中東の秘境として知られるオマーンが、持続可能な観光と生物多様性保全の分野で、国際的に重要な一歩を踏み出しました。2024年、オマーンは新たに2カ所の自然保護区をユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の「生物圏保護区ネットワーク」に登録したことを発表。これにより、同国の登録地は合計3カ所となり、その豊かな自然と文化遺産が改めて世界に認められました。この動きは、エコツーリズムの新たな目的地としてのオマーンの魅力を高めると同時に、地球規模の環境課題に対する同国の貢献を示すものです。
ユネスコ生物圏保護区とは?―「人間と自然の共生」を目指す場所
そもそも「生物圏保護区(Biosphere Reserve)」とは、単に手つかずの自然を保護する場所ではありません。ユネスコが推進するこのプログラムは、生物多様性の保全と、それを持続可能な形で利用する地域社会の発展を両立させる「人間と自然の共生」のモデル地域を認定するものです。
2024年6月現在、世界では138カ国に759カ所の生物圏保護区が登録されており、科学的研究、教育、そして環境保全の拠点として機能しています。今回オマーンの2カ所が加わったことで、この国際的なネットワークはさらに多様性を増すことになりました。
新たに登録された2つの保護区
オマーンの自然と文化の多様性を象徴する、個性豊かな2つのエリアが新たに登録されました。
西ハジャール山脈の至宝「Jabal al-Gharbi Biosphere Reserve」
首都マスカットの南西に広がる西ハジャール山脈に位置するこの保護区は、面積846平方キロメートルに及びます。険しい山岳地帯には、絶滅の危機に瀕しているアラビアタールや、幻の動物ともいわれるアラビアヒョウといった貴重な野生動物が生息しています。
この地域の魅力は、自然だけではありません。古代から続く段々畑や、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている伝統的な灌漑システム「ファラジ」が今も人々の生活を支えており、自然と共存してきた人間の営みの歴史を色濃く感じることができます。ハイキングやトレッキングを楽しみながら、雄大な自然景観と伝統文化の両方に触れることができる、まさにオマーンならではの場所です。
古代からの贈り物「フランキンセンス産地生物圏保護区」
もう一つは、オマーン南部ドファール地方に広がる「フランキンセンス産地生物圏保護区」です。面積216平方キロメートルのこの地域は、古代エジプト時代から「神々への捧げもの」として珍重されてきた香料、フランキンセンス(乳香)を産出するボスウェリア・サクラの木が自生する貴重な場所です。
この地域はすでに「フランキンセンスの土地」として世界遺産に登録されていましたが、今回の生物圏保護区への登録により、その文化的価値だけでなく、生物多様性の保全と持続可能な利用がより一層重視されることになります。古代の交易路に思いを馳せながら、乳香の甘く神秘的な香りが漂う大地を訪れる旅は、他では得られない特別な体験となるでしょう。
観光と環境保全への影響―オマーンの未来予測
エコツーリズムの新たな目的地として
今回のユネスコによる認定は、オマーンの観光戦略に大きな影響を与えることが予測されます。マスツーリズムとは一線を画し、自然環境や地域文化を深く学び、尊重する「エコツーリズム」や「サステナブルツーリズム」に関心を持つ旅行者にとって、オマーンは非常に魅力的な目的地となるでしょう。
ユネスコのお墨付きは、国際的な信頼性とブランド価値を高めます。訪問者は、管理された環境の中で本物の自然や文化に触れることができ、自らの旅行が地域の環境保全やコミュニティの支援に繋がるという付加価値を感じることができます。
国際的な生物多様性保全への貢献
この動きは、世界的な環境目標とも連動しています。特に、2030年までに地球の陸と海の30%を保全することを目指す国際的な枠組み「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」の達成に向けた、オマーンの具体的な貢献として評価されています。
国際的なネットワークに参加することで、オマーンは他国の専門家と知見を共有し、より効果的な保全活動を進めることが可能になります。また、地域住民が保護活動の主役となることで、伝統的な知識を活かした持続可能な社会の構築が期待されます。
まとめ:責任ある旅で、オマーンの新たな魅力を発見しよう
オマーンによる2カ所のユネスコ生物圏保護区の追加登録は、同国が観光開発と環境保全の両立という困難な課題に真摯に取り組んでいる証です。旅行者である私たちも、これらの貴重な自然と文化遺産を訪れる際には、環境への負荷を最小限に抑え、地域の文化と人々への敬意を払う「責任ある旅行者」であることが求められます。
アラビア半島の隠れた宝石、オマーン。その新たな魅力を発見し、未来へと続く持続可能な旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

