私たちの空の旅が、地球環境にとってより持続可能なものへと大きく舵を切ろうとしています。国際航空運送協会(IATA)に加盟する世界の主要航空会社が、2030年までの中期目標として、持続可能な航空燃料(SAF)の利用比率を従来の10%から15%へと引き上げる最終調整に入ったことが明らかになりました。この動きは、未来の旅行にどのような変化をもたらすのでしょうか。
なぜ今、SAFが注目されるのか?
航空業界は、世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約2〜3%を占めると言われており、気候変動対策は喫緊の課題です。電動化が難しい航空機にとって、脱炭素化の切り札として期待されているのが「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」です。
持続可能な航空燃料「SAF」とは
SAFは、廃食油や植物、都市ごみなどを原料として製造される代替燃料です。従来のジェット燃料と比較して、原料の収集から燃焼までのライフサイクル全体でCO2排出量を最大で約80%も削減できるとされています。現在使用されている航空機のエンジンや給油設備をそのまま利用できるため、スムーズな移行が可能な点も大きなメリットです。
目標引き上げの背景にあるもの
今回、IATAが目標を15%へと引き上げる背景には、SAFの生産技術の目覚ましい向上と、世界的な供給網の拡大への期待があります。これまで課題とされてきた生産量を増やせる見通しが立ったことで、より野心的な目標設定が可能になったのです。
この動きは、2050年までに航空業界全体でCO2排出量を実質ゼロにするという壮大な目標に向けた、重要なステップとなります。
旅行者への影響は? 航空券価格への懸念
環境に優しいフライトは誰もが歓迎するところですが、気になるのは私たち旅行者への直接的な影響、特にコスト面です。
避けて通れないコスト問題
SAFの最大の課題は、その価格です。現状では、従来のジェット燃料に比べて2倍から5倍以上と非常に高価です。航空会社の運営コストの大部分を占める燃料費が上昇すれば、その一部が航空券価格に転嫁されることは避けられないでしょう。
すでに一部の航空会社では、運賃とは別に「SAFサーチャージ」を導入し、乗客に環境対策への協力を求める動きが始まっています。今後、SAFの利用が本格化するにつれて、こうした負担が一般的になる可能性があります。
目標達成に向けた今後の展望
目標達成は、航空会社だけの努力では困難です。ニュースでも指摘されている通り、各国政府によるSAF生産への支援策や、導入を促進するための税制優遇措置といった官民一体となった取り組みが不可欠です。
日本政府も、2030年までに国内航空会社の燃料使用量の10%をSAFに置き換える目標を掲げており、国産SAFの安定供給に向けた体制づくりを急いでいます。
持続可能な空の旅の実現は、一朝一夕にはいきません。しかし、今回の目標引き上げは、航空業界が未来への責任を果たそうとする強い意志の表れです。私たち旅行者も、少し先の未来では、航空券を選ぶ際に「どのくらい環境に配慮したフライトか」という新しい基準を持つことになるのかもしれません。

