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日本政府、オーバーツーリズム対策を本格化 – 2030年までに100地域での取り組みを目指す

日本政府が、観光客の急増によって引き起こされる「オーバーツーリズム(観光公害)」への対策を本格化させます。観光庁が2024年1月30日に公表した次期「観光立国推進基本計画」の素案では、住民の生活と観光の共存を目指す取り組みを、2030年までに現在の約2倍にあたる100地域に拡大するという、具体的な数値目標が初めて盛り込まれました。この動きは、日本の観光のあり方を大きく変え、今後の旅行者の体験にも影響を与える可能性があります。

目次

背景:なぜ今、オーバーツーリズム対策が急がれるのか

新型コロナウイルスの水際対策緩和以降、日本の観光業界は急速な回復を遂げています。日本政府観光局(JNTO)によると、2023年の訪日外客数は2,500万人を超え、パンデミック前の2019年比で約8割まで回復しました。この急激な回復は喜ばしい反面、特定の地域に観光客が集中することで、多くの課題が再び浮き彫りになっています。

京都のバスは満員で市民が乗れない、鎌倉の狭い道は観光客で溢れかえる、富士山では登山者のマナー違反やゴミ問題が深刻化するなど、全国の有名観光地で交通機関の混雑、騒音、ゴミのポイ捨てといった問題が発生し、地域住民の生活に大きな影響を及ぼしています。

こうした状況を受け、これまでのような「観光客の数」を追求するモデルから、地域の文化や環境を守り、住民と観光客双方が満足できる「持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)」への転換が、国全体の喫緊の課題となっているのです。

政府が打ち出す具体的な対策とは?

今回の計画案では、オーバーツーリズム対策として多角的なアプローチが示されています。

混雑を緩和する新たな仕組み

特定の観光地に過度な集中を防ぐため、事前予約システムの導入や、時間帯別の入場者数を管理する「入域管理」が検討されています。これにより、訪問者数を平準化し、一人ひとりが快適に観光できる環境を目指します。

情報発信による需要の分散化

スマートフォンアプリやウェブサイトを活用し、観光地の混雑状況をリアルタイムで発信する取り組みを強化します。観光客は混雑する時間帯や場所を避け、比較的空いている時間を選んだり、まだ知られていない魅力的な周辺地域へ足を延ばしたりすることが可能になります。これにより、観光客の満足度向上と地域経済の活性化を両立させます。

利便性向上による混雑緩和

大きなスーツケースを持った観光客が公共交通機関の混雑を助長する一因となっていることから、「手ぶら観光」が推進されます。空港や駅で荷物を預け、宿泊先まで配送するサービスを拡充することで、観光客はより身軽に移動でき、交通機関の混雑緩和にも繋がります。

予測される未来と旅行者への影響

この政府方針は、今後の日本の旅のスタイルにいくつかの変化をもたらすでしょう。

旅行体験の質が向上する可能性

最大のメリットは、旅行体験の質の向上です。混雑が緩和されれば、ゆっくりと景色を楽しんだり、写真を撮ったり、その土地の文化を深く味わうことができるようになります。住民の不満が和らぐことで、観光客と地域との良好な関係が築かれ、より温かいおもてなしを受けられるかもしれません。

事前計画の重要性が高まる

一方で、人気観光地への訪問は、これまで以上に事前の計画と予約が重要になります。特に世界遺産や国立公園などでは、予約なしでは入場できないケースが増えることが予想されます。「思い立ってすぐ行く」という自由な旅が難しくなる場所も出てくるでしょう。

新たなデスティネーションの発見

政府が地方への誘客を強化することで、これまで光が当たってこなかった隠れた名所や文化が注目されるようになります。旅行者にとっては、定番の観光地だけでなく、日本の多様な魅力を発見する新たな機会が増えることを意味します。

コストの変化

一部の地域では、入域料の導入や、需要に応じて価格が変動する「ダイナミック・プライシング」が採用される可能性があります。これにより、ピーク時の観光コストは上昇するかもしれませんが、その収益が地域の環境保全やインフラ整備に充てられることで、長期的に見て持続可能な観光地づくりに貢献します。

まとめ

日本政府が打ち出したオーバーツーリズム対策は、日本の観光が「量から質へ」と大きく舵を切る転換点です。これは、旅行者にとっても、より快適で、地域に貢献できるサステナブルな旅を実現するための重要な一歩と言えます。旅行を計画する際は、現地のルールや予約の必要性を事前に確認し、混雑を避ける工夫をすることが、より良い旅の鍵となるでしょう。今後の具体的な取り組みに注目が集まります。

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この記事を書いたトラベルライター

SimVoyage編集部は、世界を旅しながら現地の暮らしや食文化を体感し、スマホひとつで快適に旅する術を研究する旅のプロ集団です。今が旬の情報から穴場スポットまで、読者の「次の一歩」を後押しするリアルで役立つ記事をお届けします。

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