中東の歴史と文化の宝庫、ヨルダン。その観光業が力強い成長を遂げていることが、ヨルダン中央銀行(CBJ)が発表した最新データで明らかになりました。2024年の最初の5ヶ月間(1月〜5月)における観光収入は、前年同期比で7.5%増加し、53億3000万ドル(約37億8000万ヨルダン・ディナール)に達しました。この成長は、中東地域における観光の勢力図に変化をもたらす可能性を秘めています。
目覚ましい成長をデータで見る
ヨルダン中央銀行によると、今回の観光収入の増加は、同国を訪れる旅行者数の堅調な伸びに支えられています。
- 観光収入: 53億3000万ドル(前年同期比7.5%増)
- 総観光客数: 250万人(前年同期比2.8%増)
- 宿泊を伴う観光客数: 210万人(前年同期比0.4%増)
これらの数字は、世界遺産ペトラ遺跡やワディ・ラムの砂漠、死海といった唯一無二の観光資源が、依然として世界中の旅行者を惹きつけていることを示しています。特に、周辺地域の情勢が不安定な中でも訪問者数を増やしている点は、旅行先としてのヨルダンの信頼性の高さを物語っています。
なぜ今、ヨルダンが選ばれるのか
この力強い成長の背景には、いくつかの要因が考えられます。
安定した治安とアクセスの良さ
ヨルダンは、中東地域の中では比較的政情が安定しており、旅行者が安心して訪れることができるデスティネーションとして認知されています。政府も観光客の安全確保に力を入れており、その評判が旅行者の選択を後押ししています。また、首都アンマンのクイーン・アリア国際空港には、世界各都市からのフライトが増加しており、アクセスが向上していることも大きな要因です。
政府による積極的な観光振興策
ヨルダン政府とヨルダン観光局(JTB)は、国の魅力を世界に発信するため、戦略的なプロモーション活動を展開してきました。従来の歴史・文化遺産ツーリズムに加え、エコツーリズムやアドベンチャーツーリズム、ウェルネスツーリズムなど、多様な旅行者のニーズに応える新しい観光商品を開発。これにより、リピーターや新たな層の旅行者の獲得に成功しています。
他に類を見ないユニークな体験
古代ナバテア人の都市ペトラ、映画『アラビアのロレンス』の舞台となったワディ・ラムの壮大な砂漠、そして体が浮かぶ不思議な体験ができる死海。これらの象徴的な観光地は、ヨルダンでしか味わえない特別な体験を提供し、旅行者の探求心を刺激し続けています。
予測される未来と世界への影響
ヨルダンの観光業の成功は、同国の経済に多大な好影響をもたらします。観光業はヨルダンのGDPの主要な柱の一つであり、外貨獲得や雇用創出の重要な源泉です。今回の収入増は、国内経済の活性化に直結し、さらなるインフラ整備やサービス向上への投資を可能にするでしょう。
将来的には、ヨルダンが中東地域における観光ハブとしての地位を確立する可能性があります。ヨーロッパ、アジア、アフリカの結節点という地理的利点を活かし、周辺国への周遊旅行の拠点として、より多くの旅行者を引きつけることが期待されます。
一方で、観光客の増加は「オーバーツーリズム」という課題も生み出します。特にペトラ遺跡などの貴重な文化遺産を保護しつつ、持続可能な観光を実現するための取り組みが、今後の重要なテーマとなるでしょう。
古代の歴史が息づく地で、未来に向けた力強い一歩を踏み出したヨルダン。その動向は、世界の旅行業界にとって目が離せないものとなりそうです。









