香港といえば、ヴィクトリア・ハーバーを彩る100万ドルの夜景、天を突くようにそびえ立つ高層ビル群、そして眠らない街を駆け巡る人々のエネルギー…そんなエネルギッシュなイメージをお持ちではないでしょうか。しかし、そのきらびやかな摩天楼からほんの少し足を伸ばすだけで、まるで別世界のような穏やかな時間が流れる場所が存在することをご存知ですか。
それが、香港最大の島、ランタオ島(大嶼山)です。
香港国際空港が位置するこの島は、多くの旅行者にとって旅の始まりと終わりの地。しかし、その玄関口としての顔の奥には、手つかずの広大な自然、篤い信仰心に触れる聖地、そして古き良き漁村の営みが息づく、もう一つの香港が広がっています。
この記事では、都会の喧騒からエスケープし、心と体をリフレッシュさせてくれるランタオ島の魅力を、余すところなくご紹介します。天空を散歩するケーブルカー「ゴンピン360」から始まり、荘厳な天壇大仏との対面、時が止まったかのような水上集落「大澳」の散策、そして美しいビーチや緑豊かなハイキングコースまで。あなたがまだ知らない香港の奥深い魅力を発見する旅へ、さあ、一緒に出かけましょう。
まずは、この広大な島のどこに何があるのか、地図でその全体像を掴んでみてください。
なぜ今、ランタオ島なのか?都会の香港とは違う魅力
数ある香港の離島の中で、なぜランタオ島はこれほどまでに人々を惹きつけるのでしょうか。その理由は、この島が持つ多面的な魅力にあります。
第一に挙げられるのは、圧倒的な「自然との近さ」です。ランタオ島の面積の約半分はカントリーパークに指定されており、開発から守られた緑豊かな山々が連なっています。香港で二番目に高い山、鳳凰山(ランタオ・ピーク)をはじめとする山々は、ハイカーたちにとっての聖地。一方で、南シナ海に面した海岸線には、香港で最も長い砂浜を誇る長沙泳灘(チョンシャー・ビーチ)など、美しいビーチが点在しています。都会のコンクリートジャングルで過ごした後にこの島を訪れると、澄んだ空気と木々の香り、そして穏やかな波の音に、心から癒されるのを感じるはずです。
次に、「文化と信仰の深さ」もランタオ島の大きな魅力です。島の中心部、昂坪(ゴンピン)高原には、世界最大級の屋外青銅仏である天壇大仏が鎮座し、その麓には香港仏教の総本山、寶蓮禪寺(ポーリン寺)が荘厳な佇まいを見せています。世界中から訪れる人々が静かに祈りを捧げるこの場所は、まさにスピリチュアルなパワースポット。日々の忙しさの中で忘れていた、自分自身と向き合う静かな時間を与えてくれます。
そして、「歴史が息づく暮らし」に触れられることも見逃せません。島の西部に位置する大澳(タイオー)は、「香港のヴェネツィア」とも呼ばれる水上集落。水路に沿ってびっしりと建てられた棚屋(パンオク)と呼ばれる高床式の家々は、かつての漁村の面影を今に伝える貴重な風景です。そこには、観光地化されつつも、変わらない人々の営みがあります。潮の香りと共に、どこか懐かしいノスタルジックな空気が流れています。
香港国際空港や香港ディズニーランド・リゾートといった近代的な施設と、こうした手つかずの自然や伝統的な文化が見事に共存していること。このギャップこそが、ランタオ島をユニークで魅力的なデスティネーションにしているのです。MTR(地下鉄)やフェリー、バスを使えば香港中心部からのアクセスも良好で、気軽に日帰り旅行が楽しめるのも嬉しいポイント。もちろん、じっくりとその魅力を味わうために、島に宿をとって滞在するのも最高の選択です。
さあ、具体的にランタオ島への旅の扉を開けていきましょう。まずは、この魅力的な島へのアクセス方法から詳しく解説します。
ランタオ島へのアクセス完全ガイド
ランタオ島への旅は、どの交通手段を選ぶかによって、その始まりの風景が大きく変わります。目的地や旅のスタイルに合わせて、最適なルートを選びましょう。ここでは、主要な3つのアクセス方法を徹底解説します。
MTRとケーブルカーで行く王道ルート(東涌 Tung Chungへ)
ランタオ島観光のハイライトである天壇大仏やゴンピン360を目指すなら、MTR東涌線を利用するのが最も一般的で効率的な方法です。
香港島の中心地である中環(Central)や、九龍半島の尖沙咀(Tsim Sha Tsui)/尖東(East Tsim Sha Tsui)など、主要なエリアからMTRに乗車し、東涌線の終点である東涌駅を目指します。例えば、中環駅からは乗り換えなしで約30分、尖沙咀からは茘景(Lai King)駅で一度乗り換えて約40分ほどで到着します。車窓からの風景が、徐々に高層ビル群から緑豊かな郊外へと移り変わっていく様子も楽しんでみてください。
東涌駅に到着したら、B出口から外へ。目の前には、ランタオ島観光の拠点となる複合施設が広がっています。まず目指すのは、天空の散歩道「ゴンピン360」のケーブルカー乗り場です。駅からは徒歩数分、案内表示に従って進めば迷うことはないでしょう。
また、東涌駅には巨大なアウトレットモール「シティゲート・アウトレット(Citygate Outlets)」が直結しています。ランタオ島観光を楽しんだ後に立ち寄り、お得なショッピングを満喫するのも定番のプラン。有名ブランドからスポーツウェア、レストランまで揃っているので、旅の最後に立ち寄る場所として最適です。
フェリーで渡る、風情あふれる海のルート(梅窩 Mui Woへ)
もし、旅の始まりから非日常感を味わいたいのであれば、フェリーで海を渡るルートが断然おすすめです。香港島の心臓部、中環(Central)のフェリー乗り場から、ランタオ島の東海岸に位置する梅窩(Mui Wo)行きのフェリーが出ています。
中環のフェリー乗り場は、行き先ごとに番号が振られています。梅窩行きは6番乗り場から出発します。フェリーには、所要時間が短く料金が少し高めの「高速フェリー(Fast Ferry)」と、時間がかかる分料金が安く、デッキに出て潮風を感じられる「普通フェリー(Ordinary Ferry)」の2種類があります。
高速フェリーなら約30~40分、普通フェリーなら約50~60分の船旅です。天気の良い日には、ぜひ普通フェリーの屋外デッキへ。ヴィクトリア・ハーバーの摩天楼が遠ざかり、大小さまざまな島々の間を抜けていく景色は格別です。この船旅自体が、ランタオ島への期待感を高めてくれる素晴らしい体験となるでしょう。
梅窩は、のどかな雰囲気が漂う海辺の町。ここを拠点にレンタサイクルで島を巡ったり、バスに乗り換えて長沙ビーチや大澳、昂坪へと向かうことができます。東涌ルートとは全く異なる、穏やかなランタオ島の表情から旅を始めたい方にぴったりの選択肢です。
バスを乗りこなして、島の深部へ
ランタオ島内の移動は、バスが非常に重要な役割を担っています。東涌や梅窩といった主要なハブから、島の隅々までバス路線が網の目のように延びています。
- 東涌バスターミナルから
東涌駅のすぐそばにあるバスターミナルからは、昂坪(ゴンピン)行きの「23番バス」、大澳(タイオー)行きの「11番バス」などが発着しています。ゴンピン360が強風などで運休している場合や、ケーブルカーが苦手な方は、この23番バスが昂坪への唯一の公共交通機関となります。くねくねとした山道を登っていくスリリングなバスの旅も、また一興です。
- 梅窩バスターミナルから
梅窩のフェリー乗り場のすぐ前にあるバスターミナルからも、昂坪行きの「2番バス」、大澳行きの「1番バス」などが出ています。フェリーで到着した後、スムーズに次の目的地へと移動できます。
香港の交通系ICカード「オクトパスカード(八達通)」があれば、バスの乗り降りもタッチするだけで非常にスムーズ。ランタオ島を隅々まで楽しみたいなら、ぜひバスを乗りこなしてみてください。ただし、週末や祝日は非常に混み合う路線もあるため、時間に余裕を持った計画を立てることをお勧めします。
天空の散歩道「ゴンピン360」で絶景体験
ランタオ島観光の幕開けとして、これ以上ないほどドラマチックな体験を約束してくれるのが、ケーブルカー「ゴンピン360」です。東涌の市街地と昂坪の高原を、全長5.7kmのワイヤーで結ぶこのアトラクションは、単なる移動手段ではありません。息をのむような絶景が次々と展開する、25分間の天空ショーなのです。
スタンダード vs クリスタルキャビン、どちらを選ぶ?
ゴンピン360のキャビン(ゴンドラ)には、主に2つのタイプがあります。どちらを選ぶかで、体験の質が大きく変わってきますので、じっくり検討しましょう。
- スタンダード・キャビン
一般的なケーブルカーと同様の、四方がガラス張りになったキャビンです。足元は通常の床なので、高いところが少し苦手な方でも安心して乗ることができます。もちろん、スタンダード・キャビンからでも、周囲に広がるパノラマビューは十分に楽しめます。料金もクリスタル・キャビンより安価です。
- クリスタル・キャビン
床まで強化ガラスでできている、スリル満点のキャビンです。足元に広がる深い緑の森や、青い海が透けて見える様は、まるで鳥になって空を飛んでいるかのような感覚。360度の視界が完全に開け、ランタオ島の雄大な自然を文字通り全身で感じることができます。料金は高くなりますが、その価値は十分にあります。忘れられない思い出を作りたいなら、ぜひクリスタル・キャビンを選んでみてください。
週末や祝日はチケット売り場に長蛇の列ができることも珍しくありません。公式サイトなどで事前にチケットを予約しておくことを強くお勧めします。割引価格で購入できる場合があるだけでなく、Eチケットで専用レーンからスムーズに乗車できるため、貴重な時間を節約できます。
25分間の空中散歩で見える景色
キャビンが東涌のターミナルを静かに出発すると、すぐに視界が開け、冒険の始まりを告げます。
まず眼下に広がるのは、近代的な高層マンションが立ち並ぶ東涌の市街地と、穏やかな東涌湾。そしてキャビンが高度を上げるにつれて、巨大なハブ空港である香港国際空港の全景が見えてきます。ひっきりなしに離着陸する飛行機を上から眺めるという、他ではなかなかできない貴重な体験です。
キャビンが最初の山の稜線を越えると、景色は一変します。人工的な風景は後退し、どこまでも続くかのような深い緑の森と、南シナ海の雄大な水平線が目の前に広がります。眼下には、ランタオ・トレイルを歩くハイカーたちの小さな姿が見えることも。自分もいつかあの道を歩いてみたい、そんな気持ちにさせられるかもしれません。
そして、旅のハイライトが訪れます。遠くの山の頂に、目的地である天壇大仏のシルエットが徐々に見え始めてくるのです。最初は豆粒ほどの大きさだった大仏が、キャビンが進むにつれてゆっくりと、しかし確実にその姿を大きくしていく様子は、非常に感動的。まるで聖地へと導かれているかのような、荘厳な気持ちに包まれます。
風の音と、時折聞こえるキャビンの機械音だけが響く静寂の中、刻一刻と変化する絶景を眺める25分間。それは、ランタオ島がこれから見せてくれる素晴らしい体験への、最高の序章となるでしょう。
心洗われる聖地「昂坪(ゴンピン)」エリア
ゴンピン360のケーブルカーが終点の昂坪駅に到着すると、そこは標高約520メートルの高原に広がる、静寂と信仰に包まれた聖域です。ここには、ランタオ島を訪れる多くの人々が目指す、象徴的なスポットが集まっています。都会の喧騒とは無縁の澄んだ空気の中で、心を静かに整える時間を過ごしましょう。
天壇大仏(ビッグブッダ)の圧倒的な存在感
昂坪ビレッジを抜けると、まず目に飛び込んでくるのが、丘の上に厳かに鎮座する巨大な仏像、天壇大仏(ティンタンダイファッ)です。一般的には「ビッグブッダ」の愛称で親しまれています。高さ34メートル、重さ250トンを超えるこの青銅製の座仏は、屋外に設置されたものとしては世界最大級。そのスケールの大きさと、穏やかで慈愛に満ちた表情は、見る者を圧倒します。
大仏の足元へと続くのは、268段の石段です。この階段を一段一段踏みしめて登る行為は、まるで俗世から聖域へと至る巡礼の道のよう。息を切らしながら登りきった先には、素晴らしいご褒美が待っています。眼下には緑豊かな昂坪の全景と、その向こうに広がるランタオ島の山々、そして遠くには南シナ海の水平線までをも見渡すことができるのです。吹き抜ける高原の風が、汗と心の澱みを洗い流してくれます。
大仏が座す蓮華座の台座部分は、3層構造のホールになっており、中に入ることができます。内部には仏陀の生涯を描いたレリーフや、仏舎利(釈迦の遺骨とされるもの)が安置されています。大仏を外から眺めるだけでなく、その内側から信仰の深さに触れてみるのも良いでしょう。
香港仏教の総本山「寶蓮禪寺(ポーリン寺)」
天壇大仏と向かい合うように建っているのが、1906年に創建された歴史ある寺院、寶蓮禪寺(ポーリン・ジー)です。その色鮮やかで壮麗な建築群は、香港における仏教の中心地としての威厳を漂わせています。
山門をくぐると、線香の香りがふわりと鼻をかすめ、敬虔な祈りの空間へと誘われます。本堂である大雄寶殿(ダイホンバウディン)には、過去・現在・未来を司る三体の黄金の仏像が安置され、その豪華絢爛な装飾に目を奪われます。多くの参拝者が熱心に祈りを捧げる姿は、見る者の心にも静かな感動を与えます。
近年完成した萬佛殿(マンファッディン)は、その名の通り、内部の壁一面に一万体以上の小さな仏像が祀られており、まさに圧巻の一言。細部までこだわり抜かれた彫刻や装飾を見ていると、時間が経つのを忘れてしまいます。
境内を散策する際は、静粛を保ち、地元の人々の信仰に敬意を払うことを忘れないようにしましょう。寺院の荘厳な雰囲気と、立ち上る線香の煙、そして時折聞こえる読経の声が一体となり、訪れる人々の心を穏やかにしてくれます。
智慧の道(ウィズダム・パス)で静寂に浸る
ポーリン寺から少し足を伸ばし、鳳凰山の麓へと続く小道を歩いていくと、突如として神秘的な空間が現れます。それが「智慧の道(ウィズダム・パス)」です。
ここには、仏教の最も重要な経典の一つである「般若心経(はんにゃしんぎょう)」の一節が刻まれた、高さ8~10メートルの巨大な木製の柱が38本、丘の斜面に沿って「∞(無限)」の形に配置されています。柱は未加工の木材で作られており、周囲の自然景観と見事に調和しています。
静寂に包まれたこの場所をゆっくりと歩いていると、まるで経典の言葉が心に直接語りかけてくるかのよう。複雑な現代社会で生きる私たちが忘れがちな、シンプルで普遍的な真理について、思いを馳せるきっかけを与えてくれます。特に早朝や夕暮れ時、霧が立ち込める時間帯は、さらに幻想的でスピリチュアルな雰囲気に。心を空っぽにして、ただ自然と一体になる感覚を味わうには最高の場所です。写真好きにとっても、ユニークで力強い構図の写真が撮れる絶好のスポットと言えるでしょう。
昂坪ビレッジで楽しむグルメとショッピング
ゴンピン360の駅とポーリン寺を結ぶ参道エリアは「昂坪ビレッジ(Ngong Ping Village)」として整備されています。中国の伝統的な建築様式を模した建物が並び、レストランやカフェ、土産物店が軒を連ねる、観光客で賑わうエリアです。
このビレッジでぜひ体験してほしいのが、ポーリン寺が提供する精進料理(斎菜)です。肉や魚、そしてネギやニンニクといった匂いの強い野菜を一切使わず、豆腐や野菜、キノコ類を巧みに調理した料理は、滋味深く、驚くほど満足感があります。心身が清められるようなヘルシーな食事は、昂坪での体験をより深いものにしてくれるでしょう。ポーリン寺の斎堂で本格的なコースをいただくこともできますし、昂坪ビレッジ内のレストランで気軽に楽しむことも可能です。
その他にも、香港スイーツの定番である豆腐花(豆腐プリン)の店や、可愛らしい仏像グッズ、ランタオ島関連のお土産を扱うショップが充実しています。歩き疲れたらカフェで一休みするのも良いでしょう。VR(仮想現実)で香港の様々な名所を体験できるアトラクションもあり、子供から大人まで楽しめます。聖地での厳かな時間の合間に、こうした賑わいを楽しむのもまた、旅の醍醐味の一つです。
時が止まった水上集落「大澳(タイオー)」を歩く
昂坪の聖地で心を清めた後は、バスに揺られてランタオ島の西端へ。そこには、全く異なる表情を持つ、ノスタルジックな水上集落「大澳(タイオー)」が待っています。かつて香港の主要な漁港として栄えたこの場所は、「香港のヴェネツィア」と称されることも。しかし、その雰囲気は華やかなヴェネツィアとは違い、もっと素朴で、人々の生活の匂いが色濃く残る、アジアらしい温かみに満ちています。
棚屋(パンオク)が織りなすノスタルジックな風景
大澳の最も象徴的な風景、それは水路の両岸にびっしりと立ち並ぶ「棚屋(パンオク)」です。満潮時に家が水に浸からないよう、水中に打ち込まれた杭の上に建てられた高床式の住居群。この独特の景観は、海と共に生きてきた蛋民(たんみん)と呼ばれる水上生活者の知恵の結晶です。
細い路地や橋を渡りながら集落を散策すると、まるでタイムスリップしたかのような感覚に陥ります。家々の間を縫うように架けられた橋の上からは、棚屋が水面に影を落とす美しい光景を眺めることができます。特に、集落の入り口近くにある青い歩行者専用橋「新基大橋」は絶好のフォトスポット。橋の上から、水路を行き交う小舟や、軒先で網の手入れをする住民の姿など、活気と静けさが同居する大澳ならではの日常を垣間見ることができます。
路地裏に入れば、干物が軒先に吊るされ、潮の香りと共に独特の生活臭が漂ってきます。観光地でありながら、ここは紛れもなく人々の暮らしの場。住民のプライバシーに配慮しつつ、そのありのままの雰囲気を肌で感じてみてください。
大澳名物グルメを味わい尽くす
大澳散策のもう一つの大きな楽しみは、ここでしか味わえないローカルグルメの食べ歩きです。素朴ながらも、素材の味を活かした絶品グルメがあなたを待っています。
まず試したいのが、店先で炭火を使って豪快に焼き上げる「巨大イカ焼き」。香ばしい醤油の香りが食欲をそそり、プリプリとした食感は病みつきになります。ビールとの相性も抜群です。
そして、香港の定番屋台スイーツ「鶏蛋仔(ガイダンジャイ)」、いわゆるエッグワッフルも、大澳では昔ながらの炭火焼きにこだわっている店が多く、外はカリカリ、中はもちもちの絶妙な食感を堪能できます。プレーンな味の他に、大澳名産の蝦醤(エビペースト)を隠し味に使った、少し塩気のあるユニークなフレーバーも試す価値ありです。
他にも、滑らかな舌触りの「豆腐花(トウフファ)」、ハーブを練り込んだ餅菓子「茶粿(チャークォー)」、そして地元の人が愛情を込めて作るドーナツ「沙翁(サーヨン)」など、魅力的なストリートフードが目白押し。お土産には、大澳の代名詞ともいえる「蝦醤(ハーチョン)」や「鹹魚(ハムユー、塩漬け魚)」がおすすめです。強烈な香りを放ちますが、チャーハンや野菜炒めに入れると、料理に格段の深みを与えてくれます。
ピンクドルフィン・ウォッチングツアー
大澳を訪れたなら、ぜひ体験してほしいのが、ピンクドルフィン(シナウスイロイルカ)を探しに行くボートツアーです。集落の水路沿いには、ツアーの客引きがたくさんいます。20~30分程度の短いツアーで、料金も手頃です。
小さなボートに乗り込むと、まずは水路をゆっくりと進み、水上から棚屋の風景を眺めます。陸から見るのとはまた違う、水上生活者の視点に近い景色を楽しめるのが魅力です。そして水路を抜けると、ボートは一気にスピードを上げて沖合へ。珠江デルタの河口に位置するこの海域は、幸運に恵まれれば、その名の通り美しいピンク色をしたイルカたちが泳ぐ姿に出会えるかもしれません。
必ず会えるという保証はありませんが、大海原をボートで疾走する爽快感と、イルカを探すワクワク感は、それだけでも十分に楽しい体験です。野生のイルカとの出会いを夢見て、大海原に目を凝らしてみてはいかがでしょうか。
大澳文物酒店(タイオー・ヘリテージ・ホテル)で過ごす特別な時間
大澳の集落から少し離れた小高い丘の上に、白亜の美しい洋館が静かに佇んでいます。これが「大澳文物酒店(タイオー・ヘリテージ・ホテル)」です。1902年に建てられた旧大澳警察署をリノベーションしたこのホテルは、香港の歴史的建造物を保存・活用するプロジェクトによって生まれ変わりました。
コロニアル様式のアーチや鎧戸、看守室や留置場といった警察署時代の面影を巧みに残しながら、モダンで洗練された空間へと昇華されています。宿泊者でなくとも、併設されたレストラン「Tai O Lookout」を利用することができます。ガラス張りの店内からは大澳の海を一望でき、素晴らしい景色を眺めながら食事やアフタヌーンティーを楽しむ時間は、まさに至福のひととき。
大澳の喧騒から少し離れたこの場所で、歴史の息吹を感じながら静かに流れる時間に身を委ねる。それは、大澳の旅を締めくくるのにふさわしい、贅沢な体験となるでしょう。
アクティブ派必見!ランタオ島のハイキング&ビーチ
ランタオ島の魅力は、文化的な名所だけにとどまりません。その広大な土地の大部分を占めるカントリーパークは、アウトドア愛好家にとってまさに楽園。香港屈指のトレイルを歩き、美しいビーチでリラックスする。そんなアクティブな休日を過ごしたい方にも、ランタオ島は最高の選択肢を提供してくれます。
香港屈指のロングトレイル「ランタオ・トレイル」
香港には4つの主要なロングトレイルがありますが、その中でも最も挑戦的で美しいと評されるのが、ランタオ島を一周するように設定された「ランタオ・トレイル」です。全長約70km、全12のセクションから成り、島の多様な地形と景観を余すところなく味わうことができます。
すべてのセクションを歩き通すには数日を要しますが、多くのハイカーは自分のレベルや時間に合わせて、特定のセクションを選んで楽しみます。
- 初心者におすすめのセクション
もしハイキング初心者なら、昂坪を起点とするセクションがおすすめです。例えば、セクション3の一部である智慧の道(ウィズダム・パス)周辺の散策や、セクション4の昂坪から深屈道(Sham Wat Road)までの比較的なだらかな下り道は、美しい景色を手軽に楽しめます。
- 健脚派への挑戦:鳳凰山(ランタオ・ピーク)ご来光登山
ランタオ・トレイルのハイライトであり、最も過酷なセクションの一つが、香港で二番目の高峰・鳳凰山(Fung Wong Shan、標高934m)を越えるセクション3です。特に人気なのが、ご来光を目指すナイトハイク。暗闇の中、ヘッドライトの明かりだけを頼りに急な岩場を登っていくのは大変ですが、山頂で迎える日の出の美しさは、その苦労を忘れさせてくれるほどの感動があります。雲海が眼下に広がり、その中から太陽が昇る光景は、まさに神々しいの一言。ただし、十分な装備(ヘッドライト、防寒着、食料、水)と体力が必須です。
ランタオ・トレイルを歩けば、観光地からでは見ることのできない、島の素顔に出会うことができます。自分自身の足で大自然と向き合う時間は、忘れられない思い出となるはずです。
透明度の高い隠れ家ビーチ「長沙泳灘(チョンシャー・ビーチ)」
ランタオ島の南岸に延びる「長沙泳灘(Cheung Sha Beach)」は、全長約3kmにも及ぶ、香港で最も長い砂浜です。上長沙(Upper Cheung Sha)と下長沙(Lower Cheung Sha)の二つのエリアに分かれており、きめ細やかな白い砂と、驚くほど透明度の高いエメラルドグリーンの海が広がっています。
香港中心部のビーチに比べて人も少なく、プライベート感あふれる穏やかな雰囲気が魅力。のんびりと日光浴をしたり、波の音を聞きながら読書をしたりと、思い思いの時間を過ごすのに最適な場所です。
下長沙エリアには、お洒落なレストランやカフェがいくつかあり、ビーチを眺めながら食事やドリンクを楽しむことができます。カヤックやスタンドアップパドルボード(SUP)、サーフボードなどのレンタルショップもあるので、ウォータースポーツに挑戦してみるのも良いでしょう。特に遠浅で波も穏やかなので、初心者でも安心して楽しめます。都会のイメージが強い香港に、これほど美しいビーチがあるという事実に、きっと驚かされるはずです。
梅窩(ムイオー)から始まるサイクリングの旅
フェリーが発着する梅窩(Mui Wo)は、ランタオ島でのサイクリングの拠点として最適な場所です。フェリー乗り場の周辺にはレンタサイクルショップがいくつかあり、手軽に自転車を借りることができます。
梅窩の町自体がのどかで、海沿いのプロムナードを自転車で走るだけでも気持ちが良いものです。ここから少し足を伸ばせば、美しい銀礦灣泳灘(シルバーマイン・ベイ・ビーチ)や、かつて銀が採掘されていたという銀礦洞(シルバーマイン・ケーブ)の跡地などを訪れることができます。
さらに体力に自信があれば、南ランタオロードを西へ進み、他の村やビーチを目指すのも一興です。途中にはアップダウンもありますが、ペダルを漕ぎながら自分のペースで移り変わる景色を楽しむサイクリングは、バスやタクシーでは味わえない特別な体験。風を感じ、鳥の声に耳を澄ませ、ランタオ島の豊かな自然を全身で感じてみてください。
旅のプランニング:モデルコースと宿泊ガイド
これまでに紹介してきた数々の魅力的なスポット。これらをどう組み合わせれば、最大限にランタオ島を楽しめるのでしょうか。ここでは、あなたの旅のスタイルに合わせたモデルコースと、ランタオ島での宿泊という選択肢についてご紹介します。
欲張り日帰りモデルコース
香港中心部に滞在し、1日でランタオ島の主要な見どころを効率よく巡りたい方向けのプランです。
- 午前8:30 | MTRで東涌へ
中環や尖沙咀などからMTR東涌線に乗り、終点の東涌駅へ。
- 午前9:30 | ゴンピン360で天空の散歩
事前に予約したチケットで、ゴンピン360のケーブルカーに乗車。クリスタル・キャビンを選べば、さらに感動的な体験に。25分間の絶景を楽しみながら昂坪へ。
- 午前10:00 | 昂坪エリア散策
まずは天壇大仏へ。268段の階段を登り、大仏のスケールと山頂からの眺望を堪能します。その後、荘厳な寶蓮禪寺を参拝。
- 午後12:30 | ランチはヘルシーな精進料理
寶蓮禪寺の斎堂、もしくは昂坪ビレッジ内のレストランで、名物の精進料理をいただきます。心と体に優しい食事が、旅の疲れを癒してくれます。
- 午後2:00 | バスで大澳へ
昂坪バスターミナルから21番バスに乗車し、水上集落・大澳を目指します(所要約20分)。
- 午後2:30 | 大澳散策と食べ歩き
棚屋が立ち並ぶノスタルジックな集落を散策。巨大イカ焼きやエッグワッフルなどのストリートフードを楽しみ、ピンクドルフィン・ウォッチングツアーに参加するのも良いでしょう。
- 午後5:00 | バスで東涌へ戻る
大澳バスターミナルから11番バスに乗車。ランタオ島の西海岸の景色を眺めながら、東涌へ戻ります(所要約50分)。
- 午後6:00以降 | ショッピング&ディナー
東涌駅直結のシティゲート・アウトレットでショッピングを楽しんだり、食事をしてから香港中心部へ戻ります。
自然を満喫する1泊2日モデルコース
ランタオ島の魅力をより深く、ゆったりと味わいたい方向けのプラン。島に宿泊することで、観光客が少ない朝夕の静かな時間も楽しめます。
- 1日目:午前
中環からフェリーに乗り、梅窩へ。船旅からランタオ島の旅をスタート。梅窩に到着後、荷物をホテルに預け、レンタサイクルで周辺を散策。銀礦灣泳灘でのんびり。
- 1日目:午後
梅窩からバスで長沙泳灘へ。美しいビーチで海水浴やウォータースポーツを楽しんだり、ビーチサイドのカフェでリラックス。夕方、バスで大澳へ移動し、大澳文物酒店などの宿にチェックイン。
- 1日目:夜
観光客が去った後の静かな大澳を散策。水面に映る棚屋の灯りが幻想的です。ホテルのレストランや、地元のシーフードレストランで夕食。
- 2日目:午前
早朝、大澳の朝の活気を感じながら散策。その後、バスで昂坪へ。比較的空いている午前中のうちに天壇大仏と寶蓮禪寺を見学。智慧の道まで足を延ばし、静寂の中で瞑想的な時間を。
- 2日目:午後
昂坪でランチを取った後、ゴンピン360のケーブルカーで東涌へ。眼下に広がる絶景を楽しみながら、山を下ります。東涌到着後、香港中心部へ戻るか、空港へ向かいます。
ランタオ島に泊まるという選択
日帰りでも十分に楽しめますが、ランタオ島に宿泊することで、旅は格段に豊かなものになります。
- 大澳文物酒店 (Tai O Heritage Hotel)
前述の通り、旧大澳警察署を改装したブティックホテル。歴史的な雰囲気とモダンな快適さが融合した空間で、非日常の滞在ができます。特に、静けさを取り戻した夜の大澳は格別です。
- 香港スカイシティ・マリオット・ホテル (Hong Kong SkyCity Marriott Hotel)
ゴンピン360やアジアワールド・エキスポに近く、空港へのアクセスも抜群の大型ホテル。快適な設備とサービスを求めるならこちら。東涌へのシャトルバスも便利です。
- 梅窩周辺のホテルやホリデーフラット
梅窩には、シルバーマイン・ビーチ・リゾートのようなリゾートホテルや、地元の人々が貸し出すホリデーフラット(貸別荘)があります。よりローカルでリラックスした滞在を望む方におすすめです。
- YHA ンゴンピン SG デイビス ユースホステル
昂坪に位置し、天壇大仏のすぐそばにあるユースホステル。ハイカーやバックパッカーに人気で、鳳凰山のご来光登山を目指す際の拠点としても最適です。
ランタオ島での一夜は、満点の星空や、鳥の声で目覚める朝など、都会では決して味わえない特別な体験をプレゼントしてくれるでしょう。
ランタオ島を120%楽しむためのTIPS
最後に、あなたのランタオ島旅行がより快適で思い出深いものになるよう、いくつか実用的なアドバイスをお届けします。
ベストシーズンと服装
ランタオ島を訪れるのに最も快適なシーズンは、気候が安定し、湿度が低い秋から冬(10月~2月頃)です。空気が澄んでいる日が多く、ハイキングや屋外でのアクティビティに最適です。
春(3月~5月)は湿度が高くなり、霧が発生しやすくなります。霧の中の智慧の道や天壇大仏も幻想的ですが、ゴンピン360からの視界は期待できないかもしれません。夏(6月~9月)は非常に高温多湿で、台風シーズンでもあります。旅行前に天気予報を必ず確認しましょう。
服装については、とにかく歩きやすい靴が必須です。特に昂坪や大澳は坂や階段が多いため、スニーカーなどが最適。夏は日差しが強いので、帽子、サングラス、日焼け止めは必需品です。また、ハイキングを計画している場合は、適切なトレッキングシューズ、吸湿速乾性のウェア、そして急な天候の変化に備えて薄手のレインウェアを用意しましょう。寺院を訪れる際は、過度な肌の露出は控えるのがマナーです。
通貨と支払い方法
香港の通貨は香港ドル(HKD)です。ゴンピン360、昂坪ビレッジ、シティゲート・アウトレットなどの主要な観光施設や店舗ではクレジットカードが広く使えます。また、MTR、バス、フェリー、そしてコンビニや多くの店舗で使える交通系ICカード「オクトパスカード(八達通)」は非常に便利なので、香港到着後に入手しておくことを強くお勧めします。
ただし、大澳の屋台や小さな個人商店などでは、現金しか受け付けない場合が多々あります。食べ歩きやローカルな買い物を楽しむために、ある程度の現金は必ず用意しておきましょう。
Wi-Fiと通信環境
東涌の駅やショッピングモール、ゴンピン360の駅、昂坪ビレッジなど、主要な観光スポットでは無料Wi-Fiが利用できる場所が多くあります。ホテルのWi-Fiもほとんどの場所で完備されています。
しかし、一旦ハイキングコースに入ったり、バスで山道を進んだりすると、電波が不安定になったり、圏外になったりすることがあります。特に一人でハイキングをする場合は、オフラインでも使える地図アプリをダウンロードしておくなど、事前の準備をしておくと安心です。
心に留めておきたいマナー
ランタオ島は、多くの人々にとって信仰の対象であり、また生活の場でもあります。訪れる私たち旅行者は、常に敬意を払う心を忘れないようにしましょう。
- 寶蓮禪寺などの寺院では、大声で話したり走り回ったりせず、静粛に行動しましょう。本堂内部での写真撮影が禁止されている場所もありますので、表示に従ってください。
- 大澳では、棚屋は人々の大切な住居です。無断で敷地内に入ったり、家の中を覗き込むような行為は絶対にやめましょう。人物を撮影する際は、一言断るのがマナーです。
- 豊かな自然環境を守るため、ゴミは必ず持ち帰りましょう。ハイキングコースなどでは、指定された場所以外での火の気の使用は厳禁です。
香港の喧騒から逃れ、大自然と文化の懐に抱かれる旅。ランタオ島は、あなたの香港に対するイメージを覆し、心に深い安らぎと新たな発見をもたらしてくれる特別な場所です。さあ、次の休日は、この魅力あふれる島へ、心呼吸する旅に出かけてみませんか。

