの区域に4,000軒以上もの飲食店や遊興施設が隙間なく軒を連ねていると言われる。もはや街というより巨大な遊園地のようだ。
高級クラブやキャバクラが集まるビルの一角があるかと思えば、1杯1,000円未満で楽しめるカジュアルなバーが路地裏に隠れている。最新EDMが鳴り響くクラブの隣では、昭和歌謡が流れるスナックが静かに営業している。そうしたカオスこそがススキノの真髄だ。だからこそ、その日の気分や目的に応じて数多の選択肢から最高の一軒を選ぶ楽しみがある。初心者からベテランまで、あらゆる夜遊びニーズに応える器量を、この街は備えている。
服装規定(ドレスコード)という名のパスポート
夜の街に足を踏み入れる際、最初の関門となるのは服装だ。これは自分がその店にふさわしい客かどうかを示す、言わば無言のパスポートだと言える。
札幌のナイトシーンにおけるドレスコードは、銀座や六本木ほど厳密ではない場合が多い。しかし最低限の基準は存在する。ジャージやスウェット、作業服、サンダルなど過度にカジュアルな格好は、多くの店で入店拒否される可能性が高い。特にある程度格式のあるクラブやバー、高級飲食店では襟付きシャツやジャケットが無難だろう。
高級ブランドで身を固める必要はない。重要なのは「清潔感」である。しわのないシャツや磨かれた靴。それだけで印象は格段に向上する。店側も他の客が不快に感じない客を迎えたいと考えているため、ドレスコードはそのための暗黙のルールなのだ。迷うときは、少しだけお洒落を意識して訪れること。それが札幌の夜を存分に楽しむための第一歩となる。
紳士のポケットに忍ばせたい必須アイテム
夜の冒険には、いくつかの必携アイテムがある。これらがあれば、多くの場面にスマートに対応できるだろう。私がいつも携帯している「夜の七つ道具」をご紹介しよう。
- 身分証明書: これは絶対に欠かせない。クラブや一部のバーでは年齢確認のために提示を求められる。また風俗店利用時も18歳以上である証明が法律で義務付けられている。運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどを必ず携帯しよう。忘れると楽しみにしていた店の扉は閉ざされたままだ。
- 現金: キャッシュレス化が進んだとはいえ、夜の世界ではなお現金が力を発揮する場面が多い。特に小規模スナックやバー、一部風俗店ではカード不可も珍しくない。またスマートにチップを渡す際にも現金は必須だ。最低でも3万円から5万円を財布とは別にポケットに忍ばせておくと安心だ。金の切れ目が縁の切れ目、という言葉が示す通りだ。
- スマートフォンとモバイルバッテリー: 情報収集や地図確認、連絡手段としてスマホは夜遊びの必需品である。しかし最も大事な局面でバッテリー切れは致命的だ。フル充電はもちろん、小型のモバイルバッテリー携帯は現代の紳士の最低限の心得だろう。
- ウコン系ドリンクや胃腸薬: 楽しい夜はつい酒が進んでしまう。翌日の自分への投資として、飲む前や就寝前に一本飲むのが賢明だ。これがあるだけで翌朝の目覚めが大違い。備えあれば憂いなしだ。
- 名刺: 必須ではないが、時には面白い出会いを生むことがある。バーのカウンターで隣の客と意気投合したり、スタッフと良好な関係を築きたい時にさりげなく渡す一枚の名刺は、次の夜への扉を開く鍵となるかもしれない。
予算感という航海図
さて、最も気になるのが予算だ。いったいいくら用意すれば札幌の夜を十二分に楽しめるのか。これは答えが難しいが、大まかな目安を航海の地図として示そう。
- 1万円コース(軽く飲むプラン): 気軽なバーで2~3杯楽しみ、締めにラーメン。これなら1万円でもお釣りがくるはずだ。ススキノの空気を味わう入門編に最適だ。
- 3万円コース(標準プラン): 少し上質なバーでカクテルを楽しんだ後、キャバクラやガールズバーで1セット(60分~90分)遊ぶ。またはショーパブの華やかなステージを堪能する。この予算があればススキノの夜の華やかさを体感できるだろう。
- 5万円以上コース(満喫プラン): 高級クラブでキャストとの会話をゆっくり楽しんだり、風俗店で心ゆくまで癒やされる。ここまでくればあなたはススキノの夜の主役の一人だ。遊び方によっては無制限だが、5万円ほど用意すれば多くの欲望は叶う。
大事なのは、事前に予算を決めておくこと。そしてその枠内で最大限楽しむ方法を考えることだ。無計画な散財は楽しい夜の思い出を苦い後悔に変える。冷静な計画と情熱、その両方があってこそ大人の夜遊びが成立するのだ。
ススキノの光と影。ジャンル別・夜の遊び場探訪
準備が整ったら、いよいよススキノの迷宮へと足を踏み入れてみよう。この街には、あらゆる欲望を満たすための無数の扉が待ち受けている。静かにグラスを傾けたい夜もあれば、熱狂の渦に飛び込みたい夜もあるだろう。ここでは、代表的な夜の遊び場を私の主観を交えつつご案内しよう。
オーセンティックバーで味わう、北の夜の粋
ススキノの喧騒に疲れたなら、重厚な扉の奥に広がる静寂の世界に身を委ねるのもまた一興。この街には、全国のバーファンが足を運ぶほどの世界レベルのオーセンティックバーがいくつも存在する。磨き上げられたカウンター、バックバーに整然と並ぶボトルたち、そしてバーテンダーの流麗な動き――これらが一体となって、究極の空間を作り上げている。
例えば、ニッカウヰスキーの聖地と称される「THE NIKKA BAR」。重厚な木製カウンターに腰掛け、竹鶴や余市をストレートで味わうひとときは、まさに至福の瞬間だ。琥珀色の酒が喉をくすぐる感覚と、窓外に煌めくネオンとの対比が、自分が特別な場所にいることを強く実感させてくれる。
また、日本のバー文化の重鎮、山崎達郎氏が創業した「BARやまざき」。伝統を受け継ぐバーテンダーが創り出すカクテルは、一杯ごとに芸術と呼ぶにふさわしい。彼らとの会話もバーの楽しみのひとつであり、その日の気分を伝えれば、あなたのためだけの一杯を創造してくれるだろう。
バーでのスマートな振る舞い方
本格的なバーを訪れる際には、いくつかのマナーを知っておくことで、より豊かにその空間を味わえる。
- 予約とチャージ: 人気店や週末は、事前に電話で空席を確認するのが賢明だ。また、多くのオーセンティックバーでは「チャージ(席料)」が発生することを覚えておこう。料金の目安は1000円から2000円ほどで、これは空間やサービスの品質に対する対価である。
- オーダーの仕方: メニューがなくても焦る必要はない。まずはジントニックやマティーニといった定番カクテルを注文するのもよいし、「さっぱりした味を」「甘みのあるフルーツを使ったものを」といった形で好みを伝えるとベストだ。バーテンダーはあなたの味の案内人となってくれる。
- 過ごし方のマナー: バーは酒と会話を楽しむ場所だ。大声で騒いだり、泥酔して他の客に絡むのは最も無粋な行為だ。携帯電話での通話も控え、グラスを傾けながら静かな時間の流れに身を任せることが、オーセンティックバーの正しい楽しみ方である。
エンターテインメントの殿堂、ショーパブ&ニューハーフの世界
札幌の夜のエンタメを語るうえで、ショーパブの存在は欠かせない。特にニューハーフショーの高いクオリティは全国的にも知られており、一度体験すればその華麗さとエネルギーに魅了されること間違いなしだ。笑いと感動、そして圧巻のダンスパフォーマンスは、一流劇場さながらの体験を提供してくれる。
ススキノを代表する「LaLaToo(ララツー)」などの店舗では、毎晩繰り広げられる豪華絢爛なショーに圧倒されるだろう。美しいキャストたちが最新のヒット曲や懐かしい名曲に合わせて息の合った歌とダンスを披露する。ショーの間の合間には彼女たちが各テーブルに付き、軽妙で洒脱なトークで場を盛り上げてくれる。その機転の早さとユーモアは感服するばかりだ。
ショーパブを120%楽しむためのポイント
この非日常的な空間を最大限楽しむため、押さえておきたいポイントがある。
- 予約は必須、公式サイトから: 人気店は週末のみならず平日でも満席になることが多いため、必ず事前予約しよう。公式サイトのウェブ予約が最も確実で、料金体系(ショーチャージ、飲み放題、サービス料など)も明確に掲載されているため安心だ。電話予約も可能だが、誤解を防ぐ意味でもウェブ予約がおすすめ。
- 禁止事項を遵守する: ショーはキャストたちのたゆまぬ努力の結晶だ。その神聖な時間を邪魔する行為は厳禁である。特に、ショー中の写真や動画撮影は厳しく禁止されている場合がほとんど。また、ステージへの無断立入りや演者への接触も絶対に避けねばならない。ルールを守ることが真のエンターテインメントを楽しむ秘訣だ。
- チップで感謝を示す: ショーに感動したら、キャストへの感謝の気持ちをチップとして伝えるのも良い。店舗によっては専用のレイ(花の首飾り)を購入し、お気に入りのキャストにかけるシステムもある。義務ではないが、心を形にすることで演者との距離が縮まり、忘れがたい体験となるだろう。
熱狂に身を委ねる、クラブ&ライブハウス
理性を少し脇に置き、身体が求めるまま音楽の波に乗りたい夜には、クラブやライブハウスの扉を開けるのが最善だ。ススキノには最新のEDMが響き渡る大型クラブから、特定音楽ジャンルに特化した小規模クラブまで、多彩なスポットが点在している。
例えば「KING∞XMHU(キングムー)」や「RIVIERA SAPPORO(リビエラサッポロ)」のような大型クラブは、週末になると数百人規模の若者たちでフロアが埋まる。有名DJのゲスト出演も頻繁で、その熱量は圧倒的だ。落ち着いた雰囲気を希望するなら、ジャズやソウルの生演奏が楽しめるライブハウスもおすすめだ。
クラブ初心者への心得
慣れない環境に戸惑うかもしれないが、ポイントを押さえれば誰でも楽しめる。
- 入場からドリンクまで: 入店時にはIDチェックがあるため、身分証明書は必携だ。入場料を支払うと手にスタンプやリストバンドが付けられ、多くのクラブではドリンクチケットが渡される。まずはこれを使って一杯飲み、フロアの空気に慣れることから始めよう。
- 荷物と貴重品の管理: 踊る際に大きな荷物は邪魔になるし盗難リスクもあるため、コインロッカーやクロークを活用しよう。スマホや財布などの貴重品は必ず身につけること。
- トラブル回避の心得: 音楽と酒で感情が高ぶることもあるが、もしトラブルが起きそうならすぐ場所を離れ、セキュリティスタッフに助けを求めよう。また、自分のグラスから目を離さないこと。残念ながら薬物混入の事件も皆無ではないため、自分の安全は自分で守ることが鉄則だ。
- イベント情報はSNSでチェック: クラブのイベントは日々変わるため、訪問前に公式サイトやInstagram、X(旧Twitter)などで出演DJや音楽ジャンル、料金形態を調べておこう。好みに合わないイベントに訪れてしまうとせっかくの夜が台無しになる。
少しディープな領域へ。ススキノの風俗案内
最後に、ススキノの夜を語るうえで避けて通れないテーマがある。北日本最大の歓楽街は同時に国内有数の風俗街でもある。そこには男たちのさまざまな欲望を満たす、甘美でありながら一歩間違えれば危険も潜む世界が広がっている。この領域に足を踏み入れるには、他の遊び場以上に慎重さと知識が必要となる。
札幌の風俗は、ソープランド、ヘルス、デリバリーヘルス、メンズエステなど多岐にわたり、それぞれサービス内容や料金体系が異なる。まずは自分が求めるものをはっきりさせることが大切だ。そして最も警戒すべきは「ぼったくり」と「悪質な客引き」の存在である。甘い言葉に乗せられて料金不明瞭な店舗に入れば、楽しいはずの夜が悪夢に変わることもあるため注意が必要だ。
安全に大人の遊びを楽しむための心得
このディープな世界を安全に渡るには、確かな羅針盤が不可欠だ。以下のルールを心に留めてほしい。
- 情報収集は最強の武器: 衝動的に街角の客引きについていくのは最も危険だ。事前にインターネットの口コミサイトや専門情報サイトで店の評判や料金体系を徹底的に調べよう。公式サイトがあり明朗な料金表示がある店舗は比較的信頼できる。さっぽろ観光公式サイトには直接的な風俗情報はないが、地域の安全情報などを把握する上で参考になる。
- 料金システムを必ず確認: 優良店なら入店前やサービス前に料金体系の説明があるはずだ。「基本料金に含まれるサービス内容」「オプション料金の有無」を納得いくまで確認し、不明瞭な点があればその店は避けるのが賢明だ。
- トラブル時の対応: 高額請求などのトラブルに遭遇しても、安易に支払うのは禁物だ。毅然と料金の支払いを拒み、警察に相談する意思を示すことが重要である。多くのぼったくり店は警察介入を恐れるため効果的だ。さらに、国民生活センターや消費生活センターも相談窓口として機能する。国民生活センターは悪質なホストクラブやメンズコンセプトカフェに関する注意喚起を出しており、手口は悪質風俗店にも共通しているため知識として役立つだろう。
この世界はルールを理解し節度を持って楽しめば、最高の癒やしを提供してくれる。一方で、一歩誤れば深い闇に飲み込まれる危険もある。光と影が交錯するススキノの深淵を渡るには、紳士としての知性と理性が不可欠なのだ。
深夜の胃袋を満たす。〆の一杯から朝飯まで

ススキノの夜は深く長い。酒と会話、音楽と熱狂に身を委ねた後、ふと我に返ると鋭い空腹に襲われることがある。しかし心配は無用。この街は、眠らない遊び人たちの胃袋を満たす準備が整っている。ラーメン、スープカレー、ジンギスカン。札幌の美食は、むしろ深夜にその真価を発揮するのだろう。
札幌の〆文化、夜な夜なラーメン
「札幌で飲んだら、〆はやっぱりラーメンだべさ」と地元民が口を揃えるように、ラーメンはこの街の夜遊びに欠かせない存在だ。ススキノには、深夜どころか明け方まで営業しているラーメン店が数多くあり、その時の気分に合わせて選べる楽しみがある。
全国的に名高い「すみれ」や「けやき」の濃厚な味噌ラーメンは、飲んだ後の疲れた身体にじんわり染み入る、まさに王道の味わいだ。表面にラードの膜が張った熱々のスープを一口すすると、アルコールで鈍った味覚が一気に目覚め、生きている実感を取り戻せるだろう。
だが、札幌の〆ラーメンは味噌だけに限らない。行列が絶えない人気店「信玄」が提供する、あっさりしつつも深いコクの塩ラーメン「信州」も見逃せない。また、地元民に愛される「いそのかづお」の「札幌ブラック」は、その漆黒の見た目に反して意外にもまろやかな醤油味で、飲んだ後の胃に優しく染み渡る。どの店も深夜には同じく夜を遊び尽くした猛者たちで賑わい、その一体感も〆ラーメンの醍醐味の一つとなっている。
ラーメンだけじゃない、深夜の美食選択肢
「今日はラーメン気分じゃない」、そんな夜ももちろんある。食の都・札幌は、そんな気まぐれな胃袋にも余裕で応えてくれるのだ。
- スープカレー: 札幌が誇るソウルフードであるスープカレーも、深夜にこそ食べたくなる一品。スパイスの刺激が、アルコールに鈍った頭をシャキッと目覚めさせてくれる。「スープカレーGARAKU」や「奥芝商店」など、深夜営業の名店も多数存在。野菜がゴロゴロ入り、じっくり煮込まれたチキンレッグが、遊び疲れた身体にエネルギーを注いでくれる。
- ジンギスカン: 「こんな時間に焼肉?」と思うかもしれないが、札幌ではそれが当たり前だ。特にジンギスカンは余分な脂が落ちてヘルシーなので、深夜でも罪悪感なく楽しめる。「だるま」のような名店は、深夜であっても地元客や観光客で賑わう。カウンター越しに七輪を囲み、新鮮なラム肉を焼く光景。立ち上る煙と香ばしい香りが、食欲を刺激してやまない。ついついビールをおかわりするのも、もはや避けられない流れだ。
- 海鮮: 北海道の恩恵で、深夜でも新鮮な海鮮にありつける店が存在する。24時間営業の寿司屋や海鮮居酒屋では、その日の旬の握りや刺身、海鮮丼をつまみに日本酒をゆっくり嗜むのもまた格別である。一日の締めくくりに北の海の幸で贅沢を味わう。これ以上の幸福はなかなかないだろう。
朝まで営業の居酒屋で語り明かす
始発電車まではまだ時間がある。あるいは、飲み足りない仲間たちと夜の続きを語りたい。そんなとき、朝まで営業の居酒屋が都会のオアシスとなる。ススキノには、夜明けを待つ人々のための安らぎの場がいくつも存在する。
特別な料理があるわけではないかもしれない。しかしそこには、夜の終わりを惜しむ人々の独特な空気が満ちている。隣のテーブルからは今日の成果を誇らしげに話す若者たちの声。カウンターでは店のママに愚痴をこぼす常連客。そんな人間模様を肴に酒を飲む時間は、どこか心地よい。夜が白み始め、窓の外から鳥のさえずりが聞こえてくるころ、ようやく長い夜の終幕を感じるのだ。そして心の中で「また明日」とつぶやきながら、静かに店を後にするのである。
夜の街の歩き方。安全に、そしてスマートに楽しむために
ススキノは、訪れた人々に無限の快楽を約束する魅惑のエリアだ。しかし、光が強ければ強いほど、その陰もまた濃くなるのが世の常である。この街を心から満喫するためには、いくつかのリスクを理解し、それを避けるための知識を身につけておくことが不可欠だ。無防備な旅人はハイエナの餌食となりがちだが、賢い紳士は常に危険を察知し、巧みに回避するものだ。
客引きとの適切な付き合い方
ススキノのメインストリートを歩いていると、ほぼ確実に客引きから声をかけられるだろう。「お兄さん、いいお店ありますよ」「女の子も安くしますよ」など、その甘い誘いは時に魅力的に響くかもしれない。しかしぜひ覚えておきたいのは、優良店は路上で客引きをしないという揺るぎない事実だ。
彼らが案内する店は、高額な料金を請求するぼったくり店である可能性が極めて高い。または、写真とは全く違う女性が出てくる、いわゆる「写真詐欺」の店であることも少なくない。客引きとの正しい付き合い方は、ただ一つ。「関わらないこと」だ。
- スマートな断り方: 目を合わせず、黙って通り過ぎるのが最も効果的だ。しつこく絡まれた際には、「店は決まっています」と、はっきりとしかし穏やかな口調で断ろう。感情的に「うるさい!」などと言い返すと、かえってトラブルを招く恐れがある。常に冷静かつスマートに振る舞うことが肝心だ。
- 「無料案内所」の利害: 街中に点在する「無料案内所」は、一見すると安全な情報源のように思える。確かに、その紹介する店の中には優良店もあるだろう。しかし、案内所は店から紹介料を受け取って運営されているビジネスモデルを理解しておく必要がある。つまり、客にとって最善の店ではなく、案内所にとって利益の高い店を推奨するケースがあるのだ。あくまで参考程度に留め、最終判断は自分自身で下すべきだ。なお、北海道では「客引き行為等の防止に関する条例」が施行されており、悪質な客引きは取り締まりの対象となっている。毅然たる態度を崩さないことが重要だ。北海道警察の公式サイトにも、この条例の詳細が掲載されているため、一読しておくとよいだろう。
ぼったくり被害を防ぐための心得
客引きに続き警戒すべきは、ぼったくり被害だ。楽しい夜の思い出が、一枚の請求書で悪夢に変わることもある。そうしたトラブルを避けるため、以下のポイントは必ず守ってほしい。
- 料金が不明瞭な店には決して入らない: これは絶対の掟だ。入店前に、セット料金、チャージ料、サービス料、税金など、合計でいくらかかるのか必ず確認しよう。「時価」としか書かれていない店は論外だ。「飲み放題、歌い放題で5000円ピッタリ!」という甘い宣伝文句の裏には、高額なチャージやサービス料が隠れていることが多い。
- クレジットカードは軽々しく渡さない: 支払い時にカードを店の奥に持っていかれる場合は特に注意が必要だ。スキミング被害のリスクもゼロではない。支払いは必ず自分の目の前で行ってもらうのが基本で、可能ならば現金で支払うのが最も安全である。
- 不当な請求に屈しない: 仮に法外な請求を受けたとしても、恐怖から支払ってはいけない。まず請求内容の明細を求め、納得できない点があれば冷静に説明を要求しよう。相手が威圧的になっても決してひるんではいけない。「警察を呼びます」の一言が、最強の切り札になることもある。
終電後の安全な帰宅術
ススキノの夜は、終電の時間など意に介さず更けていく。気づけば公共交通機関はすべて運行を終えているが、安心してほしい。この街には、夜遅くまで遊んだ人々を安全に帰宅へと導くための仕組みが整っている。
- タクシーの活用: 最も一般的な移動手段はタクシーだ。ススキノ交差点付近や主要な通り沿いには、深夜でも多数のタクシーが客待ちしている。ただし、金曜・土曜の深夜2時~3時頃は帰宅客が集中し、タクシー乗り場に長い列ができることもある。時間に余裕を持つか、大通りから一本入った場所で流しのタクシーを捕まえるのが賢明だ。深夜22時から翌朝5時までは、深夜割増料金(通常料金の20%増)が適用される点も覚えておこう。
- 運転代行サービスの利用: 車でススキノを訪れて酒を飲んでしまった場合は、運転代行サービスを活用しよう。プロのドライバーが自分の車を運転し、本人は助手席や後部座席で安全に宿泊先まで帰れる。飲酒運転は自分の人生を破滅させる愚かな行為であり、絶対に避けなければならない。
- 徒歩圏内の宿泊施設を選ぶ: 最も賢明なのは、終電を気にせずに済む場所に宿を取ることだ。ススキノ周辺にはビジネスホテルから高級ホテルまで多種多様な宿泊施設がそろっている。宿泊費が多少高くても、深夜のタクシー代や時間のロスを考慮すれば、結果的に経済的かつ効率的な場合が多い。札幌への夜遊びを主目的にするなら、ホテル選びは最重要戦略の一つと言える。
北国の夜に備える体調管理
最後に、決して忘れてはならないのが自己管理である。特に冬の札幌の夜は、本州の人々が想像する以上に厳しい環境だ。
- 万全の防寒対策を: マイナス10度以下になることも珍しくない冬の夜に、薄着で出かけるのは自殺行為と言っても過言ではない。暖かいインナー、厚手のコート、マフラー、手袋、そして耳まで覆う帽子は必須だ。また、雪道は非常に滑りやすいため、滑りにくいソールの冬用靴を用意しよう。酔った足元で転倒して骨折などすれば、せっかくの楽しい旅行が一瞬で台無しになる。
- 飲み過ぎに注意を: 楽しい雰囲気や美味しいお酒はつい自分の限界を超えさせてしまうものだ。自分のペースを守りながら、適度に水を飲む「和らぎ水」の習慣を取り入れよう。泥酔は判断力を鈍らせ、トラブルに巻き込まれるリスクを増大させるだけでなく、急性アルコール中毒など命に関わる事態を招くこともある。大人の男は、自分の飲酒量をしっかり把握しているものだ。
安全と健康が守られてこそ、札幌の夜はあなたに最高の笑顔を向けてくれるのだ。
朝焼けのススキノで思うこと。一夜の終わりと始まり

午前5時。かつて燃え盛っていたネオンの輝きは嘘のように衰え、街は深い青と朝焼けのオレンジが混ざり合う、幻想的なグラデーションに包まれている。これまで鳴り響いていた騒音は遠ざかり、かわりに聞こえてくるのはカラスの鳴き声と、夜通し街を清めてきた清掃車の音だけだ。
昨夜、欲望とエネルギーに満ちあふれていた人々はもうどこにもおらず、一面のアスファルトには、一夜の宴の証としてタバコの吸い殻や空き缶が寂しげに散らばっている。この祭りの後のような静けさとわずかな物悲しさが入り混じる時間帯。私はこの瞬間を好んでいる。
ふと目を向けると、市場へ向かうトラックが新鮮な魚介の香りを漂わせながら通り過ぎていく。ビルの裏口からは夜の仕事を終えたであろう女性たちがあくびをしながら出てきて、迎えの車に乗り込んでいく。そして、新聞配達のバイクが新しい一日の始まりを告げるように軽快なエンジン音を響かせる。
夜が明け、朝が訪れる。眠らぬ街ススキノも、ほんのわずかな時間だけまどろみに包まれる。この街で繰り広げられた数えきれないドラマは朝焼けの中に溶け込み、次なる夜のためのエネルギーを蓄えていくのだ。
私が追い求めるのは単なる享楽ではない。街が表情を変えるそのひとときに立ち会うこと。夜の世界で働き、生きる人々の息遣いを感じること。それこそが、ミッドナイト・ウォーカーとしての私の旅の真の目的である。
札幌の夜は訪れた者の度量を試す。ただ流されるだけでは、表面的な姿しか見えないだろう。しかし、ほんの少しの知識と勇気、そして街への尊敬の念を持って向き合えば、この北の都はあなたの人生観を揺さぶるほど深く、忘れがたい一夜を見せてくれるに違いない。
さあ、東の空が白み始めた。私の活動時間も間もなく終わりだ。コートの襟をもう一度直し、私は朝の光の中へと溶け込んでいく。次の夜、どこかの街角でまたお会いしよう。札幌の夜に、乾杯。

