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持続可能な航空燃料(SAF)が拓くエコな空の旅 – 業界団体が政策支援を要請、未来のフライトはどう変わる?

世界の航空業界が、環境負荷の少ない未来のフライトを実現するための重要な一歩を踏み出そうとしています。2024年3月19日、米国のビジネス航空協会(NBAA)は、持続可能な航空燃料(SAF)の生産と供給を拡大するため、議会に対して税制優遇措置の強化などを求めるロビー活動を行いました。この動きは、旅行者である私たちにとっても、未来の空の旅のあり方やコストに直結する重要なニュースです。

目次

なぜ今、SAFが注目されるのか?

飛行機は現代の旅行に欠かせない交通手段ですが、同時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を排出します。世界のCO2排出量のうち、航空業界が占める割合は約2〜3%とされており、業界全体で脱炭素化への取り組みが急務となっています。

その切り札として期待されているのが「持続可能な航空燃料(SAF)」です。

SAFとは?

SAFは、廃食油、植物、都市ごみ、藻類などを原料として製造される代替燃料です。従来のジェット燃料と混合して使用でき、既存の航空機やインフラをそのまま利用できる利点があります。最大の特徴は、原料の収集から製造、燃焼までのライフサイクル全体で、CO2排出量を従来の燃料に比べて最大で約80%も削減できる点です。国際航空運送協会(IATA)が掲げる「2050年までのCO2排出量実質ゼロ」という目標達成に向けて、SAFは最も現実的で効果的な解決策と見なされています。

SAF普及を阻む「コスト」と「供給」の壁

環境性能に優れたSAFですが、その普及には大きな課題があります。

  • コストの問題: SAFの製造コストは、依然として従来のジェット燃料の2倍から5倍以上と非常に高価です。このコストは航空会社の経営を圧迫し、将来的には航空券価格に転嫁される可能性があります。
  • 供給量の不足: もう一つの大きな課題は、圧倒的な供給量不足です。IATAによると、2023年に生産されたSAFの量は世界のジェット燃料需要のわずか0.2%程度に過ぎません。需要に対して生産体制が全く追いついていないのが現状です。

こうした課題を解決するため、航空業界は政府による強力な支援策が不可欠だと主張しています。今回のNBAAによる税額控除の強化要請は、生産者へのインセンティブを高め、投資を促進することで、SAFの生産量を増やし、価格を引き下げることを目的としています。

世界の動向と未来のフライトへの影響

SAF普及に向けた動きは、米国だけでなく世界的な潮流となっています。

  • 欧州連合(EU): 「ReFuelEU Aviation」規則により、EU域内の空港で給油される航空燃料にSAFを一定割合で混合することを義務付けています。その割合は2025年の2%から段階的に引き上げられ、2050年には70%に達する計画です。
  • 日本: 2030年までに国内の航空会社が使用する燃料の10%をSAFに置き換えるという目標を掲げており、国産SAFの製造・供給体制の構築を急いでいます。

これらの政策は、SAFの市場を創出し、安定供給への道筋をつけるものです。

私たちの旅行はどう変わる?

短期的には、SAFの導入コストが「SAFサーチャージ」などの形で航空券料金の一部に上乗せされる可能性があります。すでに一部の航空会社では、乗客が任意でSAF利用分を寄付できるプログラムを開始しています。

しかし長期的には、政策支援や技術革新によってSAFの生産が拡大し、コストが下がれば、環境に配慮したフライトが特別な選択ではなく「当たり前」になる未来が期待されます。航空会社を選ぶ際に、燃費の良い機材を使っているか、SAFを積極的に導入しているか、といった環境への貢献度が新たな基準の一つになるかもしれません。

航空業界の脱炭素化への挑戦は、まだ始まったばかりです。今後の各国の政策や技術開発の動向が、私たちの未来の旅の質とスタイルを大きく左右することになるでしょう。

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この記事を書いたトラベルライター

SimVoyage編集部は、世界を旅しながら現地の暮らしや食文化を体感し、スマホひとつで快適に旅する術を研究する旅のプロ集団です。今が旬の情報から穴場スポットまで、読者の「次の一歩」を後押しするリアルで役立つ記事をお届けします。

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