「香港」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、きらびやかなネオンが輝く高層ビル群や、活気あふれるショッピングストリートかもしれません。しかし、その都会的なイメージのすぐそばに、息をのむような大自然が手つかずのまま残されていることをご存知でしょうか。今回ご紹介するのは、香港島最南端にひっそりと佇む岬、鶴咀(ケープ・ダギラー)。そこは、都会の喧騒とはまるで別世界の、静寂と雄大な景色が広がる「香港最後の秘境」とも呼ばれる場所です。
断崖絶壁が続く海岸線、荒々しい波が創り出した奇岩の数々、そして香港最古の灯台が静かに歴史を語りかける…。鶴咀は、ありのままの自然の力強さと、悠久の時の流れを感じさせてくれる特別な場所です。この記事では、世界30か国を旅してきた私が、鶴咀の魅力を余すところなくお伝えします。アクセスが少し難しいからこそ出会える特別な景色を求めて、準備から楽しみ方、知っておくべきルールまで、あなたがこの秘境への一歩を踏み出すための全てを、心を込めてご案内します。この記事を読み終える頃には、きっと次の休日に香港の自然の中を歩きたくなっているはずです。
香港の自然を満喫した後は、都会に戻って幻の激辛料理に挑む食の冒険で五感を刺激してみるのも一興です。
鶴咀(ケープ・ダギラー)とは?香港の知られざる楽園

鶴咀は、その地理的な特性と独自の環境から、香港の中でも特にユニークなスポットとして知られています。まずは、この地がどのような歴史を持ち、なぜこれほど美しい自然が今もなお残されているのか、その背景を少しひも解いてみましょう。
地理と歴史:香港島最南端が語るストーリー
鶴咀は、その名の通り香港島の南東端に位置し、まるで鶴のくちばしのように突き出た岬です。英語名「Cape D’Aguilar(ケープ・ダギラー)」は、イギリス植民地時代初期のイギリス軍高官であったジョージ・チャールズ・ダギラー少将にちなんで命名されました。この岬は、古くから南シナ海を航行する船舶にとって重要な目印として機能し、香港の海洋史において欠かせない役割を果たしてきました。
特筆すべき点は、このエリアの大部分が「鶴咀海岸保護区」に指定されていることです。これは、香港の法律に基づき、特別な科学的価値を持つ海岸の動植物や地形の特徴を守るために設けられた制度で、そのためここでは釣りや生物の採取が厳しく制限されています。訪れるハイカーにも自然環境への最大限の配慮が求められており、この厳格な保護体制が鶴咀の原生的な生態系と景観を維持し続ける最も大きな要因となっています。
なぜ「最後の秘境」と呼ばれているのか
鶴咀が「秘境」と称される理由はいくつかありますが、その最大の要因は公共交通機関が岬の先端まで直接アクセスできないことにあります。最寄りのバス停から目的地までは舗装された道を片道およそ45分から1時間かけて歩かなければなりません。この「わずかな手間」が、多くの観光客の流入を防ぎ、静かで落ち着いた環境を守るフィルターとなっているのです。
また、この地域には香港大学の海洋研究施設である香港大学太古海洋科学研究所(The Swire Institute of Marine Science)が設けられています。研究所の存在は、この地の自然環境の重要性を示すとともに、一部区域の立ち入り制限を可能にし、手つかずの自然を保護する役割も果たしています。売店もレストランも自動販売機も存在しない、あるのは風のそよぎと波の音、そして目の前に広がる壮大な自然だけ。この隔絶された空間こそが、鶴咀を特別な場所にしているのです。
鶴咀で味わえる圧巻の絶景
長い道のりを踏みしめた先には、言葉を失うほどの絶景が広がります。ごつごつとした岩肌が露出した断崖絶壁が突き出し、紺碧の海へと続く開放的な風景は、ここが人口密度が非常に高い香港であることを忘れさせてくれます。
波の浸食によって形づくられた奇岩群は、鶴咀の見どころの一つです。巨大なカニのはさみのように見える「蟹洞(クラブ・ケーブ)」や、洞窟に打ちつける波の音が雷鳴のように響き渡る「雷音洞(サンダー・ケーブ)」など、自然が生み出した造形美にはただただ圧倒されるばかりです。そして丘の上に白く輝く「鶴咀灯台」は、1875年に建てられた香港現存最古の灯台として、歴史の重みを感じさせます。青空と海を背景に佇むその姿は、まるで一幅の絵画のような美しさを放っています。
ここは単なる眺望スポットではありません。五感を通じて自然を感じ、地球の営みの壮大さに思いを馳せる特別な場所です。それでは次に、この秘境へ足を踏み入れるための具体的な方法をみていきましょう。
鶴咀へのアクセス完全ガイド:MTRとバス、タクシーを乗りこなす
鶴咀への旅は、入念な計画が不可欠です。先述の通り、目的地へ直接アクセスできる公共交通機関は存在しないため、MTR(地下鉄)、バス、徒歩の組み合わせが基本的なルートとなります。ここでは、香港の中心部から鶴咀までの行き方を、誰にでも分かりやすいようステップ・バイ・ステップで詳しくご案内します。この方法を守れば、初めて訪れる方でも迷わず秘境への入り口に到達できるでしょう。
STEP1: まずはMTRで筲箕灣(シャウケイワン)駅を目指す
鶴咀行きの出発点は、MTR港島線(Island Line)の東側終点から二駅手前に位置する「筲箕灣(Shau Kei Wan)」駅です。ここは中環(セントラル)や銅鑼湾(コーズウェイベイ)、灣仔(ワンチャイ)などの主要エリアから乗り換えなしでアクセス可能な便利な駅です。MTRの路線図はシンプルで、香港初訪問の方でも迷いにくい設計になっています。
- 中環(セントラル)からの所要時間: 約20分。オクトパスカード利用時の料金は約HK$9.8。
- 銅鑼湾(コーズウェイベイ)からの所要時間: 約13分。オクトパスカード利用時の料金は約HK$6.6。
香港での公共交通利用に欠かせないのが「オクトパスカード(八達通)」です。MTRやバス、ミニバス、フェリーはもちろん、コンビニやレストランなど多くの店舗でも使えるため、香港に着いたらまず入手することを強くおすすめします。毎回切符を購入する手間や、小銭の煩わしさがなくなります。
STEP2: 筲箕灣バスターミナルから9番バスに乗る
筲箕灣駅に着いたら、A3出口を目指して地上に出ましょう。目の前に大きなバスターミナルが広がっており、ここが鶴咀へ向かう次のステップの出発地点です。
ターミナル内で探すのは、行き先表示が「石澳(Shek O)」の「9番」バス乗り場です。週末や祝日には、ハイキングやビーチを目指す人々で列ができることもあります。バスは2階建ての大型車両で比較的頻繁に運行されていますが、時間に余裕を持って行動するのが賢明です。
乗車時は、オクトパスカードを入口のリーダーにかざすか、運転席横の料金箱に現金を入れてください。現金払いの場合はお釣りが出ないため、2024年5月時点でHK$8.4のぴったりの小銭を用意する必要があります。やはりオクトパスカードでの支払いが便利です。
STEP3: 「鶴咀道(Cape D’Aguilar Road)」バス停で降車
ここが最も重要なポイントです。9番バスは鶴咀の入り口を通り過ぎて、終点の石澳(セックオー)ビーチまで運行しています。そのため、目的地では自分で「鶴咀道」というバス停で降りなければなりません。バス内の案内は広東語と英語で流れますが、聞き逃すこともあるでしょう。
安心するために、Googleマップなどの地図アプリを起動し、現在地を確認しつつ乗車するのがおすすめです。筲箕灣からバスに乗り、約20~25分ほどで土地湾(To Tei Wan)を過ぎ、大きな右カーブの途中にあるバス停が「鶴咀道」です。不安な場合は、乗車時に運転手に「Cape D’Aguilar Road」と書いたメモを見せると、親切に教えてくれます。
バス停で降りると、そこがハイキングコースの入口です。目の前に「鶴咀」と書かれた標識と、車両の進入を制限するゲートが見えるはずです。ここからは歩いて進むことになります。
タクシー利用時のポイントと注意
グループでの移動やバスの待ち時間を節約したい場合は、タクシーの利用も検討できます。筲箕灣のMTR駅前から鶴咀道の入口ゲートまで、料金はおおよそHK$80~HK$100程度です。運転手には「鶴咀(Hok Tsui)」と言えば、ほとんどの場合通じます。
ただしタクシーもバス同様、ゲート前までしか入れません。そこから先は徒歩になります。特に帰りは注意が必要で、鶴咀道の入り口周辺で流しのタクシーを拾うのは非常に難しいです。したがって、事前にHK TaxiやUberなどの配車アプリをスマートフォンにインストールしておくことを強くおすすめします。これにより、スマホを使って現在地まで車を呼び、帰路の足を確保しやすくなります。
トラブル対応:バスを乗り過ごした場合
万が一バス停を乗り過ごしても慌てる必要はありません。9番バスの終点は、美しいビーチのあるリゾート地・石澳(セックオー)です。終点で降りてから、再び同じ9番バスの筲箕灣行きに乗り換え、今度は逆方向から「鶴咀道」バス停を目指しましょう。数分のロスにとどまり、意外と石澳の雰囲気も味わえます。旅の小さな思い出として楽しめる心の余裕を持つのが良いでしょう。
また、万全を期すためにスマートフォンのモバイルバッテリーを十分に充電し、オフラインでも使える地図アプリを用意しておくと安心です。
必見!鶴咀の見どころ徹底解説

約4キロ、ほぼ1時間の道のりを歩き進めると、目の前に広がるのは数々の圧巻の絶景です。ここでは、鶴咀を訪れる際に必ず押さえておきたいスポットを、その魅力や楽しみ方、さらには注意すべきポイントを詳しく解説します。それぞれの場所が紡ぐ物語や自然が織りなす神秘に触れながら、ゆっくりと散策を満喫してください。
自然の織りなす芸術作品:蟹洞(クラブ・ケーブ)
鶴咀のハイキングルートを進むと、最初に海側に見えてくるのが「蟹洞(Crab Cave)」です。その名の通り、まるで巨大なカニがハサミを広げたかのような形状を持つ、印象深い海食洞穴です。長年にわたる荒波の浸食作用が岩を削り出し、奇跡的な造形が誕生しました。アーチの向こうには、果てしなく広がる南シナ海の青い水平線が広がり、その対比が抜群の美しさを醸し出しています。多くのハイカーがここで足を止め、それぞれカメラを向けて思い思いに撮影を楽しんでいます。
写真を撮る際は、安全面に十分配慮してください。特に波が高かったり満潮のタイミングでは、波しぶきが洞窟の近くまで押し寄せることがあります。岩場は滑りやすいため、無理に崖の先端へ近づいたり危険な場所に踏み込むことは避けましょう。安全な場所からでも、雄大な自然の美を鮮やかに捉えた素晴らしい一枚が撮れます。自然に対する敬意を忘れず、この独特な芸術作品を堪能してください。
不思議な音響空間:雷音洞(サンダー・ケーブ)
蟹洞を過ぎてさらに進むと、次に現れるのが「雷音洞(Thunder Cave)」です。こちらは細長く狭い洞窟で、外洋から押し寄せる波が洞窟内部でぶつかり合い、その音が反響して「ゴォーッ」という雷鳴のような轟きが響き渡るため、その名が付けられました。音の強さや響きは潮の満ち引きや波の勢いによって変わり、訪れるたびに異なった表情を見せてくれます。目を閉じて耳を澄ますと、まるで地球の鼓動が直接体の奥にまで伝わってくるかのような、力強く神秘的な体験が味わえます。
雷音洞は非常に狭く、内部は湿っていて滑りやすいため、洞窟内に立ち入るのは極めて危険です。入口付近からその迫力ある響きを安全に楽しむことにとどめてください。特に満潮時や荒天時には、予期せぬ高波が洞内に流れ込む恐れがあります。自然の力を軽視せず、十分な距離を確保することが重要です。
香港最古の灯台:鶴咀灯台(ケープ・ダギラー灯台)
海岸線の奇岩を抜けて少し丘を上ると、白亜の美しい灯台がひっそりと立っています。これが1875年に点灯を始めた、現在も残る香港最古の灯台「鶴咀灯台(Cape D’Aguilar Lighthouse)」です。高さ9.7メートルの円筒形で、花崗岩で造られており、100年以上の風雪に耐え抜いた歴史の深さを感じさせます。現在は現役の灯台としての役割を終えましたが、香港の法定古蹟として厳重に保護されており、その歴史的意義は非常に大きいものです。
灯台内部への立ち入りはできませんが、周囲には緑豊かな芝生が広がっており、絶好の休憩場所となっています。青空と蒼い海を背景にそびえる純白の灯台は、どの角度から見ても絵になる風景です。ここまで歩いてきた疲れを癒しつつ、かつてこの灯りが多くの船乗りたちの道標となっていたことに思いを馳せてみるのも素敵です。
海洋研究の最前線:香港大学太古海洋科学研究所
鶴咀の特殊な環境を形作っている重要な存在の一つが、香港大学太古海洋科学研究所です。この研究機関では海洋生物学や生態系の最先端研究が進められており、香港における海洋環境保全の中心的な役割を果たしています。一般の立ち入りは禁止されており、研究活動に支障をきたさないよう配慮されています。
とはいえ、ハイキングコースからは研究所の建物や施設の一部を見ることができます。ここで日々、香港の豊かな海を守るための努力が続けられていることを知ることで、今目にしている美しい自然が、多くの人々の献身的な取り組みに支えられていることを実感できるでしょう。
巨大な骨格標本:シロナガスクジラの骨
研究所の屋外エリアには、非常に印象的な展示が置かれています。それが巨大なシロナガスクジラの骨格標本です。この個体は1955年に香港周辺の海域で命を落とし、その骨格は教育や研究のためにここに展示されることになりました。愛称「ミス・ウィリー」で親しまれるこの標本は、生命の壮大さと尊さを静かに、しかし雄大に語りかけてきます。現在は老朽化の影響で一部が覆われていることもありますが、その圧倒的な存在感は変わりません。この骨格の前に立つと、私たちが普段目にする海の世界には、多様でスケールの大きな生命が息づいていることを改めて認識させられます。
鶴咀ハイキングのための完全準備リストと心構え
鶴咀の美しい風景を存分に味わうためには、事前の準備が何よりも重要です。ここは整備された観光スポットではなく、「自然の中を歩く」場所であるため、きちんとした準備と正しい心構えが、安全かつ快適なハイキングの鍵を握ります。ここでは、私が世界各地のトレイルを歩いた経験をもとに、鶴咀ハイキングに特化した持ち物リストや注意点を具体的にご紹介します。
持ち物リスト:最低限揃えたい必須アイテム
鶴咀には売店や自動販売機が一切ありません。必要なものはすべて自分で持参する必要があるため、出発前に忘れ物がないか必ず確認しましょう。
- 服装と靴: 特に重要なのは足元です。必ず履き慣れたスニーカーやハイキングシューズを選んでください。サンダルやヒールのある靴は絶対に避けましょう。道は舗装されているものの、距離が長く岩場を歩くこともあるため、滑りにくく歩きやすい靴が欠かせません。服装は汗をかいても速乾できる素材が望ましいです。夏はTシャツと短パンで問題ありませんが、強い日差し対策として薄手の長袖を一着持参すると安心です。冬季(12月〜2月)は冷たい風が吹くことがあるため、防寒用のウインドブレーカー等を準備しましょう。また、日よけ用の帽子やサングラスもお忘れなく。
- 十分な水分: これはまさに命綱です。特に香港の夏(5月〜9月)は高温多湿で熱中症リスクが非常に高まります。季節を問わず、一人あたり最低1.5リットルの水やスポーツドリンクを携帯してください。多めに持って行くくらいがちょうど良いです。
- 軽食と行動食: ハイキングの往復と散策には少なくとも3〜4時間かかります。途中でエネルギー補給できるように、おにぎりやサンドイッチなどの軽食、チョコレートやナッツ、エナジーバーといった行動食を必ず携行しましょう。絶景を眺めながらのランチは格別です。
- 日焼け・虫除け対策: 鶴咀コースには日陰がほとんどありません。出発前に日焼け止めをしっかり塗り、こまめに塗り直せるよう携帯してください。また、草木が多い場所では蚊やその他の虫に刺される可能性があるため、虫除けスプレーも用意しておくと安心です。
- その他: スマートフォンのバッテリーは予想以上に消耗します。地図アプリの利用や写真撮影を考慮し、満充電にしたうえでモバイルバッテリーを携帯することを強くおすすめします。汗を拭くタオルや、万が一の怪我に備えた絆創膏や消毒液などの応急セットもバッグに入れておくと心強いです。さらに重要なのがゴミ袋です。鶴咀にはゴミ箱がほぼないため、自分の出したゴミは必ず持ち帰りましょう。「来た時よりも美しく」を心に刻むのがハイカーの基本マナーです。
ベストシーズンと天気の確認
鶴咀ハイキングの最適な時期は、気候が穏やかで過ごしやすい秋から春にかけて、具体的には10月から翌年4月頃までです。空気が澄み渡り、景色がより一層美しくなります。一方、5月から9月の夏季は気温が30度を超え、湿度も非常に高くなります。この時期に訪れる場合は、熱中症対策を徹底し、こまめに水分を取り、適宜休憩を挟むことが大切です。また、体調に異変を感じた場合は無理せず引き返す勇気も必要です。
出発前には必ず天気予報を確認しましょう。香港の天気は変わりやすいことで知られています。香港政府の気象情報サイト「香港天文台(Hong Kong Observatory)」は精度が高く信頼できます。雷注意報や大雨警報が出ている場合は、ハイキングを中止または延期するのが賢明です。特に雷は開けた岬では非常に危険です。
禁止事項と守るべきマナー
美しい自然環境を次世代へ受け継ぐため、鶴咀ではいくつかのルールが設けられています。訪れる私たち一人ひとりがこれらを守ることが、この場所の保護につながります。
- 鶴咀海岸保護区のルール: この区域では、動植物の採取や損傷は法律で禁止されています。美しい貝殻や石があっても持ち帰ることはできません。魚釣りや水泳、ダイビングといった活動も許可なく行うことはできません。ドローンの飛行も、研究施設や自然環境への影響を考慮し、原則として禁止されています。
- 火気厳禁: バーベキューやキャンプファイヤーなど火を使うことは、山火事の危険があるため厳しく禁じられています。タバコのポイ捨ても絶対に避けてください。
- Leave No Trace(自然に痕跡を残さない): これは世界中のハイカーに共通する理念です。ゴミは必ず持ち帰りましょう。また、ハイキングコースから外れて歩くと植生を損なう恐れがあるため、指定された道を歩くことが求められます。
- 野生動物への配慮: 鶴咀では野生の牛やイノシシに遭遇することがあります。彼らを驚かせないよう静かに距離を保ち、絶対に餌を与えないでください。
- プライバシーの尊重: 香港大学の研究所は研究活動の場です。無断で敷地に入ったり、研究者を無断で撮影したりすることは控えましょう。
体力レベルと所要時間の目安
鶴咀のハイキングコースは、バス停から岬の先端までおおむね全てコンクリートで舗装されており、急な坂も少ないため、初心者や普段あまり運動をしない方でも挑戦しやすいコースです。ただし、距離は往復で約8〜9キロメートルあります。歩行時間は往復で約2時間ですが、各スポットでの見学や写真撮影、休憩を含めると3時間半から4時間程度を見込んで計画すると良いでしょう。自身の体力を考慮し、余裕をもったスケジュールを立てることが、ハイキングを心から楽しむコツです。
鶴咀周辺の立ち寄りスポットとグルメ情報

せっかく香港島の南端に足を運んだのなら、ハイキングだけで終わらせるのは非常にもったいないです。鶴咀へ向かう際の拠点となる筲箕灣(シャウケイワン)や、バスの終点にあたる石澳(セックオー)には、それぞれに異なる魅力や美味しいグルメが豊富に揃っています。ハイキングで適度に汗をかいた後は、ぜひ地元の雰囲気を楽しんでみてはいかがでしょうか。
ハイキング後に立ち寄りたい石澳(セックオー)
鶴咀道のバス停をうっかり乗り過ごした際の終点としても紹介した石澳(Shek O)ですが、ここはわざわざ訪れるだけの価値がある魅力的なスポットです。鶴咀入口のバス停から再び9番バスに乗れば、わずか5分ほどで到達します。
石澳はカラフルな家々が連なる小さな村と、きめ細かな砂浜が広がる美しいビーチが魅力の、のんびりとしたリゾートエリアです。ハイキングで疲れた足を癒すためにビーチでゆっくり過ごしたり、海水浴を楽しむのもよいでしょう。村の中を歩けば、まるでヨーロッパの海辺の町を思わせるような、写真映えする風景に出会えます。
お腹が空いた際は、ビーチ沿いや村内に点在するレストランを訪れてみてください。本格的なタイ料理や新鮮なシーフードを提供するお店が多く、ハイキング後の空腹を満たすにはうってつけです。冷たいビールを手に、海を眺めながらの食事はまさに至福のひととき。都会の喧騒から離れて、のんびりとリラックスした時間が過ごせます。
筲箕灣(シャウケイワン)で味わうローカルフード
ハイキングの出発点であり、また戻ってくる場所でもある筲箕灣(Shau Kei Wan)は、高層ビルが立ち並ぶ香港中心部とは一味違い、昔ながらの香港の風情が色濃く残るエリアです。MTRの駅を降りてすぐには活気にあふれるウェットマーケット(市場)があり、地元の人々の暮らしを間近に感じることができます。
特に食にこだわる方におすすめなのが、「筲箕灣東大街(Shau Kei Wan Main Street East)」です。ここは「食のストリート」として知られ、数十軒の飲食店が軒を連ねています。ミシュランガイドにも掲載された有名店から、地元の人々に愛される手頃で美味しいB級グルメのお店まで、多彩な選択肢が揃っています。香港名物の魚の練り団子「魚蛋(フィッシュボール)」や、外はカリッと中はもちもちのベビーカステラのような「雞蛋仔(ガイダンジャイ)」などを食べ歩くのも楽しみのひとつです。ハイキングを頑張った自分へのご褒美に、ぜひローカルフードを存分に味わってみてください。詳しい情報は香港政府観光局の筲箕灣紹介ページでもご覧いただけます。
鶴咀の壮大な自然と、その周辺に広がるローカルな魅力を組み合わせることで、あなたの香港旅行はより充実し、忘れがたい体験となるでしょう。
よくある質問とトラブル対策
最後に、鶴咀ハイキングに関して多くの方が抱く疑問や、万が一のトラブルに備えるための情報をまとめました。事前に把握しておくことで、より安心して旅の計画を立てられます。
Q: コースにトイレは設置されていますか?
A: 残念ながら、鶴咀ハイキングコースの途中には公衆トイレがありません。必ず出発前に、MTR筲箕灣駅やバスターミナル、あるいは周辺のショッピングモールなどで用を済ませておいてください。なお、途中の鶴咀村には簡易トイレがありますが、常時利用可能とは限らず衛生面もあまり良くありません。水分補給は重要ですが、トイレの場所も考慮に入れて計画を立てましょう。
Q: 携帯電話の電波は繋がりますか?
A: 香港は通信インフラが非常に進んでいるため、鶴咀ハイキングコースのほとんどの場所で携帯電話の電波は問題なく利用できます。ただし、一部の谷間や岩の陰などでは電波が弱まったり途切れることもあります。地図アプリの利用を想定している場合は、万が一のためにあらかじめ対象エリアの地図をダウンロードし、オフラインでも閲覧できるようにしておくことを強くおすすめします。
Q: ハイキング中にけがや体調不良が起こった場合はどうすれば良いですか?
A: まず最も大切なのは、無理をしないことです。体調に異変を感じたら、勇気を持って引き返すことを心掛けてください。軽度の捻挫などのけがをした場合は同行者に助けを求め、ゆっくりと来た道を戻りましょう。動けないほどの重い状態に陥った際には、香港の緊急通報番号「999」に連絡してください。その際には現在地を正確に伝えることが非常に重要です。コースには数メートルおきに距離を示す標識(標距柱)が設置されていることがあり、これを目印にすると位置の説明がしやすくなります。単独でのハイキングは避け、必ず誰かと一緒に行動することをお勧めします。
Q: 小さな子供や高齢者でもハイキングに参加できますか?
A: コースは舗装されていて比較的平坦なため、体力のある子供や普段から歩く習慣のある高齢者であれば挑戦は可能です。しかし、往復で8km以上の距離があり、日差しを遮る場所がほとんどないため、予想以上に体力を消耗する環境です。特に夏の猛烈な暑さの中で小さな子供や高齢者を連れて行くのは、熱中症のリスクが高いため避けるべきです。挑戦する際は、気候のよい季節を選び、通常より多めに休憩時間を確保し、水分や食料も十分に用意するなど、万全の準備を整えてください。参加者の体力や体調を最優先にし、無理のない計画を心がけましょう。

