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JTB、2026年の訪日客数に初の減少予測 – 4140万人への下方修正、その背景と今後の展望

大手旅行会社のJTBは、2026年の訪日外国人旅行者数が2025年比で2.8%減の4140万人になるとの予測を発表しました。コロナ禍後の急速な回復を経て、インバウンド市場が活況を呈する中での初の減少予測となり、日本の観光戦略が新たな局面を迎える可能性を示唆しています。

目次

なぜ減少予測? 急回復の先にある課題

今回の減少予測の背景には、複数の要因が絡み合っています。

大阪・関西万博の反動減

最大の要因として挙げられるのが、2025年に開催される「大阪・関西万博」です。JTBは、万博開催によって2025年の訪日客数は過去最高の4260万人に達すると予測しています。2026年の減少予測は、この大規模イベントによる一時的な押し上げ効果がなくなることによる「反動減」が主な理由です。

これは悲観的な材料というよりは、特殊要因が剥落した後の正常な市場動向への回帰と捉えることができます。しかし、4000万人を超える高い水準を維持できるかが、今後の日本の観光産業にとって重要な焦点となります。

オーバーツーリズムと円安の行方

もう一つの重要な背景が、国内で深刻化する「オーバーツーリズム(観光公害)」の問題です。特に京都や鎌倉、富士山周辺などの人気観光地では、交通機関の混雑、宿泊施設の高騰、地域住民の生活への影響が顕在化しています。インフラのキャパシティが限界に近づいており、単純な人数の増加だけを追い求める成長モデルが見直しを迫られているのです。

また、現在のインバウンドブームを強力に後押ししているのが歴史的な「円安」です。外国人旅行者にとって、日本での滞在費や買い物が非常に割安になっていることが大きな魅力となっています。しかし、今後為替レートが円高方向に是正された場合、旅行コストが上昇し、訪日旅行の魅力が相対的に低下するリスクも無視できません。

データで見る訪日旅行市場の推移

JTBの予測を理解するために、近年の訪日客数の推移を見てみましょう。

  • 2019年(コロナ禍前最高): 3,188万人
  • 2023年: 2,507万人
  • 2024年予測(JTB): 3,550万人(過去最高更新の見込み)
  • 2025年予測(JTB): 4,260万人(大阪・関西万博効果)
  • 2026年予測(JTB): 4,140万人(前年比2.8%減)

このように、2026年の予測は減少するとはいえ、コロナ禍前の最高記録を1000万人近く上回る極めて高い水準です。この数字は、日本のインバウンド市場が短期的な調整局面を経て、新たな成長ステージへと移行する過程にあることを示しています。

「量から質へ」- 観光戦略の転換点が訪れるか

今回のJTBの予測は、日本の観光業界にとって重要なメッセージを投げかけています。それは、訪問者数を追い求める「量」の拡大から、旅行者一人当たりの消費額や満足度を高める「質」への転換を本格化させるべき時期が来たということです。

予測される影響と今後の展望

  • 持続可能な観光へのシフト: オーバーツーリズム対策として、一部観光地での入場制限や事前予約制の導入、観光税の検討などが加速する可能性があります。「持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)」の考え方がより一層重要になります。
  • 高付加価値化と地方誘客: 都市部への観光客集中を緩和するため、まだ知られていない地方の魅力を発信し、富裕層やリピーターに向けたユニークな体験型コンテンツ(文化体験、自然アクティビティなど)を造成する動きが活発化するでしょう。旅行者の満足度を高め、消費額を増やすことが鍵となります。
  • 旅行者体験の変化: 混雑が緩和されることで、旅行者一人ひとりの体験の質が向上する可能性があります。より快適で深い日本文化に触れることができる旅行スタイルが注目されるかもしれません。

2026年の減少予測は、日本のインバウンド市場の成長が止まることを意味するものではありません。むしろ、過熱気味だった市場が一度落ち着き、より成熟した持続可能な観光大国へと進化するための重要なターニングポイントと言えるでしょう。今後の政府や観光事業者の戦略に注目が集まります。

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この記事を書いたトラベルライター

SimVoyage編集部は、世界を旅しながら現地の暮らしや食文化を体感し、スマホひとつで快適に旅する術を研究する旅のプロ集団です。今が旬の情報から穴場スポットまで、読者の「次の一歩」を後押しするリアルで役立つ記事をお届けします。

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