急成長を続けるインドの航空市場が、今、深刻な「成長痛」に見舞われています。記録的な旅客数の増加にインフラ整備が追いつかず、さらに安全性を高めるための規制強化が重なり、フライトの遅延や欠航が多発。インドへの旅行を計画している方々にとって、現地の航空事情を理解しておくことが不可欠となっています。
背景:爆発的な成長とインフラの限界
インドは、米国と中国に次ぐ世界第3位の国内航空市場へと急成長を遂げました。中間層の拡大を背景に空の旅が身近になり、2023年の国内線旅客数は過去最高の約1億5,200万人に達し、コロナ禍以前の水準を上回っています。
この需要爆発に応えるべく、IndiGo(インディゴ)やAir India(エア・インディア)といった航空会社は、合わせて約1,000機という歴史的な規模の航空機発注を行いました。しかし、この急激な成長の裏で、業界は複数の深刻な課題に直面しています。
課題1:追いつかないインフラ整備
最大の課題は、空港インフラの不足です。デリーやムンバイといった主要空港は常に混雑しており、駐機場や滑走路の容量は限界に近づいています。インド政府は2025年までに国内の空港数を220まで増やす計画を進めていますが、需要の伸びに供給が追いついていないのが現状です。これにより、離着陸の遅延が常態化し、結果としてフライトスケジュール全体に影響が及んでいます。
課題2:パイロット不足と新たな規制
安全基準の向上を目指すインド民間航空総局(DGCA)は、パイロットの疲労を軽減するため、飛行勤務時間に関する新たな規制を導入しました。これにより、パイロットの休息時間が延長され、連続勤務時間が短縮されます。この規制は乗務員の安全確保に不可欠ですが、すでにパイロット不足に悩む航空会社にとっては、乗員繰りがさらに厳しくなることを意味します。結果として、一部の便が欠航せざるを得ない状況が生まれています。
課題3:機材の納入遅延と整備問題
世界的なサプライチェーンの混乱は、インドの航空会社にも影響を与えています。ボーイングやエアバスからの新機材の納入遅延に加え、一部のエンジン(特にプラット・アンド・ホイットニー社製)の整備問題により、多くの航空機が運航できない状態にあります。これにより、航空会社は計画通りの便数を運航できず、供給不足に拍車をかけています。
旅行者への影響と今後の見通し
これらの複合的な要因は、旅行者にとって直接的な影響をもたらします。
- フライトの遅延・欠航の増加: インフラ不足と乗務員不足により、フライトの遅延や突然の欠航のリスクが高まっています。特に乗り継ぎを予定している場合は、時間に十分な余裕を持つことが重要です。
- 航空券価格の上昇: 旺盛な需要に対して航空機の供給が追いついていないため、需給バランスが崩れ、航空券の価格は高止まりする傾向にあります。特に旅行シーズンや直前の予約では、価格が高騰する可能性があります。
- サービスの質の変化: 急なスケジュール変更や空港の混雑は、旅行体験の質に影響を与える可能性があります。
中長期的には、新空港の建設や航空会社によるパイロット育成プログラムの強化により、状況は改善に向かうと期待されています。しかし、インフラ整備や人材育成には時間がかかるため、今後1〜2年は混乱が続く可能性が高いと専門家は見ています。
インドへの旅行を計画する際は、航空会社のウェブサイトやアプリで運航状況をこまめに確認し、予期せぬ事態に備えて旅行保険に加入することを強くお勧めします。素晴らしい文化と魅力にあふれるインドの旅を万全の準備で楽しむために、現地の最新情報を常に把握しておくことが賢明です。

