北緯78度。北極点まで、わずか1,300キロメートル。そこには、私たちの日常とは全く異なる時間が流れる場所があります。夏には太陽が沈まない「白夜」が続き、冬には太陽が昇らない「極夜」が世界を深い闇と静寂で包み込む。そんな極限の環境に、人々が暮らす「世界最北の街」が存在することをご存知でしょうか。その名は、ノルウェー領スヴァールバル諸島に位置する「ロングイェールビーン」。ここは、ホッキョクグマが人間の数を上回り、街の外へ出るにはライフル銃の携帯が義務付けられる、まさに冒険のフロンティアです。氷河が削り取った険しい山々に囲まれ、フィヨルドの深い青がどこまでも広がる手付かずの大自然。この記事では、そんな神秘とスリルに満ちた世界最北の街、ロングイェールビーンへの旅を計画しているあなたのために、アクセス方法から服装、必須のアクティビティ、そしてこの地ならではのユニークなルールまで、旅のすべてを徹底的に解説します。さあ、一生忘れられない冒険への扉を、一緒に開いてみませんか?
極北の地を訪れた後は、ノルウェーのフィヨルドが織りなす壮大な自然の秘密に迫る旅もおすすめです。
「世界最北の街」ロングイェールビーンとは?

ロングイェールビーンは、ノルウェー本土と北極点のほぼ中間に浮かぶスヴァールバル諸島の中で最大の島、スピッツベルゲン島に位置する行政の中心地です。人口は約2,500人ですが、この島全体には約3,000頭ものホッキョクグマが生息しているとされており、住民数よりもホッキョクグマの数が多いという、世界的にも稀有な地域となっています。
地理と気候:極夜と白夜が織り成す非日常の世界
この街の最大の特徴は、その極端な気候と独特な日照時間にあります。北緯78度という非常に高い緯度に位置しているため、季節ごとに太陽の動きが大きく変わるのが特徴です。
白夜(ポーラーデイ)
4月下旬から8月下旬にかけて、太陽が一日中沈まない「白夜」の期間が続きます。真夜中でも昼のような明るさが保たれ、体内時計がやや混乱するかもしれません。この時期は気温もプラスに転じ、雪解けが進むことでハイキングやカヤックといった夏のアウトドアアクティビティが活発になります。ただし平均気温は5℃前後と低めで、日本の春先の装いでは寒さを感じるため、しっかりした防寒着が欠かせません。
極夜(ポーラーナイト)
10月下旬から2月中旬にかけては、太陽が全く姿を現さない「極夜」の時期です。街は一日中深い闇に包まれ、静寂が広がりますが、その分オーロラの出現率が著しく高まります。気温は時に-20℃を下回ることも珍しくなく、極寒の環境となりますが、その静けさや星空、そしてオーロラの美しさは訪れる人を魅了します。この時期のみ体験できる犬ぞりやスノーモービル、氷の洞窟探検などは、まさに極北ならではの魅力的なアクティビティです。
歴史と文化:炭鉱の町から研究と観光の中心へ
ロングイェールビーンの歴史は20世紀初頭に始まった石炭採掘が起源です。アークティック・コール・カンパニーを設立したアメリカ人のジョン・マンロー・ロングイヤーにちなみ、街の名前が付けられました。街のあちこちには、当時の石炭採掘に関連する木造建築などの遺構が残り、独特の風景を形成しています。現在では多くの鉱山が閉鎖され、主な産業は北極研究と観光に移行しました。世界中から科学者が集うスヴァールバル大学センター(UNIS)があり、多国籍な学術都市としての顔も持っています。また、40カ国以上の人々がビザなしで居住や就労が認められる「スヴァールバル条約」の存在が、この地のユニークさを際立たせています。
独自のルールと日常生活
極北のこの土地には、私たちの常識では想像しにくい独特の法律や慣習が存在します。これらを理解することは、ロングイェールビーンの暮らしを知るうえで非常に重要です。
「死ぬことが許されない街」の真実
よく話題に上るこの表現ですが、正確には「島内で亡くなった方の遺体を埋葬できない」というルールです。これは永久凍土の影響で、遺体が腐敗せず分解されないためで、過去に埋葬された遺体からウイルスが検出されたこともあります。こうした理由から、1950年代以降、島内での埋葬は禁止されています。高齢者や末期の患者はノルウェー本土の施設に移されるのが一般的です。これはこの厳しい自然環境が生み出した、生命にかかわる特異なルールだと言えるでしょう。
猫の飼育禁止
猫好きな人には残念かもしれませんが、ロングイェールビーンでは猫の飼育が禁止されています。これは北極圏の繊細な生態系、特に多くの種類の野鳥を守るための措置です。外来種の猫が野生化し、在来の鳥類を脅かすことを防ぐためのルールです。
街の外ではライフル携帯が必須
前述のとおり、この島は多くのホッキョクグマが生息しています。したがって、ロングイェールビーンの市街地を一歩出ると、ホッキョクグマから身を守るためにライフルの携帯が法律で義務付けられています。観光客が個別に銃を所持・レンタルするのは非常に複雑で困難なため、街の外での活動は必ず資格を持った武装ガイドが同行するツアーに参加しなければなりません。これは旅行者自身の安全を守るための必須ルールです。安全な旅をサポートする情報は、スヴァールバル観光局の公式サイトで豊富に提供されていますので、渡航前の確認をおすすめします。
ロングイェールビーンへのアクセス方法徹底解説
世界最北の街と聞くと、アクセスが非常に難しい印象を持つかもしれません。しかし実際には空路が整備されており、計画次第で誰でも訪れることが可能です。ここでは、日本からロングイェールビーンへのアクセス方法を具体的にご紹介します。
日本からのフライトプラン
日本からロングイェールビーン(空港コード:LYR)への直行便は運航されていません。少なくとも2回以上の乗り継ぎが必要です。一般的なルートとしては以下の経路が多く利用されています。
例: 日本(成田や羽田など) → ヨーロッパの主要ハブ空港(コペンハーゲン、ヘルシンキ、アムステルダム等) → ノルウェー・オスロ → ロングイェールビーン
オスロからロングイェールビーンまでは、主にスカンジナビア航空(SAS)が定期便を運航しています。夏季は毎日、冬季でも週に数便が利用可能です。乗り継ぎ時間を含めると、総所要時間は20時間以上となるため、余裕を持った計画が不可欠です。
航空券の価格はシーズンや購入時期によって大きく変動しますが、往復で大よそ20万円から40万円程度が目安となります。特に夏季は観光シーズンのため価格が上がりやすく、早期予約をおすすめします。
チケット予約と注意事項(行動の流れ)
航空券の検索方法
SkyscannerやGoogle Flightsなどの航空券比較サイトを活用すると、複数航空会社の組み合わせから最適なルートと料金を効率よく探せます。複数のサイトを比較検討し、条件に合致したチケットを選びましょう。
乗り継ぎ時間の確保
国際線の乗り継ぎでは想定外の遅延が起こる場合があります。特にオスロでの乗り継ぎは、最低でも2時間以上、理想的には3時間以上の余裕を確保することを強く推奨します。なお、ロングイェールビーン行きの便は本数が限られているため、乗り遅れると次便は翌日以降となるケースもあります。
パスポートと入出国手続き
スヴァールバル諸島はノルウェー領ですが、シェンゲン協定の管轄外に位置しています。ただし渡航にはシェンゲン協定加盟国であるノルウェーのオスロを経由する必要があります。日本国籍の旅行者は観光目的の短期滞在であればビザは不要ですが、パスポートの有効期限がシェンゲン圏出国時点から3ヶ月以上残っていることが望ましいです。オスロ空港では国内線ターミナルへ移動する前に出入国審査が行われます。また、ロングイェールビーン行きの搭乗時にも再度パスポートの提示が求められるため、すぐに取り出せる状態にしておきましょう。
ロングイェールビーン空港から市内へのアクセス
ロングイェールビーン空港は市街地から約5kmの距離に位置しています。市内への主な移動手段は空港シャトルバスです。
空港シャトルバス
便の到着時間に合わせて運行しており、空港出口のすぐそばから乗車可能です。市内の主要ホテルやゲストハウスの前まで送迎してくれるため便利です。料金は片道およそ100ノルウェークローネ(約1,500円)で、乗車時にクレジットカードで支払えます。予約は不要で、到着後にそのままバスに乗れます。乗車時に、行き先のホテル名を運転手に伝えてください。
旅の準備を万全に!持ち物リストと服装ガイド

極北の地への旅を成功させるには、適切な準備が不可欠です。特に服装は快適さと安全を左右する重要なポイントです。ここでは、季節ごとの服装のポイントと必携アイテムを詳しく解説します。
季節別の服装ガイド
ロングイェールビーンの気候は非常に変わりやすく、強風が特徴です。実際の気温よりも体感温度はかなり低く感じられます。基本的に「レイヤリング(重ね着)」を活用し、体温調整がしやすい服装を心がけることが大切です。
夏(6月~8月)の服装
白夜の時期は平均気温がおよそ3℃から7℃で、日差しはあるものの冷たい風が吹き抜けます。
- アウター: 防水かつ防風性に優れたジャケット(たとえばゴアテックス素材)が必携です。雨や氷河歩行時の濡れや冷たい風を防ぎます。
- ミドルレイヤー: 保温力がある薄手のダウンやフリースなど、気温に合わせて着脱しやすいものが便利です。
- ベースレイヤー: 吸湿速乾性の高い長袖のインナーがおすすめです。化学繊維やメリノウール製を選び、汗で身体を冷やさないようにしましょう。コットンは乾きにくく冷えるため避けるのが賢明です。
- ボトムス: トレッキングパンツが基本で、寒いときには保温タイツを下に重ねます。防水性のあるオーバーパンツがあれば、水しぶきのかかるボートツアーなどで安心です。
- 足元: 防水ハイキングシューズやトレッキングブーツが最適で、滑りにくいソールと足首までカバーするタイプを選びましょう。厚手のウール靴下も欠かせません。
- 小物類: ニット帽や手袋は夏でも必須です。白夜の影響で24時間紫外線にさらされるため、サングラスと日焼け止めも忘れずに用意してください。
冬(11月~3月)の服装
極夜の季節は気温が-15℃から-30℃まで下がり、徹底した防寒対策が求められます。
- アウター: 極地用のダウンジャケットやパーカで、-30℃以下にも耐えられる高品質なものを選びましょう。
- ミドルレイヤー: 厚手のフリースやダウンセーターを着用し、夏以上に保温性を重視します。
- ベースレイヤー: 厚手のメリノウール素材の上下インナーが最適です。
- ボトムス: 中綿入りのスノーパンツやスキーウェアを履き、その下に高保温性のタイツを必ず着用します。
- 足元: 防寒・防水機能があるスノーブーツ(例:ソレル)が理想的です。つま先に余裕があり、厚手の靴下を重ねられるサイズ感が望ましいです。靴底からの冷えを防ぐため、インソールをプラスするのも効果的です。
- 小物類: 凍傷予防としてフェイスマスクやバラクラバ(目出し帽)が必須です。手袋は薄手のインナーグローブと保温性の高いミトンを重ねると最も暖かくなります。ニット帽も忘れずに。極夜のため暗く、手を使わずに済むヘッドライトがあると便利です。犬ぞりやスノーモービル体験では、専用防寒装備のレンタルがありますが、下に着る自分の防寒着も重要です。
必須およびあると便利な持ち物リスト
- 必須の持ち物
- パスポート、航空券(電子チケットの控え)
- クレジットカード(ノルウェーはキャッシュレス社会が進んでおり、多くの場所で利用可能)
- 海外旅行保険証(病気・ケガやフライト遅延に備え、必ず加入しましょう)
- 常備薬(普段飲んでいる薬、鎮痛剤、胃腸薬など)
- あると便利な持ち物
- モバイルバッテリー(寒さでスマートフォンやカメラのバッテリー消耗が早まるため)
- カメラの予備バッテリー(同様の理由で役立ちます)
- 保湿用品(空気が非常に乾燥しているため、保湿クリーム、リップクリーム、ハンドクリームが活躍します)
- 国際運転免許証(スノーモービルを自分で運転したい場合に必要となることがあるため、ツアー会社に事前確認を)
- 魔法瓶(暖かい飲み物を持ち運べるので、アクティビティの合間に重宝します)
- 水着(一部ホテルにサウナやジャグジーがあることから持参すると便利です)
禁止事項と守るべきルール(持ち込み禁止物など)
スヴァールバルの自然環境は非常に繊細です。訪れる旅行者は環境保護に努め、以下のルールをしっかり守りましょう。
ドローンの利用
ロングイェールビーン周辺の多くの地域は国立公園や自然保護区に指定されており、ドローン飛行はスヴァールバル総督府の許可が必要です。許可なしの飛行は法律違反となるため、無断で持ち込んで飛ばすことは絶対に避けてください。詳細は公式サイトでご確認ください。
動植物の保護
島の動植物に損害を与えたり、採取することは禁止されています。化石採集ツアーで得た化石も、許可なく持ち出すことはできません。また、ホッキョクグマやその他の野生動物に近づいたり、餌を与えることは非常に危険であり、厳禁です。
ロングイェールビーンでしかできない!究極のアクティビティ体験
ロングイェールビーンの旅の大きな魅力は、手つかずの自然環境のなかで体験できる多彩なアクティビティにあります。安全面を考慮し、これらの体験は必ず現地の専門ガイドが同行するツアーで楽しんでください。単独での行動は非常に危険です。
夏の冒険:白夜の光のもとで味わう自然
24時間昼が続く夏は、野外で活発に過ごすのに理想的な季節です。
氷河ハイキング
街のすぐ近くに広がる氷河の上を、アイゼン(滑り止めの爪)とピッケルを使って歩く体験は格別です。ガイドが安全なルートを示しながら、クレバス(氷の割れ目)の特徴や氷河の成り立ちについて説明してくれます。青く輝く氷の世界は息をのむほど美しく、初心者向けの容易なコースから本格的なコースまで多様です。
フィヨルドカヤック
静かなフィヨルドをのんびりカヤックで進むこのアクティビティは、夏ならではの魅力です。海鳥のさえずりとパドルの水音だけが響く中、水面に近い視線で壮大な氷河や山々の風景を楽しめます。運が良ければ好奇心旺盛なアザラシがひょっこり顔を出すこともあります。
ボートツアー
夏季にはさまざまな目的地へのボートツアーが実施されます。特に人気なのは、旧ソ連時代の炭鉱町で現在は廃墟となっている「ピラミデン」への日帰りクルーズです。ソ連時代の建物やレーニン像が手つかずで残り、まるで時が止まったかのような独特の雰囲気が漂います。道中では巨大な氷河が海に崩れ落ちる光景やセイウチの群れを観察するチャンスもあります。
冬の神秘:極夜とオーロラの世界を求めて
冬は完全な闇に包まれ、北極圏の神秘を最も深く感じられる季節です。
犬ぞり
元気なハスキー犬たちとチームを組み、一面の銀世界を駆け抜ける犬ぞり体験は、冬の大人気アクティビティです。はじめに犬との接し方やそりの操縦方法を教わり、自分で操作します(ガイドがサポート)。犬たちの力強い息遣いとそりが雪を切る音だけが響く静寂は、忘れ難い感動をもたらすでしょう。
スノーモービル
広大な雪原をスノーモービルで駆け抜ける爽快感は他に替え難いものです。犬ぞりよりも行動範囲が広く、東海岸の氷の世界や内陸の凍った渓谷など、より遠方の秘境へ足を伸ばせます。ホッキョクグマとの遭遇率が最も高い地域へアクセスする場合は、スノーモービルツアーが一般的です。国際運転免許証が必要なこともあるため、予約時にご確認ください。
氷の洞窟(アイスケーブ)探検
冬季限定で出現する氷河の中の自然洞窟を探検するツアーです。ヘッドライトを頼りに洞窟へ入り込むと、壁や天井が青白く輝く幻想的な世界が広がっています。氷の形は毎年変化し、その年だけに見られる自然の芸術作品です。
オーロラ鑑賞
極夜の時期は一晩中オーロラ出現の可能性があります。街灯の届かない郊外へ出かけるオーロラハントツアーへの参加が最もおすすめです。現地ガイドがその日の気象状況やオーロラ活動をもとに、最適な観賞スポットへ案内してくれます。暖かい飲み物や軽食が提供されるツアーも多く、寒さを気にせずじっくりと天空の輝きを堪能できます。
アクティビティの予約手続きと注意点
ロングイェールビーンの各アクティビティは定員制のため、事前予約が欠かせません。特に夏や冬の観光シーズンは、数ヶ月前から予約が埋まることも珍しくありません。
予約方法
Hurtigruten Svalbard、Svalbard Adventures、Spitsbergen Travelなど主要ツアー会社の公式ウェブサイトから直接オンライン予約するのが最も簡単かつ確実です。各アクティビティの詳細や所要時間、料金、体力レベルが詳しく掲載されているため、自分に合ったプランを選べます。
安全面での重要なポイント
改めて強調しますが、ロングイェールビーンの市街地外での単独行動は、ホッキョクグマの危険性が高いため厳禁です。ハイキングやオーロラ鑑賞に関わらず、必ずライフルを携帯したプロフェッショナルのガイドが同行するツアーに参加しましょう。あなたの安全が何よりも大切です。
街の探索とグルメ・宿泊情報

アクティビティの合間には、コンパクトでありながら魅力あふれるロングイェールビーンの街並みを散策してみてはいかがでしょうか。個性的な博物館や北極圏ならではのグルメがあなたを待ち受けています。
ロングイェールビーン市内の見どころ
スヴァールバル博物館
街の中心に位置するこの博物館は、スヴァールバル諸島の400年以上にわたる歴史や動植物、そして石炭採掘の過去を詳しく紹介しています。特に迫力あるホッキョクグマの剥製は見応え十分。最初に訪れることで、この地についての理解が深まるでしょう。
ノースポール探検博物館
北極点を目指したアムンセンやノビレなどの偉大な探検家に焦点を当てた博物館です。かつての飛行船や装備のレプリカが展示されており、極地探検の壮絶な歴史とロマンを肌で感じることができます。
スヴァールバル教会
赤い木造の小さく可愛らしい教会は丘の上に建ち、世界で最も北に位置しています。誰でも自由に訪れることができ、内部にはカフェスペースも設けられています。静かなひとときを過ごしたい際におすすめです。
世界種子貯蔵庫(外観のみ)
「現代のノアの箱舟」と称されるこの施設は、世界中の植物の種子を大規模な災害に備えて冷凍保存しています。内部は公開されていませんが、永久凍土の山に埋め込まれた近未来的な入口は一見の価値があります。街の中心部からはやや距離がありますが、多くの観光ツアーに組み込まれています。
北極圏ならではのグルメ体験
極地ならではの食材を使った料理も旅の醍醐味のひとつです。
レストラン
「Huset」はかつての集会所を改装した高級レストランで、充実したワインセラーが自慢です。一方、「Kroa」は流木や炭鉱の道具を使った山小屋風のインテリアで、カジュアルに食事を楽しめます。トナカイのステーキやアザラシの肉、ライチョウのグリルといった、日本ではなかなか味わえないジビエ料理に挑戦してみるのも良いでしょう。
世界最北のビール醸造所
「Svalbard Bryggeri」は世界でもっとも北に位置する商業ビール醸造所です。氷河の雪解け水を使ったクラフトビールは爽やかな味わいが特徴。醸造所の見学ツアーやテイスティングも実施されています。
宿泊施設の選び方
ロングイェールビーンには、高級ホテルから手頃なゲストハウス、アパートメントタイプまで多彩な宿泊施設が揃っています。ただし数は限られているため、航空券と同様に早めの予約が重要です。
- ホテル例
- Radisson Blu Polar Hotel, Spitsbergen: 世界最北のフルサービスホテルで、フィヨルドを一望できる屋外ジャグジーが好評です。
- Funken Lodge: かつて炭鉱会社の職員向け施設だった建物をリノベーションした、洗練されたデザインのブティックホテル。
- Coal Miners’ Cabins: 旧炭鉱労働者の宿舎を改装した、よりリーズナブルな宿泊施設。中心部からは少し離れていますが、ユニークな滞在が叶います。
Booking.comやExpediaなどのホテル予約サイトで、料金や口コミを比較しながら選ぶのが賢明です。
知っておきたい!トラブル対策と安全情報
楽しい旅にするためには、潜むリスクを十分に理解し、それに対して準備をしておくことが重要です。特にスヴァールバルでは、自然の厳しさが常に身近にあることを忘れてはなりません。
最大の危険「ホッキョクグマ」への対策
ホッキョクグマはスヴァールバルの象徴的存在ですが、最も警戒すべき動物でもあります。彼らは非常に危険な肉食獣であり、好奇心から人間に近づいてくることもあります。絶対に守るべきポイントは、「ガイド付きツアーに必ず参加し、ガイドの指示に忠実に従う」ことです。ガイドは専門的な訓練を受けており、緊急時の対応法をよく心得ています。彼らの同行があなたの安全を守る鍵となります。個人的な判断で単独行動を取ることは、命の危険を伴う行為であると肝に銘じてください。
凍傷など健康面のリスクとその対応
極寒の冬環境では凍傷のリスクが高まります。特に指先や足先、耳、鼻、頬などの部位は凍傷になりやすい箇所です。
- 初期症状: 皮膚が白っぽく変色し、感覚が鈍くなる。ピリピリやチクチクとした痛みを感じることもあります。
- 対処法: 症状を感じたらすぐに暖かい場所に避難してください。濡れた衣服は脱ぎ、患部をぬるま湯でゆっくりと温めることが大切です。絶対に患部を擦ったり、急激に温めたりしないでください。症状が改善しない場合は速やかに現地の医療機関を受診しましょう。
予防が最も大切なので、常に適切な防寒具を着用し、肌の露出をできる限り避けるよう心掛けてください。
通信環境と緊急時の連絡方法
ロングイェールビーンの市街地では、ホテルやカフェなどでWi-Fiが利用でき、携帯電話の電波も届いています。ただし、街を離れてアクティビティに参加すると、多くの場所で通信環境が極めて限られます。ツアーに参加する場合、ガイドは必ず衛星電話などの緊急連絡手段を携帯しています。
緊急連絡先: 救急・消防・警察は共通して「112」です。
何か問題が生じた際は、まずホテルのスタッフやツアーガイドに相談するようにしましょう。
ツアーのキャンセルや飛行機の欠航時の対処法
スヴァールバルの天候は変わりやすく予想が難しいため、強風や吹雪などの悪天候によって予約したツアーが中止になったり、フライトに遅延や欠航が生じたりすることはよくあります。
- ツアー中止の場合: 天候による中止時は、通常、全額返金または別の日への振替という選択が可能です。予約時にキャンセルポリシーをしっかり確認しておきましょう。
- フライト欠航の場合: 航空会社の指示に従い、代替便の手配を受けます。ただし、宿泊の延長費用などは自己負担になる可能性があります。予期せぬ出費やスケジュールの変更に備えて、旅行日程には予備日を1日確保し、旅行キャンセルや遅延補償が含まれた海外旅行保険に加入しておくことを強くおすすめします。
スヴァールバル旅行のモデルプランと予算

最後に、旅行の具体的なイメージを持ちやすいように、モデルプランとおおよその費用感をご紹介します。あくまで一例ですので、ご自身の興味や体力に合わせて自由にアレンジしてください。
夏の4泊5日モデルプラン(白夜満喫プラン)
- 1日目: ロングイェールビーンに到着後、空港バスでホテルへ移動。チェックイン後、市内を散策し、スヴァールバル博物館でこの地域の歴史を学びます。夜はフィヨルドを望むレストランでディナーを楽しみます。
- 2日目: 終日ボートトリップに参加し、ピラミデンやバレンドブルクを訪問。氷河や野生動物の観察を満喫します。
- 3日目: 午前は氷河ハイキングに挑戦し、午後は自由時間。世界最北のビール醸造所を見学したり、お土産探しをしたり過ごします。
- 4日目: 午前はフィヨルドでのカヤック体験。午後は世界種子貯蔵庫の外観見学ツアーに参加。夜は少し贅沢なディナーを楽しみます。
- 5日目: フライト時間に合わせて空港へ向かい、白夜の思い出とともに帰国します。
冬の4泊5日モデルプラン(極夜とオーロラ探求プラン)
- 1日目: ロングイェールビーン到着後、空港バスでホテルへ。極夜の暗闇に驚きつつ、防寒を万全にして市内を散策。夜はオーロラハントツアーに参加します。
- 2日目: 終日犬ぞり体験。ハスキー犬たちとともに静かな雪原を駆け抜ける感動を味わいます。
- 3日目: 終日スノーモービルツアーに参加し、より遠方のエリアを巡りながら冬のダイナミックな景色やホッキョクグマの足跡を探します。
- 4日目: 午前は氷の洞窟探検で神秘的な青い世界に魅了され、午後はノースポール探検博物館見学。夜は暖かいパブで地元のビールを味わいます。
- 5日目: フライトの時間に合わせて空港へ向かい、極北の星空とオーロラの記憶を胸に帰国します。
旅の費用目安は?
ロングイェールビーンへの旅行は物価やアクティビティ費用が高めのため、決してお手頃とは言えません。おおよその目安は以下のとおりです。
- 航空券(日本発往復): 20万円 ~ 40万円
- 宿泊費(1泊あたり): 2万円 ~ 5万円
- アクティビティ費用(1回あたり): 2万円 ~ 6万円(スノーモービルなど長時間のものは高額になる傾向があります)
- 食費(1日あたり): 1万円 ~ 2万円
4泊5日の滞在でアクティビティを3つ程度楽しむと想定すると、一人あたり総額50万円から80万円程度が一つの目安となるでしょう。費用を抑えたい場合は、キッチン付きの宿泊施設を選び自炊したり、比較的価格の手頃なスーパーマーケット(Svalbardbutikken)を上手に活用すると良いでしょう。ただし、安全面に関わるアクティビティ費用を削ることはおすすめできません。
ロングイェールビーンは単なる観光地ではありません。地球の厳しさと美しさ、そして人間と自然の関わり方を実感できる、まさに「学びの場」です。しっかりと準備を重ね、敬意を持って訪れれば、あなたの人生に深い影響を与えるかけがえのない体験が待っていることでしょう。

