大手航空データ分析会社OAGが2026年2月25日に発表した最新の航空市場トレンドレポートは、ポストコロナ時代の世界の空の動きを鮮明に映し出しています。特に注目されるのは、中国市場の力強い回復、2026年FIFAワールドカップに向けた動向、そしてヨーロッパにおける根強い季節需要の3つのポイントです。これらのデータから、今後の国際旅行の未来と、旅行者が知っておくべきヒントを読み解きます。
春節が牽引、中国航空市場の本格回復なるか
今回のレポートで最も注目すべきは、中国市場の動向です。2026年2月の中国における航空供給座席数は、春節(旧正月)の大型連休が需要を強力に後押しし、国内線・国際線ともに前年同月比で顕著な増加を記録しました。
背景:ゼロコロナ政策からの転換と旅行への渇望
この回復の背景には、数年間にわたる厳格な「ゼロコロナ政策」からの脱却があります。旅行への強い渇望が国内に蓄積されており、春節という絶好のタイミングでその需要が爆発した形です。また、日本を含む多くの国々とのビザなし渡航の再開や緩和措置も、国際線の回復を後押しする重要な要因となっています。
予測される未来:アジア太平洋地域の観光業に大きな追い風
中国からのアウトバウンド旅行者の本格的な回復は、日本や東南アジアをはじめとするアジア太平洋地域の観光業界にとって最大の追い風となるでしょう。これまで回復が遅れていた観光地や関連ビジネスにとって、中国人観光客の回帰は業績を大きく左右します。今後、航空各社は中国路線のさらなる増便や新規就航を加速させることが予想され、地域全体の航空ネットワークがより活性化していくと考えられます。
2026年FIFAワールドカップ、航空需要は「嵐の前の静けさ」
2026年6月から7月にかけて、アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国で共同開催されるFIFAワールドカップ。世界最大級のスポーツイベントを前に、開催地域の航空供給座席数に関心が集まっています。しかし、OAGのデータによると、現時点での供給計画は前年比でほぼ横ばいという、やや意外な結果が示されました。
現状分析:なぜ供給座席数は横ばいなのか
これは、大会までまだ時間があるため、多くの航空会社が需要を慎重に見極めている「様子見」の段階にあることを示唆しています。過去のオリンピックやワールドカップでも、開催が近づくにつれて臨時便やチャーター便、機材の大型化といった供給増強策が次々と発表されるのが通例です。現在の「横ばい」という数字は、来るべき需要増大に向けた「嵐の前の静けさ」と捉えるのが妥当でしょう。
予測される未来:大会直前に向けた増便ラッシュと価格高騰
今後、大会の組み合わせ決定やチケット販売が進むにつれて、特定の開催都市へのフライト需要が急増することは確実です。航空会社はそれに応じて柔軟に供給を増やしていくでしょう。旅行者にとっては、開催都市への直行便はもちろん、周辺のハブ空港からの乗り継ぎ便も含め、選択肢は増える見込みです。しかし、同時に航空券価格の高騰も避けられません。観戦を計画している方は、供給が増える前の早い段階での予約が賢明な選択となりそうです。
ヨーロッパの季節性トレンド:スキーリゾートに集中する需要
レポートでは、ヨーロッパ特有の季節的な需要トレンドも分析されています。特に、アルプスなどのスキーリゾートに近い空港では、冬季(1月〜3月)に年間の総供給座席数の実に38%が集中していることが明らかになりました。
浮き彫りになる観光地の特性
このデータは、特定の目的を持つデスティネーションがいかに季節性に依存しているかを如実に示しています。航空会社は、このピーク需要に合わせて機材を効率的に配分し、収益を最大化する路線戦略を立てています。一方で、気候変動による雪不足などが長期的にこのビジネスモデルに影響を与える可能性も懸念されます。
旅行計画へのヒント
旅行者にとって、この季節性は計画を立てる上で重要な指標となります。スキーなどのウィンタースポーツが目的であればピークシーズンの訪問は避けられませんが、もし柔軟な日程調整が可能であれば、ショルダーシーズン(ピーク前後の時期)を狙うことで、航空券や宿泊費を抑え、混雑を避けた快適な旅が実現できるかもしれません。
今回のOAGのレポートは、世界の航空市場が多様な要因によってダイナミックに変化していることを示しています。回復する市場、巨大イベントがもたらす潜在需要、そして変わらぬ季節の波。これらのトレンドを理解することが、より賢く、より豊かな国際旅行への第一歩となるでしょう。

