シルクロードの中心として古くから栄華を極めた地、ウズベキスタン。その歴史都市サマルカンドに、国の未来を象徴する壮大な複合観光施設「シルクロード・サマルカンド」がオープンし、世界中の観光・建築・文化の専門家から熱い視線が注がれています。これは単なる観光施設の誕生に留まらず、中央アジアにおける観光の新たなハブを目指すウズベキスタンの国家戦略を体現するものです。
シルクロードの歴史と未来が交差する場所
サマルカンドの漕艇場跡地に建設された「シルクロード・サマルカンド」は、総面積約260ヘクタールという広大な敷地を誇ります。この複合施設には、国際会議やイベントに対応可能な大規模コングレスセンター、複数のラグジュアリーホテル、そしてウズベキスタンの歴史、文化、食を体験できるテーマパーク「永遠の都」などが含まれています。
「永遠の都」- 生きた博物館
特に注目を集めるのが「永遠の都」です。ここでは、サマルカンド、ブハラ、ヒヴァといったウズベキスタンの古都の建築様式が忠実に再現され、まるでシルクロード時代にタイムスリップしたかのような体験ができます。職人たちが伝統工芸を実演する工房や、各地の料理を味わえるレストランが軒を連ね、訪れる人々にウズベキスタン文化の神髄を伝えます。
世界の専門家が集結した理由
今回のオープンに際し、世界各国から多くの専門家が集結しました。これは、この施設が国際会議や大規模イベント(MICE)の誘致を強く意識していることの表れです。最新鋭の設備を備えたコングレスセンターは、すでに国連世界観光機関(UNWTO)の総会など、数々の国際的なイベントの舞台となっており、ウズベキスタンが国際社会におけるプレゼンスを高めるための重要な拠点となっています。
なぜ今、ウズベキスタンなのか?- 観光大国への確かな歩み
近年のウズベキスタンの観光分野における躍進は目覚ましいものがあります。政府は観光を国家の戦略的産業と位置づけ、大胆な改革を断行してきました。
積極的な開放政策とインフラ整備
2018年以降、日本を含む90カ国以上を対象にビザなし渡航制度を導入したことは、その象徴的な一歩です。この政策は劇的な効果を上げ、観光客数は2016年の約200万人から、コロナ禍直前の2019年には約675万人へと3倍以上に急増しました。 さらに、タシケントとサマルカンド、ブハラを結ぶ高速鉄道「アフラシャブ号」の運行や、主要空港の近代化など、旅行者の利便性を高めるインフラ整備にも多額の投資が行われています。
未来への展望:旅行体験はどう変わるか
「シルクロード・サマルカンド」の誕生は、ウズベキスタン、ひいては中央アジア全体の観光に大きな影響を与えると予測されます。
中央アジア観光の新たなゲートウェイへ
これまでウズベキスタン観光は、レギスタン広場に代表される歴史遺産を巡る旅が中心でした。しかし、この新しいランドマークは、ビジネス、レジャー、文化体験など、より多様な目的を持つ旅行者層を惹きつけるでしょう。快適な宿泊施設とエンターテイメントが一体となることで、ウズベキスタンは周辺国への周遊旅行の拠点、すなわち「中央アジア観光のハブ」としての地位を確立する可能性を秘めています。
旅行者にもたらされる恩恵
旅行者にとっては、滞在の選択肢が格段に広がります。歴史探訪の後にモダンで快適なホテルでリラックスしたり、国際会議の合間に「永遠の都」で文化に触れたりと、旅のスタイルを自由に組み合わせることが可能になります。これにより、短期滞在だけでなく、長期滞在の魅力も高まることが期待されます。
この壮大なプロジェクトは、ウズベキスタンが持つ豊かな歴史的遺産を未来へと繋ぎ、世界中の人々を惹きつける新たな磁力となることは間違いありません。青の都サマルカンドから始まる中央アジアの新しい旅に、今後も目が離せません。









